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@これは勇気のある本だ。命がけの本だ 蓮池透さんと北朝鮮問題について、じっくりと話し合った。7月30日(木)、神田の三省堂本店だ。午後7時からトークが始まる。その後、会場の人の質問に答え、終わってからサイン会。蓮池さんの著書『拉致』(かもがわ出版)の出版記念トークなので、この本にサインする。 じゃ、その間、私は休憩かと思ったら、私の本もある。三省堂の売り場から私の本も集めてきたのだ。会場に来た満員の人達も優しい。本当は蓮池さんの話を聞きに来たのだし、蓮池さんの本にサインしてほしいのだ。でも、それでは可哀想と思ったのか、ついでに私の本も買い、サインをしてもらう。ありがたいですね。久しぶりにサインをしました。 私の本では、『愛国と米国』が多かった。それに、『ヤマトタケル』『「蟹工船」を読み解く』『公安警察の手口』もあった。30冊ほどサインした。蓮池さんは100冊以上だろう。 書店のトークショーはいい。じっくりと話せるし、本も売れる。本屋さんだから本は準備してくれるし、ありがたい。他の書店でもこうしたトークはやっている。ジュンク堂新宿店、池袋店。青山ブックセンターなどだ。今まで、何度か行った。 サイン会が終わって、近くの居酒屋で打ち上げ。蓮池さんとも久しぶりだったし、嬉しかったので、ついつい飲み過ぎた。おかげで次の日、朝寝坊した。「ギョ!間に合わねえよ」と焦った。急いで東京駅に行き、新幹線に飛び乗った。「たかじんのそこまで言って委員会」の収録だ。2週分だから、5時まで、ビッチリだ。さらに、その始まる前、中間、終わってからと3本、ネット用の収録。大変だった。1本目は、和歌山カレー事件について。2本目は、三宅さん、ざこばさんと、「選挙後の政局について」。3本目は、田母神さんと「自衛隊について」。 蓮池さんとのトークの前日(7月29日)は阿佐ヶ谷ロフトで、選挙と公明党についてのトークだった。佐高信さん、筆坂秀世さん、南丘喜八郎さんと一緒にトークした。論客ばかりで、私なんて何も喋れなかった。三連チャンのトークだった。それに、溜まってる原稿があるし、他にも取材を受けたり、自分で取材したり…と、忙しい。他の人達はテキパキと片付けてるのだろうが、私は要領が悪い。それに無能だ。だから、仕事がとてつもなく遅い。どんどん溜まる。いけないな、と思いながら、暑い中、喘いでいる。 では、蓮池さんとのトークだ。 蓮池さんは、1997年から2005年まで「北朝鮮による拉致被害者家族会」の事務局長を務める。著書に『奪還 引き裂かれた二十四年』、『奪還 第二章 終わらざる闘い』(新潮社)がある。今は「家族会」事務局長を辞めた。「家族会」や「救う会」のやり方について行けなくなったようだ。そうした悩み、苦しみも今回の本には書かれている。実にいい本だ。勇気のある本だし、蓮池さんだからこそ書けた本だ。 蓮池さんの目的はただ一つ、拉致被害者を奪還することだ。そのために「家族会」の中心として、「救う会」の人々と共に闘ってきた。運動を続けてきた。その運動は大きくなり、国会議員をも巻き込み、「国民運動」になっていった。そして北朝鮮への批判・攻撃は強硬になり、エスカレートした。その中で、運動の本来の目的が忘れられたのではないか。蓮池さんはそのことを迷い、悩み、そして「家族会」の事務局長を辞める。 その過程はこの本の最初に書かれている。「私が変わった理由」として書かれている。実にリアルであり、説得力がある。家族会、救う会の集会には実に多くの人達が集まる。勿論、善意の人達だ。しかし、巨大な集団になると、いろんな人も入る。かなり過激な人もいる。その「過激な人」に煽られ、リードされることも多い。 〈たとえば、集会参加者の中には、日章旗を持っている方が大勢います。そうして、誰かがしゃべると、そう言う方々が旗を振りながら、「そうだ!」とか「けしからん」とか、「『朝日新聞』出て来い!」「NHKはいるのか!」とか、激高するのです。 A「奪還」の主目的を忘れてはダメだ 多くの人々が支援してくれた。それは事実だ。その中で、運動がどんどん過激にエスカレートしたことも事実だ。