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まじめな話はできるのに世間話ができない【DIAMOND online】
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投稿者 地には平和を 日時 2010 年 3 月 07 日 21:47:26: inzCOfyMQ6IpM
 

まじめな話はできるのに世間話ができない【DIAMOND online】
――社会から離脱してしまう人々の実態
http://diamond.jp/series/hikikomori/10010/

「ひきこもり」の高年齢化が加速

インターネットだけが“希望”?

 地方自治体で、ここ最近、引きこもり問題に、最も手厚い取り組みを行っているのは、首都・東京都だろう。

 その中で、都は、ひきこもり状態にある本人や、その家族、友人らを対象に、専門の相談員が、インターネットや電話、モバイルによる「東京都ひきこもりサポートネット」と呼ばれる相談に無料で応じている。

 興味深いのは、07年7月からスタートした電話相談の新規登録者数の年代。

09年3月までに、電話で相談のあった引きこもり当事者計1676人のうち、08年度(08年4月〜09年3月)1年間の年代別内訳(不明者を除く)を見ると、30代が3割弱、40代以上も15%に上っていることだ。

 一方、04年11月からスタートしたインターネット相談の新規登録者は、09年3月までに、計1817人。

この若い世代がアクセスしやすいネット相談者の08年度1年間の年代別内訳をみても、30代が3割弱、40代以上は1割を占めるなど、やはり高年齢化の傾向が浮き彫りになった。

 実際に、都が元々、自宅訪問などの支援事業で想定しているのは35歳未満だが、今回の相談対象者である引きこもりの年齢について、都は08年にすでに「40代、50代も散見する」と報告。

「40代以上は、問題が長期化し、深刻な相談内容が少なくなかった」と紹介している。

 また、08年3月までのネット相談の内訳をみると、引きこもり本人からの相談は、約55%と高かった。

本人以外では、母親が約14%、姉が8%弱、父親が7%、友人・知人が3%余りと続く。

社会の人々との関係性が断絶され、地域に潜在化する引きこもり当事者にとって、インターネットは唯一「相談してみようかな」と思わせる“希望への入り口”になっている状況が窺える。

きっかけは「職場不適応」が47%

企業の“無策ぶり”が顕著に

 もう1つ、注目したいデータがあるので、紹介したい。

 都は09年に「ひきこもり状態にある高年齢層(35歳以上)の状況」を初めて明らかにしている。

とくに、35歳以上(49歳まで)の「ひきこもりのきっかけ」をみると、最も多かったのは「職場不適応」で、47%と半数近くを占めたのだ。

次いで「人間関係の不信」33%、「病気」22%などが続き、「就職活動不調」も16%に上った。

 ひきこもり期間についても「7年以上」の長期が61%を占めた。

一旦、社会からリタイアしてしまうと、なかなか復帰できないまま、地域で長期化せざるを得なくなる実態が推測できる。

 このように、都は「ひきこもりのきっかけで、“職場不適応”が意外に多かった」ことから、就職経験のある求職者などの「就労に関する実態調査」も実施した。

 それによると、就職経験のある求職者の中にも、「家や自室に閉じこもっていて外に出ない人たちの気持ちがわかる」、「自分も、家や自室に閉じこもりたいと思うことがある」などと答える「ひきこもり親和性」、つまり“引きこもり予備軍”が、31%(120人のうち37人)も存在していたのである。

 そんな予備軍の彼らに、「一番最近まで勤めていた会社の退職理由」を複数回答で尋ねたところ、最も多かったのは、「仕事上のストレスが大きかった」で51%。

次いで、「給与に不満があった」が43%、「昇進やキャリアに将来性がなかった」、「職場(上司・同僚など)の人間関係が悪かった」、「肉体的・精神的に健康を損ねた」がそれぞれ38%で並んだ。他に、非引きこもり予備軍の人たちより多かった退職理由は、「仕事内容やノルマ・成果への重圧がきつかった」、「セクハラ・パワハラ・いじめがあった」など、職場環境上の問題が目立った。

 一方、退職理由の中で、非予備軍の人たちが、予備軍を上回ったのは「会社の将来性・安定性に期待が持てなかった」、「労働時間が長かった・残業や休日出勤が多かった」、「キャリアアップするため」だけだった。

 ちなみに、これらの求職者に、外出頻度についても質問。

「ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する」、「ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける」など、引きこもりの実態に近い人は、23%にも上った。

 こうした調査結果の実態から、都は、報告書の中で「元勤務していた企業側も、希望を活かした配置や仕事の裁量権が低いなどの職務面での配慮を欠いていただけでなく、“話しやすい雰囲気”などの従業員のストレスをフォローする対策を講じていないため、従業員の離転職意向を和らげることができなかったものと推定される」と、企業側の“無策ぶり”を指摘。

「就職した会社で仕事のストレスや対人関係の問題を感じ、社内に十分な施策がないために、うつ状態に陥った」としている。

 また、それをきっかけに、「ひきこもりに至った人の多くが、医師による診察で“うつ病”や“抑うつ状態”の診断を下されていた」として、「ひきこもりを防ぐ1つの有効な対策は、若年者の職場内不適応を和らげ、彼らを職場に定着させるための企業内施策にあると考えられる」などと提言している。

まじめで、対人関係が苦手な人は

「ひきこもり」になりやすい?

