04. 2011年3月24日 02:05:12: stMOEQyaMw
日本を見限る日本人、大量のパスポート申請地震と津波のせいなのか、福島第一の原発事故 2011.03.19(Sat) 川嶋 諭 経済産業省の原子力安全・保安院は東京電力福島第一原子力発電所の1〜3号機の事故に対して、事故の評価を1979年に米国のスリーマイル島の原発で発生した事故と同じ「レベル5」に引き上げた。
「自然の脅威によるものとはいえ」に、強い疑問 これに対し、東電の清水正孝社長は3月19日未明、次のようなコメントを発表して福島県民および日本国民に謝罪した。 「極めて重く受け止めています。発電所の周辺地域の皆様や県民、社会の皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけして、心より深くおわびします」 「大規模な地震に伴う津波という自然の脅威によるものとはいえ、このような事態に至ったことは痛恨の極みで、今後も政府や各省庁、自治体の支援と協力を仰ぎながら、事態の収束に向けて全力を挙げて取り組んでいきます」 ちょっと、おかしくないだろうか。ちょっとではない。信じられないほどおかしい。そもそもテレビや新聞のニュースでは「予測を超える自然災害だから仕方がない」というようなコメントが様々な専門家やキャスターから発せられている。 予測を超えるとは何なのか。どれだけの震度や津波を予測していたのか。過去の震災事例を徹底的に調べ上げている作家の広瀬隆氏によると、この程度の揺れや津波は予測されていなければおかしいという。 福島を襲った津波はこれまでに例がないことではない 「揺れに関しては直下型の地震ではないので、阪神・淡路大地震の時に比べて揺れは深刻な影響を与えなかったと考えられます。また、津波に関しては2004年に発生したスマトラ沖地震と同じような規模だと考えられます」 安心・安全が絶対の生命線である原子力発電所である。世界で過去に事例があるような地震に対して十分な対策が施されていなかったというのは、どういうことなのか。 これが火力発電所ならば、発電所が流され発電不能に陥るだけで済む。しかし原発はいったん大規模な事故を起こせば、何百年にもわたって深刻な影響を及ぼす。 1基の大事故が日本列島全体を少なからず放射能汚染し、国民の生活を困難にする。だからこそ安全には絶対をもって対処しなければならないはずだ。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640 東電の社長コメントには、そうした危機感と緊張感が感じられない。もちろん、政府にも全く危機感と緊張感が見えない。ただ慌てているだけである。
東海沖でも地震発生、東海地方の原発は安全か? 先日、茨城県から青森県沖ではなく、東海地域でもけっこう大きな地震が発生した。地震学者は「東日本大震災は東海地震には影響しない」と言うが、影響しなくても地震はいつ発生してもおかしくない。 なぜ、菅直人首相は、日本で稼働している原発の全部をいったん止めて、安全対策の再検討を指示しないのか。全部止めてしまっては国民生活に影響が大きすぎるというなら、最も地震の可能性が低く設計上も安全度が高い原発をピックアップする作業くらいは指示すべきだ。 万が一、新たな大地震が日本列島のどこかで発生して同じような原発事故が発生したら日本は終わる。なぜか、政府もそしてマスコミも原発事故に対して甘すぎる。 事故が発生したあとも、日本のマスコミは政府の発表をただ垂れ流すだけ。それでは権力をチェックするマスコミの意味はない。 またいわゆる御用学者と言われるような原子力学者に政府の発表を追認させるようなコメントを述べさせるに至っては、日本のマスコミは政府の広報部門だとしか思えなくなる。 右往左往するだけの日本のマスメディア そうした日本の体質を厳しく批判しているのが元朝日新聞の記者、烏賀陽弘道(うがや・ひろみち)氏のこの記事である「頼れるどころか、もはや有害な日本の震災報道」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=2。 「これだけ毎日、新聞を綿密に読み、ニュース(テレビ、インターネット両方)にかじりついているのは、1995年(1月に阪神・淡路大震災。3月からオウム真理教事件)以来16年ぶりだ。その間、日本の報道は成長がないどころか劣化が隠しようもない」 この記事の趣旨は、日本の報道は、安全だという政府の発表を垂れ流すだけだと思ったら、3月15日付の朝日新聞の夕刊1面で竹内敬二編集委員が「事故はチェルノブイリ並み」だと突然、国民の不安を煽る記事に豹変したというもの。 政府が繰り返すように安全なのか、豹変した朝日新聞が言うように日本はチェルノブイリ原発事故並みに危険なのか、烏賀陽さんは「日本の読者を混乱させるだけだ」と言う。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=2 そして、米国政府の見解やオーストラリア政府の見解をネットで調べ、万が一チェルノブイリ原発事故並みになっても放射能汚染物質が降るのはせいぜい半径30キロ以内ということを知り安心する。 戦時並みのクライシスに有害なだけの報道 そして、こう結論づける。 「ここに、日本の記者クラブ系メディアが抱える宿痾の腐臭がまた漂ってくる。彼らはあまりに『日本政府発の情報偏重』であり『国内情報偏重』である。