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(回答先: Re: テスト 投稿者 SOBA 日時 2009 年 8 月 07 日 16:51:32)
【裁判員3日目】女性裁判員1人を体調不良で解任 あらたに男性の補充裁判員が参加
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051021001-n1.htm
2009.8.5 10:20
全国初の裁判員裁判となった東京都足立区の隣人女性殺害事件で、殺人罪に問われた無職、藤井勝吉被告(72)の3日目の公判が5日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で開かれた。2日目まで参加していた法廷正面に向かって左から3番目の女性裁判員が、体調不良のため欠席。秋葉裁判長がこの女性裁判員を解任し、あらたに男性の補充裁判員が裁判員として参加することになった。
欠席した女性裁判員が5日朝、裁判所に欠席の意向を連絡してきたという。
【裁判員3日目】検察側が16年求刑、結審後に評議
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051141004-n1.htm
2009.8.5 11:39
全国初の裁判員裁判となった東京都足立区の隣人女性殺害事件で殺人罪に問われた無職、藤井勝吉被告(72)の3日目の公判が5日、東京地裁(秋葉康弘裁判長)で開かれた。検察側は「強い殺意に基づく執拗(しつよう)かつ残忍な犯行だ」として、藤井被告に懲役16年を求刑した。
また、2日目まで参加していた法廷正面に向かって左から3番目の女性裁判員が、体調不良のため欠席。秋葉裁判長がこの女性裁判員を解任し、新たに男性の補充裁判員が裁判員として参加することになった。このため、公判は10分遅れで始まった。
論告に先立って行われた被告人質問で、6人の裁判員全員が質問。「凶器はほかの刃物ではなく、なぜナイフだったのか」「(被告の)娘の遺品のナイフをなぜ犯行に使ったのか」などそれぞれ被告に直接疑問点をぶつけた。
検察側は論告で、「刺し傷が8カ所に及び、負傷した被害者を追いかけ回すなど、悪質な犯行だ」と指摘。藤井被告が、被害者の文春子さん=当時(66)=との日頃のトラブルから犯行に及んだと供述し、法廷でも文さんの行動や言動を批判していることから、「犯行を被害者の責任にしており、反省の態度は希薄だ」と述べた。
審理はこの後、弁護側の最終弁論などを経て結審。非公開で裁判官と裁判員が判決内容を検討する評議に移る。5日の評議で結論に至らなかった場合は、6日の午前に引き続き評議が行われる予定。
【裁判員 熟慮(1)】「包丁とかではなく、なぜナイフだったのですか」6人全員が被告に質問(10:07〜10:20) (1/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051121002-n1.htm
2009.8.5 11:20
《国民が刑事裁判の審理に参加する全国初の裁判員裁判は3日目を迎えた。5日も引き続き東京地裁1階の104号法廷で、東京都足立区の隣人女性殺害事件で殺人罪に問われた無職、藤井勝吉被告(72)の審理が開かれた》
《この日、開廷は午前10時に予定されていたが、直前になって「10分遅れる」との連絡が裁判所からあった。理由は冒頭で秋葉康弘裁判長が説明するという》
《午前10時7分、6人の裁判員が入廷してきたが、廷内では藤井被告の手錠が外れていなかった》
裁判長「ちょっと、ちょっと待ってください」
《裁判員の入廷は、被告の解錠後という決まりがある。いったん6人は奥に戻り、解錠が確認されてから再入廷。やっと開廷だ》
裁判長「それでは、開廷します」
《ここで、開廷が遅れた理由が明かされる》
裁判長「裁判員3番の方が体調不良で来られないという連絡が入りましたので、3番の方を解任することにしました。いいですか。その代わり(補充裁判員だった)7番を裁判員に任命したいと思います」
《正面向かって左から3番目の席に座っていた女性裁判員が体調不良を訴えたため、後方の座席に座っていた男性の補充裁判員が代わりに裁判員となるという。すでに7番の男性は、裁判員席に座っている》
(2/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051121002-n2.htm
《さらに、秋葉裁判長は続ける》
裁判長「補充裁判員3番は、必要がなくなったので、昨日解任しました」
《報告をすべて終えた後、秋葉裁判長は審理入りを告げた》
裁判長「では、昨日の続きに入りたいと思います」
《前日の4日は、事件を目撃していた近隣住民2人や被害者の文春子さん=当時(66)=の長男(37)への証人尋問を実施。さらに藤井被告に対する被告人質問も行われたが、予定時間をオーバーしてしまったため、5日の公判冒頭は前日からの積み残しとなった裁判官と裁判員による被告人質問が行われることになっている》
《被告人質問は裁判員が藤井被告に対して直接質問をぶつける最初で最後のチャンス。果たして、6人の裁判員は藤井被告に対し、どのような問いかけをするのだろうか》
裁判長「それでは、裁判員1番の方からどうぞ」
《向かって一番左に座っていた女性裁判員が口を開く》
裁判員1番(女性)「凶器に使われたナイフですが、道具箱にしまってあったといいましたが、なぜ小島(千枝)さん(被害者の文春子さんが日本で使っていた名前)と言い争ったときに、サバイバルナイフを持ってこようとしたのでしょうか」
藤井被告「なぜ、ナイフを持ってきたかということですか」
(3/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051121002-n3.htm
裁判員1番(女性)「はい」
藤井被告「ナイフを見せて脅せば私の話に納得するのではと思ったからです」
裁判員1番(女性)「包丁とかではなく、なぜナイフだったのですか」
藤井被告「包丁は長くて、ナイフより危険ですから」
裁判員1番(女性)「ありがとうございました」
《1番の女性が質問を終えると、引き続いて「2番」と呼ばれる左から2番目の女性裁判員が、そのまま質問を始めた》
裁判員2番(女性)「今お聞きした質問と重なってしまうかもしれませんが…。凶器は娘さんの遺品だったのですが、それを大事にしていなかったのかな、と」
藤井被告「いや、あのナイフは海に潜ってアワビなんかを取ってくるやつで…」
《藤井被告が裁判員の質問の意図と違う回答を始めたため、秋葉裁判長が助け船を出す》