中にいる人は、薄々そのことに気がついても、言えない。「せっかく応援してくれてるのだから」「今立ち止まったら、せっかくの運動がポシャってしまう」。そう思うのだろう。だから、「断固とした態度で臨め!」「経済封鎖を強化しろ!」という。北の核に対しては、「こちらも対抗して核を持て!」などという声も出る。運動の高揚の中で、どんな過激な発言も、「そうだ!」「そうだ!」と拍手される。それが怖いのだ。これは「集団運動」を体験した人でないと分からない。 蓮池さん自身も、その運動の高揚とエスカレートに巻き込まれ、酔い、つい過激なことを口走ってしまったこともある。と率直に認めている。〈「お前こそ拉致問題の運動を右翼的なものにした張本人じゃないか」と厳しく批判されるかもしれません〉と、言っている。石原都知事と対談した時、気分が高揚してしまい、「憲法九条はおかしい。自衛権を発動せよとまで言及したこともありました。私たちが運動を始めた時、応援して下さった中に右よりの方が多く、頼ってしまったのも事実です」と反省している。そして、こう言う。 〈しかし、いまのべたような経過により、いろいろなことがわかってきました。右翼的な人たちの中には、被害者がかわいそうだとか、人情や家族愛といった善意を前面に出して家族会を支援しながらも、実際には、彼らの目的である、北朝鮮の体制打倒に利用しようとするもくろみがあったのではないかと、いまになって感じています〉 これは重要なことだ。さらに言う。 〈率直に言って、拉致問題をめぐる日朝交渉は行き詰まっており、打開するのは簡単ではありません。その行き詰まりの背景に、北朝鮮の体制打倒を主目的とする人たちの影響があるとしたら、それを一刻も早く克服しない限り、拉致問題を解決する展望も生まれません〉 去年の4月に私は木村三浩氏と訪朝した。労働党の幹部たちと5日間話し合った。その時も、蓮池さんの言ったことを痛感した。向こうは日本の言動を全て知っている。テレビで見て、新聞、雑誌で読んでいる。「何だ、これは人質奪還交渉ではない。我が国を打倒しようとする運動だ」。そう思っているのだ。だったら、〈交渉〉の余地はない。そう思っているのだ。これはマズイことだ。あくまでも交渉のテーブルに着かせるべきだ。そのためには、あらゆる手を使ったらいい。 それなのに、「断固とした態度」で「経済制裁」だけを言い、中には、北の「体制打倒」を叫ぶ人もいる。これでは〈交渉〉ではない。又、少しでも「話し合い」をしようとする人に対しては、「弱腰だ」「相手の手のうちに乗る」「やり込められる」と言って反対する。 以前、横田さんがお孫さんに会おうとした時も、そう言って潰した。又、拉致被害者が「一時帰国」をした時も、「一時帰国なんて言ってない」と言って、「約束」を破った。 その「一時帰国」の約束は確かにあった、と蓮池さんも書いている。だから、「一度返すべきだ」と言うのではない。それこそ日本の「反北」ムードを背景に、十分に利用し、交渉したらいい。 「『一時帰国』の約束は守るつもりでした。でも、国民の怒りの世論が許さない。だから返せない。約束を破って申し訳ないが、理解してほしい」と言って、謝罪したらいい。「バカヤロー、拉致国家に謝罪など出来るか!」と言われるだろう。でも、どんな手を使ってでも「奪還」するのが主目的ではないか。 B金賢姫の提言は重い 去年4月に労働党の人と話した時も、これは感じた。向こうにすれば、「我々は小さな国だから、こんな国との約束は破っていいと思っているのか」と言う。これだけではない。「約束破り」は他にも沢山あるという。 金正日総書記は世界中のメディアの前で、拉致を認め、謝罪し、再発防止までしているのに、前に進めなくなった。謝罪すれば国交正常化するという約束を日本がしたはずなのに、裏切った。北は、そう思ってしまった。蓮池さんもそう言いう。 北を罵倒し、糾弾し、「許せない!」「滅びろ!」と言うだけでは何も解決しない。生温いと思われても、「交渉」するしかないのだ。 大韓航空機事件の金賢姫元死刑囚の言葉に、感動し、蓮池さんはこう言っている。 〈金賢姫元死刑囚が記者会見で指摘した、「北朝鮮の自尊心を傷つけないように、その心を動かす方法を考えるべきです」というのは、注目に値する発言だと思います。