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“抜け道”だらけで問題山積!?派遣法改正でも「派遣切り」が終わらないワケ http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/748.html
(回答先: 懸念される過剰「インフラ在庫」 投稿者 gikou89 日時 2010 年 4 月 29 日 22:05:16) http://diamond.jp/articles/-/7977 派遣業界が大揺れだ。 帝国データバンクの調べによれば、2009年度の人材派遣会社の倒産件数は88件。過去最悪の結果となった。同社調査部の阿部成伸さんは次のように説明する。 「派遣先での仕事そのものが減っている状態ですね。このため、自社で派遣社員の給与を支払う常用型雇用の人材派遣会社は、とくに重い負担にあえいでいる。中でも設計・開発系は深刻なIT不況にさらされ、厳しい経営環境と言えます。 今のところ、倒産企業のほとんどが小規模、零細派遣会社ですが、今後は中規模、大企業で経営が傾くところが出てくるのでは。大手のうち、金融会社やメーカーが出資する資本系は安泰と言えますが……」 そんな中、今月16日に労働者派遣法改正案が衆議院本会議で審議入りした。その是非をめぐり、さまざまな立場から議論が飛び出し、白熱化している。 「派遣で働けなくなったら生活に困る」「規制強化が進めば企業の海外移転が進む」などの声もあれば、「改正案は抜け道だらけだ」とさらなる規制強化を望む意見もある。 たしかに、就職へのハードルが低くライフスタイルにあわせて仕事ができる派遣は、多くの人にとって都合のいい働き方だ。同時に、グローバル競争にさらされる企業にとってもありがたい存在である。それでも、「都合のいい働き方」ゆえに翻弄されてしまう人々も中にはいる。 “派遣混迷時代”の今、体験者の声に耳を傾けてみることにした。 “撤回”でも切られた派遣社員たち 自動車メーカーの工場で期間従業員として働いていた三浦慶範さん(28歳)は当時を振り返り、こうつぶやく。 “期間従業員の解雇撤回” 新聞にこんな見出しが躍ったのは一昨年のこと。会社はリーマンショックを契機に減産を余儀なくされたため、期間工と派遣社員の大量解雇を予定していた。“撤回”が報道されたのは、解雇予定日のわずか2日前だった。 だが、じつはこのとき会社側が提示してきた選択肢は2つあった。ひとつは「期間満了までの賃金8割と満期慰労金を受け取り、合意の上で退職する」。もうひとつは「契約期間満了まで休職し、賃金6割と満期慰労金を受け取る」。多くの従業員たちは前者を選ぶしかなかった。 「それに対象となったのはあくまで期間従業員だけ。派遣社員たちはみんな切られてしまいました」 いつでも使えていつでも切れる。それが派遣社員だ、と彼は言う。 三浦さんがそう考えるのも無理はない。なにしろ、派遣社員になって以来、さんざん派遣元と派遣先企業に振り回されてきたのだ。 もともと宮城県の出身。専門学校を卒業後、埼玉県内のバイク販売店に就職したが、1年あまりで退職。いったん郷里に戻っている。ところが、地元ではまったく就職口がなかった。やむなくガソリンスタンドでアルバイトをしつつ職探しを続けていたとき、たまたま人材派遣会社の募集チラシを手にする。 「自動車製造スタッフ大募集! この文句につられ、派遣社員として働くことを決めた。じつは三浦さんは実家の事情などから借金を背負っていた。『ここで頑張ればまとまったおカネを作れるはずだ……』。だが、彼を待ち受けていたのは予想とは裏腹のトンデモ職場だった。 給与の約3分の1! 簡単な説明会のあと連れて行かれたのは、派遣社員用の寮だった。足を踏み入れてみるとごく普通の3LDKのアパートだ。いちおう個室はあるものの、扉にはカギがついていない。当然ながら同居人2人はまるで見ず知らずの男たちである。 不安にとらわれる三浦さんに、担当者の言葉がさらに追い打ちをかけた。寮費は毎月5万円で、さらに布団とテレビのレンタル代が徴収されるという。毎月の給与は15万円ちょっとだ。