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(回答先: Re: てすと 投稿者 ROMが好き 日時 2009 年 5 月 08 日 17:42:05)
世論調査が教えること=小沢続投だけが政権交代を確実にする
http://www.geocities.jp/sazanami_tsushin/dc01/situation2/s09051.html
2009/5/8 原 仙作
1、はじめに
国策捜査による小沢秘書の逮捕・起訴をめぐって、相変わらず民主党の議員の腰は定まらず、また政権交代派の市民の間での論争も決着がつく気配がないようだ。そこで論争のポイントとなる論点である6〜7割にものぼる国民の小沢辞任論をどうみるべきか、そして小沢続投で政権交代が可能かどうかについて、この2ヵ月の世論動向を素材に検討してみることにしよう。
現在の状況を思いこみや根拠なき推測で論ずるべきではなく、可能な限り事実資料を拾い上げて考えることが肝心である。
興味深いのは、1議席増に血眼な共産党幹部はもちろんのこと、左派やリベラルを含めて、現政治体制の下でそれなりのステータスを獲得している連中のほとんどが”小沢やめろ”の大合唱であり、無名の庶民が小沢続投の論陣を張っていることである。
2、民主党は相変わらずふらついている
幹事会で小沢続投を決めているにもかかわらず、民主党の議員や候補者の多くが「説明責任」は小沢の問題だ、と考えている能天気ぶりであるから、民主党自体が関門の前でふらついている現状にある。
この能天気ぶりには幹事長の鳩山にも責任がある。彼なりの努力は認めるが、すぐに連帯責任の、辞任の、と口走るところに自分の政治的洞察能力(これについては最後の触れる)についての自信のなさが現れていて、彼自身が動揺している。それ故に、彼がリーダーシップをとって、こういう方法でやると方針を決め、議員に説明し議員や候補者に実行をうながさなければならないのであるが、それができない。タウンミーティングで小沢に説明しろということでは、他の議員には他人事の取り扱いになり、せいぜいのところいい迷惑だという能天気ぶりになるのは当たり前である。
特に凌雲会の前原・仙谷一派は連休明けから小沢批判の動きを強めているが、自分の首を絞める馬鹿な行動であることを理解するべきである。いわゆる”意志統一”ということが、この党の議員はよくわかっていない。方針を決める前は騒いでもいいが、一旦決めたことは実行段階では死守しなければならない。それは主流、反主流にかかわらず守るべきことなのである。
若い議員の多くは国民を一人一人説得することがどんなに骨の折れることか、この基本のところがそもそもわかっておらず、少々の逆風にすぐ音をあげていることが彼らのブログをみるとわかる。おかゆばかり食べてきた人間が普通に炊いたご飯も硬いと言うのに似ている。
3、今、民主党に必要なものはふたつある
この程度の関門の前で民主党の議員が動揺したり分裂行動をとっていては政権は取れないし、政権に就いてからの関門はさらに巨大(膨大な財政赤字と世界恐慌による大不況の襲来)であるから、今の民主党の状態では政権に就く能力・資格がそもそもないということになる。
政権党となる最低限の能力の第一は、決定され臨戦態勢に入れば結束して事に当たるという能力であるから、この能力がないことにはお話にならない。民主党はこの能力を身につけ、他方では政権党としての政策を官僚機構の反対を押し切って実現する実行力の源泉=国民の固い支持を、今、この関門を前にして獲得しなければならないことが、二つながらにして民主党に要求されていることなのである。
この能力は政権に就くと同時に即座に試されることになる。泥棒をつかまえてから縄を編むひまはない。なにぶんにも自・公の政権党が食い荒らし放り出した難題が目白押しに待っているからである。
4、今の民主党に小沢が最適な理由(1)
自民党のようにできあがった政党ではない民主党にとって、その結束力を身につけるためには党首となる人物のもつ役割は非常に大きいものがあり、周囲全体から認められるようなリーダーシップ、経験、実績が必要なのである。 小沢は10余年前に自民党の中心派閥・経世会から40数人を引き連れて新生党をつくり、一時的ではあれ、自民党を下野させ細川政権をつくった中心人物であり、今また前原の新自由主義から「生活が第一」という政策の大転換を成し遂げ、07参議院選で自民党を過半数割れに陥れた人物であること、その政策転換で政権交代への道筋を再興させたこと、ならびに元自民党の幹事長であり政権党と権力中枢の事情を最もよく知っている人物であること、などがあげられよう。ここに小沢でなければならない理由があると言える。
