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相対的な衰退は、アメリカ自身の意思でもあります。アメリカには、もう世界の覇権を握っていこうという意思がなくなってきている
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投稿者 TORA 日時 2010 年 1 月 02 日 15:11:24: CP1Vgnax47n1s
 

株式日記と経済展望
http://www5.plala.or.jp/kabusiki/kabu207.htm
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/
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相対的な衰退は、アメリカ自身の意思でもあります。アメリカには、
もう世界の覇権を握っていこうという意思がなくなってきている。

2010年1月2日 土曜日

◆スペシャル対談 勝間和代、ジャック・アタリと「日本の未来」を語る 1月13日 週刊ダイヤモンド
http://member.diamond.jp/series/dw_special/10061/

勝間 21世紀における世界構造の変化を読み解くに当たって、まずは世界金融危機の本質をどう理解するべきでしょうか。

アタリ アメリカ、ヨーロッパ、日本の疲弊が最も大きな問題であるということです。

 経済成長のためには人口、貯蓄、技術革新、資源が必要です。この4つのリソースが西洋社会では賄えなくなってきて、移民に頼っている。アメリカ、ヨーロッパでも技術革新は進んでいますが、実際にそれを担っている人たちは、ほとんどがよその国から来た人たちなのです。

 お金も同じですね。金融システムは先進国に資金を呼び込むためにある。特にアメリカの金融システムは非常に急速な勢いで拡張したけれども、そうであるがゆえに制御不能になった。

 アメリカでは、多くの人びとの給与を低く抑えて、(サブプライムローンなどで)借金漬けにしました。そうすることで、あたかもお金がグルグル回っているという幻想を抱かせた。

 国家経済の疲弊を覆い隠すために、債務によって成長を促進したということですね。アメリカはもう疲れ切っていて、成長を牽引していくだけの活力を失っているのだと思います。

勝間 そうなると、アメリカの没落に歯止めはかからない?

アタリ 1980年代にも、アメリカはもうダメだ、日本がその後継者になるといわれましたが、実際にはそうなっていません。アメリカが絶対的に衰退することはないでしょう。

 ただし、世界のGDPの50%を独占するとか、世界最大の軍隊を維持するとか、そういったことはできなくなる。相対的に衰退していくわけです。
 
 相対的な衰退は、アメリカ自身の意思でもあります。アメリカには、もう世界の覇権を握っていこうという意思がなくなってきている。内政問題があまりにも大きくなり過ぎて、もっとそちらに集中するべきだという圧力がどんどん強まっている。その結果、アメリカはどんどん内向的になっていくと思います。

勝間 アメリカ国民が民主党、オバマ大統領を選んだのは、そういう意思表示でもあるわけですね。

アタリ そのとおりです。ただし、アメリカの活力は失われてきているけれども、まだ内的に復活するエネルギーはある。

 特に人口構成が非常に若い。今、先進国で若返っている唯一の国がアメリカです。平均年齢が過去28歳でしたけれども、それが下がってきている。アメリカは移民によって人口を維持しており、今、ヒスパニックがマジョリティになりつつあります。同じアメリカという国でありながら、実態はまるで変わっている。

 フランスでこういう言い方があります。1つのナイフがありますね。まず刃を替える。次に柄を替える。そうしたら、それはまだ同じナイフといえるだろうかと。アメリカではまさしくそういうことが起こっている。
 
 だからこそ、今回のような危機に対しても、内的な復活を遂げるエネルギーがアメリカにはあるのだと思います。

勝間 アメリカが一方的に没落していくわけではないと。すると、中国・インドの台頭については、どう考えますか。特に中国は日本のGDPを逆転することがほぼ確定しています。

アタリ 確かに絶対的な数値だけを見ると抜いたように見えますけれども、人口1人当たりの所得は日本の10分の1です。

 しかも、都市部と農村部の生活水準の差が非常に激しい。農村部の生活水準は日本の40分の1、人民元を再評価しても20分の1。全人口の半分くらいは、その程度の生活水準でしかないのです。それで日本を抜いたとはいえないでしょうね。

勝間 中国の脅威は、日本あるいは世界で過大評価されているということでしょうか。

アタリ 日本を抜いたとはいえませんが、しかし経済成長の勢いはやはりすごい。すぐ隣に、そういう強力な国がいるのは決して脅威ではありません。これはチャンスです。隣に巨大な市場があるという意味ですから。

 フランスでも、フランス人とドイツ人は、やはりお互いの力によって、
自分に利するものがあることを学んだわけですね。私の著作では、これを「利他主義」と呼んでいます。

 中国は非常に強い。それが日本の繁栄にも結び付くと思います。先端技術を使った商品、観光業など、日本の経済発展にとって中国は心強い存在になるはずです。もちろん手強い競争相手ではありますけれども、むしろ繁栄の源と見るべきです。