裁判長「いや、今の質問は、遺品なのになぜぞんざいに扱ったのかということです」
裁判員2番(女性)「遺品なのに、使ってしまうのかなあ、と」
藤井被告「海で使ってたもので、タンスにしまうほどの価値のあるものではないと思ってました」
(4/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051121002-n4.htm
裁判長「そうではなく、そういう(遺品という)大事なものを、脅しとして使って気が引かなかったのですか?」
藤井被告「そこまで気が回りませんでした」
《次に質問を始めたのは、3番の女性裁判員の体調不良により、補充裁判員から裁判員となった7番の男性だ》
裁判員7番(男性)「犯行に及んで、我に帰って(被害者の文さんが)『死ぬかもしれない』と思ったと言っていましたが、救急車を呼ぼうとは考えなかったのですか」
藤井被告「近所の方が見ていたので大丈夫かと…」
《早口でしゃべる藤井被告の声が聞こえなかったのか、7番の男性裁判員が藤井被告に声をかける》
裁判員7番(男性)「もう一度お願いします」
藤井被告「近所の人が見ていたので救急車を呼んでくれるかと思って、怠ってしまったんです」
裁判員7番(男性)「分かりました」
《次々と質問を続ける裁判員。次は、前日に裁判員として初めて質問した向かって右から3番目に座る4番の女性だ》
裁判員4番(女性)「犯行直後に、小島さんから押し返されたと言っていましたが、間違いないですか」
(5/5ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051121002-n5.htm
藤井被告「間違いありません。倒れた状態で見たら、近所の住民が『人殺しー』と叫んでいましたから」
《さらにその隣、5番の女性が、藤井被告の質問が終わると同時に声をあげる》
裁判員5番(女性)「事件を起こした後、銀行(実際は信用金庫)で4万円下ろしたと言っていましたが、最終的に警察に行ったとき、いくら持っていたのですか」
藤井被告「6万円ぐらいです。最初に2万円持ってたので」
《そして、最後に残った向かって一番右の6番の男性裁判員が質問を始めた》
裁判員6番(男性)「えー、質問があります。最初に胸を突かれたと言ってますが、そのあともみ合いになって、あなたが倒れたところまで、その順番を知りたいのですが。あなたは最後に倒れたのですか」
藤井被告「最後に倒れました」
裁判員6番(男性)「被害者を刺されたのは、倒れる前ですね」
藤井被告「はい。最初に刺した位置は確認できませんでした」
裁判員6番(男性)「あなたが最後に被害者を見たのは、倒れた態勢だったんですか」
藤井被告「覚えているのは、近所の住民が『人殺しー』と言った記憶なんです」
裁判員6番(男性)「そのときは倒れていたんですか」
藤井被告「はい、倒れていました」
《これで、今日並んでいる6人の裁判員全員が質問したことになる。昨日までとはうってかわり、裁判員が活発に質問を投げかける。質問を終えた裁判員は、それぞれメモをしたり、次のやり取りに聞き入ったりしながら、裁判の行方を注視した》
【裁判員 熟慮(2)】「昔で言えばアル中です」プロの裁判官の質問にこぼす被告(10:20〜10:30) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051131003-n1.htm
2009.8.5 11:30
(1)へ戻る
《6人の裁判員が一通り質問を終えると、引き続いて3人の裁判官が藤井勝吉被告を“質問攻め”にする》
《これまでの公判で分かりにくかった部分を、改めて問いただし、それを裁判員がじっと聞く。男性裁判官が質問を終えると、次に女性裁判官が、事件当時の心理状態について聞き始めた》
女性裁判官「あなたは(凶器の)ナイフを持ち出したときに、悪いことだと分かっていましたか」
藤井被告「悪いとは思っています」
女性裁判官「そのとき、悪いと分かっていましたか」
藤井被告「分かって…いますね」
女性裁判官「では、なぜナイフを持ち出したんですか」
藤井被告「(被害者の文春子さんに)言っても、(何も)直さないから」
《藤井被告は、近所に住む文さんを刺して殺害した動機として、「植木鉢の置き場所が悪いことや猫よけのペットボトルを倒されたことなどを注意しても直さなかったため、トラブルになり、不満を抱いていた」という趣旨の供述をしている》
女性裁判官「なぜ『やるしかない』と刺そうと思ったのですか」
藤井被告「(文さんから)『おお、やるならやってみろ』と言われたから」
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051131003-n2.htm
《ナイフを持ち出して脅そうとしたが、「やるならやってみろ」と文さんから言われ、実際に刺してしまった−という事件のストーリーを語る藤井被告。その被告の心理状態を細かく問いただす裁判官。裁判員の視線が被告に集まる》
女性裁判官「そのとき、あなたはどういう状態でしたか」
藤井被告「もう判断できない状態でした」
女性裁判官「(胸など死に直結するような場所ではなく)腕とか足を刺そうと思わなかったのですか」
藤井被告「そこまでは判断できませんでした」
《藤井被告は、文さんの左胸や背中などを合計5回以上刺したとして、起訴されている》
女性裁判官「胸を刺せば死にますよね」
藤井被告「殺意については認めています」
女性裁判官「(犯行を決意する際に)文さんに言われた言葉の中で、一番ウェイト(重さ)のあった言葉は何ですか」
藤井被告「『生意気を言うんじゃない』と言われたことです」
女性裁判官「遺族の方々に対しては、いまはどういう気持ちですか」
藤井被告「それは、殺人というあってはならないことをしてしまったので、おわびしたいです」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051131003-n3.htm
《今度は秋葉康弘裁判長が質問を始める》
裁判長「事件前日、いつもより多く酒を飲んだんですか」
藤井被告「はい」
裁判長「いつもだいたいどれぐらい飲むんですか」
藤井被告「だいたい焼酎2合ぐらいです…。それと、最近酒を飲んでいなかった。昨年6月に疥癬(かいせん)になって病院に…」
《藤井被告は皮膚病で一時期、酒をやめていたと説明する。しかし、3月には、また飲むようになっていたようだ》
裁判長「結局、酒を飲むようになったのは今年3月ごろですか」
藤井被告「3月によくなってきたので。でも、あまり飲んでいません」
裁判長「なんでやめなかったんですか」
