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雇用規制で日本を見限る製造業/池田信夫(上武大学教授) http://www.asyura2.com/10/hasan67/msg/265.html
(回答先: ギリシャはリーマンにならない、国債保有を拡大−ブラックロック 投稿者 gikou89 日時 2010 年 2 月 14 日 04:33:08) http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100212-00000002-voice-pol ◇「ユニクロ亡国論」の誤り◇ 最近、浜矩子氏(同志社大学大学院教授)の「ユニクロ亡国論」がメディアを騒がしている。たとえば彼女は『文藝春秋』1月号の「『ユニクロ型デフレ』で日本は沈む」という対談で、こう語っている。 「安売り競争が過熱すると売上げが減り、利益が減る。すると、企業はコスト削減のために賃金を減らす。給料を減らされた家計はますますモノを買わなくなり、物価はさらに下落する。企業も家計も『自分さえ良ければ』と思って行動していると結果的にはそのようなデフレスパイラルが起こり、自分の首を絞めることになるわけです」 同志社大学では、こんなナンセンスな話を学生に教えているのだろうか。まず「安売り競争が過熱すると売上げが減り、利益が減る」とあるが、彼女の指弾するユニクロ(ファーストリテイリング)の2009年8月期の売り上げは6850億円、営業利益は1086億円と、いずれも最高を記録した。ユニクロは、この10年に雇用を国内だけで1万2000人以上増やした。 したがって浜氏の「企業はコスト削減のために賃金を減らす……」以下はすべて誤りであり、「デフレスパイラル」も起きていない。ユニクロは低価格で大きな利益が出ているのだから、問題があるのはそれより高い価格で利益の出ない同業他社だ。彼らもユニクロと競争してコストを削減し、衣類の価格が下がれば、縮小している日本のアパレル市場も拡大に転じ、新たな雇用が生まれる可能性がある。 そもそもユニクロの価格が他店に比べて下がるのは「相対価格」の低下であって、すべての物価が一律に下がる「デフレ」ではない。良いものを安く売る価格競争は市場経済の原則であり、褒められこそすれ非難されるいわれはない。このような競争を通じて効率的な生産を行なう企業だけが生き残り、消費者は安くて良いものを買えるのである。 政府は「デフレ宣言」を出して日銀に圧力をかけているが、1990年代の後半から進行している物価下落のかなりの部分は、こうした新興国(とくに中国)との競争による相対価格の変化であり、金融政策で止めることはできない。 これは浜氏の信じているような「既存の経済学で説明できない新しい現象」ではなく、「輸入によって国内の雇用が奪われるから関税を上げろ」という保護主義は、アダム・スミスの昔からおなじみだ。かつて米国の製造業が日本からの輸入品に負けたとき、米国政府は日本の「不公正競争」を攻撃してスーパー301条などの強硬手段に訴えたが、保護主義で競争力を維持することはできない。日本たたきの先頭に立ったGM(ゼネラル・モーターズ)の末路は、ご存じのとおりだ。 最近の状況が以前と違うのは、かつて欧米企業の脅威だった日本企業が、今度は新興国の脅威を受ける側に回ったということである。中国の平均賃金は日本の1割程度、生産性を勘案した単位労働コストで考えても、ほぼ半分といわれている。衣類のような労働集約的な商品では、賃金がコストの大部分を占めるので、中国で生産したほうがコストがはるかに低くなる。そこでユニクロのように中国で生産して輸入することによって、国内で生産する衣類より安く生産できるわけだ。 この結果、ユニクロ以外の衣料品店は売れなくなり、日本から雇用が失われる。同様の問題は、欧米でもアウトソーシングをめぐって起きている。インドにコールセンターなどが移動することで先進国の雇用が失われるので、アウトソーシングを禁止すべきだという主張が根強くある。 