人口政策で問われる新政権の歴史的意義
勝間 日本では中国脅威論が根強いのですが、むしろ利他主義で積極的に中国と連携していくべきなのですね。

アタリ フランスとドイツは3つも大きな戦争をしました。ヨーロッパが繁栄し始めたのは、そのフランスとドイツが、お互いを敵と見なすよりもパートナーと見なしたほうが、お互いにとって利するものがあるということに気がついてからなんです。利他主義は非常に重要ですね。

ただし、国際的なレベルで利他主義を実現するためには、国内的な利他主義を充実しなければなりません。

 国内における利他主義には2つのファクターがあります。1つは「社会的公正」。最も貧しい人たちを国が守っていくということです。もう1つは「人口政策」。具体的には家族政策と移民の受け入れ政策ですね。

 とりわけ移民政策は重要です。自分たちとは違う人たちを受け入れずして、その人たちを理解することはできないのです。フランスでも、たとえばイタリア人やスペイン人が入ってきて、フランス国籍を取得してフランス人になった。そういう動きがあって初めてイタリアやスペインに対する理解が進んだ。日本も、もっと国を開くことが将来の繁栄のカギになると思いますね。

勝間 先進国経済は少子高齢化によって確実に疲弊しています。特に日本は酷い。政権交代が実現して、人口政策については、たとえば5兆円の子ども手当をつけるなど、変化の兆しもあるにはあるのですが。

アタリ 日本の歴史における新政権の評価は、やはり人口政策で決まると私は考えます。ここで成果を上げられれば、歴史的に重要な意味を有する政権になるし、そうでなければ意味のないもので終わってしまう。

 フランスは60年来、総合的かつ緻密な人口政策を講じてきました。だからこそ出生率も上がったし、世界に誇りうるモデルを構築したという自負もある。(後略)

(私のコメント)
NHKBSで「マネーの奔流はどこへ向かうのか」と言う番組でジャック・アタリ氏がインタビューに答えていましたが、「知の巨人」と言われるだけあって私と同じ事を言っている。アメリカは衰退して行って国内に閉じこもるようになって世界各地の軍事基地を縮小していくようになるだろう。アメリカが世界に関心を持つのはアメリカ企業が危なくなった時ぐらいで、それ以外には介入しなくなるだろう。

アメリカがアジア各国と結んでいる軍事同盟も多国間同盟に切り替えて行って、NATOのようになって行くのではないかと思う。そうなると日本も集団的自衛権を認めなければならなくなるだろう。中国に対抗するには日本だけでは難しいからASEAN諸国との集団的相互防衛条約が結ばれるのではないだろうか? いわば21世紀の大東亜共栄圏が出来上がる。それが出来ればやがては東アジア共同体も作りやすくなる。

中国は既に一つの共同体国家であり「中央アジア共同体」みたいな国家であり、EUが拡大しているように中国も拡大志向を持ってる。北朝鮮などは実質的な加盟国となり、アメリカが手を引けば韓国や台湾も「加盟国」になっていくだろう。日本としてはこれに加わるべきかASEANと新大東亜共栄圏を建設すべきかの判断が求められるようになるだろう。

アタリ氏はEUやユーロの創設に大きな功績のあった人ですが、91年の東西ドイツの統一にも賛成してドイツとフランスがEUの中心となりユーロの創設に際しても独仏の協力関係が出来上がった。普通なら東西ドイツの統一はフランスにとっては脅威になるはずだ。しかしアタリ氏はEUという統一国家と言う青写真を構想していた。

アタリ氏は日本と中国がドイツとフランスのような協力関係が出来上がれば、周辺諸国もそれに加わるようになると言っていましたが、国民一人当たりの所得が10倍も差があっては当分無理だろう。政治体制も宗教的文化も大きく異なる。国民所得がほぼ同じで同じキリスト教文化なら統一は容易だが、共通する価値観もなければ共同体は難しい。

アタリ氏は世界の覇権を握る意思が無くなって来ていると述べていますが、国内問題が大きくなってきたからだ。所得の格差が広がり失業者の問題も製造業を復活させないと、金融や不動産だけでは労働者を吸収できないからだ。中産階級が崩壊して少数の大金持ちと大多数の貧困階級に分かれてしまった。中産階級を復活させるには中国に行ってしまった工場をアメリカ国内に戻さなければならない。

アタリ氏はドルやポンドや元などの通貨切り下げ競争が行なわれていると述べていましたが、ユーロが誕生したのも91年にポンドが売られてヨーロッパで通貨の切り下げ競争が行われた事がユーロ誕生のきっかけとなりました。ユーロのような共通通貨が出来なければ切り下げ競争が起きて混乱が起きるからだ。

アメリカがドルを切り下げても人民元が同じように切り下げる。それと同じように他のアジア諸国も切り下げて対抗する。アメリカは中国がこのような政策をとっている限り単独でのドル安はとることが出来ない。まさに通貨の太平洋戦争が行なわれているのですが、中国がいつまでドルを買い続けることが出来るかが勝敗の分かれ目になる。

円が92円台まで戻せたのも中国がドルを買い支えている為で、対ドルで元が切り上げられるとアメリカへの輸出がきびしくなる。日本のように素材や主要部品のような付加価値があって通貨の変動に絶えられるものにシフトしていればいいのでしょうが、中国がアメリカに輸出している物は日用雑貨などだから数%の切り上げが命取りになる。

中東のような石油ならばドルの切り下げがあれば石油価格を上げて輸出する事で世界にインフレを輸出する事になる。中国も当然値上げされた石油を買う事になりますが、これでは中国もコスト高で苦しむ事になる。中国こそ経済面での構造改革が必要な段階に入っているのですがハイテク化や高付加価値化はうまくいくのだろうか?

