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アメリカ挑戦を表明した花巻東高の大谷翔平だったが、北海道日本ハムの栗山監督が、
「大谷君には本当に申し訳ないけど、指名させてもらう」
とドラフト前日に発表、日本ハムが来年3月末日までの独占交渉権を手に入れた。
もちろん、日本の球団にも指名する権利があるわけだから、日本ハムはひとつの見識を示したということだろう。ただし、2年連続してドラフト1位指名の選手を逃すリスクを負ったことになるが……。
果たして大谷の進路が日米どちらになるのか、交渉の行方が注目されるのだが、今回は、
「日本とアメリカ、育成方法にどんな違いがあるの?」
という多くの疑問について答えていきたいと思う。
日本では、高卒ルーキーであっても、実力さえ身につけば1年目から一軍で先発を任される。
しかし、アメリカではそんなことはあり得ないと断言できる。アメリカのマイナーのシステムは、どうなっているのか。ある選手を例にとってみて紹介してみよう。
■アメリカで高卒即入団した選手の育成例を見てみよう!
今季、レイズの先発ローテーション入りした高卒のマット・ムーアを例にとって考えてみよう。
ムーアは2007年のドラフト8巡目で指名された選手。即座に契約して、2007年から2008年まではルーキーリーグでプレーしている。
2009年にシングルAのロウアー、下部レベルでプレーして26試合に先発し、8勝5敗の成績を残す。ここでアメリカ流のローテーションに慣れていくわけだ。
ちなみにこの年の投球回数は123回。若者には決して無理をさせず、徐々にイニングを増やしていくのがアメリカ流の育成方針だ。なぜなら、選手は球団の財産だからだ。
この年の活躍が評価され、2010年にはシングルAのハイアー、上部リーグのシャーロットに昇格。ここでは6勝11敗の成績だったが、26試合を投げてローテーションをしっかりと守り、145イニングを投げた。アメリカの考え方としては、投球回数は多くて前年の20%増しが妥当なラインと見なしている。それを越えると翌年に故障が発生しやすくなると分析されているからだ。
■高卒投手は3〜4年を育成期間にあてるのが米国流。
ムーアは2011年にダブルAに昇格すると、ここでブレイクし、18試合に登板して8勝3敗、シーズン途中にトリプルAに昇格して、ここでも4勝0敗の好成績を残す。そして9月にはついにメジャーリーグへと到達する。
そして2012年には31試合に先発して11勝11敗の成績を残し、レイズのローテーションの一角を占めるまでになった。
ムーアの育成パターンは非常に順調なもので、メジャーへの道のりは、高卒の場合だと少なくとも4年は必要だと見た方がいいだろう。
2012年はブライス・ハーパー、マイク・トラウトなど高卒の野手が華々しい活躍を見せたが、投手の場合は3、4年ほど育成の期間が必要になる(ハーパーは高校で1年飛び級し、短大を1年で中退後の入団)。
■では給料はどうなっているのか?
さて、その3、4年の間、マイナーリーグではどのような給与体系になっているのだろうか。
最初の契約年 最大1150ドル/月
シングルA 初年度1500ドル/月
ダブルA 初年度1700ドル/月
トリプルA 初年度 2150ドル/月
2年目以降は上記の数字が最低ラインとなる。トリプルAでも日本円にすれば17万円程度で、遠征先では1日当たり20ドルの食事券などもついてくるとはいえ、生活は厳しい。
アメリカのスポーツ専門局ESPNのドキュメンタリーなどを見ていると、時にはエージェントがやってきて、マイナーリーガーにステーキをご馳走しているシーンなどが見られた。エージェントは先行投資のつもりで食事の席を設け、コミュニケーションを取るのだろう。
ちなみに大谷の高校の先輩で推定1億円の契約金を手にした菊池雄星は、初年度の年俸として1500万円をもらっていたから、ドラフト1巡目クラスの高卒ルーキーのサラリーで比較した場合、日米間でどちらが恵まれているかは一目瞭然だろう。
日本の方が、素質が認められた選手に対する扱いは厚いのだ。
■日本では球団ごとに育成方針が異なるが……。
しかし、アメリカの方が投球回数の制限など、投手という「財産」の育て方についてしっかりとした方針がある。マット・ムーアの入団以来の投球回数の変遷はこうなっている(小数点以下切り捨て)。
20→54→123→145→164→177
3年目以降の本格育成期に入ってからは、いずれも前年比10%から20%の上昇にとどめているのだ。これはしっかりとした計画があるから可能なことだ。日本の球界では入団した球団によって、差異が出るのは否めない。
さて、大谷の運命やいかに。
日本とアメリカ、どちらを決断するにしても人生は大きく変わってくる。
(「スポーツ・インテリジェンス原論」生島淳 = 文)
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20121031-00000001-number-base
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