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新興国:経営革新の新たな担い手 =「フルーガル(倹約)イノベーション」が世界の産業を根底から変える?(英エコノミスト誌) http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/690.html
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3280?page=3 新興諸国は今、コスト競争に加え、創造性の面でも競うようになった。それが世界中の企業に変革をもたらすだろう。 から30年前、米国の自動車業界の経営者たちは、日本が米国を追い越して世界最大の自動車生産国になったことを知って衝撃を受けた。 彼らは一体何が起きているのかを理解しようと日本を訪れ、より一層の衝撃を受けることになった。日本の成功の秘訣が低賃金労働や補助金(彼らが好んで用いていた日本の強みの説明)ではなく、「リーン生産方式」という呼称でにわかに知られるようになったものにあることが分かったからだ。 デトロイトが眠っている間に、日本は低賃金経済から脱却し、経営革新の孵卵器に生まれ変わっていた。間もなく世界中の工場は軒並みリーンになり、そうしなかった工場は廃墟と化した。 企業経営の権威は、軽々しく革命を宣言するのが常だ。だが、日本で起きたことは、1世紀前の米国における大量生産の出現と同様、革命と呼ぶにふさわしいものだった。そして今、これに比肩する事態が発展途上国で起きている。 世界経済の重心が新興市場へ移行していること自体は、もはや旧聞に属する。携帯電話を買えば、それはほぼ間違いなく中国製だろう。その携帯で顧客サポートに電話をすれば、かなりの確率でインド人が応対する。過去5年間の年間成長率を見ると、中国は10%以上、インドは8%以上となっている。 だが、こうした数字が示す以上に、実際に起きている変化は大きい。新興諸国はもはや、安価な労働と低コストの知的作業の提供源としての地位に安住していない。各国は自らもまたイノベーションの孵卵器となり、通信から自動車生産、医療に至るまで、様々な業種でブレークスルーを遂げている。 新興諸国は製品を根本的に設計し直し、コストを10%ではなく最大90%も削減する。さらに、西側諸国のライバルよりも、うまく、かつスピーディーに作業をこなせるよう、ビジネスプロセスを丸ごと再設計している。「世界のフラット化」など、もう忘れていい。ビジネスの世界は完全に逆さまになりつつあるのだ。 【将来に向けた競争】 本誌(英エコノミスト)の特集が論じているように、先進諸国は、産業を塗り替えるような飛躍的な発想という面で指導力を失っている。 その背景には、先進諸国の企業が新興国市場での研究開発を増やしているという事情もある。「フォーチュン500」企業は今や、中国に98カ所、インドに63カ所の研究開発拠点を抱えている。IBMが雇用する従業員数は、米国内より発展途上諸国の方が多い。 だが、もう1つの理由としては、新興国市場の企業と消費者が揃って高付加価値市場にシフトしていることも挙げられる。中国の通信大手、華為(ファーウェイ)は2008年、世界中のどの企業よりも多くの国際特許を申請した。中国の20代の若者は、米国の同世代よりもインターネットを使っている時間が長い。 さらに驚くべきは、新興諸国が、既存製品を劇的に安いコストで製造する能力を高めていることだ。余計な装備を省いた3000ドルの車や300ドルのノートパソコンは、新しい「iPad(アイパッド)」ほど刺激的には見えないかもしれないが、確実に、はるかに大勢の人の生活を一変させる。 この種の進歩――「フルーガル(倹約)イノベーション」と呼ぶ人もいる――は、低賃金労働の搾取という簡単な話ではない(低賃金労働が助けになることは確かだが)。肝心なのは、製品と工程を再設計して不必要なコストを徹底的にカットすることだ。 タタ・モーターズの「ナノ」はコスト削減の工夫を組み合わせて世界最安値を実現した〔AFPBB News〕 インドのタタ・モーターズは、コスト削減の工夫を数多く組み合わせて、世界で最も安い自動車「ナノ」を作った。 やはりインドの携帯電話サービス企業、バルティ・エアテルは、競合各社およびサプライヤーとの関係を抜本的に再考し、サービス提供コストを切り下げた。同社はライバル各社と無線基地局を共有し、ネットワーク構築、運用、サポートといった業務をエリクソンやIBMのような専門企業に外注しているのだ。 ヘンリー・フォードやトヨタが他産業の変革にも一役買ったのと同じように、発展途上国の起業家は今、分業と規模の経済という古典的な原則を、心臓手術や白内障手術といった驚くべき分野にまで適用し、質を犠牲にせずコストを下げている。 彼らは携帯電話のような新技術を使い、医療から金融に至る広範な分野において、洗練されたサービスを農村部にまで提供している。さらに、技術的な革新とビジネスモデルの革新を結びつけて全く新しい種類のサービスを生み出している。例えばケニアは、携帯電話による送金サービスで世界をリードしている。 【希望と不安】 こうした状況はすべて、BRICsをはじめとする発展途上国で暮らす数十億の人にとって明らかに朗報だ。かつてはエリートしか使えなかった商品とサービスを、より多くの消費者が利用できるようになる。 世論調査によると、インド人と中国人の90%以上が将来を楽観している。インドの財界人、アナンド・マヒンドラ氏は、自身が将来について思い描く夢を「単に華やかなだけでなく、非常に力強いもの」と表現した。 では、低成長の先進諸国の将来はどうだろうか。新興諸国の企業は今、日本勢が30年前に西側を猛追した時よりも数多くの分野で、より急速に勢力を拡大し、西側のライバル企業を買収している。新興国企業の猛攻は西側の大手企業を動揺させるだろう。各社は一段と厳しさを増す価格競争にさらされるからだ。 また、先進諸国の競争優位に関する前提の多くも覆されるだろう。グローバル化を声高に訴える向きは、最先端のイノベーションは先進諸国が維持し、知的労働は西側諸国にとどまると説いて、西側から製造業の雇用が失われることを正当化してきた。 ところが今、新興諸国はただ単に、イノベーションで優位に立つ先進国の地位に挑戦しているだけではない。彼らが解き放つ低コストで破壊的な革新の波は、先進諸国へと広がるにつれ、多くの産業を根幹から揺るがすことになる。あらゆる業界の経営者たちが、保護を求めて叫ぶだろう。 破壊的なイノベーションが常にそうであるように、こうした変化は現在優位にある者を苦しめる。だが、より安い商品とサービスは、今後長く所得の低成長に苦しむ可能性の高い西側の消費者にとって恩恵になるはずだ。また、ベビーブーム世代が引退し始める前から財政赤字に悩んでいる先進諸国の政府にとっても、朗報になるかもしれない。
フルーガルイノベーションが、米国の医療制度(既にGDPの17%を費やしている)が経済の残りの部分を窮地に陥れるのを阻止できる可能性だって十分ある。規模の経済と範囲の経済を新たなやり方で適用する巧妙な手法があれば、公共部門の生産性を押し上げるかもしれない。 さらに言えば、イノベーションの本質は、革新が革新を呼ぶところにある。新興諸国で起きている革新は、先進諸国の革新を傷つけるよりも、むしろ推し進めるものになるはずだ。 かつて日本が米国から大量生産の手法を学んだように、その後、西側の自動車メーカーは日本のライバルからリーン生産方式という手法を学んだ。そうした先例と同じように、現在の新興諸国の大いなる反攻は、世界中を豊かにしてくれるはずだ。
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