今の民主党について小沢独裁を危惧する論評などは噴飯ものと言わなければならない。右往左往して、決めたことも実行できないことが今の民主党の弱点なのである。
5、今の民主党に小沢が最適な理由(2)
特に権力中枢・官僚機構の事情を知っているということは、政権党が放り出した難題を解きほぐし解決の道筋をつける急所を察知しうる最短距離にいる人物ということになる。政権を取ったからといって簡単に民主党の政策を持ち込めば政策が実行できるわけではなく、これまでの政権側の諸政策や既存の法律との関係や財源との関連、”埋蔵金”の所在やら官僚機構の操縦等々、様々な条件をクリアしてはじめて実現できることで、一筋縄ではいかない。言わば魑魅魍魎の官僚機構を相手に、「国民生活が第一」という政策理念を巨大な赤字財政の下で現実化するには、事情を勝手知った者による相当の知恵と決断力、腕力が必要になる。
身近な例で言えば、勝手知った所で仕事をするのと、そうでないところで仕事をするのとでは雲泥の差があることを経験から想像してみるべきである。言わば新人ばかりが見知らぬ所で駆けずり回っても仕事はまとまらない。ましてや、官僚機構は民主党に協力的ではないときている。
その意味で、今の民主党にとっては小沢が代表として最適なのであって、政権側が禁断の国策捜査を仕掛けた理由もそこにある。真の小沢信者は自民党政権と国家官僚なのである。
6、西松問題は正面突破が必要な理由
そういうわけで、この西松問題という関門は期せずして民主党に求められている二つながらの要求を実現する機会=試練となったのである。すなわち、素朴な正義感から動揺する庶民感情を変える仕事に専念することが、民主党に結束する能力を身につけさせる一方、庶民の固い支持を作り上げる事業にもなる。このふたつながらの事業は小沢更迭論では実現できない。私の思うところでは、小沢更迭論の致命的な欠陥がこれである。
この事業はさらに重要なことには、国民の政治意識を開拓し発展させる大事業そのものでもあるということ、国民の政治意識の発展なしには政治改革はそもそも望めないことは指摘するまでもない。この大事業も更迭論では視野の外にある。
7、政権交代派内の論戦のヒートアップ
ネット上の議論を概観すると、政権交代派内部も相変わらず論戦状態にあり、小沢続投論と更迭論が拮抗している。しかし、この論戦の盛り上がりは非常によいことで、庶民が広範に政権作りの論争に参戦した史上初の経験とも言えるのではないだろうか。細川政権成立時との決定的な違いである。論戦はヒートアップしており、端から見てもそのオーバーヒートぶりがわかり、論戦に熱中しすぎて世論を変えるという基本の地道な作業を忘れやしないかと心配になるほどである。
8、小沢更迭論には多くの難点がある
論戦の中心は世論調査による小沢辞任論が6〜7割にものぼることをどう評価するかということにある。更迭論が強調することは、辞任という世論は6〜7割にものぼる脅威であり、小沢辞任によって民主党の支持率が回復し政権交代が実現できる、しかし、更迭しないと支持率が下がり政権交代が難しくなるということにある。
この更迭論の難点は、第一に世論調査の数字を多角的、系統的に検討していないことである。第二に辞任賛成6〜7割という大手新聞の世論調査を不動の前提に置いて、政権交代派や民主党支持の減少と直結させていることである。第三に更迭しなければ政権交代ができなくなると思い込んでいること、第四に今の民主党のままで党首は代替可能とみていること。第五に小沢による政策の大転換を視野の外に置いていること、第六に政権担当能力の最低限と言うべき党の結束力の問題を視野の外に置いていること、第七に政権に就く政党には”風”のようなものではない”鍛えられた”支持が必要なことを見落としていること、古来、自力ではなく、政権を”獲らされた”政党は例外なく簡単に壊滅する。第八に政権側の難癖への警戒感が足りず軽視していること、敵は成功した作戦・攻撃は何度でも仕掛けてくるのが”兵法の常道”であることを忘れていること、などをあげることができる。
