投稿者 上葉 日時 2010 年 4 月 01 日 10:37:12: CclMy.VRtIjPk
「ダメな理由」なら私も100個ぐらい言える:日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100119/212300/
「ダメな理由」なら私も100個ぐらい言える
【ゲスト講師】大塚耕平・内閣府副大臣(3)大上 二三雄、瀬川 明秀(日経ビジネスオンライン副編集長) 【プロフィール】
日本がいま「課題先進国」として、様々な問題を抱えていることは共通認識としてあろう。だが、その上で“次なる日本の成長”はどんなものになるのか。読者の方々も独自の成長イメージを抱いているはず。皆様が考えていること疑問に思っていることを、一度、政府の方々と一緒に突き合わせて話してみてはどうか、というのがこの連載の趣旨。 ゲストとして現職の内閣府副大臣、大塚耕平氏が参加。NBOで「戦略立案のプロ」などのコラムを書いていただいた大上二三雄氏には“まとめ役”をお願いした。読者からの意見で連載の内容が決まってくる“先が読めない”コラムです。【以下余談ながら】屋上会議室でのコメントありがとうございます!どれも読み応えがあるものばかりで勉強になっています。今回から議論がし易いように「テーマごと分室」をつくりました。一度覗いてみてください。この連載是非、1回目から通してお読み下さい。 (編集部 瀬川) |
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(1回目から読む)
(2回目から読む)
大上 今はむしろミニシステムをつくって実験をしつつ、それをどう機能して発展させていくかを求めていく方向にあると思うんですよ。これも横山さんの受け売りに近いですが、社会システムの中で悪循環をもたらす阻害要因を地道に克服し、良循環をつくっていくんです。
僕は先週末ニセコに行ってきたんですけど、あそこはすごくいい街になっているんですよね。ニセコユナイテッドというビジョンの下に、山も全部一緒にしているし、みんな関係各員が協力し合っていろいろなことを決めているんですね。
そういう中で、オーストラリア人が非常に多く入ってきていて、街並みがオーストラリア的な部分が相当あるんです。そこに最近中国人が入ってきて、今は中国的なものが入ってきているんですね。それがいい形で、日本、西欧、それから中国というものがきれいにマリアージュしているんです。
象徴的なのが、一番メインの交差点が、積丹のすし屋と、それからオーストラリアのよくリゾートなんかにある、レストランがあってショッピングができるようなコンプレックスがあるのと、あとは一番人気の居酒屋があって、もう1個の角はまだちょっと変なものが建っているんだけど、たぶんそこにそのうち中国的なものができるんじゃないかと思っているんだけど。
NBO 面白いですね。
大上 ニセコは観光ですが、それ以外の分野でもああいう風景が成り立つミニシステムをいろいろなところに、日本の中に生み出していくことができるような、それを引っ張り支えて行く人が一定数いれば、日本も大丈夫だと思うんですよ。
大塚 そうですよね。
大上 成長軌道に上がっていくと。
有識者の会議はこれからの出来事の「参考」にはなりません
大塚 でも、それは最初の方で述べたプレーヤーの話にかかわってくるんですけれども、やっぱり、数万人ないし10万人ぐらいはいないと…
大上 やっぱりある程度数がいないとだめですね。
大塚 そうです。例えば、銀行を例にあげれば、産業や企業を育てることのできる「目利き」力のある真のバンカーが必要です。日本の銀行員全部がスーパーバンカーである必要はないけれども、その10万人のうち、2〜3万人はバンカーの中から出てきて、コーディネーターやプランナーの役割を果たしてほしい。あとの数万人はまた別の……
