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トンデモ本はどちらか
藤田幸久編著『9.11テロ疑惑国会追及』(以下『追及』)が、と学会著『トンデモ本の世界W』(以下『W』)で、「トンデモ本」として批判されている。記事のタイトルは「民主党を汚染するトンデモ説」、著者はと学会会長・山本弘氏。
だがこの記事、あまりにも間違いが多く、批判されないまま世間に出回ってよい代物ではない。そこで、この批判記事を阿修羅へ投稿することにした。
まず、とりわけ重要と思われる次の2点について書く。
一つめは、藤田議員が、山本氏がいうような9・11陰謀論者ではそもそもないことである。山本氏は「9・11陰謀説」を米政府自作自演説のことと定義しているようだが、藤田議員はこれを主張しているわけではなく、山本氏の批判は最初から的外れだ。
二つめは、鳩山首相について。山本氏は、記事を「民主党を汚染するトンデモ説」と題し、その最後を「鳩山氏や他の民主党議員が、藤田議員の妄言に耳を傾けないことを祈る」と締めている。だが実際には、鳩山現首相は911の疑惑を追求する藤田議員を支持しているのだ。
では詳しく書いていこう。まず一つめの点、「藤田議員は陰謀説を唱えてなどいない」ということについて。
『W』において、「9・11陰謀説」の説明をしている部分を引用する。
「二○○一年九月一一日にアメリカで起きた同時多発テロは、アメリカ政府の自作自演だった。WTC(ワールドトレードセンター)ビルが崩壊したのは、旅客機が突っこんだせいではなく、ビルに仕掛けられていた爆弾によって「制御解体」されたのだ。ペンタゴンに突入したのはボーイング757型機ではなく巡航ミサイルだった。現場で発見された機体の破片や乗客の遺体は、別の場所から現場に持ちこまれたのだ……」(P31)
と、このようなことをまとめて「9・11陰謀説」としている。だが、藤田議員は国会でも著書においても、このようなことを主張しているわけではない。
『追及』から、藤田議員の主張が最もよくまとめられていると思われる部分を引用しよう。
「これらの疑問点には証言、映像、写真などの裏づけがあり、多くの市民がその情報を共有し、専門家が疑問を投げかけている。
(中略)
国際政治を一変した世界史的事件で、一般市民の目に触れる疑問点がこれだけ存在するにもかかわらず、関係者が説明責任を果たしていない事件は前代未聞である。余りにも多くの無実の人命が失われたこの7年間の世界を検証するためにも、新たな国際的、客観的な調査が必要である」
この「再調査をせよ」という主張は、著書において一貫している。
「トンデモ本」の定義が「著者の意図とは異なる視点から楽しむことができる本」であるにもかかわらず、山本氏は、著者の意図を正しく読み取ることができていない。当然、批判も的外れのものでしかない。
二つめの点、鳩山首相について。
鳩山現総理は、911の疑惑を追求する藤田議員を支持している。そしてそれは藤田議員がブログに書いているのだから(http://www.election.ne.jp/10870/72795.html)、ちょっと検索すれば分かったはずである。山本氏が「ちょっとネットを検索すれば、ジュセリーノがインチキ預言者だということはすぐに分かったはずなのだ」と書いているように。(ジュセリーノについての記述では、藤田ブログのリンクと引用がある)
山本氏は、民主党内に911への疑問を持っている議員が少なからず存在することについて、「うわあ、民主党の中に広がる陰謀論汚染! これはシャレにならん。マジでシャレにならん」と書き、記事のタイトルを「民主党を汚染するトンデモ説」としている。・・・にもかかわらず、その「汚染度」を調べなかったのだろうか。『追及』は今年4月に出版されたのだが(『W』は10月)、出版後の反響を調べなかったのだろうか。藤田議員の公式サイトにある、911疑惑追求の活動などをまとめたページを見なかったのだろうか。藤田ブログのジュセリーノの記事を読んでいながら、911の記事は読まなかったとでもいうのだろうか。
いずれにせよ「知らなかった」では済まされないだろうが、僕は、山本氏は故意に知らない振りをしているのだと思う。「うわあ、今の日本の総理は陰謀論者!」と言うのは、さすがにはばかられたのだろう。
以降は、当該の記事を最初から順番に見て、細かい間違いを指摘していこう。