外国の政府公式情報ですらチェルノブイリはありえないと断定しているのに、視界から落ちてしまう」 「日本政府や東電の発表を押しのけて、外国政府の見解が1面トップでもいいではないか。自分で判断できず、公式情報に頼る手法でも、それくらいはできる。なぜそれほど日本政府情報を世界の公式情報の中でも偏重するのか」 「この生死がかかったクライシスに、何という劣悪な報道だろう。平時ならミスリードでしたね、とへらへら笑って許しているかもしれないが、これは戦争並みのクライシスなのだ。生死がかかっているのだ。この愚劣な報道は有害ですらある」 「もう一度言う。クライシスに市民のために役立たない報道など、何の存在価値があるのだ」 冷却と電力回復に必死の東電 烏賀陽さんのこの記事は、3月18日の1日だけでJBpressが始まって以来、最も読まれた記事になった。それも圧倒的だ。恐らく第2次世界大戦後最大の危機に直面して、国民の多くが大メディアに対して不信感を抱いていることの証左だろう。 正確を期するために、15日の朝日新聞夕刊に載った竹内敬二編集委員が書いた記事の出だしの一節を転載しておこう。 「信じられないが、最悪事態に備えなければならない。放射性物質の大量放出事故は1986年の旧ソ連チェルノブイリ原発事故しかない。大量放出はまだ起きていないが、この事故と比べられることになる」 さて、現在、政府は自衛隊や消防を動員して放水活動に取り組み、原子炉や使用済み核燃料の冷却に務めている。一方で東電は東北電力の高圧線から電力を取り込み、福島第一原発の電源回復に全力を挙げている。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=3 しかし1つ確かなことは、これらが成功したとしても、既に大量の放射能を放出している福島第一原発は元の姿には戻らないということだ。 東京のパスポートセンターは申請に6時間待ち 爆発で吹き飛び強い放射能に汚染された瓦礫や原子炉などを取り除かない限り、これからほぼ永遠に原子炉の近くからは強烈な放射線が放出され続ける。一過性でない原子力の怖さがここにある。 3月18日、東京・有楽町の交通会館にあるパスポートセンターには申請者が殺到、6時間待ちになったという。日本から退去しようとしているのは外国人だけではなく、日本人までが海外に避難しようとしているようだ。 パニックを起こすのはいかがなものかとは思うが、情報を正しく伝えない政府や東電の責任は重い。そして、安全性に対する認識の甘さには怒りを覚える。そもそも海外では、今回事故を起こした福島第一原発の原子炉に構造的な問題があったことが指摘されている。 福島第一原発の原子炉は米ゼネラル・エレクトリック(GE)製で、それらには設計上の欠陥があるにもかかわらず製品化したとして、GEの元技術者が35年前に辞めていたというのである。 その技術者たちは米国のテレビや新聞のインタビューに答えて、次のように語っている。 福島のGE製原発は欠陥商品だった? 「福島第一原発で使われているGE製のマークI型原子炉は、大規模事故による負担に耐えうるよう設計されていなかった。その分析が終了するまで一部の原子力発電所は閉鎖されるべきだと思っていたが、GEや公共事業各社はそれに応じる気がなく、そのため私はGEを退職した」 GEのジェフリー・イメルト最高経営責任者(CEO)は、このことについて直接コメントはしていないようだが、福島第一原発の事故には非常な関心を示しているという。 日本のGE関係者によると、「イメルトは今回の事故を大変悼み、日本には最大限の援助をしたいと言っている。メールその他から伝わってくる関心の高さは尋常ではない」という。 今回の事故がGEの設計ミスによるものではないにしろ、35年前の事実がいま明らかになってきたというのは、極めて重要な点だろう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=4 東電はその事実を当然知っていたはずだし、やはり問題は、この3月で福島第一原発の1号機は建設されてから40年が経ち、米国の基準では廃炉されなければならなかったことだ。 40年前の技術に危険なプルトニウムを使う それにもかかわらず2010年に東電は、福島第一原発を20年延長して60年運転すると決め、さらに技術的課題の多いプルサーマル(使用済み核燃料から出るプルトニウムをウランに混ぜた混合燃料のMOXを使った運転)まで実施し始めた。 プルトニウムはテロリストが手に入れれば簡単に原子爆弾を作れてしまうと言われるほど危険性の高い放射性物質である。津波以前に東電の安全基準を疑いたくなる。まあ、冒頭に記した社長のコメントがそれを如実に表しているのだろう。 さて、福島第一原発の現場では、必死の作業が繰り広げられている。本当にそれこそ死と隣り合わせの作業である。 失敗すれば、福島はチェルノブイリと同じか、あるいは原子炉の数が多いためにそれ以上の放射能汚染を招く危険性も指摘されている。 そうなるとすぐ近くの福島第二原発にも人が近づけなくなり、こちらの事故を誘発する恐れも出てくる。現場で作業されている自衛官や消防隊員の努力には、最大限の敬意をお送りしたい。あなたたちに日本はかかっている。 死を覚悟して放水に取り組む自衛官 3月18日昼。福島第一原発への放水活動を担う自衛官の代表として、ある自衛官から特別寄稿が届いた。