9、小沢続投論の可否を判断する数値
そこへいくと、小沢続投論の難点は一つだけで、小沢続投では民主党の支持率が下がり、政権交代が実現できないかも知れないということである。そこで最も肝心なこの点を検討してみることにしよう。この問題は推測や直感、山勘で解答を出すべき問題ではなく、これまでの世論調査の数字を多角的に、系統的に調べることでのみ解答を引き出すことができる。
いろいろな数字をあげることができるが、煩雑さを避けるために比例票の投票先の数字を取り上げることにしよう。共同通信と朝日新聞の数字を取り上げるのは、両者が最も頻繁に調査を行っており同時期のものを比較しやすいからである。時期は@2007年の参議院選前の6月と選挙直前の7月前半の数字、A麻生政権成立直後の2008年9月の数字、B小沢秘書逮捕前の2009年2月中旬の数字、そしてC逮捕直後の3月初旬の数字と起訴後の3月下旬および4月下旬の数字である。
表示の仕方は@19.8/22.1(%は省略、前者が自民、後者が民主の数字、以下同じ)とし、前述した順序@ABCで表示する。
まず共同通信の調査は次のようになっている。
@19.8/22.1、 17.6/24.6、A34.9/34.8、B23.0/42.9、C26.7/33.9、 30.5/34.1、 30.8/37.9。
朝日新聞の数字(小数点以下、四捨五入)は以下のようになっている。
@24/22、 23/30、 A32/34、B22/42、 C24/36、 27/31、 27/32
10、二社の世論調査の示す共通点
これら二社の数字を眺めると共通点として次のことがわかる。
第一は小沢秘書逮捕後も、自民党は麻生政権成立直後の支持率を回復していないこと。A―Cの比較をみよ。麻生政権が未だ解散に踏み切れない主要な理由がこれであろう。
第二は民主党は小沢秘書逮捕後も07参議院選直前の7月の支持率を越えていること。@―Cの比較をみよ。
第三は民主党は小沢秘書逮捕後も麻生政権成立時の支持率をほぼ維持していること。A―Cの比較。
第四は小沢秘書逮捕後も民主党の支持率は自民党を一貫して上まわっていること。Cの自民と民主の比較。07年参議院選直前は両社とも7%の差があったが、この4月末では朝日5%、共同7%となっており、07参議院選直前とそれほど遜色のない差が維持されていること。これが小沢が4月末の記者会見で「政権交代できると思っている」という理由であろう。
第五は、小沢秘書逮捕後、時間の経過につれて民主党の支持率が下げ続けているわけではなく、四月に入ってからは回復傾向がみえること。Cの民主の支持率の推移をみよ。
11、読売新聞の世論調査も同じ傾向だ
さて、以上に指摘した世論調査から得られる共通点を、ネット上では政府御用達新聞と不評を買っている読売新聞の世論調査と比較してみよう。これらの共通点は今後の政権交代戦略の鍵となるので、念には念を入れて確認しておく必要があるからである。読売の数字は以下の通りである。
@22.2/23.9、 20.5/27.6 A37.0/29.5 B26.0/40.3 C23.5/33.9、 30.5/30.9、 27.5/30.8
前項「10」で第一に述べた特徴はそのまま同じである。すなわち、小沢秘書逮捕後も自民党は麻生政権成立直後の支持率を回復していない。A―Cの比較。
第二の特徴も同じである。民主党は小沢秘書逮捕後も07参議院選直前の7月の支持率を越えている。@―Cの比較。
第三の特徴も同じである。民主党は小沢秘書逮捕後も麻生政権成立時の支持率を維持していること。A―Cの比較。
第四の特徴も同じである。小沢秘書逮捕後も民主党の支持率は自民党を一貫して上まわっている。違いは自民と民主の差は朝日や共同より少ないことである。
第五の特徴は朝日、共同ほど顕著ではないが、下げ止まりの傾向は見えている。読売のCの三番目にある「27.5/30.8」の数字は両社のように4月下旬ではなく、4月6日の読売に載った数字であることが回復傾向が不鮮明である理由かもしれない。読売は4月6日以後、4月25、26日に3000人からの面接調査をやっているが、裁判員制度やオリンピック誘致の調査結果はあっても内閣支持率や政党別支持率、比例票の調査が発表されていないのである。不可解なことである。