『W』P30より
「二○○八年一月一○日、第一六八回国会外交防衛委員会第一八号において、民主党の藤田幸久参議院議員が、9・11陰謀説を披露しはじめたのには、さすがに驚いた。そこいらの無名の一市民が信じているというならまだしも、「アメリカ政府が数千人の自国民を虐殺した」なんて話を、国会議員が信じているというのはおおいに問題だろう」
実際には藤田議員による911についての国会質問はその後2度あり、合計3度行なわれている。
また当然、「アメリカ政府が数千人の自国民を虐殺した」なんて話を国会でするはずもないし、藤田議員がそう信じているという話も、どこから出てきたのか分からない。
「もちろん当時、藤田議員の言動は批判にさらされた。そりゃそうだ」(P32)
この部分は国会質問についてなのかジュセリーノについてなのか分からないが、国会質問については、当時マスコミがほとんど全く取り上げなかったのは良く知られているはずである。ジュセリーノについてであれば、ネットのごく一部で話題になっただけだ。
『W』P33に、『追及』からの引用がある。
「実際、民主党の中には具体的な疑問を抱いていた議員が想像以上に存在し、独自の調査を始めたり、9・11のDVDなどを後援者やマスコミ関係者に上映する議員も出てきた。」
『W』ではこの後「うわあ、民主党の中に広がる陰謀論汚染! これはシャレにならん。マジでシャレにならん」と続くのだが、『追及』では次のように続く。
「そもそも、私があえて国会でこの問題を取り上げたのは、自民党、防衛省、外務省の中にも具体的な疑念を抱いている幹部がいることを直接知っていたからである」
『トンデモ本の世界W』P33より
「本書の中で藤田氏は、9・11をめぐる疑惑を列挙している。長くなるので詳述は避けるが、そのリストを見て、僕(=山本)は失望した。それらの「疑惑」なるものは、二〇〇七年に出版された奥菜秀次『陰謀論の罠』(光文社)や、ネット上の反陰謀論サイトで論破済みのものばかりだったのだ。
特に次のサイトが、多くの疑問に対する回答を網羅しており、よくまとまっている。
・分解『911 ボーイングを捜せ』
http://www.nbbk.sakura.ne.jp/911/index2.html
・9.11Plot(?)FAQ
http://mltr.ganriki.net/faq10b02w02.html
・Skeptic’s Wiki
http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi」
しかし、藤田氏はこうしたデータにまったく目を通さなかったようだ。あるいは、目を通したけれども受け入れようとしなかったのか」
藤田議員は、序章で「2004年7月に米国の公式報告である「9・11委員会報告書」が発表されて以来、多くの矛盾点が加速して指摘されるようになった」として、23項目の「主な疑問点」を挙げている。そして
「国際政治を一変した世界史的事件で、一般市民の目に触れる疑問点がこれだけ存在するにもかかわらず、関係者が説明責任を果たしていない事件は前代未聞である。余りにも多くの無実の人命が失われたこの7年間の世界を検証するためにも、新たな国際的、客観的な調査が必要である」
と結論しているのだが、山本氏は読んでいないのか。あるいは目を通したけれども理解できなかったのか。
『W』P33〜35では、東京工業大学の和田章教授が藤田議員にツインタワー崩壊のメカニズムを説明した、という話について書いている。和田教授は制御解体説を否定し、NISTのものに似た(同じ?)崩壊理論を持っているようだ。
「まさに一刀両断である。建築学の専門家が否定しているのだから、もはや制御解体説を信じる根拠などないのは明白だろう」(P34)
「藤田議員が陰謀説をどこまで本気で信じているのかは分からない。和田教授の話を聞いて制御解体説に疑問を抱かなかったとは信じがたい。しかし、国会で取り上げ、議員仲間にも宣伝してしまった以上、もう後戻りできないというのが本音ではなかろうか。世にあふれかえっている反論に耳をふさぎ、論破済みの話を繰り返すしかできないのではないか」(P35)
山本氏はこう書くが、しかし、ある一人の専門家の意見を必ずしも信じなければならないということはあるまい。藤田議員も『追及』で次のように書いている。
