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核抑止力(MAD: Mutual Assurance of Destruction)を北東アジアの状況で考える必要がある
http://www.asyura2.com/09/wara9/msg/723.html
投稿者 調査研究班米国担当 日時 2009 年 7 月 12 日 14:12:04: 73KLMxVc5LtsY
 

(回答先: 核を保有したい人たち 投稿者 摘発求む 日時 2009 年 7 月 12 日 08:54:58)

MADを北東アジアで考える必要があります。北東アジアは、帝国主義的動きを強める中国とロシアに対峙する必要があります。これは欧州とは異なります。更に、米国と軍事同盟を進め経済統合を強化する限り、米国の世界戦略の中で日本は立ち回らなければなりません。現在米軍は、中国を仮想敵国として定めており、日本は中国の核の脅威を真っ先に受けます。この為、北東アジアでは、冷戦タイプの抑止を引き続き維持する必要があります。(F22対日輸出をサポートする米国議員は、上記をよく引用しますし、空自、在日米軍の抑止戦略担当者も同様の主張を繰り返しています。)このためのTMD(非現実的と分かっていて購入している)であり、米国が提供している『筈』の核の傘です。

米国でも、日本が核武装するべきだという議論はなされています。これは安全保障から当然の議論です。

更に、「日米安全保障条約」は2005年から変質しており、日本は自衛しなければならなくなっています。(在日米軍は、日本を守るためには動かない。北朝鮮に対する脅威も、基本は自存自衛)この日米安全保障条約の変質が、まさに日本が核保有しなくてはならない理由になります。この事実は日本国内ではなぜか明言されることなく隠されています。この経緯は、外務省の孫崎氏が下記の著作で明らかにしています。

http://www.amazon.co.jp/日米同盟の正体~迷走する安全保障-講談社現代新書-孫崎-享/dp/4062879859

日本も『太平洋条約機構(仮称)』のような、オーストラリア・ニュージーランド・韓国(できれば北朝鮮壊滅後の統一朝鮮国)、台湾などを含める非関税障壁・軍事同盟のような後背を持っていると、より多角的に国を守れます。しかし、多角的防衛はだめというような雰囲気が国民に浸透しているため、選挙を重視する日本の国会では、先鞭をつける政党が存在しません。

欧州や米国本土で核を削減できているのは、敵国がソ連WTOだったからです。今ではソ連・東欧諸国は瓦解し、ロシアは既にEUとの貿易通商が進み、欧州で戦闘を行う様な戦争原理(ドクトリン)を適用するとは思われていません。更に、欧州ではEU及びNATOなど、重厚な安全保障機構が存在するため、EUの非核国を攻撃すると、少なくともNATO加盟諸国はすべて敵になります。この為、MADの前提条件が崩れており、拠って、核は不要になったと判断する国(英国など)が存在します。特に米国オバマ政権(民主党)の究極の目標は核兵器ゼロであるため、将来的には不要になる装備ということで、既に核兵器を軍予算から外し、政府の政治的な予算へ移行すべきだという意見もあります。

下記は、英国陸軍(将クラス)、現在は貴族院議員の発言です:General David John Ramsbotham, Baron Ramsbotham GCB CBE (b. 6 November 1934) is a retired British Army officer, who later served as Her Majesty's Chief Inspector of Prisons. He was awarded a life peerage in 2005, and now sits on the cross benches of the House of Lords

最近でも、英国陸軍の退官(将)が、英国の核弾頭トライデント・ミサイルの核抑止力はまったく使い物になっておらず、SLBM及び潜水艦を修繕するより、通常兵器を購入するほうがいい、と述べたりしています。

http://www.nation.com.pk/pakistan-news-newspaper-daily-english-online/International/17-Jan-2009/UK-nuclear-submarines-useless

しかし北東アジアは異なります。抑止力の観点から、日本政府による戦術核の製造技術・運用技術・H2ロケット等の運搬手段の保有は絶対必要と私は判断します。それをどの程度の即時交戦運用の体制に高めていくのかは、その時々の軍事的緊張のタイプによりますが、技術保有は戦略レベルでの抑止力を持つために絶対必要です。

核兵器の使用は、保有国が限られていること、交戦規定に定められた通りの使用しかしない、更に核兵器を持つ国はすべて産業国家で正規戦を前提とする、というような諸条件から、相互確証破壊が結果として齎されるため、抑止力となる、という考えです。ゲームの理論に従うと、核兵器を持っている国は、核兵器を使うことを躊躇しないということを敵国に周知する必要があり、更に攻撃体制に信憑性がなくてはなりません('credible')。このため固定発射式・移動式、デコイ、発射命令体制の分散化・・・大変大きな費用が必要で、更にそれを充実させようとすると軍拡が誘発されやすくなります。

さて、台湾海峡の緊張時に、中国作戦担当者が以下のように述べました:
“If the Americans draw their missiles and position-guided ammunition on to the target zone on China’s territory, I think we will have to respond with nuclear weapons,” Zhu Chenghu, a major general in the People’s Liberation Army, said at an official press briefing for foreign journalists.

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/article544283.ece

米国がこれを真に受ければ、軍事作戦は冷戦的に不可能となります。逆に撃たれることはないと見られてしまうと、紛争は発生します。

イギリスは核保有国(すべてSLBM)ですが、実質はアメリカ軍のもの。自国で発射を決定できない(トライデントは米国が所有、米国の許可なしに発射できない)ため、アルゼンチンは米国が介入するかを事前打診、しないということだったので、フォークランド・マルビナスが占領されてしまいました。英国は自力で反撃せざるを得ませんでした。

日本も、核戦争を独自で遂行する能力がなければ、冷戦タイプの抑止を実現するためには、核弾頭だけ持っても持たなくても、あまり意味がないということになります。更に、持っていても使わないと信じられてしまうと、先制攻撃されてしまいます。もし日本に戦前の体制が続いていたならば、恐らく日本は核兵器を既に配備していると思われますが、敗戦となったため、パックス・アメリカーナの体制下で米国戦略を支える国となっています。そしてもちろん米国は自国と同等の戦力を持つような兵装は悉く反対・潰します。こういう文脈から、フランス人の決意と覚悟は大変賞賛できます。  

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