チラシのキャッチコピーには遠く及ばない金額で、寮費を差し引けばいくらも残らない。 『寮費3人分で15万円か。このあたりの家賃相場はよほど高いんだろうな』 ところが調べてみると、同じような近場の物件はせいぜい6、7万円くらいだということがわかった。 こんな調子ではろくに貯金もできない。焦りを募らせたまま3ヵ月近くが経ち、契約更新時期が近づいてきた頃、人材派遣会社の担当者から連絡があった。 「派遣先では派遣社員たちを直接雇用したいと言っている。これ以上働きたかったら、期間従業員になってください」 わけがわからなかったが、とりあえず言われる通り期間工になることにした。3ヵ月〜6ヵ月の細切れ契約だが、寮費がタダになるうえ、給与も上がるという。悪くない話だ。 ところが最初の3ヵ月が終わろうとする頃、担当者は今度はこんなことを言いだした。 「どう?今なら10万円出すよ。派遣に戻らない?」 あっけにとられていると、担当者はこう説明を続けた。 「三浦君だってなるべく長く働きたいでしょ。それなら断然、派遣だよ。期間従業員をクビになったら、次の仕事を探すのにも困るじゃない。その点、派遣社員ならいくらでもほかの職場を紹介してもらえるわけだし。うちとしても、あなたみたいな仕事のできる人をぜひ欲しいんですよ……」 つかの間だけ直接雇用をする クーリングとは、派遣契約をいったんリセットするための方法。派遣期間満了後にいったん3ヵ月を超える“派遣契約お休み期間”を置き、その後あらためて派遣契約を締結する。 というのも労働者派遣法では、業務によって原則1年、最長3年までという受け入れ期間の制限があるからだ。それを超える場合、受入側は労働者に対し、直接の雇用契約の申し込みをしなければならない。 しかし中には、お休み期間だけ直接雇用をし、派遣社員を期間工にする製造業者がある。お休み期間が終了すれば、コストがかかる直接契約も打ち切り。いわば「偽装直接雇用」だ。 製造業界では、2006年に「偽装請負」が社会問題化したことから派遣社員がどっと増えた。3年後にあたる2009年を乗り越えようと、一時期はよくこの抜け道策がとられたという。 ただし、2008年に厚生労働省が「いわゆる『2009年問題』への対応について」を発表。派遣先と派遣元が意図してこれを行った場合は違法とされるようになった。 いずれにせよ派遣社員にしてみれば、正社員になれる可能性など絵に描いた餅に過ぎない。ただ身分がころころ変わるだけで、迷惑なことこのうえない。 もちろん2006年当時は、そんな抜け道があること自体、知る由もなかった三浦さんだったが――。 結局、彼は派遣社員になる道を選ばなかった。 「ちょうど仕事を覚え始めた頃で、腰を据えてこの職場で働きたいと思っていた。そこで、派遣会社の申し出は断り、期間工として働き続けることにしたんです。何度も誘われましたが、とうとう断りとおしました。 仲間の中には10万円ほしさに、派遣会社の申し出を受け入れる人が大勢いたようです。最終的に、約700人の期間工が派遣社員に戻りました」 だが後に、彼らの選択が大間違いだったことが判明するのである。 紙切れ1枚で行われた派遣切り 「手が空いたら、全員1人ずつミーティングルームに来てくれ」 手渡されたのは1枚の紙切れである。 「どういうことですか、これ」 解雇通知だった。契約打ち切りは12月26日。だが、次の契約更新は4月の予定だ。 「契約期間なかばで解雇って……あんまりな仕打ちじゃないですか!」 声を震わせ喰ってかかったが、上司とライン長は「会社が決めたことだから」の1点張りだった。 仲間の中には身寄りもなく、寮を追い出されればホームレスになるしかない、という人たちも多い。 「このまま泣き寝入りするもんか」 三浦さんは一大決心を固めた。期間工の仲間に声をかけ、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)に加入。組合を結成し「解雇撤回を求める通告書」を会社に提出した。 結局、会社は方針を変更したが、派遣社員たちが救われることはとうとうなかった。 「例外」が曲者!? 「この前、ハローワークで当時の仲間にバッタリ会っちゃいました(笑)。