藤井被告「連れ(友人)が正月ごろになくなってしまい、心の安らぎで…」
裁判長「あなた、自分をアルコール依存症だと思いますか」
藤井被告「はい。昔で言えばアル中です」
裁判長「酒をやめようという気持ちはないんですか」
藤井被告「ありますが、やめられないので…」
裁判長「反省して、やめないといけないという気持ちはないんですか」
藤井被告「家に帰っても誰もいないから、寂しいし…」
《アルコールから離れられない事情を切々と説く藤井被告。裁判員は無言で、その言葉に耳を傾けた》
【裁判員 熟慮(3)】「質問いいですか」突然の裁判員の申し出に声がうわずる裁判長(10:30〜10:40) (1/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051150006-n1.htm
2009.8.5 11:50
《秋葉康弘裁判長から藤井勝吉被告への質問が続いている。裁判長は事件当日の藤井被告の行動を改めて聞き直していく》
裁判長「被害者と目が合ったとき、何を思っていましたか」
藤井被告「ペットボトルを再三倒されて、いつか言わないといけないと思ってました。玄関の戸を開けたところで、『何見てんだ』と言われて…」
裁判長「(午前)11時に出かけようとして目が合うまでの間、被害者に文句を言おうと考えていましたか」
藤井被告「会った瞬間に考えました。それまでは、言ってもムダだからと…」
《歯切れの悪い答えが続く藤井被告。検察側は厳しい表情で耳を傾ける。藤井被告に質問できる最後の機会とあって、身を乗り出して藤井被告の答えに集中して聞き入っていた裁判員も、ため息をつくように肩を落とす》
裁判長「自転車のところにサンダルがありますが、いつ脱げたのですか」
藤井被告「記憶にありません」
裁判長「もう1つは被害者の家の前に落ちていますが」
藤井被告「もみ合いになったときに落ちたのではないかと思います。足の方まで記憶がなくて」
《両端の裁判員は、盛んにメモをとり続ける。そのほかの裁判員は、話の真意を見抜こうと藤井被告をじっと見つめている。藤井被告は裁判長を見つめたまま、特に動くそぶりも見せない》
(2/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051150006-n2.htm
裁判長「サバイバルナイフはお嬢さんの形見といっていますが、お嬢さんのところから持ち込んだものは他にありますか」
藤井被告「CDとか大きなレコード盤とか。写真とか娘の大事なものを持ってきました」
《娘の形見で犯行に及んだという藤井被告。犯行のとき、藤井被告には娘の顔が少しでも思いだされたのだろうか》
裁判長「サバイバルナイフを持ち出したところで鞘を抜いて捨てていますよね」
藤井被告「いいえ。家に戻ったときに捨てたと思います」
裁判長「事件後にお金を下ろしていますが、残高はいくらでしたか」
藤井被告「4万円とちょっとだったと」
裁判長「そうすると、ほぼ全部を下ろしたと」
藤井被告「そうですね」
《以前刑務所に入っていた経験から、刑務所での扱いをこんこんと説明していく藤井被告。事件を繰り返していたという被告の話に裁判員の表情が強ばっていく》
裁判長「途中でお酒を買っていますね」
藤井被告「コンビニエンスストアで買ってバスを待っているときに飲みました」
裁判長「2本買って飲んでいますね。ビールと缶酎ハイ」
(3/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051150006-n3.htm
藤井被告「分かりませんね。缶ビールは記憶にあります」
《藤井被告はビールを買った理由を、前日と同様に「暑かったから」と述べ、法廷内は再度失笑が漏れた》
裁判長「大井競馬場には午後2時に着いていますね。5時ごろに競馬場を出ていますが、3時間は何をしていましたか」
藤井被告「知人が来ると思って、競馬場を1周して、入り口の長いすで座っていました」
裁判長「自分の事件のことは考えませんでしたか」
藤井被告「考えましたが、まさか死亡しているとは」
《自分の起こした事件の重大さを認識していなかった藤井被告の答えに、まゆをひそめた女性裁判員の1人。何を思ったか、裁判長を厳しい表情で見つめた》
裁判長「警察に行かないといけないとは思わなかったですか」
藤井被告「いつもの知り合いが来ないから、これじゃあ来ないと判断して帰ろうと思いました」
《裁判長の質問が終わると、この日補充された裁判員7番(男性)が、「質問いいですか」と声をあげた。これまで、裁判長の質問に淡々と答える藤井被告をじっと見つめ続けてきた裁判員7番(男性)。突然の申し出に、裁判長も驚いたのか、うわずった声で「裁判員7番」と指名。傍聴人の目が一気に裁判員7番(男性)に集まった》
(4/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051150006-n4.htm
裁判員7番(男性)「犯行時のことを無我夢中で何も覚えていないと言っていますが、刺したときに感覚があるとも言っていて、犯行時のことは記憶にあるのですか」
藤井被告「刺したときの感覚はあります。後のことは覚えていません」
《7番の男性裁判員はその後も質問を続ける。藤井被告は相変わらず淡々と、受け答えを続けている》
【裁判員 熟慮(4)】「孫の顔を見せられなかったのが心残り」被害者の次男の言葉にうなずく裁判員(10:40〜10:50) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051157007-n1.htm
2009.8.5 11:56
《裁判官と裁判員による質問が終わった。藤井勝吉被告は席に戻ると、小さく息をついた。続いて、被害者の文春子さんの次男が証言台に立ち、意見陳述を行った》
次男「平成21年5月1日の朝、私はいつもと同じように出勤しました。そのときは、これが母との最後の別れになるとは思っていませんでした。母が亡くなったことを、いまだに実感できません」
「昭和60年7月、私が小学校6年生のときに父ががんで亡くなりました。母は内職で生計を立てていましたが、その後は整体師の資格を取り、ホテルなどで働くようになりました。母のおかげで私は高校を卒業することができたと思っています。母は、悪いことは悪いとしっかりと教えてくれた人でした。しつけには厳しかったと思います。しかし、母がいたので、父がいなくても、私は社会人として成長できたのだと思っています」
《声を震わせて、母親への思いを語る次男。裁判員らは次男の表情を見やり、その言葉に耳を傾ける》