「他方、和田教授の見解以外にもさまざまな崩壊説が、世界中の専門家、学者から提示されている。日本からも、和田教授の日本建築学会以外にも、文部科学省による「米国世界貿易センタービルの被害拡大過程、被災者対応等に関する緊急調査研究」、消防庁による現地調査などが行われた。文部科学省の調査には、実際には国土交通省の専門家が多く参加しているが、和田教授の見解とは異なる視点も存在する。
いずれにしても、その後2004年に発表された米国の9・11委員会報告書こそが真相究明の原点である。その報告書に各国から多くの疑問が寄せられており、日本政府としてもこの報告書に対する独自の検証を行うべきと思われる」(P156)
和田教授に関してもう一つ。
「和田教授は学生と模型を使った実験も行なったが、崩壊する際に建物中間部の柱が外部に跳ねて飛び出すなど、WTC崩壊のテレビ映像とそっくりな現象が見られたという」(P34)
この実験には僕も個人的に興味があるのだが、これは論文にまとめられているのだろうか。もしそうでないなら、検証不能で科学的な価値は認められないはずである。普段であれば、山本氏もそう言うはずだが・・・
『W』P35〜36より
「ちなみに、僕が本書で一番笑ったのは、デヴィッド・レイ・グリフィン氏のこんな文章である。
しかし、良い理論のもうひとつの判断基準は、いかなる専門的技術も(※原文では「を」)必要としない。よい理論は首尾一貫していて、内部矛盾があってはならないというだけである。ある説が内部で食い違いを含んでいたら、それは受け入れられない説である。それがそのような食い違いを非常に多く含んでいたら、それは「とんでもない」説になるであろう。
まさにその通りだ! 「トンデモさんは自分に当てはまる言葉で相手を批判する」という法則があるが、グリフィン氏は自分の主張がまさに9・11陰謀説に当てはまってしまうことに気がついていない」
(※ 真ん中の文節が『追及』からの引用部分)
これはないだろう。
『追及』にあるグリフィン博士の文章は、彼の著書『9/11 Contradictions』の一部を和訳したものですが、翻訳者であるきくちゆみは『追及』で次のように解説している。
「ここで紹介する『9/11 Contradictions』にはいわゆる「陰謀論」もないし、推論すらもない。ただ、互いに矛盾する政府高官の発言や9・11委員会報告書の内容やマスコミ報道を丹念に調べあげ、25の疑問点を明らかにしただけだ」
なお、先の『W』の引用部分にあるグリフィン博士の文は、『追及』では次のように続く。
「9・11に関する公式陰謀説には、少なくても25の食い違いがあるので、「明らかにとんでもない」説である」
グリフィン博士についての記述のあとは、山本氏の考える「9・11陰謀説」の詳細と、それへの個別の反論がある。例えば「ペンタゴンに突入したのはボーイング757型機ではなく巡航ミサイルだった」とか、「ペンタゴンで発見されたアメリカン航空77便の犠牲者の遺体は、別の場所で殺されて焼かれ、こっそり運びこまれたものである」とか。
これについては、『追及』共著者の一人・童子丸開氏は次のように書いている。
http://www.asyura2.com/09/warb1/msg/323.html
「もちろん山本氏はこれをこの本からの引用であるとは断っていません。読者がそのように受け取ったとしたら、それは読者の勝手である、とでも言いたいのでしょう。典型的な誤誘導の手口なのですが、それでは、わざわざ鍵括弧でくくって書いたのは、いったいどの本からの引用なのでしょうか。それとも山本氏が勝手に作って、読者がうかつに読むと本からの引用にも見えるような形で書いたというわけでしょうか。何も注釈が無いため分かりませんが、藤田議員の本からの引用でないことだけは確かです」
「本論部分の多くは、この藤田議員の本には書かれていない、おそらく「と学会」と山本氏の「9.11陰謀論とはこのようなものである」とする認識に基づいた記述、そしてそれに対する「反論」に費やされています。それにしても、いったい何に対して「反論」「批判」しているんやろ? この本に実際に書かれていないことを自分の頭の中からひねり出して、それに対して反撃してみせる、まさに自家中毒のような気持ちの悪い文章といえるでしょう」
個別に見ていこう。一つめ、「WTCが倒壊したのは旅客機が衝突したためではなく、あらかじめ仕掛けられた爆薬によって制御解体された」について。
「そんなことをする必要がどこにある?」(P36)
