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ジャッジの匿名性をどう考えるべきか(Mizumizuのライフスタイル・ブログ)【フィギュアスケート】 http://www.asyura2.com/09/sports01/msg/241.html
http://plaza.rakuten.co.jp/mizumizu4329/diary/201004040000/ より転載 現在のジャッジングシステムで、ファンが強く反発しているのは、演技審判の匿名性だ。もちろん、参加した演技審判の名前は公表されてはいるが、誰がどんなGOEおよび演技構成点をつけたのかわからないようになっている。 プロトコルを見ると、明らかにおかしなGOEをつけているジャッジがいる。これは誰なのか。公開されないのは不当だし、この匿名性がジャッジの裏取引を助長しているのではないか。ファンの不満は、おおむねこのように集約できると思う。 逆にISUとすれば、匿名にすることで、圧力に関係なくジャッジが仕事ができ、かつ時に暴走するファンからの過激な批判からジャッジを守ることになると考えているのだと思う(たぶん)。 基本的にMizumizuは、演技審判がどんな点を出したかを秘匿にしてしまうなどナンセンスだと思うし、こうして隠してしまうことで仕事がいい加減になり、かつファンの不信感を増長させていると思っている。 だが、匿名性の廃止を率先してやるべきだと考えているかと問われれば、答えはノーだ。それは、むしろ後から議論してもいい。 優先順位から考えれば、もっと深刻な問題がある。それは「ランダム抽出」。演技審判は最大12人が参加することになっていたが、コストカットのために人数が減らされ、現在では格式の高い試合でも、演技審判として9人が参加するだけになっている。そこで、最高点と最低点がカットされ(いわゆる、上下カット)、さらにランダムに2人の審判の点がはじかれることになっている。 つまり、実質5人の点で順位が決まることになる。ハッキリ言って、これは相当にまずい。ヒューマンエラーや、ジャッジ間の裏取引を防ぐために多人数でジャッジングをするのが新採点システムの理念でもあった。このジャッジ人数を減らす案がチンクワンタ会長の口から出たとき、旧採点システム時代にオリンピックのジャッジを務めた経験をもつソニア・ビアンケッティさんは、強烈に反発していた。 彼女の主張は、「ジャッジの人数を減らしてはいけない。ランダムカットはやめるべき。匿名性は即刻廃止。ジャッジ間での点の調整をしたり、後からジャッジによるジャッジ評価をしてはいけない(そのかわり名前を出して、責任をもってやるべき)」だということだった。 実際に、ジャッジの人数が減ってから、採点は変に「投げやり」になってきた。信じられないような大差がついても平気。試合によって上げ下げがあっても知らんふり。GOEや演技構成点は、試合を見ずに実績を見て出してるのでは? と思えるような出方。それと露骨な「ホーム・アウェイ方式」。たとえば試合開催地がヨーロッパなら、たぶんメダルは1つはヨーロッパ選手に行くだろう・・・と思ったら、ちゃんとジュベールとレピストに行った。 もちろん彼らがいい演技で期待(?)に応えたのは事実だが、レピスト選手のフリーには、なんとなんと3回転がトゥループ(2回)とルッツしか入っていない。 http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_FS_Scores.pdf 「ジャンプの難度を落として、ミスなくきれいにまとめれば、(そこで勝たせたい選手が)メダル」というMizumizuが昨年のロス選手権で予想したことが、ヨーロッパでまた現実になってしまった。 ヨーロッパではフィギュアの人気はすでに風前の灯火なのだ。ISUとしては、なんとか「スター選手」を作って盛り上げたいのだろう。オリンピックのフリーでレピスト選手がいい演技をした「実績点」で、メダル仕分けはヨーロッパ選手権女王のコストナーではなく、レピスト選手のほうに行ったのかもしれない。 レピスト選手の強みは、トリプルトゥループ+トリプルトゥループ。なかなか決まらないのが玉にキズだが、今回はホームのヨーロッパ。メダルのチャンスがあるとわかっていて張り切ったのか、きっちりきれいに決めて、ショートでは加点1.6 点をもらい9.6点という点をい稼いだ。苦手のルッツやフリップはショートからはずしている。 一方で、長洲選手は非常に難しいトリプルルッツ+トリプルトゥループを跳んだのに、お約束のダウングレードで基礎点が10点から7.3点に減らされ、さらにGOEでも減点されて6.7点にしかならなかった。 