次男「母は苦労の連続でした。でも、それを表には出さず、いつも明るい人でした。祖母の世話も一生懸命にやっていましたが、母が亡くなり、祖母はすっかり弱ってしまいました。以前、親族で不幸が続いたとき、母はそれを気にかけて、高野山で修行をして僧侶の資格を取りました。一緒に修行をした人の話では、母は子供、祖母、親族のために祈っていました。自分のためには祈らなかったと聞きました。そのように母は周りのために尽くす人でした」
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051157007-n2.htm
「まだ仕事は現役でした。母に少しでも楽をしてもらいたいというのが、兄と私の希望でした。今までほとんど旅行もしていなかったので、兄と私は、旅行を楽しんでもらいたいと思っていました。また、兄も私も結婚しておらず、孫の顔を見せられなかったのが心残りです」
《次男の言葉に共感を覚えるのか、裁判員の女性が静かにうなずく。藤井被告は、口を真一文字に結び、視線を落としている》
次男「被告はトラブルがあったとか、母が注意を聞かなかったと言っていますが、私は母からトラブルの話を聞いたことがありません。本当に殺人を犯すようなトラブルがあったのなら、母は私たちに話しているはずです。知らないはずはありません」
「被告はおそらく当日、酒に酔ってたまたま母に因縁をつけたのだと思います。母も言い返したかもしれなかったが、殺されても仕方のないような言動、挑発をしたとは思えません。私たちにかかわらないようにと言ったくらいですから、自分でもかかわりたくないと思っていたはずです」
「母は刺されてから、10メートルくらい逃げたと聞いています。どんなに怖くて、どんなに痛かったか、そう思うと辛い限りです。母は女手1つで家を建て直し、親族の世話をし、普通に暮らしていました。殺されるようなことは何もしていません。自分のために時間を使うこともなく、頑張り続けたまま殺されてしまった。被告の家は私の家から目に入ります。今でも被告の家を見るたびに、被告に対する強い怒りがわきます」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051157007-n3.htm
《次男が涙声になった。裁判員の1人がまた小さくうなずいた》
「母のように殺されたらどう思いますか。母も、理不尽に殺されて、言葉に尽くせないほど無念だと思います。被告が2度と私たちの前に現れないように、厳しい刑を求めます」
《次男が一礼して、退廷した。検察官の論告求刑に入る。藤井被告が1度、肩を揺らした。求刑への緊張感だろうか…》
【裁判員 熟慮(5)】「どちらの意見を聞いて頂けますか」いよいよ論告、裁判員に語りかける検察官(10:50〜11:00) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051207008-n1.htm
2009.8.5 12:07
《検察官が証言台の前に進み出た。大型モニターには鮮やかな青地に「論告」という文字が浮かび上がる。裁判長がうなずくと、検察官は求刑意見を述べる論告を始めた。裁判はいよいよ最終段階に入った》
検察官「検察官の意見を申し上げます。どちらの意見を聞いて頂けるでしょうか」
《検察官は早口で、裁判員に語りかけた。裁判員の1人はじっと検察官の顔を見つめる。検察官の求刑が量刑を決める上で大きな要素となるだけに、真剣な表情だ》
《大型モニターの画面が切り替わり、「第1 事件の概要」と表示された。その下には藤井勝吉被告が近所に住む被害者と口論となり、殺意を持って突き刺して死亡させたという殺人事件であるという内容が書かれている》
検察官「この事実は十分に証明されたものと検察官は確信しています。弁護人は『ぶっ殺すとは言っていない』『小島(千枝)さん(被害者の文春子さんが日本で使っていた名前)を追いかけていない』としています。殺意の内容に争いがありますが、検察官は小島さんの傷について立証することで、ほぼ死ぬと分かっていたことを主張、立証しました」
《大型モニターには、次々と主張の要点をまとめた白抜きの文字が映し出されていく。重要な部分は黄色の文字となり、より強調されている。裁判員のうち、右から2人は手元の小型モニターに注目。右から3人目は検察官を見つめた。左の3人は配られた書面に目を落としている》
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051207008-n2.htm
検察官「背中の傷は刃体の最大長とほぼ一致していて、強い力で刺したことが認められています。小島さんの胸、肩、背中、左腕を5回以上突き刺しました。被告人に殺意が認められることは明らかです」
《検察官は書面を見つつ、頻繁に顔を上げて裁判員とアイコンタクトを取ろうとしている。そして論告は、近所の人たちの目撃情報の確認に移っていった》
検察官「『ぶっ殺す』と言ったか争いがありますが、証言により(発言は)明らかです。証人は2回聞いたと明らかに証言しています。うそをつく理由はありません」
《藤井被告は公判で、「証人がうそをついたとしか思えない」と証言していたが、検察官はそれはありえないと主張した》
検察官「さらに被告人は路上を追いかけました。証言により明らかです。距離は約3メートル、近所同士で被告の顔をよく見知っていたから間違うはずもありません。強い攻撃の意思を持ち、それがある程度の時間継続していたことは明らかです」
《藤井被告はぐっとくちびるをかみしめ、何か言いたいことがあるかのように時折、検察官の顔を見つめた。やがてあきらめるように斜め下を向いたが、納得していない様子は明らかだ。弁護人は傍聴人の表情を眺める余裕を見せている》
検察官「特に心臓を一突きする犯行態様を見ても、ほぼ確実に死ぬと分かっていたという程度の強い殺意を認められます。弁護人の主張するような弱い殺意ではありません」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051207008-n3.htm
《続いて大型モニターには「第3 情状関係」との文字が映し出された》
検察官「5つの情状を述べていきます」
《検察官の論告は、量刑を左右する情状に移っていった。大型モニターの画面は次々と切り替わるが、裁判員の中でモニターを見つめ続けている人は少数だ。配られた資料に内容が記入されているためか、メモを取る人はいなかった》
【裁判員 熟慮(6)】「攻撃意志のしつこさも明らかで悪質」感情込めて論告読み上げる検察官(11:00〜11:10) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051230010-n1.htm
