どのように生き ていけるのか 三月二十日、東京・水道橋の在日韓国YMCAアジア青少年センターで「ガザに光を!現地緊急報告集会」がガザに光を!実行委員会の主催で開かれ、昼間に行われたWPNの参加者が多数を占めた。一月にガザ入りしたジャーナリストの土井敏邦さんがイスラエルによる空爆・地上攻撃後の様子やパレスチナ人のインタビューをビデオ撮影したものを映しながら現地報告を行った。余りの惨状に、パレスチナの人びとが今後どのように生きていくことが出きるのか、われわれは何をしなければ考えさせられるものだった(別掲)。 次にアラブの音楽に挑戦している松本泰子さんがアラブと日本の歌を披露した。続いて、パレスチナ支援の活動をするNGOから報告が行われた。 アムネスティ・インターナショナル日本の川上園子さんが「イスラエル軍が使った武器(白リン弾、フレシェット〔小さい矢が5〜600本が空中で炸裂する〕、立方体榴散弾〔無人機から発射される新型ミサイル〕など)が国際法で禁止されており、戦争犯罪として訴追すべきという人権専門家の声があがっていると報告し、戦争犯罪を裁こう」と訴えた。 次に在日本韓国YMCAが「ガザにもYMCAがあり、職業訓練や幼稚園を運営し、さらにオリーブの植樹支援キャンペーンを行っている。募金などを通して支援している」と報告した。JVC(日本国際ボランティアセンター)から@救急セットの提供A先天性代謝異常疾患の子どもへ治療用ミルクの提供B栄養失調児へ新鮮な食料の提供C幼稚園の子どもたちへぬいぐるみの提供を行っている」と活動を報告し、「無力であることと、微力であることは違う。大海の一滴が大海をつくる」と訴えた。 今回ほどつらい ことはなかった パレスチナ子どものキャンペーンから次のように報告があった。 「昨日ガザから帰ってきた。私はガザに行くようになって二十年目になる。今回ほどつらいことはなかった。人が抱えている悲しみの深さを感じられたことはない。一面瓦礫の山。パレスチナ人が苦しい経験を話してくれる。知ってほしいと語る。子どもはつらい思いを抱えているので心を開けない。私たちは農家から野菜を買い上げ、障がい者の子どもに配る。農地の三〇%を破壊された。ガザの中の方に押しやられている。支えないとガザが崩壊する。エジプト側から物が入っているが、ガザの経済を回さないといけない。援助でしか生活できない状態だ。国連の支援会議が開かれ、EU・日本・米が支援するとなった。しかし封鎖をどうするか、イスラエルに破壊しないことを約束させることができるのか、ここがはっきりしないから、インフラの復興支援が具体化しない」。 「署名を四万八千筆集めた。一千万円を超えるカンパが集まった。五月までに千人の子どもたちの検診と栄養補給をする予定だ。現地のNGOのワーカーたちを支援しなければならない。おとなたちが希望をもって子どもたちを育てられるようにしなくてはならない」。 最後にピースボートが「暖房がなくビニールを着て寝ている状態だ。子どもたちはPTSDになっているが、イスラエル人を殺そうとは思っていない。ただ安全で平和な生活がしたいだけだ。見捨てないで、と言う。希望を捨ててはいけない」と報告した。 報告はいずれもパレスチナ・ガザが崩壊の危機に陥っていることを明らかにした。イスラエルの封鎖・占領をやめさせる運動をつくりだしていこう。 (M) 停戦後の一月二十三日にイスラエルとの国境、北部のゲートが開かれた。アベドラ地区はイラクのファルージャと同じで建物に対する徹底的破壊とガザ市民に対する無差別の虐殺が行われた。アメリカンスクールでさえ破壊された。白リン弾は十日後にも燃えていた。医薬品や豆の倉庫が爆撃され、使い物にならなくなっていた。 戦車の砲撃によって十四人の家族のうち十一人が殺されて、生き残った子どもの一人は両足切断された。別の場所ではF22戦闘機からの攻撃で四階建てのアパートが崩壊し、三十五人のうち二十三人が死んだ。白旗を掲げた少女が十メートルからの至近距離から射殺された。また、サムリファシクーでは百二十人が一カ所に集められ、ミサイル攻撃を受け二十九人が死んだ。こうしたひどい攻撃によって、子どもたちは人権や民主主義が信じられないとトラウマに苦しんでいる。 日本ではあまり報道されていないが、産業への破壊も徹底的に行われ生活基盤が崩壊した。果樹園やイチゴのビニールハウスを戦車と白リン弾で踏み潰し焼き払った。四百頭の牛を飼っていた牧場で三百頭が殺され、死体はそのままにされていた。 毎日六百トン生産していたコンクリート工場が壊された。撤退の十二時間以内に東部の二百の工場が壊された。これはイスラエル軍の作戦として行われた。 ハマスのロケット攻撃があるからそれへの報復として、イスラエルの軍事侵攻があると「暴力の応酬」と報じられるがそれはまったく違う。パレスチナ側がテロに走る原因はイスラエルによる占領だ。イスラエル軍は二〇〇五年にガザを撤退したが、封鎖し軍事的にコントロールしている。これは占領が続いていることだ。占領は目に見えにくく絵に表しにくい。 そして、パレスチナ抵抗勢力とイスラエル軍との間の攻撃力の差があまりにも歴然としている。イスラエルも悪いがパレスチナも悪いというのはウソだ。 産業・生活破壊がものすごく、その再建のための建築資材を持ち込めないので、生きていくのが非常に困難だ。封鎖を解き、占領をやめさせることが緊急に必要だ。(ビデオ説明をおこしたもの、文責編集部) 土井敏邦さんのプロフィール 中東専門雑誌記者を経て、現在フリージャーナリスト。一九八五年よりパレスチナ・イスラエルの現地取材を続けている。主な著書は『沈黙を破る│元イスラエル軍将兵が語る占領│』(岩波書店)、『パレスチナの声、イスラエルの声』(岩波書店)など多数。二〇〇九年完成の記録映像『パレスチナ・届かぬ声』(4部作)は、十五年間パレスチナ・イスラエルの双方を追い続け、占領の構造を描こうとした作品である。今年も一月からガザに入り、現地の惨状を報道している。
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