彼はたしか40代後半のはず。あれから仕事は見つかったかな。 最近、考えるんですよ。自分たちは普通に一生懸命働いてきたのに、なぜ簡単に解雇されてしまったのかと。正社員の雇用を守るためだったのか。それとも、株主のためだったのか」 全国でおよそ399万人にものぼる派遣社員たち。 もちろん、誇りや夢を持って派遣社員を続けている人もいる。失業対策としても派遣という雇用形態の果たす役割は大きいだろう。また、派遣社員なしに成り立つ職場も今や少ない。だが、企業側にとっては、派遣社員が経営や正社員雇用を守る安全弁となっているのもまた事実だ。 「本命は別にいるけれど、気が向いたときだけ付き合う」相手を「都合のいい女(男)」などと呼ぶが、ある種の企業にとって派遣社員は「都合のいい人たち」なのかもしれない。 現在、国会で審議中の労働者派遣法の改正案について、働く女性の全国センター 代表の伊藤みどりさんは「とにかく例外が多すぎる。それらが企業側に都合のよい抜け穴になってしまうのでは」と懸念する。 法案の骨子は「仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣の原則禁止」「製造業派遣の原則禁止」「日雇いや雇用契約が2ヵ月以下の派遣を原則禁止」「派遣社員と派遣先社員の均衡待遇を考慮」「公布から6ヵ月以内に施行。製造、登録型派遣の禁止は原則として3年以内に施行」だ。 ただし、伊藤さんが指摘するように、そこにはさまざまな例外が設けられている。そのひとつが製造業派遣禁止における、「常用型を除外する」という規定だ。 常用型とは、派遣会社に常時雇用されている労働者のこと。基本的に仕事がないときも派遣会社から給与が支払われる。だが、改正案ではその常用型雇用について、短期雇用の繰り返しでも1年を超える雇用の見込みがあれば「常用型雇用」としている。 気をつけたいのは、この“見込み”という箇所。数か月で契約更新を打ち切っても、「見込みはあったのですが……」と説明すればそれまでとなってしまう。また、原則禁止される登録型も、1年以上の雇用が見込まれれば常用型とされるため、ますます混乱は大きくなっている。 間違った派遣依存体質が治らない限り、せっかくの改正法も現行法と同様、“画餅”となる可能性は高い。 一方、人材派遣会社の中には、従来の事業に見切りをつけ、アウトソーサーとして請負ビジネスを始める業者も増えている。 とはいえ、指揮命令者が発注会社から派遣会社に移るだけで実態が変わらなければ、今度は「請負切り」が社会問題化しないとも限らない。 ロボット化で失われる 「派遣を減らせば海外移転が進むという人もいるけれど、日本のものづくり力を支えるのは、やはり現場だと思う。技術部門や設計部門だけが技術力じゃない。現場で働く人々の知恵から新しい技術が生まれてくるんじゃないでしょうか。非正規社員をロボットのように働かせている限り、知恵は生まれてこないですよ」 たしかに自分の望む働き方ができず、つねに押さえつけられていれば、モチベーションも失われてしまう。伊藤氏も「行き過ぎた人件費削減が、深刻な品質低下をもたらさないとも限らない」と話す。 解決策はあるのだろうか? ひとつの参考となるのが、EUのパートタイム労働指令だ。「パートタイムがフルタイム労働者に比べ不利益な取り扱いを受けない」「希望すれば、フルタイムからパートタイム、パートタイムからフルタイムへと、仕事の形態を変えられる」(努力義務とされる国も)などが定められている。 その基盤となる考え方が「同一労働 同一賃金」。雇用形態や男女などで賃金差を設けず、同じ職種であれば同じ賃金水準を適用させる、というものである。 派遣社員として働き続けたい人。派遣から正社員になりたい人。子育てなどで一時的に派遣社員になりたい人。定年後も派遣社員として活躍したい人。人々が望む働き方は、立場やその時々によってさまざまだ。 「正社員だから」「派遣社員だから」と差別されることなく、いつでも誰でも働き方が選べる。雇用格差が広がる中、そんな社会を望む声はますます高まっている。
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