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格下げに対する市場の反応は、ギリシャ危機の拡大阻止に向けたEUの数カ月に及ぶ厳しい戦いがほぼ失敗したことを示唆している。 http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/745.html
株式日記と経済展望 2010年4月29日 木曜日 ◆市場はギリシャ危機拡大を懸念−ポルトガルへの飛び火を受け 4月28日 ウォールストリートジャーナル 欧州の祈りもむなしく、ギリシャ債務危機がポルトガルに飛び火し、世界の主要市場で株価が下落した。欧州連合(EU)に共通通貨ユーロを守る能力があるかどうかが試されている。 スタンダード&プアーズ(S&P)はポルトガルとギリシャの格付けを引き下げた。ギリシャ国債はユーロ圏で初となる投機的水準となった。これを受け、ユーロの対ドル相場は1年ぶりの安値まで下落している。この動きは、既に惨たんたる状態にあったギリシャの財政状況を悪化させ、回復を阻害しそうだ。格下げの報を受け、両国国債の利回りは急上昇している。 27日のダウ平均は213.04ドル(1.9%)安の1万991.99ドルと、2月4日以来最大の下げ幅を記録した。欧州主要企業600社で構成されるStoxx欧州600指数は3.1%の下落。ドイツ国債(10年物)の利回りは2.99%と、1年以上ぶりに3%を割り込んだ。米国債の利回りも低下している。 格下げに対する市場の反応は、ギリシャ危機の拡大阻止に向けたEUの数カ月に及ぶ厳しい戦いがほぼ失敗したことを示唆している。ポルトガルは財政赤字や公的債務の水準がギリシャほどひどくないが、停滞する経済はユーロ圏で最弱の部類に入るとみられている。格下げで、ポルトガルがギリシャと同じ道をたどるとの懸念が高まった。 ギリシャの混乱は、債務に対する懸念が高まるなかで昨年12月に発表された同様の格下げが引き金となった。 ニューヨークのJPモルガン・プライベート・バンクのストラテジストは「投資家は、欧州で想像もできない事態が起こるリスクについてますます考えるようになった」と述べた。「懸念されるのは伝染だ」という。 その伝染が現実味を帯びてきたことから、EUの政策担当者はスペインなど両国より大きな経済に危機が拡大するとの見方に対峙(たいじ)している。ギリシャやポルトガルは小国で、ユーロ経済に占める比率もわずかだ。そのため、エコノミストの大半は、必要とあればEUが救済できると考えている。しかし、人口4600万人、ユーロ圏4位の経済規模を持つスペインとなると話は別だ。 住宅バブル後の急速な景気後退局面からの脱却を目指すスペインの財政赤字は国内総生産(GDP)比11.2%。これに対し、ポルトガルは9.4%、ギリシャは13.6%だ(2009年)。 過去の債務危機と同様、今回の危機も悪循環で拡大した。欧州が断固とした措置に出られないため、ギリシャ国債が売られ、同国の資金調達コストが高くなり、一段の格下げを招いた。 27日に格下げが報じられたとき、投資家は既に、EUと国際通貨基金(IMF)による450億ユーロの救済策がドイツ政府の内輪もめで遅れかねないとみていらだっていた。 欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁とIMFのストラスカーン専務理事は28日にベルリンでドイツの議員と会談し、EU救済策での迅速な行動を促すとみられる。市場がますます混乱するなかでのこの往復外交で、当局が強調していた救済策に対するEU全体のコンセンサスが足りなかったことが露呈した。 ギリシャ国債の利回りは過去最高水準に上昇し、売りはポルトガル、イタリア、スペインの国債にも飛び火した。アイルランドの財政再建策は、最近ではギリシャがまねるべき例に挙げられているが、そのアイルランドの国債すら売られた。(後略) ◆「ソブリン」の憂鬱 4月28日 厭債害債 ソブリンとは債券の世界では各国国債(あるいは政府が完全にコントロールしている関係機関を含む場合もある)のことです。 