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日銀総裁発言要旨:インフレターゲットは「意味のある論点ではない」(ブルームバーグ) http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/297.html
日銀総裁発言要旨:インフレターゲットは「意味のある論点ではない」 2月18日 日本銀行の白川方明総裁は18日午後、定例記者会見で、経済・物価情勢について次のように述べた。 ――本日の決定の背景について説明してほしい。 「わが国の景気は、先月と同様、国内民間需要の自律的回復力はなお弱いものの、内外における各種対策の効果などから持ち直していると判断した。内外の在庫調整の進ちょくや海外経済の改善、とりわけ新興国経済が引き続き力強い回復を見せていることを背景に、輸出や生産は増加を続けている」 「設備投資は下げ止まりつつあるが、設備過剰感が強いため、当面は横ばい圏内にとどまる可能性が高いと見ている。個人消費は各種対策の効果などから耐久消費財を中心に持ち直しているが、個人消費を支える雇用・所得環境は引き続き厳しい状況が続いている。公共投資は頭打ちとなっている」 「この間、金融環境をみると、厳しさを残しつつも、昨年春以降改善の動きが続いている。企業の資金調達コストの低下傾向が続いているほか、企業の資金繰りも中小企業を中心に厳しいとする先がなお多いものの、改善の動きが続いている。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、経済全体の需給緩和から下落が続いているが、石油製品価格の動きなどを反映し、下落幅は縮小している」 「先行きの見通しについても、先月の判断から変わっていない。2010年度半ばごろまでは、米欧におけるバランスシート調整や国内での雇用、賃金面での調整圧力の残存などから、わが国経済の持ち直しのペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。その後は、輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及してくるため、成長率は徐々に高まってくると予想される」 「物価面では、中長期的な予想物価上昇率が安定的に推移するとの想定の下、マクロ的な需給バランスが徐々に改善することなどから、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比下落幅は縮小していくと考えられる」 「リスク要因も先月の同様のポイントを指摘した。景気面では、新興国・資源国の経済の強まりを上振れ要因として認識している。一方で、米欧のバランスシート調整の帰すうや企業の中長期的な成長期待の動向など、ひところに比べれば低下したとはいえ、依然として下振れリスクがある」 「また、国際金融市場ではギリシャ問題に表れているように、各国の財政動向とその金融市場への影響が一段と注目されているほか、金融規制、監督をめぐるさまざまな議論の帰すうとその影響への関心も高い状況が続いている」 「物価面では、新興国・資源国の高成長を背景とした資源価格の上昇によって、わが国の物価が上振れる可能性がある一方、中長期的な予想物価上昇率の低下などにより、物価上昇率が下振れるリスクもある」 「日銀は日本経済がデフレから脱却し、物価安定の下での持続的成長経路に復帰することが極めて重要な課題であると認識している。中央銀行としての貢献を粘り強く続けていく方針だ。金融政策運営にあたっては、極めて緩和的な金融環境を維持していく考えだ」 ――デフレ問題についてあらためて考えを教えてほしい。 「やや比喩(ひゆ)的に答えると、デフレは経済の体温が低下した状態だ。より根源な問題がデフレという症状として表れている。従って、その克服のためには、基調的に体温を上げていくための体質改善、あるいは治療が必要だと考えている。生産性の向上に地道に取り組むことによって、すう勢的な成長期待を高めていくことが大事だ」 「将来にわたって所得が増えていくという期待が生まれてきて初めて本格的に支出が増えていく。生産性の向上ということが多分、日本経済が直面している最も大きな問題だ。それ自体がわが国経済にとって不可欠であるとともに、デフレの克服のためにも重要な課題だ。生産性の向上を図るためには、民間企業と政策当局双方の努力が必要だ」 「やや抽象的な言い方になるが、民間企業については、高い成長が見込める新興国の需要を積極的に取り込むとともに、国内では消費者の財、サービス需要を掘り起こし、これに対応した供給体制へと資源配分を見直していくことが必要だ。こうした需要の掘り起こしと資源の再配分によって、経済全体の新陳代謝が高まるとともに、企業の生産性も向上する」 「政策当局については、このように企業の経営努力を後押しするために、企業が現在、熾(し)烈なグローバルな競争環境に置かれていることを踏まえて、さまざまな制度や仕組みを見直すことが需要だ。また、このような経済の大きな変化、調整が生じる過程では、雇用をはじめとしてさまざまな資源の移動が避け難い」 「この間に生じる摩擦を最小限に抑えて、資源の移動を円滑に進めるため、社会的なセーフティーネットを整備することも当局の重要な役割だ。本来であれば、日本銀行の役割を最初に申し上げるべきかもしれないが、日銀自身もこの過程でしっかり役割を果たしていきたい。