読売の世論調査では全般的に自民の支持率が朝日や共同と比べて高めに出ているが、それでも朝日、共同の世論調査から抽出された共通点はほぼそのまま読売の世論調査からも読みとることができる。
12、世論調査の数字では小沢続投で政権交代は可能と出ている
以上のような共通点をみれば、小沢続投で戦えるし政権交代は十分可能であるという結論を出してもよいであろう。禁断の国策捜査も、”大本営”傘下に入った大手マスコミの反小沢大キャンペーンも、それらに呼応する共産党の小沢金権批判も、あるいは有名人らの”小沢やめろ”コールも、小沢民主党による政権交代という流れに致命傷を与えることができなかったということである。
更迭派は現状で政権交代が十分可能であるのに、世論調査をろくに検討もせず、「8項」で述べた多くの難点・リスクを背負い込み、かつ新代表選出にまつわる様々なリスクすべてを棚上げしてまで小沢更迭に奔っている、ということになる。実に馬鹿げたことではなかろうか? 世論調査が示す全般的事実を無視しており、より多大なリスクを抱え込む可能性に目をつぶっているからである。
失礼ながら、これだけの検討で、すでに著名な政治評論家たちの小沢更迭論は、その政治的もくろみは別にして、本質的に訳知り顔にふるまう”シロウト政談 ”にすぎないことが明らかになっている。検察(=官僚機構)は強大だ、小沢辞任賛成の世論は7割だ、じゃ、小沢更迭だ。彼らの更迭論の核心は、ただこれだけの主張なのであって、その貧しい核心を飾るために、後からあれこれの思いついた理屈が「貨車でやってくる」という構造なのである。
そして、これまでの検討ですでに西松問題は政権交代の前に立ちふさがる最大の難関になっているわけではないことも見当がつくのである。
13、更迭派が民主党の支持率が下がったという理由
マスコミの喧伝もそうだが、更迭派が民主党の支持率が下がったと言うのはなぜであろうか? それは小沢秘書逮捕前の2月の民主党の支持率を基準にみているからだということになる。Bの数字は共同通信では42.9%、朝日では42%、読売40.3%となっているからである。
なるほど、この数字と比較すれば民主党の支持率(比例票の投票先)は小沢秘書逮捕後は10%近くも下がっている。しかし、この支持率は民主党の実力で獲得した数字ではなく、当時の麻生政権の迷走、”自殺点”で加点された特別な支持率、”バブル”の支持率なのである。
誰しも一月前のことも忘れがちだが二月前となるとなおさらで、麻生は漢字が読めないとか、給付金をもらうのを「さもしい」と言ったり、医者は常識がないとか、あるいは郵政民営化に本心では反対だったとか、酔いどれ財務大臣がテレビに顔を出した結果、自民党の支持率が急落してもたらされた特別な支持率がこの42%という数字なのである。
14、2月の民主党の高支持率は例外とみるべきだ
昨年までの自民党支持者が麻生政権に嫌気がさして一時的に民主党支持に鞍替えしたのであって、そのことは自民党の約10%減と民主党の約8%増がほぼ一致することでもわかる(AとBの比較)。読売の数値で見れば自民党の11%減と民主党の10.8%増がほぼピタリと一致する。民主党の支持率増は嫌気がさした自民党支持者の8〜10割を吸収したからであって、新たに無党派層を吸収したわけではない。この無党派層の動向は次項で説明する。
この特別な高支持率は麻生政権が事態を立て直すにつれて、小沢秘書の逮捕のあるなしに関わらずある程度是正されてくる一過性の高支持率とみるべきであろう。国策捜査は政権側には絶望的なこの高支持率のピークに発動されている。
民主党は後にも先にもこの2月の支持率42%をとったことはないのである。07参議院選でも、松岡農水相の自殺や後任の赤城バンソーコー大臣、久間防衛大臣の「原爆投下、しょうがない」発言や年金問題で安倍政権が窮地に陥った時でも朝日のAの数字にある30%ほどであって、自民党に7%の差をつけた程度である。
この30%という数字と比較すれば、小沢秘書逮捕後の朝日のCの数字36、31、32、共同の33.9、34.1、37.9、あるいは読売の33.9、30.9、30.8は”りっぱなもの”とさえ言えるのであって、07参議院選効果で政権交代派が着実に増えてきている証拠である。
