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http://news.tbs.co.jp/newsi_sp/intelligence/
ジャーナリスト 藤村幹雄
ノーベル平和賞はもともと、欧州知識人の理念と欧州の利害を直接反映した政治的な賞であり、胡散臭さが感じられる。「核廃絶」を唱えただけで、実績のないオバマ米大統領への授賞は、米国の核戦略や外交選択肢を束縛する可能性がある。
現職指導者への平和賞授賞は、1990年のゴルバチョフ旧ソ連大統領、2000年の金大中韓国大統領らの例があるが、2人とも受賞後は冴えなかった。
ゴルバチョフ氏はその後のエリツィンとの権力闘争や各民族共和国の独立志向に断固たる措置をとれず、結局ソ連邦の墓堀人となった。平和賞が足かせとなり、平和主義者に見せかけるため、実力行使をためらったのだ。
金大中政権は受賞後、北朝鮮が核・ミサイル開発をエスカレートしても、北朝鮮に肥料や食糧支援を続けた。平和賞受賞で北朝鮮に圧力をかけることができず、米韓の離間を招き、結果的に北朝鮮の核実験を放置した。平和賞の勲章が韓国の外交戦略を束縛したのだ。
オバマ大統領は「自分は賞に値しない。驚き、かしこまっている」とコメントしたが、ベテラン政治家なら受賞を辞退したかもしれない。ノーベル平和賞が制約となり、核戦略の選択肢が狭められるからだ。泥沼化するアフガニスタン戦争やテロとの戦いで実力行使をためらうことも予想される。
米国の世界戦略で軍事力行使の脅しは重要な武器。「平和賞は底意地の悪い欧州人が米国の凋落を早めようと仕掛けた罠」(外交専門家)とのうがった見方もある。
ブッシュ前政権の一極主義から国際協調路線に転換したオバマ大統領への授賞決定は、明らかに欧州の利益に沿ったものだ。
同じ欧州の英紙タイムズも「選考委員会の決定は極めて政治的だ。過去6人の受賞者のうち3人はブッシュ大統領の政敵に贈られている」と政治性を問題視した。2002年のカーター元大統領、05年の国際原子力機関(IAEA)、07年のゴア元副大統領は、いずれもブッシュ政権に批判的で、欧州の味方だった。
タイムズはまた、「選考委員会は過去30年間、これまでの業績ではなく、現在進めている大義に対して賞を与える傾向が強い」と指摘し、選考の場をノルウェーからスウェーデンに移すよう求める識者の談話を伝えた。
自主管理労組「連帯」の指導者でやはり平和賞を受賞したレフ・ワレサ元ポーランド大統領も「オバマ氏はまだ何も貢献していないのに、早すぎる」とコメントした。
実は、83年のワレサ氏への授賞の裏でも、ポーランドなど東欧の民主化運動拡大を望んだ西欧側の意向が働いていた。平和賞は欧州の利害と直接絡む政治的イベントであることを認識すべきで、日本のメディアの扱いは異常といえる。