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書物短評 : ロバート・クーパー 「国家の崩壊」 日本経済新聞出版社
アフガニスタンで、アメリカ軍の、軍事行動が始まっている。これまで、軍隊とは別行動を取ってきた、医療・教育・公共施設の建設工事を担うNGO等と共に「常に」軍隊が同伴する、「ハードパワーとソフトパワーの、並存・併用」と言う、新しい軍事行動のパターンが、今回採用されている。
これが、オバマ大統領式の軍事行動である。本書は、この新しいアメリカ軍の行動様式と歩調を合わせたEU側からの提案=オバマへの賛同の書である。
著者は英国外務省出身の英国上級外交官であり、かつては東京の英国大使館に勤務していた。その後、イングランド銀行、英国政府の内閣官房等で要職を務め、エリザベス女王の訪日に同伴し、その訪日を成功させた事への「功績」から、女王からロイヤル・ヴィクトリア勲章を授かっている。国王・女王・天皇から勲章を授かるという「人間として最低の恥知らずな行為、人権侵害」を嬉々として受け入れている事でも明白なように、著者クーパーは、2001年に始まる、前ブッシュ政権のアフガニスタン侵略戦争では、ブッシュに協力した英国政府のアフガニスタン特別代表として、「アフガニスタン人の虐殺」の中心に居座り続けると言う「恥知らずブリを、発揮している」。
人間は、自分の行うべき仕事を全人生を賭し達成した時、自分の人生に自分で誇りと名誉を感じ、自分自身の苦労と努力と、苦渋に満ちた自分の人生を讃えるのである。誇りある人間は、国王・女王・天皇「ごときに、讃えられるために」、人生を生きるのではない。
ダイナマイトを開発し、世界中を戦争と人殺しに巻き込み続けているノーベル財団が、毎年、世界の戦争多発に貢献した核兵器=核物理学者等々に与え続けているノーベル賞受賞者等の、「世界に誇る知性・痴性」を発表する「名門雑誌=英国プロスペクト誌」。この雑誌の「世界最高の知性=痴性100人」に、クーパーは選出されているが、アフガニスタン人を大量虐殺した恥知らずブリに、ふさわしい、「痴性列伝」への仲間入りである。
著者は、本書で、外交交渉・経済支援等々の「ソフトパワー」は、交渉決裂時における、軍事力=ハードパワーの行使と一体であると述べ、アメリカ・オバマ政権のブレーン=ジョセフ・ナイのソフトパワー論の「焼き直し」を行っている。クーパーは、ヨーロッパにおける、ジョセフ・ナイである。
アメリカ・ドル帝国が、やがて崩壊する時、現在平静に統一されているように見えるEUも、決して、安定し続けるという保証は無い。崩壊したアメリカ国家は、やがて、メキシコ・カナダを含む北米帝国として復活し、さらに中南米を含むアメリカ大陸帝国として復活する日が来る。EUも、紆余曲折を経験しながら、やがてロシア、中国との、ユーラシア帝国一体化の方向に進む。グラスに入った液体が、外見的には安定しているように見えながら、その分子レベルでは、分子が激しく行き交い激突し合っているように、こうした大帝国は内部で様々な勢力が拮抗・対立し合い、紛争を続ける「液状化」を抱え込む。
その時、軍事力で「液状化」を止める事は不可能であり、外交交渉力・経済力・技術力・文化力、あらゆるパワーが、兵器・兵力に十分、対抗可能な「軍事的効力のあるパワー・統治力」として再評価されなければならない。
2009年現在においても、中国が所有する米国債を市場で売却する事で、「容易にアメリカ帝国は崩壊する」。日本が、日本への敵対国への技術供与を戦略的にストップすれば、どの国も戦闘機を飛ばす事が不可能になる。こうした、経済力・技術力=ソフトパワーの持つ、「軍事力側面」に注視した時、ジョセフ・ナイは、軍事力が世界最強であるアメリカ帝国の終焉を自覚し、ソフトパワー論を展開しなければならなくなった。ナイが登場する、歴史的必然が、そこには存在する。
クーパーは、ナイの単純コピーでしかないが、EU内部の「液状化」、将来におけるユーラシアの混沌を直感し、ソフトパワー論を展開せざるを得なくなった。
期を同じくして出現した、ナイと、クーパーのソフトパワー論は、軍事力に依存してきた大帝国の「崩壊への怯え」と、死期の迫った高齢者が籐椅子に寄り掛かり落日を眺める時の憂愁によって、生み出されている。
これが、2009年における、大英帝国の使徒クーパーの「現状認識」である。