世論調査の数字を見る場合、ある一時期の数字を絶対視せず、基本的な傾向を見なければならない。選挙で現れるのは、通常この基本的な傾向なのである。
15、無党派層の動向の特徴
この二年の世論調査の数字を追ってくればわかるが、現在では比例区の投票先を決めていない無党派層は20%程度で定着している。
読売の数字が鮮明(朝日と共同は「決めていない」と「無回答」が合算されている数値表示)なので、読売の「決めていない」有権者の比率(%)を上記の@ABCの時期に対応させて表示しておこう。
@34.8、33.9、A17.0、B20.5、C25.8、22.6、24.3、となっている。
05年郵政民営化選挙後の小泉政治や07年参議院選における自民党の過半数割れとその後の政治の変化を見てきた無党派層の有権者は、比例代表の投票先を決めはじめており、07参議院選前の@の30%台から2008年9月に
A17.0%へと減少し2009年2月のB20.5%へとつながっている。
Aの17.0%という半減ぶりは麻生政権の成立によるご祝儀分があるとみて割り引いて考えても、2009年2月の民主党の支持率が42%の時、無党派層は減るのではなく逆に3.5%も増えている(A17.0→B20.5)ことを注視するべきである。このことは、無党派層が2月に民主党に流入し42%に押し上げているのではないことを示している。
小沢の更迭か否かを考えるとき、このような無党派層の動きは最大限の注意をもって考慮されなければなるまい。すなわち、小沢秘書逮捕前の麻生政権の最悪期にあっても、この20.5%は民主党へは流れ込まなかった無党派層なのである。私が定着しているという理由である。
16、小沢辞任賛成と政権交代問題は区別されている
数字の上で残る問題は、小沢辞任賛成の世論が6〜7割にのぼることと麻生政権成立時の支持率を民主党が維持していることとの関係をどう解釈するべきなのかということである。はっきりしていることは、小沢辞任の世論が6〜7割あっても、なおかつ、民主党の支持率が、バブルの42%を除けば、下がっていないということである。
事実はこうなっているのであって、この事実から言えることは、07参議院選以来の政権交代支持者は西松ショックがあってもその政権交代論を変えていないということである。 ということは、さらに次のように言うことができる。すなわち、政権交代論者で小沢辞任に賛成する者は、小沢辞任に賛成ということと政権交代問題を区別しており、連動させていないということ。つまり、小沢辞任賛成論者が小沢続投という事実を見て政権交代否定へと変わっているわけではなく、小沢辞任を支持するが、小沢の続投のあるなしにかかわらず政権交代は必要だと考えているわけである。
ここまで検討してくると、ひとつの奇妙な光景が見えてくる。それは世論調査に現れた小沢辞任に賛成の政権交代論者が小沢の辞任と政権交代を区別しているのに、ネット上の更迭論者は両者を連動させていることである。更迭論者は小沢続投では政権交代支持者が減り、政権交代が不可能になると心配しているわけなのである。
17、小沢更迭論が現実に意味するもの
更迭論者の主張を具体的な世論調査に現れた事実にあてはめてみると次のようになる。麻生政権の”自殺点”によって民主党に流れてきた自民党支持者を再び民主党に引き寄せるためには小沢辞任が必要だというわけである。これが現実にあてはめた更迭論の主張するところ、更迭論の現実的な具体的な内容なのである。つまり、西松ショックで自民党に回帰したような自民支持者を呼び戻すためには小沢の首を差し出すべきだというわけである。
西松問題で民主党支持から離れた約10%の票はすでに見たように無党派層ではない。民主党から離れて自民党支持へ移った者、あるいは西松問題で無党派化した者(読売の無党派数値Bの20.5からCの24.3への増加分3.8%)は、世論調査の数字からわかるが、そのほとんどが元々の自民党支持者である。酔いどれ大臣を見て民主党の支持率を8%(読売では10.8%)持ち上げ42%にした自民党支持者の一時的鞍替え組なのである。自民党支持者によるこの持ち上げ分、バブル分8〜10%が西松問題で民主党から離れている。
18、小沢更迭論者の心理
むろん、更迭論者にはそうした自覚はないであろう。というのは、更迭論者自体が世論調査の数字を多角的に検討している形跡がなく、いくつかの世論調査の数字をみただけで、自分の問題意識や感覚、好みに合うようにイメージを膨らませているだけだからである。