2009.8.5 12:29
《検察側の論告は続く。背筋を張った検察官のよく通る声が、静まりかえった法廷に響く。伏し目がちのまま、ほとんど表情に変化のない藤井勝吉被告。一方、裁判員は真剣な表情で検察官を見据えたり、手元に目をやったりと、それぞれが論告に聞き入った》
検察官「被告は被害者の胸を刺したときのことについて、ナイフを持った指に柔らかいものが当たったという感触を生々しく語りました。逃げようとして、背中を向け、無防備になっているにもかかわらず、被告は背後から被害者を刺しているのです。加えて、小島(千枝)さん(被害者の文春子さんが日本で使っていた名前)の家の前までサバイバルナイフを持って逃げる被害者を追いかけており、攻撃意思のしつこさも明らかで悪質です」
《犯行の状況を繰り返し詳細に説明し、残忍さや殺意の“濃さ”を強調する検察官。藤井被告は無表情のまま。時折、自らの鼻や口に手をやって擦るようなしぐさをみせるが、法廷に関心を失っているようにも見える》
検察官「小島さんは被告のことを警戒し、接触を避け、トラブルになるまいとしていたのに、口論がきっかけで刺し殺されてしまった無念は明らかです。近隣住民の方々に対しても、不安感や恐怖感を与えるなど、大きな影響を与えました」
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051230010-n2.htm
「被告はサバイバルナイフを見せたのに、被害者が言うことを聞かなかったため、メンツをつぶされたなどと考えて犯行に及びました。近隣住民間でトラブルがあったからと言って、サバイバルナイフを持ち出してきて、相手を脅していいはずがありません。近所の人との間で口論をしたとき、相手がいきなりサバイバルナイフを持ち出してきたら、皆さん、どう思うでしょうか。安心して生活することはできません」
「被告は(事件の)前日、競馬で負け、やけ酒を飲んでムシャクシャしていました。ペットボトルを倒したのは被害者だなどという証拠もありません。八つ当たり以外の何物でもありません」
《検察官は、事件が藤井被告の身勝手な犯行であることを再三指摘しつつ、犯行の経緯や状況など、藤井被告の供述の信用性の乏しさについても繰り返し言及する》
検察官「被告人は、小島さんが肩をつかんであごを押したとか、ひるまずに『やるならやってみろ』と言ったと供述しています。生活保護のことを言われてカチンときたとも供述していますが、被告人がそう言っているだけです」
「捜査段階で、(生活保護を)ばかにした話も全くしていません。小島さんは(事件まで)被告人とほとんど会っておらず、生活保護をもらっていたのを小島さんが知っていたことも信用できません。被告人は小島さんに責任を押しつけようとしています」
《検察側は被害者遺族の感情についても言及する》
「小島さんは女手一つで2人のお子さんを育て、苦労が多くありました。確かに気が強い側面もあったかもしれませんが、ナイフを持った前科のある男に自分から向かっていくとは思えません」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051230010-n3.htm
「2人の子供を立派に育て上げ、(家族のために)家事もよくやる親孝行。家族からも慕われ、家族の無念さも察するに余りあります。小島さんの母は『私にとって(小島さんは)本当に生きる支えでした。それなのに殺されてしまいました。本当に悔しくて仕方ありません』と言うとともに、被告に対して極めて厳しい処罰を求めています」
《遺族の思いを伝える際は、感情を込めて読み上げる検察官。裁判員の表情にも一層真剣味が増していく》
【裁判員 熟慮(7)】「被告を懲役16年に処し…」求刑にうなだれる被告 冷静に聞く6人(11:10〜11:20) (1/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051258012-n1.htm
2009.8.5 12:57
《引き続き論告を読み上げる検察官。藤井勝吉被告は目を閉じ、うつむきながら検察官の言葉に耳を傾ける。検察官は藤井被告の前科について述べ始めた》
検察官「前科があることを過度に強調するものではありませんが、被告には傷害致死の前科があります。普通、人の命を奪うなどということは一生に一度もないことですが、被告はそれを二度も犯しているのです」
《藤井被告を厳しく断罪する検察官。裁判員裁判を意識し、難解な言葉の説明も忘れない。法廷内のモニターには「規範意識が極めて希薄」と大きな文字が表示された》
検察官「“規範意識”。つまり法律で決められた、してはいけないとされていることをちゃんと守ろうという意識が乏しいことは明らかですし、再犯の恐れ、つまり被告がまた罪を犯すおそれが大きいことは明らかです。法廷では被害者をむしろ悪く言うことさえありますし、信用できる証人の証言と矛盾することを言うなど、本当に反省しているか疑問を持たざるを得ないところです。再犯を防ぎ、他の人の安全、安心を守るためにも、相当長期間刑務所に収容することが必要不可欠です」
《検察官は一呼吸置くと、モニターには「求刑」の文字が浮かんだ。いよいよこの日の裁判の佳境だ。検察官はまず、一般論として殺人事件の量刑が懲役5年以上であることを説明。藤井被告の情状面を説明する》
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http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051258012-n2.htm
検察官「確かに、事件を起こすまでのいきさつから言って計画的に行われた犯行とはいえません。また、近所のトラブルが背景にある事件ですし、被害者との間の口論がたまたま発展して事件につながってしまったという面もあります。さらに被告が高齢でもあります。死刑や無期の処罰まで求めるのはやや重く、有期懲役刑の範囲で下されるべきと考えます」
《被告に有利な部分を語った検察官だが…》
「サバイバルナイフで多数回にわたり一方的に繰り返し刺すなど、犯行態様がしつこく残忍であることや、生じた結果も重大であること、動機に同情の余地が乏しいこと、遺族感情も厳しいこと、前科も多数あり、再犯の恐れも高いといった、被告に不利な事情もあります」
《検察官は表情を変えることなく、求刑理由を説明すると、間髪入れずに求刑を述べた》
検察官「被告を懲役16年に処し、サバイバルナイフを没収するのが相当であると考えます」
《求刑が言い渡された瞬間、藤井被告は唇をかみ、うなだれるようにうつむいた。72歳の藤井被告にとって16年は予想よりも重かったようだ》