強力な金融緩和を通じて企業や家計の支出行動を金融面から支えるように努めている」 「先行きも極めて緩和的な金融環境を維持していくという明確な方針を打ち出している。12月には3カ月物の固定金利オペを導入し、中長期的な物価安定の明確化を図った。こうした措置の効果も現在、金融市場に浸透しつつある。日銀としてはこうしたことを通じて、中央銀行として最大限の貢献をしていきたい」 ――先日の国会審議でもインフレターゲットが議論になった。あらためて見解を聞かせてほしい。 「われわれが発表しているのは中長期的な物価安定の理解であり、物価安定はどういうものかという一種の定義だ。それについて各政策委員の理解を集めて、その結果は2%以下のプラスの領域であり、1%を中心と考えているということだ。これはあくまでも、中長期的に見た物価安定がどういうものかを明確に示したものだ」 「インフレーションターゲティングは金融政策を運営するときの枠組みの1つであり、英国やカナダ等では定着している。しかし、今回の金融危機を通じて、インフレーションターゲティングという枠組みについても反省機運が今、生まれてきているように思う」 「足元の物価上昇率が目標物価上昇率を下回る状況が長く続く下で、物価の動向だけに過度の関心が集まる結果、物価以外の面で、いわば静かに蓄積しつつあった金融経済の不均衡を見逃し、見過ごし、結果として金融危機発生の一因になったのではないかという問題意識が以前に比べて高まってきているように思う」 「インフレーションターゲティングが不適当だと言っているわけではないが、インフレーションターゲティングを採用してきて、これまで比較的うまく行ったと思われてきた国で、実はインフレーションターゲティングの問題をどう克服するかということが今、彼らの問題意識になってきているように思う」 「私自身はインフレーションターゲティングを議論するよりも、これはどういうラベルを金融政策運営の枠組みに張るかということにあまり多くのエネルギーを割いても生産的ではないなという感じがする。インフレターゲットを採用している国も、それから採用していない国も、結果として金融政策の枠組みは近年、非常に似通ってきているという感じがする。3点だけ申し上げる」 「1点は、物価安定に関して、何らかの数値的な定義や目標を有しているということだ。日銀に即して言うと、中長期的な物価安定の理解だ。2つ目は先行き数年間というかなり長い見通しを公表していることだ。日銀で言うと経済・物価情勢の展望(展望リポート)だ」 「3つ目は、その上で、金融政策運営に当たって、物価動向だけではなくて、中長期的に見た物価や経済、金融の安定をより重視する必要性への認識が高まっていることだ。日銀に即して言うと、2つの柱による点検ということになる」 「インフレーションターゲティングを採用しているかどうかということは現在、金融政策の枠組みを議論する上で、意味のある論点、あるいは切り口ではなくなってきているという印象がある」 「日銀自身は各国のいろいろな経験を見ながら、インフレーションターゲティングを採用している国の中央銀行の良い部分、それからこれを採用していない中央銀行の良い部分をすべてわれなりに咀嚼(そしゃく)して、それを組み込んだ日銀独自の枠組みだと思っている」 「いずれにせよ、この枠組みがいつ、いかなるときも最善だというつもりはない。現在、各国とも自らの金融政策の枠組みをどういうふうにするのが良いのかを議論しており、そういう観点からわれわれも考えていきたいと思っているが、現状ではこの日銀の枠組みが最適だと考えている」 ――ソブリン(財政の持続性)リスクについて見解を示してほしい。 「特に、ここ1、2カ月はこの問題に対する関心が高まっている。もともと日本の財政状況を考えてみると、大幅な財政赤字が続いており、一般政府の債務残高の対GDP比率が国際的に見て極めて高い水準になっていることなど、深刻な状況にある。日本の市場では国債は円滑に消化されており、長期国債金利も低位安定して推移している」 「もっとも、最近では欧州周辺国におけるソブリン問題を契機に欧米先進国や日本を含め、財政の持続可能性に対する関心が世界的に高まっている。金融市場がグローバル化していることを踏まえると、国際金融市場の安定を維持するために、私自身は2つのことが重要だと思っている。第1は、財政再建の道筋を示し、この点について市場の信認を確保すること」 「第2は、中央銀行の金融政策運営が財政ファイナンスを目的としていないこと、言い換えると、物価安定の下での持続的な経済成長を目的として政策運営が行われていることだ。また、そうした中央銀行の政策姿勢を政府が尊重し、市場も信認していることだ。現在、国際金融市場の動きを見るとき、ソブリンリスクについいては、そうした観点から市場は見ている」 ――日銀としては、この問題についてどのように取り組んでいくつもりか。 「日銀の使命は適切な金融政策運営を通じて、日本経済が物価安定の下での持続的な成長経路に復帰するよう努めることだ。そうした経済の姿を実現していくことは、財政再建を進める上でも重要な要件の1つを整えることになる」 「さきほど、中央銀行の金融政策運営が財政ファイナンスを目的とするものではなく、物価安定を通じて持続的成長に貢献していくと申し上げたが、そうした姿勢で臨むこと、そうした中央銀行の政策姿勢が十分信認を得ている、尊重されるということが大事だ」
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