端的に言って、小沢辞任賛成の7割という数字と西松ショック後の民主党支持の10%減だけをみて、小沢続投では民主党支持や政権交代支持が減ると漠然と思っており、他方では、これまた漠然と小沢更迭で民主党離反者や政権交代支持者が戻ってくると予想している。
そして、この二つの数字を根拠にした減るという思いは、あちこちからくる小沢批判の個人的経験で増幅され、他方ではその経験が逆にその減るという思いを実証していると更迭派は”錯覚”するのである。
今回の場合は特に、個人的経験とそこから得た個人的感触を不用意に一般化してはならない。というのは、国策捜査のねらいは世論を動揺させることに大きなポイントが置かれていたのであって、世論の動揺は言わば”自然発生的なもの”ではないからである。国民の中にこの動揺を持続させる原因はないのである。
19、小沢を更迭しても支持率はあがらない
系統的に世論調査の数字をみればわかるように、現在でも民主党支持、政権交代支持の本体が減少しているわけではなく、07年参議院選以来の政権交代派が減っているわけではない。むしろ増えている。ここが世論調査の教える”急所”である。この急所がわからず、バブルの42%の”夢”を基準に考えようとするのが更迭派なのである。
しかし、更迭論が現実に意味するこの取引はおよそ成算がない。小沢の首を差し出しても、民主党の支持率を8%持ち上げたあげく自民党へ回帰したり無党派化した自民党支持者はまず帰ってこない。彼らは西松問題と同様の政治献金を受けている有力者がズラリといる自民党を気にせず、また、3回も続く政権”たらい回し”も意に介さずに長く自民党を支持してきた者たちだからであり、小沢民主党の魅力に惹かれてではなく麻生政権のひどさに愛想を尽かして民主党に一旦は流れた有権者だからである。再び帰ってくるとすれば、麻生政権がさらに大きな”自殺点”をあげた場合だけであろう。そして、定着した前述の20.5%の無党派層は小沢更迭で民主党に来ることはないことも「15項」で説明したとおりである。
帰ってくるかどうかわからないこうした性格の自民党支持者を小沢の首を差し出してまで追うのは馬鹿げている。民主党は自分の力で、国策捜査をはねのけ、その政策、主張で支持の拡大をめざすべきなのである。頼りにできるのは、こうして得た支持者である。
20、庶民を引きつける法
定着した20.5%の無党派層や民主党を離れて無党派化した元自民党支持者を引きつけるためには、むしろ、これまでにない民主党の”雄々しい姿”が必要であると言うべきで、強大な権力に抗して雄々しく闘う姿こそが、虐げられ深く傷ついた庶民の心を掻き立て引きつけることになる。小泉の郵政解散劇がそのいい例である。
誰かが言うように、戦場に臨んで「敵に大将を変えろと言われて、はい、そうですかと変える馬鹿はいない」と言うべきで、敵の工作で大将を変えるような頼りない政党を庶民は当てにしないであろう。
ここは冷静に事態を考えて見るべきである。民主党の支持率が減っているわけでもないのに、実績も経験もあるリーダーを捨て、”クリーン”というだけで海のものとも山のものともわからぬ手腕の新顔や、あるいは大した実績もない旧顔を立て、起こりそうもない”風”を頼りに選挙戦を戦うことは”きちがい沙汰” と言うべきである。
21、小沢辞任賛成66.4%の中身はどういうものか
さらに念を入れて、今度は角度を変えて、更迭派がえらく気にするというより、更迭論の唯一の動機ともいうべき小沢辞任賛成の意見6〜7割ということを検討してみよう。民主党に一番不利な数字を出す傾向のある読売の数字でやってみよう。小沢続投に「納得できない」という読売の世論調査66.4%(読売4月6日)を小沢辞任賛成と読み替えると、まず同日の読売調査では、自民党支持27.5%、公明支持3.3%であるから合計が30.8%となる。66.4%のうちの30.8%分は自・公支持者と見なすことができる。したがって、小沢辞任に賛成のうち非自・公の有権者の比率は66.4-30.8=35.6%ということになる。
