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【コラム】さあ、ゴールドマン狩りの季節がやってきた−D・ライリー 1月22日
(ブルームバーグ):
ウサギ狩りの季節?それともカモ撃ち?
いえいえ、「銀行を撃て」の季節です。
マサチューセッツ州上院補欠選挙での敗北を受け、オバマ米大統領と議会民主党は大衆の怒りを静め今年の中間選挙に向け成果を示す手段として、銀行を標的に据えるだろう。
オバマ大統領が突然、ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長が支持するグラス・スティーガル法的な銀行業とトレーディング分離のアイデアに乗り気になったのは、不思議でもなんでもない。
オバマ大統領の提案はこれから法制化されていく中で希薄化される可能性が十分あるが、それでも、銀行に対する政権の姿勢の大転換を示すものだ。ホワイトハウスと議会民主党がついに、大き過ぎてつぶせない問題と未来のウォール街のあり方について、勇気を出して本気で取り組む可能性すらある。
JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、シティグループ、モルガン・スタンレーなど「大き過ぎてつぶせないクラブ」の面々の頭の上に、クエスチョンマークがともった。各社は一部事業の分離や再編を考えなければならないかもしれない。メリルリンチとベアー・スターンズが第二の命を与えられ生き返ることすらあり得る。
中でも最大のリスクに見舞われるのが、ゴールドマン・サックス・グループだ。同社はあまりにも大きな的なので、弾が当たることを覚悟して緊急対策を作り始めた方がいい。
最高益
オバマ大統領が提案を発表したちょうどその日にゴールドマンが通期の過去最高益を発表していた事実は、同社をさらにリスクにさらす。発表によれば、同社の2009年純利益は134億ドルと08年度の23億ドルから急増。総収入も452億ドルと前年度から倍増した。
「ボルカー・ルール」の呼び名が付いたオバマ案がゴールドマンにとって脅威であることは、同社の09年10−12月(第4四半期)の トレーディングと自己勘定投資の収入64億ドルが総収入の3分の2だったことからも明らかだ。JPモルガンなども大きなトレーディング部門を持つが、同業務の重要度がゴールドマンほど高い金融機関はほかにない。モルガン・スタンレーですらこの1年は伝統的な銀行とブローカー業務を増やしている。
ゴールドマンは最後の最後に点数を稼ごうと、報酬を収入に対する割合で35%程度まで引き下げたが、これは的外れだ。ウォール街では話題を呼ぶだろうが、業界外の普通の人の目を引くのは、ゴールドマンが09年に従業員に支払う162億ドルという数字だ。10%の失業率に悩む社会にとって、これはたいへんな額だ。
非公開
では、ゴールドマンはどうしたらよいだろう。可能性として考えられるのは、ヘッジファンドかプライベートエクイティ(未公開株)ファンド、資産運用事業をスピンオフし、残った投資銀行を非公開企業にする、あるいはその逆だ。
もちろん、同社の事業が互いに密接に絡み合っていることを考えればこれが極度に難しいことは確かだ。ゴールドマンのデービッド・ビニアー最高財務責任者(CFO)が21日の決算発表後に強調したのもこの点だった。
同CFOはまた、必要ならば自己勘定トレーディングを他業務と分けることは可能だとし、自己勘定業務は同社全体から見れば大きくはないと指摘した。
自己勘定トレーディングと顧客のためのトレーディングの線引きが難しいという問題もある。ボルカー氏もこの点は議会証言で認めていた。オバマ大統領案は、トレーディングやヘッジファンド運用、プライベートエクイティ投資などを「顧客のために行う限り」は禁止対象でないと注釈を付けている。
資本基盤
さらに、ゴールドマンが非公開の共同出資会社という1999年の株式公開前の形態に戻った場合、トレーディングの相手方や大口資本市場からの信頼を維持するのに十分な資本基盤を確保できるかという疑問もある。そして資本基盤が大きければ、株式非公開でもやはり、それから逃れることがそもそもの目的だった規制当局からの監視に、さらされ続ける公算が大きい。
一方、非公開企業となることでこのところの世間の監視や揶揄(やゆ)を逃れられるなら、従業員は歓迎するかもしれない。何といっても、ロイド・ブランクフェイン最高経営責任者(CEO)に報酬切り崩しを決意させるほどの風当たりの強さだったのだから。
一部の投資家は既に、そのような可能性を考え始めている。ヘッジファンド会社シーブリーズ・パートナーズ・マネジメントのゼネラルパートナー、ダグラス・カス氏は昨年12月に、2010年の予言の1つとしてゴールドマンの上場廃止を挙げた。
バフェット氏
同氏は資産家ウォーレン・バフェット氏がゴールドマンの出資者に名を連ねていることを踏まえリアルマネー・ドット・コムのウェブサイトで、「一向に止まない報酬談義と政府の口出し、大衆迎合の圧力に業を煮やして、バフェット氏がゴールドマンと組み、同社を非公開化する」ことを予言した。これが10年中に起こるとしている。
ゴールドマンへの監視の目は厳しくなるばかりだろう。オバマ大統領は21日の記者会見で特定の企業に言及しはしなかったが、行間を読めばゴールドマンを示唆するかなりあからさまなヒントがあった。
大統領いわく、「銀行が、納税者によって提供されたセーフティネットによって資本コスト低下などの恩恵を受けたならば、一転してその資金を利益を挙げるためのトレーディングに使うのは、正しいことではない」。さらに、「そのようなトレーディングがしばしば、銀行自身の顧客との利益相反を引き起こすことを考えればなおさらだ」と続けた。
これは金融危機調査委員会(FCIC)の公聴会でトレーディング業務と顧客との関係について弁明に努めたブランクフェインCEOへの皮肉とみられる。「利益急拡大と常識外れのボーナス」への言及もそうだ。
この1年間、銀行は金融改革に向けた多くの案を骨抜きにすることに成功してきた。しかし、民主党が11月の中間選挙で勝つチャンスを高めるために幾つかの銀行の首を差し出すことが必要だと感じれば、事態は変わるかもしれない。その場合、ブランクフェインCEOはカモにされることになりそうだ。(デービッド・ライリー)
(ライリー氏はブルームバーグ・ニュースのコラムニストです。コラムの内容は同氏自身の見解です)
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920021&sid=airt2AsogmX0