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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20101104-00000003-natiogeo-int
今は失われた古代の火星の海。その形成過程を解明する新たな理論が発表された。将来の火星探査で生命の痕跡を探る最適な場所はどこか、そのヒントも得られるという。
研究では、火星北部の平原の地質を分析し、地下帯水層の水が地殻の割れ目からゆっくりと浸出するプロセスを解明した。海や湖がわずか数年間で急速に形成され、さらに何千年間も水域が存在していた可能性があるという。
火星が湿潤だった時代でも、それほど厚い大気に覆われていなかったという見方が一般的だ。そのため、火星で生命を探すならば、液体の水が極端な温度変化や太陽の紫外線の影響を受けない場所が最適だと考えられてきた。
研究責任者でアメリカ、アリゾナ州にある惑星科学研究所のJ・アレクシス・パルメロ・ロドリゲス氏は、「生命を見つけるには水が安定して存在した場所を探す必要がある。火星の場合それは地下だ」と話す。これは科学者泣かせの問題だ。地下を掘り進めるには時間と専用機器が必要で、火星表面の探査を念頭に送り込まれているロボット探査車では力不足だ。
だが、今回の研究によると、「火星北部で浸出した水域は、数十億年間地下に閉じ込められていた非常に古い水だと考えられる。生命体が発生し進化できるような安定した環境だ」とロドリゲス氏は言う。つまり、古代の海が残した堆積物が現在は表面付近に貯留しており、探査車が接近可能だということになる。生命の痕跡が多数見つかる可能性があるのだ。
鉱物の残滓から、火星表面には過去のある時期に水が存在していたとわかっている。実際に北部の平原では堆積物が大量に貯留している場所がいくつかあり、地球の海底を連想させるという。
これまでの理論では、火星の海は地下水が突然大量に流出して形成されたと考えられてきた。「だが、そのような流出を示す水路は数カ所でしか見つかっていない」とロドリゲス氏は言う。
火星の北部にあるジェミニ・スコプリ（Gemini Scopuli）と呼ばれる急斜面の南側には、地殻変動作用と衝突クレーターによって多くの割れ目ができた盆地があり、堆積物が存在している。研究チームは衛星探査機の分光学データで岩や鉱物を分析し、この地域の地下水は約20億年かけて表面に浸出してきたと推定した。
全体的な地形から判断すると、水が突然に流出したのではなく、加圧された地下水が地殻の割れ目からゆっくりと長時間かけて漏れ出してきたと考えられる。水は広大な地下の帯水層から浸出し、平原から徐々に標高の高い場所に到達したようだ。
地下水面が上昇した結果、地表に現れた水は土壌に戻らなくなった。やがて浸出した水が溜まり、浅い海や小さな湖の集まりが形成された。アラスカ北部の傾斜地で毎年春に地面の氷が解けるときに見られる現象と似ている。
今回の研究によると、このように形成された海や湖が、凍結と融解の季節的なサイクルを経ながら、おそらく数千年間はコンスタントに存在していたという。「地下水の浸出が続く間、この水域は維持されていた。塩分濃度が非常に高い湖は氷点下の気温でも液体の状態が保たれる。地球ならその中で生命体を観察できるはずだ。氷に覆われれば、貯留した水の安定性はさらに高まるだろう」とロドリゲス氏は述べる。
恒常的な湖があれば、地下水とともに表面に出てきた生物は、紫外線が降り注ぐ厳しい環境変化にも耐えられたかもしれない。「生命体の新しい環境への適応と進化は、地質学的な時間が続いた方が成功しやすいことがわかっている。地下水が長い時間をかけて徐々に浸出したために、生命体が表面やその付近の環境にうまく適応する可能性は高まっただろう」と同氏は語る。
この筋書きが正しいとすると、将来、北部平原の露出したクレーターの壁や表面の割れ目に沿った堆積物で、ロボット探査車が生命の痕跡を発見する可能性がある。
NASAは現在、次回の大規模な火星探査ミッションで探査車マーズ・サイエンス・ラボラトリの着陸予定地を検討中だ。4候補の1つに挙がっているマウルス渓谷は、今回の理論が提示する海形成モデルに合致する場所だという。
今回の論文は「Icarus」誌11月号に掲載されている。
Brian Handwerk for National Geographic News
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