http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_SP_Scores.pdf 3回転を2種類しか入れないのに、メダルまで来てしまうなど、旧採点システムの後期にはなかったことだし、これはやはり、好ましいことではないと思う。 それもこれも苛烈なダウングレード判定が影にある。ほとんどちゃんと降りても、回転不足とスペシャリストが判断すれば、2回転のほうがマシな点になってしまう。それならば、苦手な3回転ははずして、2回転で無難にまとめたほうがいい。 実際には、無難にまとめても点が出ないこともある。だが、「ホーム」なら出る。それがわかっているのか、ヨーロッパ選手は北米・アジアでは露骨に力の入っていない試合をする。「どうせ頑張ったって、ここでは私の点は出ないでしょ」といわんばかりだ。 ダウングレード判定は、このようにジャンプの完成度を高めるのに役立つどころか、選手に苦手なジャンプを避けさせ、バランスよくジャンプを跳ぶ力を劣化させることにせっせと貢献しているのだ。 これはどのジャッジがどんなGOEをつけるかなどということよりもずっと深刻な問題だ。匿名性は廃止すべきだが、それは最優先の課題ではない。 もしやるとしたらランダムカットを中止するほうが先だ。ある選手に対して、7.5点の点をつけたジャッジの点が拾われるか、8.5点の点をつけたジャッジの点が拾われるかで、順位が変わってしまう・・・というようなこともありえる。多くのファンは上位選手しか見ていないが、中位から下位選手の間では、実際にそういう「運」による順位差は、すでに当然出ていると思う。これでは競技会なのかギャンブルなのか、わからない。 対して、匿名性はルールの根幹にかかわるほどの案件ではない。GOEで基礎点をないがしろにできるような加点がつく、あるいはちょっと失敗すると高難度のジャンプを跳んでも意味がなくなってしまうような減点をされる、という本末転倒な現象を、ダブルアクセル以上のジャンプのGOEの加点・減点割合を抑制することで防いでしまえば、誰がどんなGOEをつけたかなどということは、たいした問題ではなくなるはずだ。 トリプルアクセル以上のジャンプの基礎点を、2回転ジャンプの基礎点と一緒に上げる。そしてジャンプのGOEの反映割合を過小に抑える。 これが、ダウングレード判定に次いで重要なこと。 どちらも、すべての選手のためになり、バランスのよいジャンプ力の向上にもつながり、十分に理論武装ができる。同時にジャンプ以外のエレメンツの基礎点を上げれば、ジャンプ大会になることも(おそらく、ある程度は)防げるはずだ。 トリプルアクセルをショートに入れられるようにするとか、ボーナス点をつけるとか、そんなエゴイスティック――にしか見えないうえに、浅田選手に本当に有利になるかどうかわからないような改正案を持ち込むより、よっぽど優先して各国に働きかけるべき事柄だと思う。 世界選手権でジュニア、シニアとも完全制覇という偉業をなしとげた国だからこそ、ルール全体を見渡して、「バランスのよいジャンプを跳ぶ力」をつけるよう選手をうながす改定を行い(ダウングレード判定の廃止もしくは緩和――2分の1以上の回転不足、つまり途中で回転が終わってしまったような明らかな回転不足ジャンプにのみ適用するというように)、「高難度ジャンプへの挑戦」を過度にリスキーなものにしている現状を変え(ダブルアクセル以上のGOEの反映割合を過小にする)、同時に基礎点狙いの無謀な挑戦は防ぎ(4Tを回り切って転倒すれば3Tと同等の点になるなど意味不明だ。ジャンプは立ってナンボなのだ。転倒は回りきっていようがいまいが0点。ややこしい減点をする必要はない)、「ヒューマンエラーや恣意的採点」がなるたけ点数に影響しないよう、客観的で公平で、かつわかりやすいルールを再構築していくという強い意志を示すことが大事だ。 そして、むしろ・・・ジャッジの問題は、実は「ジャッジの待遇に悪さ」に原因があるのでは、というのがMizumizuの考えだ。 多少理想論になるが、ここまで難しい判定や、こまかな採点をさせる以上、本当ならもっと厚遇すべきなのだ。 ところが今は、ジャッジは派遣社員扱い。誰が実際に試合のジャッジングをするのかも、くじ引きで決まり、権威のカケラもない。 ボランティア同然の安い報酬でやっているのだから、ファンはジャッジを尊敬しろ、などと言う人がいるが、それこそ本末転倒だ。 報酬も安く、地位も低いからこそ、力のある誰かの意向にそって「えこひいき」をしたり、実際の競技をロクに見ずに、無難な実績点をトレースしたりするのではないだろうか? そう取るのが、むしろ世間の常識だと思うが。
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