大上 組織の中で2〜3人だとやっぱりだめなんですよ。サムスンが何でこんなに成長しているか。サムスンに初め経営企画という概念を導入して、経営企画にトップエリートを入れた。李健煕が世界から活躍する韓国人をスカウトしてきた。高い年収で。でも全然機能しなかった、最初はだめだったんですよ。李健煕が彼らに聞いたら、いや、もう多勢に無勢で、周りの人たちに飲み込まれちゃって自分のやりたいことができない、と。 李健煕は、「じゃあ分かった」と言って、この経営企画の部隊をそれこそ全取っ換えして、マジョリティーをMBA出身の人にした。それからサムスンの躍進は始まったんです。
今、日本でも各企業に何人かいるんです。目覚めた人たちが。外務省でもいろいろなところでもいると思うんですけれども。でもその人たちが少数派である限り、多勢に無勢で飲み込まれ、なかなか表に出てこないんですよ。
大塚 必ずしもマジョリティーになる必要はないんですけれども、その少数派が孤立していてはだめなんですね。
大上 そうそう。
大塚 相互連関が始まるとシナジー効果ができて、まさしくダイナミズムが出てくるわけです。明治時代も、結構プレーヤーたちの横のつながりがあったんですよね、いろいろ話をひもといてみると。今もそうですよ。90年代の閉塞状況に比べたら、今の方が少しずつ、人のつながりも含めたダイナミズムの動きが出てきていますよ。
大上 船が沈み始めると騒ぎ始める・・・。
大塚 そういう感じですね(笑)。
大上 だんだん横につながる動きが出てきているかもしれないですね。
大塚 たとえば、政治家の供給ルートも90年代の中ごろまでは、55年体制下で確立された供給ルートがほぼ100%を占めていました。しかし、90年代後半頃から、役所を若くして辞めてくる人とか、僕たちみたいに金融界から転身する人も出てきた。僕が銀行に入った頃には、銀行員が政治家になるというのは、2世、3世ならいざ知らず、普通ではあり得なかった話ですからね。
今日話している内容的に申し上げれば、危機感というものをみんな感じている。まさしく船が沈没し始めるとネズミが騒ぎだすかのごとく、共有されつつある局面だと思います。
NBO “ネズミが騒ぎ出すがごとく”・・・
大塚 そういう意味ではプラス要素が出てきましたが、危機感を共有し、変化を実現していく過程でいくつか乗り越えなければいけない障害、固定化した観念のようなものがある。
それは今まで出てきた話で言えば、例えば、アジアに対する意識です。「アジアの中の一員」なんて外交辞令みたいに言っているうちはだめですね。日本は地政学的にアジアであることは間違いないわけだし、50年前と違ってお隣の中国は経済的に無視できない国に成長したわけですから。アジアに対して欧米と日本が働き掛ける、日本は欧米の一部だというような固定観念はやっぱり乗り越えなきゃいけない。
それから、外交=安全保障だという固定観念も乗り越えなきゃいけない。それから、「成長戦略」は政府が作るものだという依存的な意識も乗り越えなきゃいけない。 それから、少し話は違いますが、金融界でいうと「レンダーは誰でもできるけれど、バンカーは誰でもできることじゃない」という発想に立って、本当の意味でのバンカーを育て上げるとか、金融の分野だけに限って言うとそういう課題もありますね。
いずれにしても、今はじわじわと動き始めている局面なんです。僕は決して悲観はしていない。さっき言ったように、過去の成功体験や固定観念に拘泥して、高度成長期を体験した元官僚が有識者会議に登場し、上から目線でアジアを語るような状況は、ちょっと言葉はきついかもしれませんが「百害あって一利なし」とも言えます。
NBO そうでしょうね。
大上 多様性の中での悪い方のサンプルですね(笑)。
大塚 日本人ってどうしても穏便にことを済ませようとする傾向が強いので、そういう人たちにも失礼のない対応に徹し、結局そうやって根拠の希薄な自己主張を乱暴に一方的に言う人たちにも過分の配慮をしてしまう。しかし、本来はやっぱりディベートすべきことはディベートしなければいけない。役所の先輩が天下り先の幹部になって有識者として会合に出席すると、そういう人たちの発言に妙に迎合したり、遠慮をしているような役所に未来はないし、日本は託せない。