そこで、非自・公の有権者で小沢辞任に賛成の者35.6%がどういう種類の有権者なのかを検討してみよう。読売の調査では小沢続投に「納得できる」が25.3%であり「答えない」が8.3%であって、合わせて33.6%となるのだが、この数値と民主党の支持率30.8%と社民党1.7%、国民新党0.9%との合計支持率33.4%がほぼピタリと一致する。誤差は0.2%にすぎない。したがって、小沢辞任賛成以外の有権者は民主、社民、国民新党の支持者ということになる。
一方、非自・公の有権者で小沢辞任に賛成の者35.6%は、比例の投票先を「決めていない」24.3%と比例の投票先を「答えない」7.4%と共産党支持の4.1%の合計35.8%によって占められていることになる。これもほぼピタリと一致する。
22、自・公+共産+無党派がその中身
前項の検討から次のことがわかる。非自・公の有権者で小沢辞任に賛成なのは比例の投票先を決めていない無党派層24.3%と投票先を答えない7.4%と共産党支持者4.1%なのである。共産党の支持者は党中央の主張を支持する固い支持層(比例も選挙区も共産党へ投票する約250票)と小沢の続投のあるなしにかかわらない政権交代派に二分されてほとんど動かない。
比例の投票先を決めていない24.3%は自民党支持から一旦は民主党支持になり西松問題で無党派化した3.8%の部分と文字どおりの政治的無関心層の20.5%である。この20.5%は定着した無党派層で民主党が42%を獲得した2月でさえ動かなかった層であるから小沢更迭で民主党に来るはずがない。
しかも投票率が100%になることはありえず、実際は高くても70%程度であるから、現実的に考えてこの20.5%は選挙を棄権する層である。20.5%は選挙に行かず、3.8%は元自民支持層で小沢の更迭で簡単に民主党支持に再転換する有権者ではない。
残るは比例の投票先を「答えない」7.4%である。この「答えない」層は、小沢秘書逮捕前の2月の読売調査では4.3%であるから、7.4%のうち増えた3.1%は酔いどれ大臣を見て一旦は民主党支持に流れたが西松問題で態度保留になった元自民党支持者であろうという推定はできる。この有権者も小沢更迭だけでは再び民主党支持にはなりにくい。麻生政権のさらなる”自殺点”が必要な有権者層と見なさなければならないだろう。
最後に残るのは4.3%の「答えない」層ということになる。この有権者層だけは形式的に見れば小沢辞任のほうがはっきりとベターな対策だということになる。 しかし、その有権者の中身が不明であるから、確信犯で「答えない」のか政治的無関心層なのかわからないため、実際の更迭の効果は測定しにくい。
23、小沢辞任賛成の民意66.4%は”すすきの穂”のようなもの
まとめてみよう。小沢の辞任に賛成である66.4%の国民の内訳は、自・公支持者の30.8%、ほぼ棄権票となる定着した政治的無関心層20.5%、無党派化した元自民支持者の3.8%、比例の投票先を「答えない」元自民支持の3.1%、共産党の4.1%、そして中身の不明な「答えない」有権者4.3%なのである。
このように66.4%の中身を概観すれば、小沢更迭の効果は実際には非常に限定されたものとならざるを得ないことがわかるであろう。その効果はほとんど測定不能で、海のものとも山のものともわからない比例の投票先を「答えない」有権者4.3%に何らかの効果があるだろうという程度の効果しか当てにできないのである。「19項」で検討したように小沢更迭で支持率は上がらないと言ったことが、ここでも当てはまると言えるのである。
ということは、民主党の議員や候補者の実感といかに異なろうとも、66.4%は民主党の支持率や政権交代派による政権交代持率とは、ほとんど相関関係がないということなのである。小沢辞任に賛成の66.4%は、世論調査も教えているように、民主党の支持率を下げるわけでもなければ政権交代派の比率を下げるわけでもないことが相関関係なしの証明になっているのである。
簡単に言えば、民主党の支持者の大多数は国策捜査に動揺して議員らに文句を言って来ようとも、その支持を変えていないのであって、他党支持の政権交代論者も民主党に文句は言っても政権交代支持を変えていないのである。
明らかに、更迭派は小沢辞任賛成の66.4%を中身もろくに検討せずに、”民意”66.4%に恐怖してひれ伏している。あたかも、すすきの穂を見て”お化けだ”と騒ぐようなものである。
24、ひ弱で右顧左眄していては政治改革はできない
