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[ベイルート 5日 ロイター] 昨年末の米航空機爆破未遂事件で、イエメンに拠点を置くアルカイダ系組織が犯行声明を出したことを受け、米国はイエメンのサレハ政権への支援を加速させている。しかし、貧困や内戦に苦しむ同国への支援は、一つ間違えばアルカイダ勢力の拡大にもつながりかねない。 汚職にまみれ、正当性に欠けるとされるイエメン政府への支援は、一時的に同国の独裁体制を維持することになるとみられる。 これについて、イエメンのアナリスト、アブドルガニ・イリヤニ氏は「米国がイエメンの治安に関与を強めれば、アルカイダの勢力増強につながるだろう」とみる。同氏は、イラク戦争で米兵がイラク市民を支配したというイメージから生まれた反米感情に触れ、「多くのことが悪い方向に進む可能性がある」と言う。 イエメンの当局者は、武装勢力との戦いに米国の支援が必要とは認めるが、アルカイダの勢力を拡大させる貧困への対策にも資金は不足しているという。 米国はこうしたイエメンに対し、軍事物資や情報員、イエメン部隊への訓練を提供し、アルカイダと疑われる武装勢力の一掃に努めようとしている。 イリヤニ氏は「イエメン政府への支援は、こうした米国による作戦の避けられない副産物」と指摘。「このことが、イエメンがそもそもの混乱に陥った原因である悪い習慣をこれまで同様に継続させることになる」と語る。 67歳になるサレハ大統領は、部族や軍部の党派に利益供与を与えることで、約30年にわたり権力を維持してきた。匿名の米当局者は、「サレハ大統領に(武装勢力の掃討作戦に)専念してもらい、すべてが正しい方向に行っているか監視する必要がある」と、実利的な考えを示す。 <支援の条件> クリントン米国務長官は、アルカイダ以外にも北部のイスラム教シーア派反政府組織「ホースィー」や南部の分離主義運動を抱えるイエメン政府に対し、西側諸国が支援を続けるべきとの考えを表明。7日には「イエメンが平和と安定をもたらすための好機につながる行動を取れるよう、継続的な支援を行う考えと条件があることを、国際社会ははっきり示すべきだ」と述べた。 英王立国際問題研究所のジニー・ヒル氏は、イエメンがサウジアラビアや聖地メッカに近いという、イラクやアフガニスタンよりも繊細な問題から、米国がイエメンでの新しい戦争を強く求めていないとみる。 同氏は「西側がどういう規模であれ派兵を求めれば、イエメン政府は非常に難しい状態に置かれる」と話す。 アルカイダを狙った空爆や特殊部隊の投入といった選択肢も、特に民間人に犠牲が出た場合、政治的に微妙な状況を生み出す可能性がある。 米当局によると、国防総省は現在、対テロ支援に昨年投じた6700万ドル(約62億円)をさらに増やすよう求めている。この金額には、米特殊部隊や米中央情報局(CIA)による作戦は含まれていないという。 先月には、米国が支援したアルカイダのものとみられる拠点への空爆で60人以上が死亡した。 「リスクはイエメン国内において米国とサレハ政権への敵対心が増長していることだ」と話すのは、米研究者でイエメンについての著書もあるロバート・バーロウズ氏。同氏は「ホースィーとアルカイダ、おそらく南部の分離運動も、その主な狙いはサレハ政権と米国の関係に打撃を与えることだ」と分析する。 サレハ大統領は、同国北部の反乱や南部の分離主義の方がアルカイダよりも深刻な脅威と見ているかもしれない。しかし、新しい過激派はより急進的で、1980年に米国の支援を受けたアフガンのジハード(聖戦)に参加した兵士よりも懐柔が難しいことは明らかだ。 一方で、サレハ大統領は、西側から財政的な支援をさらに得るためにアルカイダとの戦いを利用し、国内での利益供与に使う資金に回そうとしている可能性もある。 これに対し、英王立国際問題研究所のヒル氏は「もしその国が弱体化しつつあれば、テロリストのネットワークは利益になる。しかし、政府を弱まらせるのはテロではなく、石油収入の減少による経済危機」だと指摘する。 米国はイエメンが国として存続可能かという不安を増大させているが、それは主に、同地域の不安定化が石油大国のサウジアラビアや周辺の国際航路にどう影響するのかという点に絞られている。 イエメン側にとってのリスクはより高く、一部には米国の関与が一時的で信頼できないという声もある。 イリヤニ氏は「機会の扉はすぐに閉まる。すべてが終われば米国は去り、イエメンは水や石油といった再生不可能な資源をめぐり、後戻りできないところを過ぎてしまったということになる。そして、ただ戦う訓練を受けた世代だけが残される」と話している。 |