2009悲喜こもごもの主役たち(2) 強い発信力 政権翻弄 亀井静香金融・郵政担当相 野党の少数政党から政権中枢へ。九月の政権交代により、四年ぶりに与党に返り咲いた亀井静香金融・郵政担当相。今回は少数政党としての閣僚入りだったはずだが、いつしか政権内では選挙で大勝した民主党を抑え込み、発言力は日増しに高まる。政治家として再び巡ってきた“わが世の春”とばかりに鳩山政権を翻弄している。 「今日は記念すべき日だ」。日本郵政株式売却凍結法が可決された今月四日、本会議の直前に開かれた記者会見で亀井氏はうれしそうに満面の笑みを浮かべた。 さかのぼれば二〇〇五年の総選挙。派閥を率いていた亀井氏が自民党を追われた直接の原因は、当時の小泉純一郎首相の肝いりで進められていた郵政民営化に反対票を投じたことにあった。その郵政民営化を覆す第一歩となる法案を自らの手で成立。さまざまな思いが去来したに違いない。 亀井氏は四年前に受けた仕打ちを今も決して忘れてはいない。講演会や会見ではたびたび「(小泉氏は)私どもを除名し、地獄の底に突き落とした」などと語り「こんな小泉政治、いずれの日かひっくり返してやる。郵政もひっくり返してやる」と当時の思いを明かす。四年間野党で政治を続けてきた原動力は、この悔しさだったともとれる。 臨時国会では郵政株式売却凍結以外に、もうひとつ注目を集めた法案があった。「モラトリアムだ」とぶち上げ、金融界を騒然とさせた中小企業金融円滑化法だ。当初、亀井氏が「モラトリアム」という言葉を多用して混乱を招いたものの、結果として既存の制度を組み合わせた体系に落ち着いた。それでも一連の騒動はメディアで連日取り上げられ、亀井氏の存在感を示すには充分だった。 独壇場だった臨時国会は終わったが、亀井氏の勢いはなお衰えることはない。補正予算では民主党の示した金額では「納得できん」と上積みを求め、基本政策閣僚委員会への出席を拒否。最終的には民主側から一千億円の譲歩を引き出した。その後も普天間飛行場の移設問題や子ども手当の所得制限でも常に強いメッセージを発信し、影響力を示す。 来年には参院選が行なわれる。連立与党に変化を生じさせる可能性をはらんでいるだけに、豪腕の亀井氏が、その前に何らかの策に打って出ることも予想される。来年も亀井氏が台風の目になることは必至で、その言動に鳩山由紀夫首相が振り回される状況は続きそうだ。 (木村留美)
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