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http://www.kahoku.co.jp/news/2010/07/20100707t13016.htm
「筋弛緩剤」再審請求へ 守受刑者弁護団、来月にも
仙台市泉区の旧北陵クリニックで起きた筋弛緩(しかん)剤点滴事件で殺人、殺人未遂罪に問われ、最高裁で無期懲役が確定した元准看護師守大助受刑者(39)の弁護団が6日までに、8月にも再審請求する方針を固めた。今も重体の大島綾子さん(21)=事件当時(11)=の容体急変の原因が筋弛緩剤の点滴投与ではなく、難病だとする医師の意見書を新証拠として提出する。
意見書は、綾子さんの容体急変時の症状を検討し、(1)手足のけいれん(2)脳卒中のような発作(3)高い血中乳酸値―などの点を挙げ、「筋肉が緩んで動かなくなる筋弛緩剤の中毒では説明がつかない」と指摘。神経内科疾患の一つで、持病のミトコンドリア脳筋症が急激に悪化した、としている。
確定判決は、綾子さんに筋弛緩剤が点滴されたことで呼吸する際に使われる筋肉の動きが低下し、体内が低酸素状態に陥り、脳に障害が残ったと認定した。
一審仙台地裁は、起訴された5事件のうち、比較的証拠がそろっていた綾子さんと当時1歳の女児への事件性を認定し、それを支えに状況証拠を評価し、ほかの3事件も守受刑者による犯行と断定。仙台高裁、最高裁とも一審判決を支持した。
弁護団は再審請求で、綾子さんの容体急変は持病が原因だとして事件性を否定し、ほかの4事件にも波及させて、全面無罪を主張する方針だ。
ミトコンドリア脳筋症は、細胞内でエネルギーを作り出すミトコンドリアのDNA(デオキシリボ核酸)に異常が生じることで、細胞内でエネルギー不足が起き、脳や筋肉に異常が起きる難病。症状は意識・視力障害やけいれん、心拍数の減少などがある。血中乳酸値が上昇するのも特徴の一つ。確定診断にはDNA解析が必要になる。
医師の意見書は、事件に関連してクリニックの元実質経営者が名誉を傷つけられたとして、阿部泰雄弁護団長(仙台弁護士会)を相手に起こした民事訴訟で、阿部団長側が仙台地裁に証拠として提出、医師の証人申請もしている。
◎まだ家族苦しめるのか被害者側
元准看護師守大助受刑者(39)の弁護団が再審請求に踏み切る背景には、被害者の血液(血清)や点滴パックの溶液から筋弛緩剤成分を検出したとの鑑定結果に対する不信感がある。捜査段階で鑑定資料が全量消費され、再鑑定できなかったからだ。
阿部泰雄弁護団長は「検察側の最重要証拠が正しいかどうか確認するすべはなく、証拠能力を信じることができない以上、有罪判決は受け入れられない」と、再審準備を進めてきた理由を語る。
再審事由の「新証拠」としたのは、被害者の一人で、今も意識が戻らない仙台市泉区の大島綾子さん(21)の容体が急変した際の症状や原因に関する医師の意見書。2000年10月、11歳だった綾子さんに起きた容体急変について、意見書は筋弛緩剤の中毒ではなく、ミトコンドリア脳筋症が原因としている。
綾子さんの母恵理子さん(48)は「(意見書は)娘の低身長と低体重もミトコンドリア脳筋症が原因などと言っているが、いいかげんにしてほしい。弁護団の我田引水の解釈と証拠の引用で、何が分かるというのか。娘を病気扱いすることなど到底許すことはできない」と憤る。
弁護団と守受刑者に対しては「どこまで娘とわたしたち家族を苦しめれば気が済むのか。彼らの言動は理解も容認もできない。自らの誤りを認め、これまでの活動を反省すべきだ」と答えた。
[筋弛緩剤点滴事件]仙台市泉区の旧北陵クリニック(2002年3月廃院)で1999年以降、患者の原因不明の容体急変が相次いだ。宮城県警は2001年1〜3月、点滴で筋弛緩剤を投与して1人を殺害、4人を殺そうとしたとして、殺人と殺人未遂の疑いで守大助受刑者を逮捕した。守受刑者は逮捕直後、容疑を認めたが、逮捕4日目に否認に転じ、公判で無罪を主張。仙台地裁は01年7月の初公判以来、156回の公判を開き、04年3月に5件すべてを有罪認定し、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。守受刑者は控訴したが、仙台高裁は06年3月に控訴を棄却。最高裁で08年3月、判決が確定した。
[再審請求]刑事訴訟法は、有罪判決確定後に証拠物が変造だったことが証明されたり、明らかに無罪とすべき証拠が新たに見つかったりした場合、再審請求できると定めている。請求を認める再審開始の決定が確定すれば、原判決を出した裁判所で再審が行われる。
2010年07月07日水曜日
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