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http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051258012-n3.htm
《一方の裁判員はみな表情を変えることなく冷静に求刑を聞いた。メモを取る姿もある。検察官は席に戻ると、隣の女性検察官と一言会話を交わす。女性検察官は笑顔でうなずくと、論告を読み上げた検察官からも笑顔が。2人の様子から、検察側の論告はうまくいったとの感触を得た様子だ》
《続いて裁判長が「被害者参加の意見陳述を認めます」と宣言。遺族に付き添い出廷した被害者参加人である長男の代理人である弁護人が証言台に移動。一呼吸置いて、遺族側の意見を述べ始める》
《これまで、検察官、被告の弁護人とも「です」「ます」調で話していたが、被害者参加人の代理人は、堅い文言の文章を読み上げた》
被害者代理人「被害者が死亡している事案については、客観的証拠に反しないかぎり、『死人に口なし』とばかり、被告人は往々にして自分に有利なストーリーをつくることがある」
《そう切り出すと、代理人は事件について振り返りながら、藤井被告の弁護人の主張に対する反対意見を述べ始める。まずは、藤井被告の弁護側が「言葉が強く、気が強い人物で、近所の人ともけんかが絶えない」と主張する被害者の文春子さんの人物像についてだ》
(4/4ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051258012-n4.htm
被害者代理人「証人として出廷した近隣住人は『気が強い』と証言したものの、具体的にはチラシ配りを拒否した口調を例として挙げるのみで気さくな人という証言もした」
「被害者は町内会にも入り、役員もするなど、近隣のつきあいもきちんとしており、近所としょっちゅうトラブルを起こしていた事実はない。葬儀には120、130人も参列しており、被害者が多くの人から愛されていたことが分かる。女手一つで男の子2人を育てあげ、家を切り盛りしていた女性で、その意味でしっかり者で言葉遣いがはっきりしていたが、問題の人物という弁護側の主張はまったく事実に反する」
《裁判員は被害者代理人の意見書に目を落としていた》
【裁判員 熟慮(8)】「身勝手な恨み」「供述は言い訳」…厳しい遺族感情に耳を傾ける6人(11:20〜11:30) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051306013-n1.htm
2009.8.5 13:05
《被害者参加制度に基づき、遺族に付き添って出廷した代理人が引き続き意見陳述書を朗読している。遺族感情を代弁する代理人。裁判員は、手元の陳述書で文字を追いながら、その言葉に耳を傾けている》
《陳述書は、事件直後に作成された被害者・文春子さんの長男の調書の内容について、疑問を差し挟む。調書では、長男は事件直後、警察の事情聴取に「母は一言で言うとキツイ性格で…」「トラブルになることもあるし、相手にカチンと来ると、相手の痛いところをついてしまうこともある」という趣旨の話をしたことになっている》
被害者代理人「調書は、母が殺害されたという事実に直面した状況で作成されており、(長男は)精神的混乱の極みにあったと思われる」
「藤井(勝吉)被告の話したストーリーを前提に作成されたのではないかという疑念もある」
《藤井被告や弁護側は、猫よけのペットボトルを倒され、植木鉢やオートバイが道にはみ出していたことなどから、文さんとトラブルになったと動機を説明している。しかし、陳述書はそれを強く否定する》
被害者代理人「被告との間では、確かにペットボトルの件や植木鉢やオートバイがはみ出していることでトラブルはあったようである。しかし、最近は特にトラブルはなく、事件の契機となるような具体的なトラブルは生じていない」
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051306013-n2.htm
「植木鉢やオートバイが道にはみ出した事実はあるが、証人として出廷した近隣住民は、大きな問題として認識していなかった」
「事件当日、被害者は、まさか被告がナイフを持ち出すとは夢にも考えず、水やりをしていた」
《代理人は陳述書の中で、違う動機を主張していく。裁判員は顔を上げることなく、その主張を聞きながら、手元の陳述書の記述をじっと目で追っているようだ》
被害者代理人「前日に競馬で負けてムシャクシャしていた被告が、身勝手に被害者に対する恨みを増幅させた。その恨みの根源は、倒れたペットボトルを直さなかったことなどではない」
「おそらく、被害者が20年前に、被告の妻のドメスティックバイオレンスの相談に乗り、支援機関を教えたことが背景にあるのではないか」
「被告は勝手に恨みを膨らませた。被害者には殺されるような理由も原因もない」
《厳しい言葉を投げかけられた藤井被告。ときどき、まばたきをするが、表情を変えることはない。陳述書は、犯行後の藤井被告の行動や発言も厳しく批判する》
被害者代理人「被告は『被害者の死亡を聞き手を合わせた』『何ということをしてしまったのか、謝って済む問題ではない』と述べた。しかし、そのような気持ちはまったく遺族に伝えられていない」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051306013-n3.htm
「被告は法廷で、(犯行状況について)『被害者がつかみかかろうとした』などの供述をしたが、捜査段階ではこのような話はなかった。『被害者を冒涜(ぼうとく)できなかった』というもっともらしい理由を述べたが、ならば、なぜ公判で話したのか。そのような供述は言い訳に過ぎない」
《陳述書は、殺害された文さんや遺族の気持ちを代弁し、裁判員たちに訴えていく》
被害者代理人「被害者は66歳まで働き、そろそろ仕事をセーブして楽していいころだった。息子たちが所帯を持ち、孫を抱くことを楽しみにしていたのではないか。高齢の母に先立つことも心残りだっただろう。理不尽に殺された無念さは計り知れず、耳を澄まして、被害者の声を聞きたい」
「家族や親族の喪失感や悲嘆は限りない。被害者の母は、事件の衝撃で介護が必要なほど、心身共に弱ってしまった」
《陳述書の朗読に、裁判員は誰も言葉を発しない。ただ、じっと聞き続ける》
【裁判員 熟慮(9)】「最低でも懲役20年の判決を」被害者代理人(11:30〜11:40) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051312014-n1.htm