アメリカも人口構成がドンドン変わってきて、ヒスパニックがマジョリティになりつつあります。まさにオバマ大統領の誕生はアメリカが白人国家ではなくなったという事であり、大戦後のアメリカと現在のアメリカが違うように未来のアメリカも今とは大分違うアメリカになるだろう。

アタリ氏は、日本と中国はフランスとドイツのようなパートナーになったほうが有利だと言っています。それから移民の受入れにも相互理解を深める為には有効だと言っている。日本の政治家にも移民1000万人受け入れ構想を言う議員もいますが、日本は移民受け入れに対応して行けるだろうか? 少子高齢化は社会問題にもなっていますが、EUやアメリカのような移民の受け入れ余地はあまり無い。

アメリカの一極覇権主義はグローバル化を大きく進めましたが、アメリカが衰退して多極化して経済でも保護主義が強まるだろう。EUやアメリカも移民の受け入れに消極的になって、失業者の増加に苦しむ事になるだろう。だからアタリ氏の考えとは違いますが、東アジア共同体はEUとは違ったものになるだろう。

日本にはアタリ氏のような知の巨人がおらず、20年先の事を考える学者がいない。70年代から80年代は日本がアメリカの後を継いで東京が世界の中心になると思われていた。しかしそうはならなかったのは日本人にそれだけの気概がなかったからであり、アタリ氏のような世界的な知の巨人もいなかった。

90年代からの日本のバブル崩壊は、当時の政治家にも官僚にも学者にも世界をリードして行こうとする人材がいなかった。日本には真のエリートを養成する期間が無く、外交防衛から何でもかんでもアメリカ依存の気持ちから抜けきれなかった。小室直樹氏のようなソ連崩壊を予言して当てた学者もいたが、彼を戦略家として登用するような政治家もいなかった。

現在も日本にはアメリカの軍事基地が100ヶ所以上も点在して、日本がアメリカから独立できる気配は無い。日本は何事もアメリカのフィルターを通して世界を見ているが、フランスから見る世界はアメリカが違って見えるようだ。日本の学者知識人はアメリカ留学帰りが多くなりアメリカの学界の受け売りばかりしている。これでは日本が知的世界でもアメリカをリードできるはずが無い。


◆1/6 ジャック・アタリ 緊急インタビュー「第1回 危機の核心とは何か」

◆2/6 「最初の投機バブル」

◆3/6 「巨大市場」

◆4/6 「今起きている 危機の核心」

◆5/6 「ワシントン・コンセンサス」

◆6/6 「津波」

◆1/6 ジャック・アタリ 緊急インタビュー「第2回 世界を襲う5つの波」

◆2/6 「第3、第4の波」

◆3/6 「ノマド」

◆4/6 「第5の波 超民主主義」

◆5/6 「マイクロファイナンス」

◆6/6 「人類の未来」


 

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コメント
 
01. 2010年1月02日 21:21:15
シース・ナイフではブレードはタング(握りの芯材)と一体構造になってますから、ブレードだけを交換するということはありません。ナイフ職人なら別のナイフに柄の部分を使い回したと考えるでしょう。アメリカは移民の国ですから、同一性のあるのはシース(鞘)だけかも知れませんね。

テロ戦争は没落を理解しているアメリカ(CFR)の延命工作なわけですが、かえって自分たちで墓穴を掘っているのが面白いですね。「テヘランにおける死」という奴です(『夜と霧』より)。

一人の金持ちのペルシャ人は召し使いと彼の家の庭を散歩していた。すると従者は死の使者に出逢って脅かされたと悲嘆しはじめた。そして召し使いは主人に頼んだ。

「足の速い馬を一頭いただけませんか?大急ぎでテヘランに逃げたいのです」

主人は召し使いの言うとおりに馬を与え、召し使いは夕方までにテヘランに着くように急いで馬を走らせて行った。そして召し使いが出かけたあとで、今度は主人が死の使者に出逢ったので、主人は尋ねた。

「どうしてお前は私の召し使いを脅かしたのだ?」

死の使者は言った。

「私は何もしていない。ただ、彼にここで逢ったのでびっくりしたのだ。なぜなら私は今晩テヘランで彼に逢うはずだったのだから・・・。」


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