この発言の意味を、日本政府は斟酌し、今後の戦略に生かすべきです〉 これは賛成だ。同感だ。日本はただ北を罵倒しているだけだ。「交渉のテーブルにつくな!」と言ってるようだ。「強硬主張」は皆、国内向けなんだ。「私はこんなに闘っている」「こんなに激しい批判をしている」と日本国民に見せたいだけなのだ。向こうには全く届かない。 交渉するしかない。「闘う」というのなら、向こうに行って、やり合うべきだ。「いや、自分はビザが出るはずがない」と言う。そして「安心して」国内向けの強がりを言い、過激なスローガンを叫ぶ。 しかし、私だって20回近く断られ、やっとのことで北に行ったのだ。そして5日間、徹底的に話し合ってきた。私だって行けたのだ。皆も行けるはずだ。 それに、この点では、アメリカは立派だと思った。元大統領のクリントンが行き、逮捕されていた米人記者2人を釈放させた。クリントンは2人の罪を認め、謝罪し、金総書記は特別に「恩赦」で釈放したという。いや、クリントンは「謝ってない」とか、後で言ってる人もいた。まァ、釈放された後なら何を言ってもいい。ともかく、アメリカは「北の自尊心」を傷つけずに、心を動かした。たいしたものだ。日本だって、何度も何度も行くべきだ。麻生首相がダメなら首相経験者は何人もいる。どんどん送ったらいい。 C蓮池さんしか言えないことだ 蓮池さんの本『拉致』には、サブタイトルとして、「左右の垣根を超えた闘いへ」と書かれている。これが一番言いたかったのだろう。拉致被害者を奪還する。それが目的だ。イデオロギーは関係ない。当然のことだ。しかし、現状はそうなってない。苛立ちを込めて言う。 〈いま私は、かつてとは異なり、右翼的な人たちから、「あいつは変節した」「裏切り者」とバッシングを受けています。でも、繰り返しますが、私は右でも左でもないのです。私が願うことは、この運動が、被害者の救出を第一とするようなものであってほしいということだけです。右も左も、垣根を超えて、被害者のために連帯しあえるような運動です。そういう運動がつくれたとき、拉致問題も大きく動くのではないかと、期待しているのです〉 だからこそ、(左翼的といわれる)かもがわ出版からも本を出すし、私とのトークも応じてくれたのだろう。これは貴いし、勇気のあることだと思う。トークの時は、右翼的・保守的な人々からの、「バッシング」の具体的な話も聞いた。透さんだけでなく、帰ってきた弟さんや、両親に対するバッシングもあったという。酷い話だ。拉致被害者を批判できる人なんて、この日本に1人もいない。思い上がった人々だ。 かもがわ出版では、このトークも含め、何人かの人々との対談をまとめて、本にしたいという。その時には、もっともっと具体的な話が書かれるだろう。 本の帯には、衝撃的な文が書かれている。これは蓮池さんでないと言えないことだ。 〈政府が家族の意向に逆らってでも対策をとることが必要な場合もある。感情的になりがちな家族と政府が同じ水準であってはいけない〉 これも勇気のある言葉だ。何かというと、家族会の話を聞き、その要請・要望で政府は動く。それは当然じゃないかと思った。しかし、違うという。これでは政府に「言い訳」を与えてしまうだけだ。「家族会の言う通りに経済制裁した」「断固たる態度で臨んでいる」と。それだけやっているから、十分だろうと。そこまでは言わないが、そういう「言い訳」を許すことになっている。それではダメだという。家族会の意向に逆らってでも、北との交渉をしろという。それがない。又、「家族会」を支援する「救う会」になると、やたらと過激で、イデオロギー過剰だ。これが政府の対応を狭め、足を引っ張る。 〈「救う会」の幹部の方には、日本の核武装や北朝鮮への先制攻撃まで訴える過激なイデオロギーを持っている方が少なくありません。従軍慰安婦もなかった、強制連行もなかった、そういう立場の人が多いのです〉 設立当初は、いまより多彩なメンバーを擁していた、と蓮池さんは言う。でも今日、こうした強硬なイデオロギーを持った人々が中心に座っている。強固な思想を持った人は、運動に熱心だし、持続力もあるからだろう。困難な道だが、蓮池さんには頑張ってほしい。 |