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2009-06-25 13:00:00 | IISIAが読み解くマーケットと国内外情勢
22日(テヘラン時間)、イラン当局は英国人外交官2名に対し、「スパイ活動を行った」との理由で国外退去命令を出した。これに対し、英国政府はその報復措置として翌23日(ロンドン時間)、イラン人外交官2人に国外退去を命じた。オバマ米政権がイランとの直接対話を模索し始めた矢先に、去る12月の大統領選挙の結果を巡り、激しい暴動にまで発展しているイラン情勢だが、ここにきて英国勢を中心に急展開をし始めている。
今回行われたイラン大統領選をめぐっては、「大規模な不正があったのではないか」との指摘が西側諸国によってなされている。これに対してイラン政府当局は西側ジャーナリストの取材活動を大幅に制限するなど、緊張をよりエスカレートさせる方向で対応してきている。そのような中で、オバマ米大統領は24日、「イラン治安当局による暴行を最大限非難する」旨の発表。対イラン政策の転換を外交政策士の“目玉”としてきたオバマ政権だけに実のところ苦しい選択を迫られたのが実態だ。しかも直近では去る5月4日から10日の間にオバマ大統領よりイランにおける宗教士の最高指導者ハメネイ師に対し、「中東地域の安定化のため、協力願う」旨の“熱心”な書簡を出していたとのリーク情報が米連邦議会関係者の間で話題を呼んでいる。とりあえずホワイトハウスは「ノーコメント」と通しているが、徐々にオバマ外交への批判が高まりつつある。そのような中での英イラン関係の“激化”であるだけに、米国勢に続いて英国勢も対イラン政策で躓いていたかのように見える。――はたしてそう単純に見るのが妥当なのだろうか。
まず歴史を振りかえってみると、とりわけ金融マーケットという文脈から見た場合、イラン勢と英国勢のつながりは米国勢の追随を許さないほど深いことに気付く。1870年代頃から英国を含む欧州勢はイランにおける利権獲得に乗り出した。1889年に英国勢はイラン側より、同国において独占的な通貨発行権を与えられ、「ペルシャ帝国銀行」という英国系海外銀行を設立した。ちなみに、米財務当局がここにきてしきりと金融制裁を課してきたイラン国営メリ銀行(中央銀行)は、上記の銀行をイラン勢が“召し上げ”る(=国営化)ことによってできた銀行である。
また1910年代に入って英国勢が石炭から石油へと動力燃料をシフトさせ、「石油の時代」を始めるにあたっても、英国勢の圧倒的な影響下にあったイランの石油資源が大きな役割を果たしていた。その際中心的な役割を果たしたのが、英系メジャー「アングロ・ペルシャ石油」なのであった。ところが1950年代にイラン勢が同石油会社の国有化を図る動きに出る。英国勢はこの国営化を阻止すべく日本を含む各国で法廷闘争を実施する。これに目を付けたのが米国勢であり、ますます左傾化するモサデク政権(当時)を押さえる名目もあって、ついにはCIA(中央情報局)による同政権転覆工作を行った。その結果、モサデク首相は逮捕され、“パーレビ朝=親米政権”が成立したことになっている。――しかし、クリントン政権下でCIAが事実上“情報開示”した文書によれば、このモサデク政権転覆工作とは、他ならぬ英国勢(具体的にはインテリジェンス機関“MI6”)が米国勢に持ちかけたものであったのである(米ジョージ・ワシントン大学国家安全保障文書館HP参照)。しかもCIAによる工作は実のところ大失敗に終わりかけたものの、最終局面で米国勢も見知らぬ「黒装束の集団」がバザール(市場)から現れ、一気に“潮目”は反復したというのだ。英国勢の影がそこに見え隠れする。
最近でも2007年3月に起きたイランによる英海軍掃海艇の拿捕についても、このような英国勢とイラン勢を巡る不思議な動きを見ることが出来る。当時 12日間にわたる拘束の後、“降って湧いたか” のように両国間でハイレヴェル協議が設置されたことが明るみに出たのだ。そして、米国勢を尻目に話し合いが行われ、「問題」は円満解決を見る展開となった。対立の激化を“演出”することで交渉の場から第三国をシャット・アウトし、誰にも邪魔されずに「サシ」の対話で真の利益を得る――実はこの手法こそ、英国勢の“お家芸”というべきだろう。そしてこうして考えた場合、英・イラン間における現在の「緊張状態」の裏側には、“対立”ではなくいつもの通り“排他的に大団円を目論む”という英国勢とイラン勢の意図が見えてくるのだ。
まさに複雑怪奇な展開を見せるイラン情勢。その中で本当の“潮目”を見出すため、私たち=日本人はイラン勢と英国勢が織り成してきた長い歴史を今こそ振り返る必要があるのだ。そして、その“潮目”の向こう側にあるのは意外にも外し」という結末かもしれないのである。
http://blog.goo.ne.jp/shiome