犯罪の必要性は犯罪者にしか分からないだろう。
「ちなみに、陰謀論を唱える物理学者のスティーヴ・ジョーンズ教授は、ナノサーマイトなる新型爆薬(誰も実物を見たことがない)が使われたと主張しているが、どのぐらいの量が必要なのかと質問され、「一○トン以上、おそらく一○○トン」と答えている。お話にならない」(P36)
「陰謀論を唱える」とは随分と大雑把な書き方だが…。
「スティーヴ・ジョーンズ教授」とあるが、Stevenだから「スティーヴン」などとすべきだろう。また教授も既に辞めている。
ナノサーマイトを「誰も実物を見たことがない」としているが、これはどっから出てきたんだ。ナノサーマイトに関する論文が多数存在するようだが。例の論文にも「DISCUSSION」に「4. Did the Technology to Make Highly Exothermic Nanocomposites Exist Prior to 9/11/2001?」という項目がある。僕は読んでないけど。
「一○トン以上、おそらく一○○トン」という台詞は『Skeptic's Wiki』(http://sp-file.qee.jp/cgi-bin/wiki/wiki.cgi?page)の「ナノサーマイト」のページからの写しだと思うが、これを言っているのはジョーンズではなく、Niels Harrit。また、動画を見ると
"Over 10 tonnes, possibly 100 tonnes."
と字幕がある。なので「10トン以上、ひょっとすると100トン」くらいの訳になるのではないだろうか。元のデンマーク語は分からないが。
(動画 http://www.youtube.com/watch?v=56KFHIq6KZM)
また「どのぐらいの量が必要なのかと質問され」と書いているが、元になったと思われる動画では
"What quantities are we talking about?"
と字幕がある。これを「どのぐらいの量が必要なのか」と訳すのは無理があるだろう。Harritの回答も、WTC崩壊の際に発生した粉塵の総量と彼が入手したサンプルとの比較による、いわば「存在したナノサーマイト」の推量であって、ビルの倒壊に「必要な量」ではない。元になったと思われる『Skeptic's Wiki』の記述でも、「どれだけの量のナノサーマイトが仕掛けられたか聞かれて」としている。
残りはそもそも『追及』に書かれていないことが多いので、駆け足で。
二つめ、「ビルが崩壊するよりずっと前に爆発音を聞いた人がいる」について。
山本氏は、これを「人間が落ちる音」や「エレベーター・シャフトの中を落下してきて、途中でぶつかったもの」の音、と考えるのが自然だとしている。
三つめ、「ペンタゴンに突入したのはボーイング757型機ではなく巡航ミサイルだった」。これもパス。
四つめ、「ペンタゴンで発見されたアメリカン航空77便の犠牲者の遺体は、別の場所で殺されて焼かれ、こっそり運びこまれたものである」。
「消防士や救急隊員が大勢いる現場に、遺体をこっそり運びこめるものだろうか? 誰かに見られて「何で遺体をよそから運んでくるんだ?」と言われたらおしまいではないか」(P38)
とか書いているが、こんな話は聞いたことがない。
五つめ、「イギリスのBBCは、WTC第7ビルが実際に倒壊する二五分も前に『崩壊した』と報道した。BBCもこの謀略にからんでおり、第7ビルが崩壊することは事前に伝えられていたに違いない」。
「単なる誤報だと考えて、なぜいけないのか?」(P38)
その誤報が25分後に現実のものとなったから。
以上。指摘すべき間違いは他にもあるが、長くなりすぎるので投稿を別にする。
僕がこの文章を書いた目的は、『W』の間違いを指摘し、著者に訂正や撤回を求めることにある。だからこれで終わりなのだが、しかし、『W』や山本氏に対する個人的な感想も書いておくべきかも知れない。
僕の見解は、次に引用する山本氏の推察とよく似ている。単語を適当に置き換えて読んでほしい。
「藤田議員が陰謀説をどこまで本気で信じているのかは分からない。和田教授の話を聞いて制御解体説に疑問を抱かなかったとは信じがたい。しかし、国会で取り上げ、議員仲間にも宣伝してしまった以上、もう後戻りできないというのが本音ではなかろうか。世にあふれかえっている反論に耳をふさぎ、論破済みの話を繰り返すしかできないのではないか」