★阿修羅♪ > 社会問題7 > 265.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
農業を衰退させる減反政策をやめよ(1) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
一昨年の春、筆者が奈良県の農村を歩いていたとき、70歳代の農家の人と話をする機会があった。道を尋ねたのがきっかけだったが、どちらからともなく農業の話になった。
「コメ作りは利益にならん。値段が安うて農協に売った額から、農機の支払い、燃料代、肥料代、農薬代なんかをさっ引くと、残りは話にならんほど少ない。まあ、農地があるんで遊んでいるよりまし、ということでやっとるようなもんや。息子が会社勤めをしとるので、生活には困りはせんけど、考えればあほらしいな。農業もワシの代で終わりやな」
この証言には、多くの限界的な零細コメ農家が置かれている状況が集約されている。この農家が保有・耕作している農地も1ヘクタールに満たない。典型的な第二種兼業農家だ。
だが、こうした零細農家にも、農協を通じて減反が割り当てられる。
減反政策が始まったのは、1970年。コメ作りを行うすべての農家に一定の転作面積を割り当てた。建前上は義務ではないが、「転作奨励金」というアメと、その他の補助金の受け取りに減反の達成を要件とするというムチを使って、事実上の義務として機能してきた。
95年に食糧管理法廃止と食糧法の施行があったが、その後も減反政策は維持された。
農協、自民、農水の言い分
現時点における減反政策の目的は生産調整カルテルによって価格を維持することである。このカルテルには、大規模なコメ専業農家から零細農家まで、個々の意思とは関係なく一律に参加を求められる。減反政策を維持してきた農協、自民党、農林水産省などの言い分はこうである。
「減反政策をやめたら、コメの生産量が増えて価格が下落し、日本のコメ農業は大きなダメージを被る」
それは本当だろうか。
まず価格。減反面積は110万ヘクタールと水田面積の4割弱に達しているのに、価格の下落傾向は続いており、冒頭の証言がそれを裏付けている。理由は、消費者のコメ離れだ。生活の洋風化ということが言われるが、それだけではない。
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/de47c44cbb549be8cb1d7efe1d1fcd47/
農業を衰退させる減反政策をやめよ(2) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
つまり、主食としての価格が高すぎるのだ。国内の麦価と比較しても高いし、国際価格と比較するとかなり高い。小麦と比べて高いことが国民のコメ離れを促している。また、コメを輸出しようとしても、一部銘柄米の小ロットを例外として、日本のコメに国際競争力はない。
零細な農家の側から見れば、コメは安すぎて利益が出なくなっているのだが、麦価との比較や輸出という観点から見れば、コメはまだ高すぎるのである。
この中途半端なコメの価格を形成してきた原因が減反政策という名のカルテルである。減反には米価を押し上げるほどの力はなかったが、大幅な下落は食い止めてきた。では、このまま減反政策を続けたら、日本のコメ作りはどうなるのだろうか。
減反は大規模農家に対しても、零細農家に対しても、一定の比率で割り当てられる。零細農家はとっくに価格競争力を失っているが、減反という価格維持政策に助けられて何とか耕作を続けている。しかし、将来の発展はありえず、発展の期待がなければ後継者も生まれない。
「遊んでいるよりまし」ということで小規模で非効率なコメ作りをしている前述のような零細農家は、体が動くうちは耕作を続けるだろう。つまり、減反政策が生産性の低い零細農家を温存しているのである。そして彼らがコメ作りからリタイアしたとき、農地は耕作放棄地となる。
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/de47c44cbb549be8cb1d7efe1d1fcd47/page/2/
農業を衰退させる減反政策をやめよ(3) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
潜在力ある大規模農家
一方、大規模農家はどうか。大規模農家は、もともとスケールメリットが享受できるうえ、経営の合理化を進めることが可能だったため、相対的に価格競争力を持っており、コメ農業の衰退を押しとどめうる潜在力がある。しかし、それにはさらに経営規模を拡大させ、スケールメリットを一層発揮させる必要がある。
そうした大規模専業農家にも減反は割り当てられており、これが彼らの生産意欲を低下させ、経営拡大と合理化の機会を失わせている。その結果、日本農業の復興を妨げている。
いま必要なのは、大規模なコメ作り農家にさらに農地を集積させ、あるいは、新たな大規模な経営体の農業参入を促して、コメ作りを発展させることである。それには最低限、減反政策をやめる必要がある。減反政策をやめれば確かにコメ価格が下がる。このコメ価格の下落は消費者のコメ離れを食い止める一方、コメ輸出への可能性を高める。
同時にコメ価格下落は、高齢化した限界的な零細農家の退出を促す。その結果、零細農家の農地を大規模農家に貸し出すことが可能となる。
このような経路によって、大規模農家のさらなる経営の大規模化が可能となる。スケールメリットが拡大し、コメ価格が下がっても国内消費の拡大と輸出という新しい需要の創出によって、十分農業経営をやっていけるようになる。
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/de47c44cbb549be8cb1d7efe1d1fcd47/page/3/
農業を衰退させる減反政策をやめよ(4) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン
一方、限界的な零細農家は、現状でもコメ作りから利益を得ることができていないのであり、農地を貸した地代によって、むしろ収入は増えるのである(ただし、コメは買うことになるが)。
ただ減反政策を廃止する際は、価格低下で影響を受ける一定規模以上の農家に対し、所得を十分保障する欧米型の直接支払い(補助金)を交付する必要がある。日本農業復活の原動力となるべき大規模農家は守らなくてはならない。
ところで、なぜ従来、弊害の多い減反政策が続けられてきたのだろうか。
それは第一に、農協という農業コングロマリットの既得権を守るためである。農協は、多くの組合員に農薬、肥料、農業機械などの資材を売り、コメなどの生産物の流通を支配することによって利益を得ている。だが、大規模経営農家は、単独で生産物の流通や資材、資金の調達をする力を持っており、農協離れが顕著だ。零細農家が減ることは、農協にとっては死活問題なのである。
第二は、自民党である。以前より弱体化したとはいえ、自民党にとって農協に組織化された農家は、重要な集票基盤である。あからさまに言えば、自民党には産業としての農業の未来より、農家の戸数を維持することが最大の関心事であり、それには、零細農家が農業に従事し続けることが重要なのだ。
第三は、農水省だ。農家の戸数は農水省にとっても予算獲得におけるパワーの源泉であり、それを維持することは極めて重要だ。
だが、食糧自給率が先進国で最も低くなってしまった現在、農家数の維持ではなく、農業生産をこれ以上減らさないことが緊急の課題だ。それには減反政策をやめ、農業の参入障壁を取り除き、農地の自由な貸借を可能にする制度改革が必要だ。
http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/de47c44cbb549be8cb1d7efe1d1fcd47/page/4/
コメント:
1.旧来型の社会主義か。(=国民新党)
2.竹中的な新自由主義か。(=小泉自民)
3.それとも欧州型リベラルか。(菅直人岡田克也)
選択を迫られているようだ。
鳩山民主党は、1と3の重複型らしいが。