文句は言うが民主党支持を変えていないという庶民の態度を民主党の議員や候補者は見抜いていない。そこに彼らにとって、逆風の実感と世論調査の指示することとのギャップがある。その逆風の実感からすれば、世論調査が小沢続投で勝てると教えていることが信じられないのである。
前原一派は愚かなことに、庶民の文句を言うという部分だけを利用してつまらぬ画策を始めようというわけである。彼らの画策は失敗するほかない。というのは庶民の本音はそちらにはないからである。一丸となって政権交代へ進めと言っている。
議員や候補者が感じる逆風は次のようなものである。 第一はマスコミ・キャンペーンの心理的圧力がある。第二は支持者の素朴な失望感から来る不満をぶつけられている。第三は元自民支持者で一度は民主党に流れた層の批判。第四は自・公支持者や共産党による批判。第五は”工作員”によるいやがらせ、第六は” 風”に乗って議員となったひ弱さからくる過敏症と政治信念の弱さなどであろう。
この辺は共産党の議員を見習ってもらい、論争はガンガンやる、支持者は必死で説得することである。そうすれば、このギャップは解消されるはずである。
民主党の議員に特にあてはまるが、更迭派の心情は民意に従うという形をつくるだけで安心できるのであろう。有名人らの更迭論の大半は、”無事これ名馬” のこうした動機であるから”屁のつっぱり”にもならない。もう一つは”小沢嫌い”である。政治改革に必要なものと個人の好みは区別すべきものなのだが、改革者には毀誉褒貶はつきものと小沢はあきらめるしかあるまい。
ここでは更迭派が”すすきの穂”をお化けだと騒いでいることを知れば足りる。これでは更迭派に海千山千、魑魅魍魎の官僚機構を相手に政治改革を断行する能力はないと言わなければならない。
ことのついでに触れておけば、更迭派がもうひとつ、漠然と恐怖すること、すなわち小泉郵政解散で奔流となって暴れ出た”B層”の決起も、もはやない。 ”B層”は郵政解散以後の小泉政治と07参議院選の経験を経て、今では無党派層の比率を10%減らす有権者へと成長している。
25、小沢は事実を率直に言えばいい
さて、残るは国策捜査が始まって以来の問題である素朴な正義感に発する庶民の疑問にどう対応するかという問題である。この問題は、これまで検討したような状況の下で考えなければならないことである。問題は小沢の首を差し出すほどの難攻不落の問題ではないということである。
私の考えるところを述べれば、秘書を起訴した国策捜査の検察でさえ収賄やあっせん利得の違法性を容疑事実にあげられなかったのであるから、小沢は事実にもとづいて、その大要を述べればいいのである。
たとえば、自民党を飛び出して以来、自分のめざす政治を実現するために政党を作っては壊してやってきた小沢にとって政治にはかなりの金が必要であったのであれば、そのことを率直に述べればいいのである。アメリカでは政治資金を集める能力も政治家の能力に数えられるほどであるから、庶民感覚からすれば巨額の献金であっても何も悪びれることはない。
要は素朴な庶民感覚からくる疑問に応答することである。すでに政権交代派の庶民の大半は西松問題と政権交代は区別しており、小沢の率直な声を聞けば了解するであろう。
26、小沢続投で重大な戦闘にはいるべきである
最後に、病床にあった晩年のレーニンの言葉を紹介しよう。ロシア革命を回顧してレーニンは次のように言っている。
「私の記憶では、ナポレオンは<On s'engade et puis……on voit>と書いた。ロシア語に意訳すれば、こうなる。『まず重大な戦闘にはいるべきで、しかるのちどうなるかわかる。』 そこで、われわれもまず1917年10月の重大な戦闘にはいり、しかるのち・・・・・発展の細目・・・がわかったのである。・・・およそこれ以外のやり方では、革命はやれないとは、わがスハーノフたちは夢にもおもわない・・・」(「わが革命について」レーニン全集33巻500ページ)
ここで言われている真実は、規模は小さいが日本でも当てはまる。右顧左眄し重大な戦闘に入らなかった”加藤の乱”は失敗に喫し、不利だと言われながら重大な戦闘に入った小泉の郵政解散は大勝利に終わっている。なぜなのか? この真実を鳩山以下、動揺する民主党の首脳部はとくと熟考してみるべきである。
映画「草の乱」 概要より秩父困民党荒川渡渉の図。[1884年(明治17年)農民の武装蜂起事件]