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8月7日17時42分配信 読売新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090807-00000664-yom-soci
九州北部豪雨で、福岡県那珂川町役場の駐車場が冠水し、緊急呼び出しで休日出勤していた職員の車126台が水につかり、86台が廃車になったことがわかった。
町内で様々な豪雨被害が出ていることから補償を求める雰囲気はなく、救済する法律もないため町は補償しない考えだ。職員は「業務で呼び出されて被害に遭ったのに……」と複雑な気持ちを抱えながら、同僚の車に相乗りするなどして役場に通っている。(坂田元司)
先月26日の日曜日。町は災害に備え、午前9時50分に全職員196人を招集した。職員は町民の避難指示にあたったり、堤防に土のうを積んだり奔走。同11時前、町を流れる那珂川がはんらん、役場に水が押し寄せた。
江藤一秀・住民生活部長は、「あっという間に水かさが上がった」と振り返る。公用車を優先して避難させている間に職員の車はみるみるうちに沈んでいった。「もう動かんばい」。ため息が漏れた。
町によると、126台のうち86台が廃車、34台は修理中で、6台は査定が終わっていないという。ローンが残っていたり、夫婦で2台被害に遭ったりしたケースもある。車両保険に加入しているのは半分程度で、水害でも適用される種類の保険に入っているのは、さらにその半分くらいだという。
国保年金健康課の小金丸優さん(28)は昨年8月に6年ローンで買ったワンボックスカーが冠水した。修理代の見積もりは約130万円。廃車にするよう進められたが、ローンの残債が約180万円あり、「新しく買うよりは安い」と修理を選んだ。「あまりの金額に、正直へこみました」とうなだれる。
役場近くの自動車整備業「香月自動車」によると、エンジンまで水につかれば100万円は必要。エンジンが無事でも電子部品やブレーキに支障が出ることが多く、これらの交換には通常約30万円かかるという。
通勤時間帯に走るバスが少ないため、車を通勤の足に使っていた職員が多く、同僚の車に相乗りしたり、レンタカーを借りたりして乗り切っている。
総務省によると、地方自治法や地方公務員災害補償法には、業務中に職員の所有物が損なわれた際の規定はない。自治体が補償するためには独自に条例をつくる必要があるという。
労働問題に詳しい林弘子・福岡大教授(労働法)によると、自然災害は予想できないため、今回の場合、町の責任は問われない。ゲリラ豪雨など異常気象が増える中、自然災害時の補償の仕組みが新たな課題になっている。林教授は「水害などに対応した保険に加入すると同時に、社会全体で補償のあり方を考える時期にきている」と指摘した。