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特集:国際情勢分析/イスラエル ネタニヤフ右派連立政権誕生へ 小政党に振り回され短命に - FujiSankei Business i./Bloomberg GLOBAL FINANCE
10日、イスラエルで総選挙の投票が行われ、13日に開票結果が発表された。中道カディマが右派リクードを1議席上回り、第一党になったが、全体では中道左派政党は後退し、右派政党が過半数の議席を獲得した。第二党リクードのネタニヤフ党首を中心に組閣が行われるとみられる。選挙前の世論調査で国民は「強い指導者」を望んでいることが示された。しかし、選挙結果からは再び政権基盤の弱い政府ができる見通しだ。
【分析】
選挙結果は、連立政権樹立に向けた多数派工作を、混乱に陥れている。まずペレス大統領は、第一党カディマのリブニ党首か、第二党リクードのネタニヤフ党首のどちらに組閣を命ずるか決定しなければならない。従来なら、最多議席を占める第一党党首が選ばれるが、カディマは第一党であるものの、第二党と1議席しか差がなく、潜在的な連立パートナーである左派が大きく議席を減らした。ほとんどの政治家は、大統領はネタニヤフ氏を選ぶとみている。
右派と宗教政党は過半数を占めたが、その内実をみると、安定した長期政権を作ることは極めて難しそうだ。各党の選挙綱領を比較すると、リクードのネタニヤフ党首は、新政府が直面する差し迫った緊急課題に対処するために必要十分な支持を、「民族主義」政府内で得られる見込みは小さい。ネタニヤフ政権ができたとしても、新政権は議会に法案を提出する前に、事実上、すべての問題について、激し詳細にわたる政党間の激しい駆け引きが行われるだろう。
◆米政権と衝突も
1院制議会「クネセト」120議席中、右派・宗教政党が65議席を占めたが、リクードのネタニヤフ党首は外交、経済、連立政権内の政策論争など、さまざまな課題に直面するだろう。
第三党に躍進した極右政党「わが家イスラエル」のリーバーマン党首は、選挙後の第一声で、連立政権に入る条件として、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスを新政府が「粉砕」することを求めた。宗教民族主義政党「国民連合」は、入植地からの撤退など、領土的譲歩には絶対反対だ。右派連立政権を作るためには、これら政党の協力が不可欠だが、ネタニヤフ氏は極右政党に外交政策を人質に取られて、中東和平を目指すオバマ米政権と衝突しそうだ。
1990年代にネタニヤフ氏が右派連合を率いて首相を務めたとき、米国は民主党のクリントン政権だった。ネタニヤフ氏は、パレスチナ問題で譲歩を迫られ、民族主義政党が連立から離脱して政権が崩壊した。
現在、イスラエルは深刻な経済危機に見舞われている。今年1月1日以来、予算案が通過しないまま、財務省と中央銀行によって経済政策が運営されている。新政府が45日以内に予算案を通すことができなければ、自動的にまた総選挙となる。ユダヤ教超正統派政党の「シャス」と「統一トーラー・ユダヤ教」は、育児手当や宗教組織への財政援助を求めているが、ネタニヤフ氏がこれを認めるなら財政赤字は制御不能に陥るだろう。
◆玉虫色の協定?
右派政党も一枚岩ではなく、政策が大きく異なる。世俗民族主義の「わが家イスラエル」は民事婚制度の確立を主要選挙公約に掲げていたが、これには宗教政党が反対している。宗教政党シャスはイスラエル辺境の貧困地域に公共サービスを拡大することを求めているが、そうすればヨルダン川西岸地区の入植地への支出を減らさなければならず、国民連合など入植者政党が反対する。ネタニヤフ氏は経済再生計画の核にインフラ整備を掲げ、リクードは非宗教の公立学校の予算削減に反対だ。ネタニヤフ氏は、各連立パートナーが好きなように解釈できる玉虫色の連立協定を起草し、右派政党間の深刻な食い違いから逃げようとするだろう。
ネタニヤフ氏にとって最善の生き残り策は、選挙期間中に約束したように、中道カディマ、左派労働党と国民統一政府を作ることだ。カディマに対してリクードが大幅に議席を上回っていたなら、ネタニヤフ氏は強い立場で国民統一政府を目指すことができただろう。しかし、選挙結果は、国民統一政府よりも、右派連立政権に向かわせようとしている。中道左派政党にとって、右派と組むネタニヤフ氏は連立パートナーとして魅力に乏しい。ネタニヤフ氏は、リブニ氏が望む、本来ならリクードの大物が手にするはずの重要ポストをカディマに与えることで、右旋回からバランスを取ろうとするだろう。
【結論】
右派リクードのネタニヤフ党首は、第一党の中道カディマを連立に加えようと努力するだろうが、最も可能性の高い結末は強硬右派政府の誕生だ。ネタニヤフ氏は小政党の要求に振り回されて、確固とした国家戦略がとれず、政権は弱く不安定で、短命になるだろう。カディマのリブニ党首が首相になるためには、「わが家イスラエル」など右派政党を味方につける並はずれた戦略が必要だ。
http://www.business-i.jp/news/special-page/oxford/200902180006o.nwc