大上 そういうものトレーニングを、皆で根底からやっていくことが必要です。だから民主党の中で今大塚さんがそういうことを、成長戦略を率直に評価していただいたのは僕にとっては驚きでもあるし、逆にすごく評価することだと思う。そういうことがどんどんディベートされてもまれていくというふうになるのであればすごく期待できると思いますし、そういうのを大塚さん自身ももう一歩踏み込んで、そういう人はちょっと。
やんわりとじゃなくて、もうちょっとがつんといくぐらいの感じでやってもいいんじゃないですか。
大塚 まあ、ぼちぼちと。ただ、亀井さんがいらっしゃるので(笑)。
「批判だけなら結構です。提案をしていきましょう」
NBO そういえば・・・金融庁では第2記者会見も始まりましたね。
大塚 これも、これまでと同じことをやっていたらダメなので改革に取り組んでいるひとつです。それを明確に意識してやっています。記者クラブの何が問題かとかと言えば、つまり「限界に直面して立ち尽くしている霞が関」からの情報を垂れ流すわけでしょう。そうすると、それをそのまま記事にする記者クラブの情報を読まされる国民は明るい気持ちにはなれないわけですよ。
記者クラブだけでなく、業界団体も同じです。郵政改革で金融界の幹部の皆さんに申し上げているのは、「民業圧迫という批判を聞かせていただくためであれば、もう来ていただかなくて結構です」ということです(笑)。その主張は、私自身も十二分に分かっていますから。もっと創造的な議論がしたい。例えば、「そんなに郵政事業の民業圧迫が懸念されるなら、郵政事業を止めて300兆円を放出したら、既存の金融界の皆さんはその300兆円を受け入れていただける用意はありますか」と聞くと絶句する。 「ではどうしたいんですか」と聞くと答えない。思考停止状態です(笑)。 さらに、仮に受け入れたら何に運用しますかと聞いても名案はなかなかない。それから金融過疎地については、政府としては金融アクセス権を国民に保障する責務を負っているので、「郵政事業を止めた場合には、他の金融機関が代わりにやってくれますか」と聞くと、みんな押し黙っちゃうわけですよ。 「限界に直面して立ち尽くしている」のは、霞ヶ関やマスコミだけでなく、経済界も同じように感じられます。
NBO なるほど
大塚 だから、「民業圧迫だということも十分理解しているから、今回皆さんに期待したいオピニオンは、郵政事業をどのように改革したらシナジー効果が出るか、あるいは地域経済、日本経済のためになるか、そういうクリエイティブな意見をぜひ聞かせてほしい」と言って、今、問題提起しているわけですよ。
NBO 読者に対してもそうですかね。シナジー効果が求められるような意見なら、聞くよと。
大塚 そういうことなんです。日本を取り巻く環境が激変している中で、20年前、30年前に聞いたような定番の主張やミニマムサイズの陳情が行われている現状こそが、日本の危機を象徴しています。クリエイティブな意見や指摘は是非拝聴したいですが、批判するだけだったら退場です(笑)。
金融庁に着任して、偉そうに訓示させていただく機会がありました。その内容は全部公開してあるんですけれど、その時に彼らに最初にお願いしたことがある。
要するに、「これからいろいろな難しい政策課題を提示するかもしれないけれど、できない理由なら聞きたくない」と申し上げた。
霞が関だけでなく、日本人全体がそうですけれど、「できない理由」を主張する天才ですからね。とりわけ霞が関と大企業はそのマイスターです(笑)。
、
だから私が金融庁の皆さんにお願いをしたのは、「できない理由」を考えるのではなく、「どうやったらできるようになるか」という工夫やアイデアを聞かせてほしいということです。だから、例の円滑化法案でも、金融界や経済界に不満な点はあるかもしれないけれど、「どうやったらできるようになるかを考えよう」と問題提起しました。「亀井さんがずいぶん高めのビーンボールを投げているのは百も承知だ」という前提で・・・(笑)。
「できない理由」なら皆さんに聞かなくても、僕が「無理な理由なら100個ぐらい言ってあげるから、そんなことは聞きたくない」と申し上げたんです(笑)。