これまで、国債は一般事業債などに比べて安全だとされてきました。その最大の理由は国債の元利払いは国庫収入を原資に行われるのですが、国庫収入は国家が取る税金が主なものである以上、支払いに不足する事態になれば「増税」などによって対応が可能だというものです。また、中央銀行への政府の関与が強い国であれば紙幣を増刷して名目価値を支払うことも可能です(これやったら大変なことになりますが)。いずれにしても債務が「自国通貨建て」である限りにおいてその通貨の発行権限を独占しなおかつ税法を含む法律を定めることができる国家の決定機関がある以上、「自国通貨建ての国債」の支払い不能というのはほぼ回避できるという考えです。もちろん通貨増発などで対処する場合は為替の暴落(そして悪性インフレ)などを覚悟しなければなりませんが、その問題を無視すれば、形式的に支払い不能は避けられます。 しかしながら、国債が「外貨建て」であった場合、外貨は自分たちで印刷できないので誰かから貸してもらうか自分で貯めるかしなければなりません。経常黒字がたんまりたまっている中国のような国はそもそも外貨建てで借りる必要もない(まあ国が通貨投機でもやるのなら別ですが)うえ、借りたとしてもたんまりある外貨準備によって支払い能力があることは明白ですが、経常赤字国では慢性的に外貨が不足するので、常に誰かから借り入れを続ける必要があります。これが借り入れられないときは「支払い不能」ということになります。 ギリシャの問題は、ギリシャにとってユーロという通貨が「自国通貨」としての面と「外貨」としての面を両方持っていた上に、その両方の「いいとこ取り」をしてしまったツケが回っているのだと思います。これはまさにユーロがもつ問題点を言い方を変えただけなのですが。 「自国通貨」としての側面はそれが強制通用力を持って国内で通用し、内外への支払い手段として認知されているということです。この面では取引や調達は為替リスクなしで行えるという意味で、非常に都合のよいものでした。しかし一方「外貨」としての側面は、自分たちの力だけでは通貨が発行できないということです。通貨発行権限は欧州中央銀行に委譲されており、ギリシャ単独の意思でユーロの増発を行って債務の返済に充てることは不可能です。通貨単位で表示される債務の返済のためには自分で発行できない以上誰かからユーロを調達しなければなりません。では「増税」でまかなえないか?ここでもユーロというか欧州共同体の仕組みが邪魔をします。共同体内では資金も人も原則的に自由に移動できるのです。税金という面ではギリシャは日本の地方自治体のひとつのようなものに過ぎず、高い税金がいやならさっさと他国へ移住して(あるいはビジネスを移して)しまうことができる。そしてそもそも共同体の思想から税金には一定の枠がはめられ、むちゃくちゃな増税もできません。 こういう点では、日本にしてもアメリカにしても、さらにはイギリスにしても債務はほとんど自国通貨建てであり、いくら債務残高や比率が大きくてもギリシャやユーロ圏とは根本的に問題の所在が異なるということでしょう。(後略)
日本から見ればギリシャ程度の小さな国を救済するのになんでそんなに揉めているのか不思議なのですが、日本はとなりに韓国という問題国家があり97年のアジア金融危機の時や二年前の外貨危機のときも救済の手を打っている。ドイツがギリシャ救済に後ろ向きなのは救済してもプライドから感謝されず、救済しなくても切り捨てられたと非難されるからだ。 「株式日記」ではもっとドイツが度量を持って救済したらと書きましたが、ドイツが救済を渋るのは危機がギリシャだけではなく次はポルトガルに飛び火しようとしているからだろう。ポルトガル以外にもスペインやイタリアなど南欧や東欧にまで広がったらドイツ自身も危なくなる。 ユーロという通貨統合は上手く行っている時はPIGS諸国はユーロという信用のある通貨で低い金利でいくらでも資金を調達する事ができた。ヨーロッパのいわば新興国であり社会基盤整備が遅れていたからだ。