 さて、前出の「東京都ひきこもりサポートネット」の監修を手がけているのが、『家族で往復書簡のすすめ』(彩流社)などの著書がある、東京学芸大学・教育学部の田村毅(たけし)教授だ。

思春期精神医学、家族療法が専門で、長年引きこもり問題に対応してきた「北の丸クリニック」(東京都千代田区)の医師でもある。

 そんな田村教授に、話を聞いた。

――最近の引きこもりの傾向として、社会から離脱した人たちが社会に戻れなくなって、結果として外に出られなくなるような状況も生まれているのでしょうか?

「うつ病は、昔からありました。うつ病になって、外に出られなくなるのです。

職場の人間関係などのきっかけは、1つの誘因だと思います。

そのストレスを乗り越えられない根底には、(引きこもり)特有の対人関係の薄さがあるんだと思いますね。

その根っこは、前々からあって、それがいつ破綻するかの違いだと思うんです。

小さい頃は、自分が中心でも、周りが自分に合わせてくれて、傷つくことはなかった。

しかし、どこかで傷ついて、自分の思うようにはいかないんだなという、自己万能感が崩壊していくプロセスを受け入れることが重要なんです。

引きこもりの人たちは、家庭環境が良かったり、成績が良かったりして、自己万能感が傷つかないまま、何とかやって来れてしまった。

傷ついた体験があれば、さらに多少傷ついても、何とか乗り越えられると思うんです」

――自分をだまし、だまし、偽って生きてしまった結果、職場の不適応などをきっかけに、破たんしてしまうということなのでしょうか?

「昔は、会社が家族の役割を果たして、面倒を見てくれました。

どんなに辛くても、会社には行かなければいけないという規範性みたいなものがあって、社会から離脱していくという選択肢はなかったのではないでしょうか。

いまは、規範が後退して、崩れていくことができるようになってきた。

作家の平野啓一郎さんの言う“分人主義”(状況や相手によって自分の人格が変わる)を続けているうち、“本当の自分って、何だろう?”ということになる。

社会や親から叩き込まれてきた、本当の世界にこだわってしまうと、苦しくなってしまう。

“自分はこうあらねばいけない”という肥大した自画像が強い。

そこから落ちこぼれることは自分ではないと思い、百かゼロかの選択肢しかないんですね」

――職場で、上司と対立したり、人間関係の中で孤立したりして、上手く適応できなくなってしまうケースが多いようですね

「例えば、ある男性は、まじめな話はできても、世間話ができない。

ふつうは、世間話ができて、まじめな話のほうが苦手なのに、逆なんですね。

コミュニケーションをどのようにとればいいのか、と悩んでいました。

自分の存在が恥ずかしい。

石橋を叩いても渡らないような受け身的な人生を送ってきたと言うのです。

コミュニケーションをとれないのも、最初は忙しいからだと思っているのですが、よく考えてみると、相手が悪いのではなく、自分に自信がなかった。

上司にちょっと確認すれば済む話なんですね」

――世間話ができるかどうかというのも、必要なスキルになるのでしょうか?

「世間話は、自分から話題を提供して、相手に興味を持たせることで、コミュニケ―ショーンをとっている。

相手のニーズを理解して話すのは、人間関係の駆け引き。

そういう観点からいうと、高度なテクニックなんですね。

ただ、何となく苦手な人はたくさんいます」

――引きこもりになってしまう人たちに共通する傾向はありますか?

「まじめで、対人関係が苦手な人たち。ずぼらな人だと、いい加減になれるからラクになる。

逆に、いい加減でいることができない人とも言えるかもしれません」

「ひきこもり」への

好ましい対応、好ましくない対応

 都は昨年末、そんな田村教授が監修し、同サポートネット協力によるDVD付きの冊子『ひきこもり相談マニュアル〜電話相談・メール相談の実際』を出版。

相談関係者向けに無料配布したところ、冊子希望の問い合わせが相次いだという。

 マニュアルの中には、本人や家族からの電話相談の「好ましい対応例」と「好ましくない対応例」、メール相談での「返信文作成のポイント」などが、わかりやすく示されている。

 例えば「好ましくない対応例」はこうだ。

本人:「資格をとろうと勉強中だが、集中できず、八方ふさがりだ」

相談員:「それは努力が足りないんじゃないですか。もっと頑張らなくてはダメですね」

 一方、「好ましい対応例」は、こうなる。

相談員:「よく始めましたね。1人だけで頑張るのは、なかなか大変なことですね」

 メールでの返信についても、文末で「〜という方法があるかもしれません」「〜してみたらいかがでしょうか」などと選択肢の表現を広げることや、話し言葉以上にやわらかく、丁寧にメッセージを伝える配慮が必要だ、などと紹介している。

引きこもりの人たちのとの相談に限らず、一般の人間関係のやりとりにも参考になるような内容で、興味深い。

 発行元の都の総合対策部青少年課によると、「まだ若干の在庫がある」という。

 都は2010年度も、地域で引きこもりを抱えた家庭に対し、民生委員などがどのように気を使い、どう声をかけたらいいのか。

そんな手引書となる「地域支援者向けハンドブック」(仮称)を出版することにしている。
 

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