どうやったらこの政治的ミッションに対して応え得るのか、その工夫を聞きたいというコミュニケーションを始めたら、結構、アイデアが出てくるんですよ。
だから成長戦略でも、結局、日本を担う40代、30代、あるいは20代の皆さんから「こんなことをやったら大変だ」とか、「こんなことを考えている政府はバカだ」みたいな批判だけなら、「そんなことは百も承知」なんですよ(笑)。だったら「どうすればいいのか」ということです。
「明治を動かした10万人」がいまいれば・・・
そのスピリットが定着したら、僕は日本がずいぶん変わってくると思います。記者クラブも同様です。ネガティブインフォメーションだけを垂れ流す記者クラブであれば「百害あって一利なし」。必要ありません。でも、記者クラブの改革も僕1人ではできないですよ。亀井さんがいるからできるんです。あの人はそういう意味では、アニマルスピリッツがあるんですよ(笑)。
大上 バルカン政治家ですよ。
大塚 いやいや(笑)・・・そうだと思います。今日は主に成長戦略の大枠の話をいっぱい申し上げていますけど、その大枠が共有できれば、次にはディテイルの検討に入っていったときに、すごく良い議論がいっぱいできると思いますよ。
大上 世間には、そういう機能不全の組織がいっぱいあります。でも一人一人、それこそ『坂の上の雲』じゃないけど、10万人ぐらいいて動いていくようになれば、確かに成長するんだと思うんですよ。
大塚 そうですよ。全然、悲観したり、卑下する必要はないです。根拠のない自信を持つことはよくないですが、もうちょっと自信を持っていいと思いますね、日本は・・・。
NBO 10万人とおっしゃっていたのは、具体的な大塚さん計算した数ではなく、司馬遼太郎さんの言っていた“明治時代の10万人”の意味ですよね。
大塚 はい。
大上 この話では、司馬遼太郎では『坂の上の雲』もいいですが結構長いので、時間のない人には『「明治」という国家』が参考になります。
大塚 たぶん「明治」という時代は、ひとつの元号ということ以上の言葉の意味を持ってしまっているんですよね。「明治」という時代の日本は、さっき申し上げたように、近代化するために欧米のいいものは取り入れていくというコモンビジョンが暗黙のうちに10万人に共有され、彼らは教えられなくても社会を引っ張っていった。
大上 スローガンがはっきりしていた。和魂洋才とか、富国強兵とか。
大塚 そう。だからその成長戦略は、別に政府が方針を出さなくても、一定の方向に向かって慣性を持って動いていたわけですよね。「21世紀日本はかくあるべし」というコモンビジョンが共有できれば、たぶん成長のためのシードはいっぱいありますよ。
(次回につづく)
著者プロフィール大上 二三雄(おおうえ・ふみお)
エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役
1981年東京大学工学部卒業、アクセンチュア入社。92年9月統括パートナー就任。ハイテク、保険・金融、情報サービス産業などの分野において、経営戦略、企業変革コンサルティング、アウトソーシング、ベンチャー投資および戦略的提携等に従事。2003年10月エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社を創業、代表取締役として、コンサルティングや事業開発、人材育成に取り組む。また、2005年東京大学総長室アドバイザー就任。現在、東京大学EMP(エクゼクティブ・マネジメント・プログラム)アドバイザーとして、プログラム推進の一翼を担っている。他、ISL(Institute for Strategic Leadership)の経営者ゼミ・ファカルティ、九州アジア経営塾碧樹館プログラム・アドバイザー、立命館大学経営大学院客員教授を務める。
主な著書に、『戦略アウトソージング』、『人材マネジメント革命』、『ハーバード・ポケットブック・シリーズ』(エム・アイ・コンサルティンググループ(株)監修)など。福岡県北九州市出身。
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