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道路交通法施行規則の一部改正、および、改正臓器移植法が施行されたのに伴い、運転免許証の裏面に、臓器提供意思表示の記入欄を設けることになった。改正臓器移植法は、臓器摘出要件や、脳死判定要件の緩和、15歳未満からの脳死臓器提供を認めるなど、臓器の提供数を増やすことを目的とした法律だ。
免許証の意思表示欄だが、1.脳死、心停止のいずれでも臓器を提供、2.心停止の場合だけ臓器を提供、3.臓器を提供しない、のいずれかに○をつける。また臓器の種類が書かれており、提供したくない臓器には、わざわざ×をつけなければいけない。特に何も意思表示をしたくなければ、空白のままでも良いとされる。
ここで注意が必要なのだが、免許証のこの部分が空白の場合でも、遺族の同意が得られれば、臓器摘出が可能となる。さらに、遺族がいない場合には、ただちに臓器を摘出する事が許される。おそらく、この新しい免許証を受け取った人達は、臓器提供をするかどうかを決めかねて、空白にする場合が多いと思われる。しかし、その場合、臓器提供の意思を示したつもりはないのに、死亡後に臓器を抜き取られる事があり得るのだ。
改正法には、わざわざ「遺族」と書かれている点に注目する必要がある。「遺族」の定義は曖昧な部分もあるが、「死者の配偶者、子、父母、孫及び祖父母で、死亡時に死者によって生計を維持していた者」というのがそれである。すなわち、臓器提供拒否の意思表示をしていない限り、免許証を保持していて、養う家族がいない人間は、すべて臓器提供者とされてしまうのである。実際の確認方法は、戸籍を照会することになると思われる。非世帯主や、もしくは、世帯主であっても単身者であれば、臓器摘出が許される。実に効率的である。
オートバイで事故死した未成年も、パートに出かけた帰りに死亡した奥さんも、一人暮らしで死んだ人も全て、携帯していた免許証で拒否の意思表示をしていない限り、自動的に臓器提供者となる。
これはすごい話ではないだろうか。無尽蔵とも言えるほどの臓器がただで手に入るのである。公的医療保険の適用があっても、まだまだ臓器移植手術は高額だ。養う家族も持ち得ない貧困層から富裕層への臓器の提供という構図も描ける。大量の日本人の健康な臓器は海外でも需要があるだろう。
臓器移植ビジネスの発展に寄与する事に賛同するとしても、脳死状態での臓器提供を認めるかどうかという問題が残る。心停止はともかく、脳死判定基準というのは、法律上の生死を規定したものに過ぎない。ラザロ徴候や、長期脳死という事例がある以上、心臓が動いている間に、体を切り刻まれ、内臓をえぐり出されるのは、個人的には御免である。いくら平坦脳波が出ています、脳幹反射が皆無です、と言われても、自分の親族が脳死状態に陥った場合、臓器提供を許す気にはなれない。もっとも、以上は、個々人が各自の信条に従って判断すればいいことである。
ちなみに、脳死判定の同意者には、「家族」という言葉が使われている。一見、「遺族」より、「家族」のほうが、あてはまる範囲が広いように感じるが、実際は「遺族」以上に、曖昧な言葉であり、法律上、「家族」を厳密に定義したものは無いのである。
今回の施行は、個人が積極的に拒否しない限り、死亡時に臓器提供者となることを、知らぬ間に日本国民に強いたものであった。近いうちに、今回と同じように、形ばかりの意見の募集を行った後、ほぼ強制に近い形でドナーとなることが求められる時代がやってこよう。
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