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日本が変わる:最低賃金引き上げ 「800円」攻防必至【毎日JP】
http://mainichi.jp/life/job/news/20090915ddm008010012000c.html
<世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>
◇生活改善に期待/会社がつぶれる
完全失業率が戦後最悪の5・7%(7月)を記録するなど、労働環境の悪化が続く。
民主党はマニフェスト(公約)で「ワーキングプアからの脱却を支援する」政策を掲げ、全国で150円以上の格差が存在する最低賃金の引き上げや、製造現場への労働者派遣を原則禁止とする政策の実現を目指す。
賃上げによる消費の底上げも狙っており、派遣制度の改正で「労働者の生活安定」を図りたい考えだ。【久田宏、坂井隆之、寺田剛】
民主党は、全労働者に適用される「全国最低賃金」を800円に引き上げ、景気の状況に配慮しながら全国平均1000円への上積みを目指す。
賃金上昇で消費拡大を図り、内需振興に努めることで、輸出に過度に依存する体質を改善することを狙う。
小泉改革以来、地域間の格差拡大が指摘されていることにも配慮したものだ。
実現には課題も多い。
09年度の都道府県別最低賃金(時給)は、最も高い東京都が791円と800円を下回る。
逆に最も低い佐賀、長崎、宮崎、沖縄の4県は629円にとどまっている。
最低賃金が631円の山形県で、雇用に関する相談に応じる山形版派遣村実行委員会の勝見忍事務局長は「最低賃金周辺の時給で働いている人の生活が改善する」と民主党の公約を歓迎する。
しかし、同県で卸売会社を経営する社長(70)は「今出している賃金がギリギリの水準。
国の補助があればともかく、山形では800円は無理」と語る。
1次下請け、2次下請けなどすそ野に中小企業が広がる自動車産業。
自動車総連の幹部は「経営側から『会社がつぶれるよ』と言われたら、どうするのか」と語る。
民主党はマニフェストに、最低賃金引き上げのために「財政、金融措置」を実施するとも明記した。
最低賃金と実際の賃金の差額を国が補助した場合、2200億円程度の財源が必要と見込む。
国会で厚生労働省の特別会計を追及した民主党の山田正彦衆院議員は、特別会計の積立金の活用などにより財源は確保できると話す。
失業給付や、雇用を維持した企業に給付する雇用調整助成金などを管理する労働保険特別会計は、07年度の1年間だけで約1兆3000億円の剰余金がある。
雇用保険料が今年4月から引き下げられたのは、同特別会計の財源に余裕があると判断されたのが背景だ。
しかし、今春に実施された経済対策で雇用調整助成金の給付が拡大された。
「財源は枯渇しつつある」(経済官庁幹部)と言われる。
最低賃金の引き上げを民主党政権が実現できるかどうかは特別会計の改革を含めた財源の確保が焦点になる。
◇派遣法改正−−技能習得で正社員の道/国内産業の空洞化懸念
製造業派遣や、日雇い派遣の禁止など、労働者派遣法の抜本改正は今月9日の民主、社民、国民新党3党の政策合意にも盛り込まれた。
04年に解禁された製造業派遣を多くの企業が採用してきたが、昨年の景気後退では真っ先に契約を解消され、社会問題になったことが背景にある。
北九州市で派遣・請負を行うワールドインテックの永井宏樹社長室長は「派遣労働者は企業側にとって便利すぎる存在だった」と、規制強化の背景を分析する。
派遣先で、人手が足りない現場を転々とするなど、技能を身につけることが難しかった。
永井室長は「技能を身につけられる働き方に変われば、正社員への道も開ける」と語り、労働者の側にたった制度改正に期待する。
製造業向けの派遣・請負を行う企業120社でつくる「日本生産技能労務協会」によると、今年1月に100万人程度だった製造業派遣は、9月現在で30万人程度まで減少した可能性があるという。
だが、産業界には「製造業派遣を全面的に禁止すると生産拠点の海外移転が進み、産業の空洞化が進む」との懸念も強い。
「自動車生産はモデルチェンジで生産に波がある。
対応には非正規雇用が必要で、派遣の全面禁止は競争力をそぐ」(自動車総連幹部)と労組内からも異論が出ている。
◇英国では消費下支え−−山田久・日本総合研究所ビジネス戦略研究センター所長の話
民主党の政策目的は、最低賃金の引き上げで働く人の生活を向上させ、格差や貧困の問題解決を図ることにある。
英国では、ブレア政権が07年までの在任中に約5割引き上げ、消費を下支えした例もある。
最低賃金の引き上げは、働き手の生活をよくする側面と、企業のコストアップの両面があるため、企業の生産性を向上させるなどの産業政策とセットで行うべきだ。
派遣労働は製造業にとって必要だが、労働者が何年も単純作業を強いられて専門技術を体得できないことが問題。
(民主党が、禁止対象の例外と認めている)専門職の研修期間として、1、2年の単純作業を認める制度は必要ではないか。
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働くナビ:今年度最低賃金改定の目安で、引き上げが示された地域は。
毎日新聞 2009年9月15日 東京朝刊