http://www.asyura2.com/09/sports01/msg/488.html
Tweet |
何度も書いてきていることだが、サッカーは結果が内容を蝕(むしば)むことがある競技である。どれほどいいサッカーをやっていても、結果が伴わないでいると内容までおかしくなってきてしまう。2戦2敗に終わった今回の欧州遠征で、日本はちょっと手の施しようのないところまで状態を悪化させてしまった感がある。
80位というFIFAのランキングほどにはベラルーシが弱いチームでなかったのは間違いない。彼らは先週末スペインと戦い、それなりに善戦もしている。世界最高峰のテクニシャンと対峙(たいじ)した感覚が残る彼らにとって、日本人の攻めを受け止めるのはずいぶんとたやすく感じられたことだろう。
それでも、前半の日本にはところどころで目を見張らされる場面があった。ドルトムントを思わせる獰猛(どうもう)なプレスとショートカウンターである。チームとして意図していたものなのか、それとも選手たちのアドリブだったのかはわからないが、本田が圧力をかけ、長谷部が勝負をし、奪ったボールを柿谷がシュートまで持ち込んだ前半13分のシーンは、最近の日本では見られない形だった。
だが、後半の日本に、特にフォーメーションを変更してからの日本に、見るべきものはほとんどなかった。森重の高さは光った。山口の判断力は可能性を感じさせた。けれども、チームとしての上積みや新たな発見は、何一つなかった。ハーフナーを投入したにもかかわらず、そして残り時間が少なくなっているにもかかわらず平然とバックパスを繰り返すさまには、膝の力が抜けそうになった。この欧州遠征を企画してよかったと思えるものが、わたしには何一つ見つけられなかった。
そもそも、今回の遠征はいかなる意味を持っていたのか。もし選手選考のサバイバルマッチだというならば、こんなにも不公平な競争はない。どれほど出来が悪くても次の出番が保証された選手がいる一方で、どれほど待っても出番の来ない選手もいる。このままでいけば、チャンスを与えられないままブラジルへの道を断たれる選手も出てくるだろう。
残念ながら、日本代表がW杯本大会で必然の上位進出を果たす可能性は、この遠征でほぼついえてしまった。ベラルーシに1点取られただけで意気消沈してしまうようなチームに期待できるのは、南アフリカでの日本代表同様、偶発的な勝利のみ。状況は、ザッケローニ監督が就任以来最悪である。
アジア最終予選を日本と戦ったオーストラリアは、ここにきて監督を更迭した。予選突破後の試合内容が問題とされての更迭だという。わたしの気持ちは、日本も同じことをすべきだという方向に急速に傾きつつある。
(2013年10月16日「スポニチ Sponichi Annex」に掲載)
金子 達仁
スポーツライター/FC琉球スーパーバイザー
1966年1月生まれ。神奈川県横浜市出身。法政大学社会学部を卒業後、日本スポーツ企画出版社編集部勤務を経て、95年にフリーに。現在はノンフィクション作家、ラジオパーソナリティ、サッカー解説、FC琉球スーパーバイザーなど多方面で活動している。趣味は自動車、日本酒、阪神、ヘビーメタル、漫画、麻雀、旅行、料理、育児、読書など幅広い。主な著書は「決戦前夜」、「28年目のハーフタイム」、「秋天の陽炎」、「泣き虫」など。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kanekotatsuhito/20131017-00028996/
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。