2009.8.5 13:10
《被害者である文春子さんの長男の代理人による意見陳述が続く。藤井勝吉被告は目を閉じ、微動だにしないで聞き入っている》
被害者代理人「犯行は前日に競馬で負けておもしろくなかったという藤井被告の身勝手で一方的な恨みによって引き起こされたものであり、極めて悪質。最低でも懲役20年の判決を求めます」
《被害者代理人は、さらに重い刑を求める気持ちはあるとした上で、検察側の求刑を上回る刑期を口にした。これには、メモを取る裁判員も顔を上げ、被害者代理人の顔をじっと見つめた。検察官も顔を紅潮させる》
《続いて、藤井被告の弁護人による最終弁論が始まった。弁護人は、裁判員や傍聴人に分かりやすいように、弁論の要旨をスライド形式にまとめ、法廷の両脇に掲げられた大型モニターに映し出した。赤や青などで配色し、目を引く形にしている》
弁護人「弁護人の意見を述べさせていただきます」
《弁護人は、ゆっくりと丁寧な言葉遣いで話し始める》
弁護人「本件は、一般の殺人事件よりも軽い刑を求めます。道路の占拠など被害者に不満を持っていた被告が庭先のペットボトルを倒され、注意したことで口論に発展しました。その際、被害者は『これから気をつけます』と言えば済んだことですが、『てめえが倒しておいて人の責任にするんじゃねえ』『国の世話になっておいて』などと辛辣(しんらつ)な言葉を逆に浴びせています」
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051312014-n2.htm
《弁護人は、藤井被告が生活保護受給者であったことをののしった被害者側に事件の発端があると言いたいようだ》
弁護人「被告は、言葉で言っても仕方がないと思い、ナイフで脅せばひるむと思い、いったん家に帰ってサバイバルナイフを持ち出しました」
「鞘を抜いてみせたところ、逆に『やるならやってみろ』と被告の肩などにつかみかかろうとしたため、刺すしかないと思い、被害者の上半身を刺してしまったものです」
「被告は心臓の上半身をひと刺しで刺しているが、明確にどこかを狙ったわけではなく、被害者ともみ合いになり、無我夢中で背中を刺した結果、死亡させたものです」
《裁判員は、下を見たままおのおのペンを走らせる。弁論は藤井被告の殺意に移っていく》
「被告の意識は、ナイフで被害者を刺した認識はあったが、被害者を殺害するまでの意識はありませんでした。被害者の誘発的な言葉によって突発的に殺意が生まれたものです」
《さらに弁護人は、検察側が指摘してきた事件前までのトラブルについて「根にあったかもしれないが、背景にすぎない」と主張。そして検察側が凶器の形状や傷の位置、犯行態様などを殺意の証拠として挙げたことに触れていく》
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051312014-n3.htm
「検察側は、被告が『ぶっ殺す』といって被害者を追いかけたことなどから強い殺意があったと述べています。凶器の形状や犯行態様など客観的事実は争いません。ただし、被告には、傷の位置や程度、犯行態様について明確な記憶がなく、記憶にあるのは最初に被害者を刺したときの指の感覚だけです」
《弁論は犯行動機へと続く。裁判員もメモを止め、弁護人に目を向けて話に聞き入る》
「犯行の動機は、被害者の直前の言動にあります。被害者の長男は事件直後、言葉が強く、気が強く、よけいなひと言をいい、しょっちゅうケンカしていると、被害者の性格を述べており、被害者の性格から出た言動に誘発されたのは明らかです」
《また、弁護人は、長男が証人尋問で検察官に、藤井被告に対する母親の感情を聞かれ、ねたみがあったと証言していることを引用。長男は発言が本意ではないとしているが、「被害者の性格そのものから出た言葉」として続ける》
「長男の証言は、被害者を含め、被害者一家が日ごろからばかにしたように見ていたことが容易に伺われます」
《弁護人は終始、被害者側にも犯行の一端があるとして、減刑を求める主張を展開している。スライドも頻繁に入れ替えて、視覚的にも訴えるスタイルを続けていく》
【裁判員 熟慮(10)】“被害者の落ち度”強調する弁護人 裁判員はどう判断?(11:40〜11:50) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051322015-n1.htm
2009.8.5 13:21
《弁護人の最終弁論が続く。結審が徐々に近づく緊張感からか、藤井勝吉被告は身じろぎもせずに、視線を下げていた。被告に有利なくむべき事情があるのかどうか、裁判員も藤井被告の表情を見やりながら、弁護人の言葉に聞き入った》
弁護人「被告人は被害者一家による道路占拠に、何度も注意をしてきましたが、逆に言い返されました。近所からも、『小島(千枝)さん(被害者の文春子さんが日本で使っていた名前)に言い返されて負けて逃げてきた』、と言われたこともありました。平成18年7月に(刑務所から)出所して以降は、注意するのをあきらめて、被害者とは顔を会わさないようにしていました。しかし、事件当日は、たまたま被害者と顔が会ってしまい、ペットボトルの話を持ち出したところ、また言い返され、ばかにされてしまいました」
「被告の犯行動機についてですが、被告はケンカ口論の末に、侮蔑(ぶべつ)的な言葉、犯行をあおるような言葉によって、我慢していた怒りを爆発させたものです。動機形成以前の過程には、被害者にも大いに落ち度があるといえます。量刑に際し、考慮すべき重大な事情といえます」
《被害者にも動機の一端があると力説する弁護人。
被害者の近所での振る舞いを次々と明かしていく。裁判員の表情は変わらないが、量刑を判断するに当たって、殺害という事実と、どうてんびんにかけるのだろうか》
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051322015-n2.htm
弁護人「犯行の直接動機ではありませんが、被害者一家が近隣住民の道路通行を妨害していたのは証拠上、明らかです。被告が不快と思っていた金属の食器で地面をこする音も、証人の話から認められます」
《ここでモニターに現場の見取り図が映し出される》
弁護人「被害者のスクーターは被告方の庭と接する道路の反対側に置かれ、北を向いていました。スクーターは2メートル、道路の幅は2・3メートル。また、被害者がスクーターを止めていたという空き地にはロープが張られていました。被害者はスクーターの方向転換のために、日常的に被告の庭に入っていたことが推認できます。被害者の家族全員が、社会生活のルールに対する意識が低かったことが犯行の背景となったのは明らかで、量刑上考慮されるべきと考えます」