これは短期的にはそのとおりだが、たとえばデルのコールセンターをアウトソースしてはいけないという規制を行なうと、そういう規制のないエイサーなどのアジア製コンピュータが国際競争で有利になり、デルの売り上げが減って雇用が失われる。長期的には、保護主義によって雇用を守ることはできない。 ◇派遣禁止で若者に犠牲を押しつけるな◇ このように貿易を通じて生産要素(労働や土地など)の価格が均等化される傾向を経済学で「要素価格の均等化」と呼ぶ。実際には生産要素は容易に移動できず、賃金には下方硬直性があるため、そういう現象が顕著に見られるわけではないが、単純労働の賃金を引き下げる圧力がかかりつづけていることは事実だ。 これは冷戦の終結と新興国の世界市場への登場によって起こったグローバル化の必然的な帰結であり、水が高いところから低いところに流れるようなものだ。日本で90年代から続いている賃金の低下や非正社員の増加は、こうしたグローバルな賃金均等化の圧力によるものであり、規制によって止めることはできない。 IMF(国際通貨基金)の調査によれば、ここ20年、グローバル化と技術革新によって先進国の所得格差は拡大しており、とくに単純労働者の賃金は世界的に均等化している。こうした状況で雇用を維持するには、新興国より高い先進国の賃金を世界的な水準まで下げるしかないが、それには労働組合が反対するので、実際には迂遠な方法でやらざるをえない。それが「グローバル化」であり「サービス化」である。 ところが日本企業はこうした流れに背を向け、正社員の賃金と雇用を守って非正社員の増加という形で問題を若者にしわ寄せしてきた。それが批判を受けると、民主党政権は製造業派遣や登録型派遣を禁止して、若者にさらに犠牲を押しつけようとしている。 この規制によって派遣労働者のうち40万人以上が職を失うが、彼らを正社員として雇う企業はほとんどない。大部分は請負やアルバイトや中国人の「研修生」に切り替えられ、最悪の場合は工場が海外に移転するだろう。国内だけを見て正社員の既得権を守る「雇用の鎖国」は、結果的には空洞化を促進して雇用の喪失を招くのだ。 経済のグローバル化は今後も加速する歴史の流れであり、これを保護主義によって止めることは日本を世界から孤立させ、経済をさらに悪化させる。この潮流から自衛する方法は、基本的には二つしかない。 第一は、福祉・医療・流通などのサービス業に労働人口を移動し、新興国との競争から逃げることだ。サービス業の労働生産性は製造業より低いので、製造業から労働者が移動すると賃金が下がることは避けられないが、規制改革によって競争を促進すれば、生産性が上がって賃金も上がる。 第二は、情報通信・金融など、新興国ではできない知識集約的な産業に特化し、新興国を生産基地として使うことだ。これがIBMやアップルを典型とする米国企業が行なった戦略転換だが、日本でこうした転換に成功した企業は少ない。ユニクロは日本企業でこうした戦略転換に成功した数少ない企業であり、それは日本を滅ぼすどころか、日本企業がグローバル化するモデルなのである。 グローバル化の圧力は、「世界の工場」である中国に隣接する日本ではもっとも強いが、それはチャンスでもある。国内の半分以下のコストでつくれる工場がすぐそばにあるのだから、日本企業はユニクロのように製品開発と販売に特化し、製造は中国に委託すればよい。サービス業は必ずしも内需産業ではなく、ユニクロが欧米に出店しているように、新たなグローバル産業になる可能性もある。 また自動車の販売台数で米国を抜いた中国は、市場としてのポテンシャルも大きい。日本は対中赤字に見えるが、香港経由を含めるとまだ黒字で、日本は技術集約的な資本財を輸出して労働集約的な消費財を輸入している。先端技術の分野では日本の技術的優位はまだ大きいので、日中自由貿易協定(FTA)を結んで関税を撤廃すれば輸出が拡大できよう。 必要なのは「ユニクロ型デフレ」などという誤った被害者意識をあおって雇用規制を強化することではなく、雇用を流動化してグローバル化に対応した産業構造への転換を促進することである。それによって日本企業の収益が上がれば雇用も増える。雇用を増やすには、経済を拡大するしかないのである。
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