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決して話題性だけではない。見るもの全てを納得させる、そんな投球だった。
二刀流に挑戦中の北海道日本ハムのドラフト1位ルーキー・大谷翔平が10日、鎌ケ谷で行われた東京ヤクルトとの春季教育リーグで、ド派手な投手デビューを飾った。投げたイニングは2回、球数はわずか30球。限られた時間の中ながら、見るもの全てを魅了した。
注目度満点の中、初球いきなり!
暖かい陽気に包まれた前日とうって変わり、強風が吹き荒れ、肌寒さが一気に舞い戻ったこの日の関東地方。決して野球観戦日和といえるようなコンディションではなかったが、前々から『投手・大谷翔平』の実戦デビューの日として名言されていたこともあり、千葉県・鎌ケ谷スタジアムには多くの観衆が集まった。この春の話題を独占したゴールデンルーキーの初登板――この日を目前にして、CSスポーツチャンネル・GAORAが、春季教育リーグでは異例となる生中継を決めるなど、ファンもメディアも、彼の初登板に目を光らせていた。
“そのとき”は、6回に訪れた。2番手として上る、初の実戦マウンド。初球、いきなり魅せる。先頭の楠城祐介に投じた外めのストレート。この春から新調された大型ビジョンには「151キロ」と表示され、大入りの場内からは大歓声が上がった。
その後も149キロ、148キロ、149キロとストレートを立て続けに投げ込み、カウント1ボール−2ストライクと追い込む。5球目は、この日初めてスライダーを投じるもアウトコースに外れ2ボール−2ストライク。そして7球目、再び149キロのストレートを投げ込みファーストフライ。力でねじ伏せ、この日初めてのアウトを奪った。
続く打席には、1軍での実績十分の川端慎吾を迎えた。しかし大谷はまったく臆することなく自分のピッチングを続ける。初球からストレートを4球続け、カウント1ボール−2ストライクと追い込むと、「これまではあまり投げなかった」という左打者へのスライダーを投じ、川端から空振り三振を奪った。
その後もストレート主体のピッチングで、最速は152キロを計測。2イニング目には安打を許すも、走者を出しても動揺せず。打者7人に対し計30球。奪三振2、被安打1と完璧に近い投球でマウンドを降りた。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/baseball/npb/2013/columndtl/201303110004-spnavi
ルーキーとは思えぬ堂々たる投球
ほぼ完璧なピッチングを見せた大谷。自然と公式戦での早期投手デビューを期待したくなる【写真は共同】
内容も素晴らしかった。特筆すべきは、打者7人に対し、ストライク先行のピッチングができたことだ。試合後、対戦したユウイチは「腕の振りが良く、初球からすごく良い球が来ていた。(二塁打は)イチ、ニのサンで打ちにいったけど、それでも振り遅れた」と大物ルーキーのポテンシャルをたたえた。
大谷自身は試合後、「カウントを取りにいくストレートは良かった。でも、力を入れたときにボールが引っかかったり、カーブもすっぽ抜けた」と、反省も忘れなかった。150キロ連発については、「強い追い風が影響したと思う。もっと長いイニングを投げて、その中でコンスタントに速いボールが投げられる投手になりたい」と冷静に振り返った。
ただそれを差し引いても、この時期にこれだけ完成度の高いピッチングを見せられると、「投手」大谷の早期デビューを期待したくなってしまう。「打者」大谷の可能性も捨てがたいが、「投手」大谷の可能性を省くのは、現時点では考えられない。まさに“ホンモノ”。そう呼ぶにふさわしい、完璧な投球内容だった。
大谷翔平、投手デビュー戦の全投球詳細
【1イニング目:6回表】
打者:代打・楠城祐介(右打ち)
初球 真ん中高めのストレート 空振り 151キロ 0−1
2球目 ストレートが高めに外れボール 149キロ 1−1
3球目 ストレートが外角低めに外れボール 146キロ 2−1
4球目 真ん中高めのストレート 一塁スタンドへファウル 148キロ 2−2
5球目 真ん中低めのストレート 三塁ボテボテのファウル 149キロ 2−2
6球目 スライダーが外に外れてボール 135キロ 3−2
7球目 内角高めのストレート 詰まらせてファーストフライ 149キロ
1アウト
打者:川端慎吾(左打ち)
初球 ストレートが外角低めに決まり見逃しストライク 148キロ 0−1
2球目 ストレートが外角高めに外れてボール 151キロ 1−1
3球目 真ん中低めストレート ファウルチップ 149キロ 1−2
4球目 外角低めボール気味のストレート 後ろにファウル (球速表示なし) 1−2
5球目 内角低め、ひざ元に曲がるスライダー 空振り三振 135キロ
2アウト
打者:川島慶三(右打ち)
初球 外角低めのストレート 見逃しストライク 149キロ 0−1
2球目 外角低めに続けてストレート またも見逃しストライク (球速表示なし) 0−2
3球目 三度外角低めにストレート 一塁側にファウル 152キロ 0−2
4球目 外角にボールに外れていくスライダー 見逃しボール 136キロ 1−2
5球目 ストレートがインコース低めに外れボール (球速表示なし) 2−2
6球目 ストレートが真ん中高めに外れボール 151キロ 3−2
7球目 真ん中低めに力のあるストレート ショートゴロ
3アウト
<1イニング目 19球>
【2イニング目:7回表】
打者:佐藤貴規(左打ち)
初球 外角低めのストレート 後ろにファウル (球速表示なし) 0−1
2球目 変化球が高めに抜けボール 99キロ 1−1
3球目 外角高めのストレート ピッチャー返しを大谷が難なく処理 146キロ
1アウト
打者:松井淳(左打ち)
初球 真ん中よりのスライダー レフト前へのフライ
2アウト
打者:ユウイチ(左打ち)
初球 アウトローに外れてボール (球速表示なし) 1−0
2球目 真ん中低めのストレートでストライク(捕手後逸) 152キロ 1−1
3球目 真ん中高めのストレート レフト前ヒット。レフト後逸で二塁へ (球速表示なし)
2アウト二塁 選手交代(代走):ユウイチ→川上竜平
打者:藤本敦士(左打ち)
初球 外角高めの力あるストレート 3塁側スタンドへファウル 151キロ 0−1
2球目 同じく外角高めへストレートでストライク(ボール気味) (球速表示なし) 0−2
3球目 真ん中高めストレート 三塁側へファウル 149キロ
4球目 インコース低めにボールになるスライダー 空振り三振 136キロ
3アウト
<2イニング目 11球 計30球>
2回 打者7人 被安打1 奪三振2 四死球0 自責点0
今年は2軍情報も、見逃せそうにない。
<了>
取材協力:上村祐作
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/sports/baseball/npb/2013/columndtl/201303110004-spnavi?page=2
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