《そして、犯行直前の状況に移った》
弁護人「被告の注意がきっかけで被害者とケンカ口論になりましたが、被害者も言い返しているのが確認されています。10メートル近く離れた家に住む証人も弟と怒鳴り声を耳にしており、もっと離れたところに住んでいる証人も(午前)11時45分ごろ、家の中で怒鳴り合う声を聞いています。証人が110番通報をしたのは11時50分ごろ。被告がナイフで刺傷するまで、少なくとも5分くらいは、けんかが続いていたと推認できます」
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051322015-n3.htm
《裁判員の1人が藤井被告に一瞬目をやり、そしてまた視線を下げた。犯行の状況を頭の中で再現しているのだろうか》
弁護人「近所の家の人でも聞こえたほど、怒鳴りあいは激しかったのですが、それは被害者に理不尽で辛辣(しんらつ)な言葉を投げられたのがきっかけでした。被告は筋を通ったことを言っているのに、謝らない被害者に憤り、ついにナイフを持ち出したのです。しかし被害者は『おー、やるのか。やるならやってみろ』と1歩進んで、被告のあごや肩につかみかかろうとしました。被害者は女性ですが、被告より5歳年下で、整体師もしており、体力は彼女の方が上だったと推認できます。そのため被告は、『刺すしかない』と思い、左胸の上を刺してしまったのです。まさに衝動的な犯行なのです」
《女性が男性より体力があると主張する弁護人。裁判員の胸中は…》
【裁判員 熟慮(11)完】被告の最後の言葉「えっと、ありません」 明日の判決は…(11:50〜12:03) (1/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051330016-n1.htm
2009.8.5 13:29
《弁護側の最終弁論は最終盤に入った。6人の裁判員は配られた書面を見ているが、時折、弁護人の方を見ながら聞いている。弁護人は、「ぶっ殺す」という声を聞いたという証人の信用性を否定しようとしていた》
弁護人「証人は平成21年5月19日に行われた検察官からの事情聴取で、被告が『ぶっ殺してやる』という声を発した後に女性が言い返したと述べていますが、本法廷で『覚えていない』と翻しました。事件から間がない時期に供述した内容を翻しており、必ずしも信用性の高いものではありません。仮に言ったとしても、激しい口論の中で出た言葉です。よくケンカの中では出る言葉でございます」
《弁護人の口調はおだやかだ。机上に置いた書面を読み上げているが、重要な部分では裁判員の方を見て、かみしめるように語りかけている》
弁護人「そして、量刑を決めるにあたっては、いろいろと考慮すべき事情がございます」
《続いて弁護人は、情状面での主張に移っていった。大型モニターには「量刑上考慮すべき事情」との表題の下に主張の要点が表示された。検察側が青地に白とシンプルだったのに対して、赤や黄色、緑、青など鮮やかな色合いだ》
弁護人「犯行後、大井競馬場に行ったのは、重大犯罪を犯した人間の行動としては一見奇異に思われる行動ですが、被告は家族がなく、友人もほとんどいない人間です。これは任意出頭しようとしていたことの表れです。前科はございますが、いずれも古い事件ばかりです。粗暴性をうかがわせる前科ではございません。傷害致死は45年前で、事故に近いものでした」
《そして弁護人は、被害弁償について語り出した》
(2/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051330016-n2.htm
弁護人「被害弁償や慰謝の気持ちについては、弁護人と何度も話し合いました。何通か『こういうものを書いて出したい』という手紙を弁護人はもらっています。でも、たぶん理解して頂けないだろうということで、本法廷で直接言葉で謝りたいと思い、手紙を差し控えていました。賠償についてはいろいろ技術的な問題が出ています。本法廷での賠償命令制度を利用して解決したいと考えています」
《被害者参加人として裁判に参加している被害者の文春子さんの長男は、この間目をそらすことなく弁護人の顔を見つめていた。何かを訴えるような、今にも涙がこぼれそうな表情だ。弁護人は長男の方を見やることはなく、裁判員に向かってどんな刑がふさわしいかを述べ始めた》
弁護人「被告人は反省しています。現在72歳です。刑に服すれば年齢的にも再犯の可能性はありません。検察官は16年、被害者参加人は20年を求めていますが、酌むべき事情も多く、弁護人とすれば検察官、被害者参加人が求めている刑は不当に長い、重い刑と認識しています。以上です」
《最終弁論が終わり、弁護人が着席した。裁判員の1人はほっとしたような表情を見せた》
裁判長「それでは被告人、前に出てください」
藤井被告「はい」
《藤井被告がはじかれたように返事をして、証言台の前に進み出た。裁判員6人の目は一斉に藤井被告に注がれている》
(3/3ページ)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090805/trl0908051330016-n3.htm
裁判長「これで終わりますが」
藤井被告「はい」
裁判長「被告人、何か言いたいことはありますか」
藤井被告「えっと、別にありません」
裁判長「では戻ってください。判決は、明日の午後2時半に言い渡したいと思います。よろしいですね」
弁護人「はい」
裁判長「期日指定しますが、よろしいですね。明日の判決の後にただちに。明日判決を言い渡した後に、損害賠償関係を。それでは今日の審理はこれで閉廷します」
《裁判長が閉廷を宣言すると、裁判員は一斉に立ち上がり、裁判官とともに退廷した。続いて、傍聴人も続々と法廷を後にする》
廷吏「傍聴人の方は退室してください!」
《傍聴席からまだ立ち上がろうとしない人もいたため、廷吏が改めて退廷を促す。藤井被告はそのまま席に着いていたが、傍聴人の多くが退廷すると、刑務官に向かって両手を差し出した。刑務官が藤井被告に手錠をかける》
刑務官「お願いします」
《藤井被告は刑務官に付き添われ、ゆっくりと立ち上がった。傍聴席の前をゆっくり歩く途中、片目をつぶり、顔をしかめるしぐさをしたのが印象に残った》
《3人の裁判官と6人の裁判員は、午後から非公開の評議に入り、これまでの公判を踏まえ、事件について“熟慮”しながら判決内容を決めることになる。判決言い渡しは6日午後2時半。全国初の裁判員裁判で、裁判員らはどのような判断を下すのか》
=(完)