世界の新興国でもドルという信用のある基軸通貨で資金を調達できるから高度成長が続いていますが、いった景気が不況になるとアイスランドやドバイなど新興国バブルが破裂し始めた。 ソブリンリスクがスペインにまで飛び火すればユーロの将来はないように、ドルもアメリカや新興国にソブリン危機が続発するようになればアメリカ一国ではどうにもならずドルの基軸通貨体制も崩れるだろう。厭債害債で書かれているようにアメリカは自国通貨で資金調達しているから返済には困らない。しかし新興国はドルで調達しているから自国通貨では返済が出来ない。 韓国などもドルで借りまくって大胆な投資で急成長していますが、いったん危機が起きれば返済用のドルをアメリカや日本から借りて危機をしのいできた。ドルは日本と同じようにゼロ金利状態で資金調達はしやすくなっています。だから新興国も何とか持っているのですが、アメリカの金利が上がり始めれば新興国の返済金利が増えて新興国危機が本格化するだろう。 ユーロにおけるPIGS危機は、ドルにおける新興国危機とダブルだろう。今までもメキシコやアルゼンチンやロシアなどソブリン危機がありましたがIMFなどの機関を通じて救済してきましたが、将来起きる新興国危機は世界にばら撒かれたドルが回収できない危機につながる。 もし中国が経済危機が来ればドバイショックの数十倍の規模で波乱が起きるだろう。中国は2兆ドルの外貨を持っていますが、中国企業が外国からどれくらい借り入れを行なっているかが見えない。2兆ドルの外貨も投機的な外貨も含まれており、人民元が引き上げられれば新たな投資先を求めて出て行くだろう。だから新興国危機の本命は中国なのだ。 しかし中国経済が破裂すればアメリカや日本なども大きな痛手を負って危機に巻き込まれるだろう。中国が世界中から集めた投資資金が返せなくなったら規模としては想像ができない。日本からもかなりの額が投資されていますが多くがドルによるものだ。中国が人民元で借りていれば問題はないが為替が自由化されていないからドルで調達せざるを得ない。 アメリカと中国はドルと言うマネーで抱き合い心中状態なのですが、日本も米中とは深い関係だから中国バブルの崩壊やアメリカのドル暴落が起きれば巻き添えになる事は避けられない。だからユーロで持っていたほうがいいと書いてきたのですが、そのユーロが先に危機的状況になりつつある。結局は円が一番信用がある通貨として認められるようになるのではないかと思う。 通貨の価値とは結局のところ経済力の事であり労働力の質と技術力が裏打ちになる。だから日本の円やアメリカのドルが高く評価されているのですが、ユーロは南欧や東欧のように労働力の質や技術力で劣る地域があり、それが今回の危機につながっている。最悪の場合ドイツはユーロを離脱してドイツマルクに戻るかもしれない。この事は「株式日記」にも書きました。 あるいはドイツやオーストリアや北欧と一緒になって新ユーロを作るかもしれない。経済力と差がある国との共通通貨体制は問題があるのだろう。戦前において日本は朝鮮と台湾を併合して円を流通させましたが、本土の負担ばかりで経済が疲弊してしまった。戦後の日本が高度成長できたのは朝鮮や台湾の負担がなくなったからであり、現在においても通貨価値には差が大きい。 現在も韓国や台湾を日本が抱えていたらドイツとギリシャのような関係になっていただろう。だから東アジア共同体もEUのような訳には行かない。日中韓の間でも無理だろう。だから東アジア共同体とは出来たとしても緩やかな政治共同体程度だろう。 最近の新興国の経済発展はめざましいものですが、ドルという世界通貨が自国の通貨のように調達できるからであり、いったんアメリカ自身の経済がおかしくなればドルという通貨の金利が急上昇する危険性がある。そうなれば多くの新興国が破綻するだろう。ユーロ建てのギリシャ国債の金利が急上昇していますが、ギリシャ国債がサブプライム化して世界に波及しようとしている。
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