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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20100921-00000500-sspa-soci
■夜討ち朝寝のリポーター神足裕司のニュースコラム
アウトブレイクは、映画やゲームだけでない。れっきとした医学用語だ。
帝京大学医学部附属病院がHPで公開した「多剤耐性アシネトバクター調査委員会外部委員報告書」にも「アウトブレイク」とある。
炎暑が一段落するのを待つように多剤耐性菌が現れた。いや、病院側が「現れた」と認識したのは4月だったが、保健所に報告したのは今月2日になってからだった。「多剤」とはたくさんの薬、「耐性」はその薬が効かないこと。つまり、いろんな薬が効かない手強い菌ということになる。
3日、森田茂穂院長が記者会見し、46人(後に53人に増えた)が感染、27人(同31人)もの患者が死亡したと発表した。その時点では、感染者6人については院内感染との因果関係が不明とした。
30人もが死亡すれば一般には大事件だが、病院ではそうならない。死亡したのが肺がんや脳梗塞など重症の患者だからだ。
問題は東京都への報告の遅れだ。そして報告の遅れの裏には、病院内部での情報共有の遅れがあった。
5月でなく、2月にはもう多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニ(MRAB)が、死亡した患者の膿や血液から検出されていた。
院内感染の対策を即刻とるべきなのに、院内の専門部署感染制御部に症例報告がなかったという。
ただ、事情を調べていくと、帝京大病院だけに酷い過失があったとは言い切れないものがある。
感染症法で多剤耐性緑膿菌の感染は、保健所を通じて国へ報告する義務がある。が、アシネトバクターは対象外。というのも、そこいらの水や土の中にもいて、健康な人は感染しない。帝京大でも、来院者の土に紛れて入ってきたのではという疑いがあるくらいだ。
菌そのものより、「多剤耐性」になったことが深刻なのだ。
東京警察病院感染制御対策室編の『感染症をめぐる54の話』(丸善)に厳しいくだりがある。
「延べ100人のスタッフが(化膿した傷の処置に)関わったとします。99人までは手洗いと消毒を十分に実施した後で創の処置をしました。ところが最後の1人が急いでいたため手洗いも消毒もしない手で処置しました。この場合患者様の創は1%の感染で済むのでしょうか? いいえ100%感染するのです」
医者も看護師さんも、とんでもなくキツイ仕事だなと思う。
同書に正しいマスク、ガウンのつけ方や手洗いなど初歩的な感染症対策も出てくるが、もし私のようなバイ菌だらけの侵入者が現れたらお手上げだ。
【ワクチンの副作用を恐れる厚労省の怠慢か……】
東京都板橋区に帝京大病院を訪ねた。曲がりくねった狭い道が突然開け、ガラス張りの巨大な建物が現れる。首相官邸にどこか似た、ガラスと緑の建物だ。
昨年5月に新築されたばかりというが、入って驚いた。昨今の大病院の流行なのかもしれないが、すぐ2階へのエスカレーターがあり、エントランス右側にはショッピングモールかと錯覚するようなフードコートやコンビニがある。入院するなら、こんな病院がいいな、と正直感じ入ったほどだ。
患者さんたちは、ここがアウトブレイクの舞台になっているなど、夢にも思わなかったろう。
この病院でダメとすれば、この国、日本の医療システム全体に何か問題があるのではなかろうか。
そう思って探したら、岩田健太郎という神戸大学の教授が厳しいことを書いている。たくさんの著書があるが『麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか』(亜紀書房)では、「アメリカ116人vs日本27万8000人」(01年度麻疹罹患者数)と帯に挙げ、日本は「感染症大国」だという。
中に「厚生労働省は2000年に発表した『健康日本21』という施策のなかで、『日本では感染症は克服された。これからは生活習慣病が問題である』と言っています」と書いている。
麻疹が突然、日本を襲い、多くの大学が休校になったのは08年のことだが、そこにはワクチンの副作用を恐れる厚労省の怠慢がある。世界的に認められている有効な薬は認可しないのに、国内製薬会社の必要のない薬は認める。したがって抗生物質の使用が増えすぎ、菌に耐性をつくらせてしまう。
ざっとこのような問題点が並べられているが、そこにあの立派な帝京大病院がダブる気がしてくる。
健康日本などと、ふやけたスローガンで国民の恐怖を煽り、ビタミン剤だの健康食品だのが売れまくる世の中をつくったのは、厚労省がクリントン政権を真似たからだ。「オバマでなく初の黒人大統領はクリントンだ」と言われ、クリントン大統領は国民皆保険に取り組んだ。お金がないせいで病院へ行けない貧しい人を救おうとしたが、法案が通らなかったため、健康増進法をひねり出した。
悪い日本の官僚は、アメリカのやり方に乗って医療をビジネスにした。最近の病院が、患者を「患者さん」と呼ぶか「患者様」と呼ぶかに悩んでいるという話がある。
患者さんのほうが、親しみがあり医療効果が増すなどという議論があったそうだが、バカも休み休み言えと筆者コータリは思う。「様」とは「お客様」の様で、逆に言えばカネのない患者の命は救わないという宣言ではないか。
日本政府が感染症は克服したなど、腑抜けた話をするずっと前の81年、アメリカ国立衛生研究所リチャード・クラウゼン博士が『絶え間ない潮−微生物の世界の絶え間ない挑戦』を書いた。
すぐエイズが蔓延して、人類の最大の敵は病原体だとわかった。『カミング・プレイグ』(L・ギャレット/河出書房新社)は10年前に日本で翻訳された、いささか古い本だが、疫病根絶は「楽観主義」と書いている。
細菌学者フレミングが29年に発見した青かびペニシリンは「魔法の弾丸」とまで言われたが、ペニシリンに負けないよう細菌が進化し、次の抗生物質ができ、競争は激しくなって、どうやら人類の敗北がはっきりしようとしている。
とてつもない薬の山と病気を見比べ、医者は疲れ果てた。だから、体の弱った不幸な患者が耐性菌で死亡しても、お気の毒にと舌を出しながら、お金持ちの患者様に媚びるしかなくなっているのだ。
■帝京大学病院で院内感染 9月3日、帝京大学医学部附属病院の森田茂穂院長が会見を開き、院内における多剤耐性菌アシネトバクター(MRAB)感染拡大を公表。MRABには抗生物質が効かないとされており、現在、4人の患者がMRABにより死亡した可能性が浮上中。帝京大学病院は4月に院内感染を認識していながら、東京都、厚労省への報告を怠っていたことなども明らかに
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