「福島第一原発:報道をはるかに超える放射能」である。 本名を明かせば処罰は免れないので偽名にしてあるが、その叫びは悲痛だ。 「放射線量は明言されていませんが、先ほど述べたように相当高い放射線量の中で、原子炉建屋から10メートルという至近距離から放水しました。この大型消防車も通常車両ですので、放射線対策は講じられていません。まさに、自衛官は命がけで前線に出たのです」 この自衛官によると、現地の放射線量は東電や政府が発表しているものよりも相当高いレベルにあるという。その中を10メートルの至近距離まで近づかなければならないのは、まさに死を賭した活動と言わなければならない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=5 自衛隊には放射能汚染された地域で活動する任務を負ったチームが存在するが、その人数はわずかで、交代要員を確保するのも難しいという。さらに、その装備も十分ではない。 危険な放射能にほぼ丸腰で挑む放水隊 「本年度から後継車両であるNBC偵察車の部隊配備が始まります。放射性物質の除染を行う場合、真水による外部の洗い流しが有効なので、本車両では、装甲車両や街路から放射性物質となっている塵や埃を、除染剤や温水等によって除去(洗浄)します」 「しかし、本車両は部隊で使用している73式大型トラックをベースとしているため、β線以上の放射性物質から乗員を守ることはできません。このことは、73式中型トラックに搭載する94式除染装置についても同様に言えます」 「いわば、丸腰で汚染地域での除染活動を行うことになってしまいます」 また、隊員が身につける防護服についても人体に極めて影響の大きな放射線はほとんど防止できないという。 「個人装備では、α線やβ線を防ぐことはできても、γ線やX線、中性子線などの放射線を防ぐことはできません」 「現在、恐らく放射性同位体である137セシウムなどからγ線や中性子線が出ているでしょうから、防ぐことは無理でしょう」 菅首相は陣頭指揮に立つべきでは? 自衛隊員や消防隊員はまさに生命を懸けて放水に当たっている。彼らの双肩には日本の命がかかっていると言っても過言ではない。寄稿してくれた自衛官は次のように締めくくっている。 「隊員を喜んで死地に向かわせるのは、自衛隊最高指揮官である内閣総理大臣をはじめとする、防衛大臣などの各級指揮官の堅確な意志と熱誠を込めた言葉です。そして兵を死地に向かわせるなら、指揮官陣頭であるべきです」 「本原発事象は長期化するでしょうから、是非、菅政権にあっては原子力災害派遣に従事する自衛官に対して、熱誠を込めた言葉で語りかけて頂きたいです」 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=6 この言葉を読んで、恐らく多くの読者は日露戦争の旅順攻略を思い浮かべたのではなかろうか。司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』におけるクライマックスの1つ、大日本帝国陸軍大将、乃木希典が指揮を執った戦いである。
なぜ日露戦争で旅順の要塞攻略が成功できたか 難攻不落と言われたロシア軍の旅順要塞の前に、日本軍はただただ屍の山を築くだけ。司馬遼太郎の小説では、乃木の無策に業を煮やした陸軍大将の児玉源太郎が、乃木のいる指令所を大砲の弾が飛んでこない後方から前線に移したことになっている。 その緊張感と陣頭指揮が、旅順にぽっかりあいていた203高地を見つけ、そこを占領することで旅順要塞を攻略することに成功する。 もし、福島第一原発の冷却が一刻の猶予もなく、それが成功しなければ日本の未来がないとすれば、指揮官が何をしなければならないのか。東京のど真ん中、首相官邸や市ヶ谷の防衛省にいる場合ではない。 原発の記事については海外から寄稿された記事も読者の関心が高かった。「福島に注がれるロシアの熱い眼差し」「フランスから見た原発事故、日本の無知に唖然」などだ。 これらを読むと、欧州人の原子力に対する警戒心の高さがよく伝わってくる。とりわけチェルノブイリを経験しているロシアはとりわけ強いようだ。それは逆に日本人の警戒心の薄さを浮き彫りにしている。 世界のエネルギー供給に暗い影 それだけ日本の技術が高く安全だということなのだろうが、今回の事故でその信頼は一気に揺らいだ。福島第一原発がどのような収束を示すかまだ全く分からないが、世界中の原子力発電に対する関心は急速に高まった。 そのことを伝える記事が英フィナンシャル・タイムズ紙のこれ「長期凍結に直面する原子力産業」である。欧米から中国、インドに至るまで高い関心を示しているという。 そして、こう締めくくる。「化石燃料に対する世界の依存を抑えることは、かねて難しかった。福島原発の苦闘は、それをさらに難しくするだろう」 化石燃料の高騰が世界経済に与える影響が深刻になり始めた矢先に起きた福島での原発事故。これで世界のエネルギー需給関係は極めてタイトになりそうだ。その意味でも、東電の甘い安全管理は大きな問題を投げかけた。 さて、今週前半では、震災後の日本人の行儀の良さが世界の人を驚かせた。それらに関する記事が大変に読まれているが、それは明日、ご紹介したい。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/5640?page=7 |