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http://www.news.janjan.jp/column/0912/0912094193/1.php
漢方薬保険適用除外は【誤報】です! 仕分け人枝野議員が明言
安住るり2009/12/09
民主党連立政権の行政刷新会議による事業仕分け作業の統括役である枝野幸男議員が、12月8日夜、CS朝日ニュースター「ニュースの深層」に出演した。
上杉隆キャスターと「事業仕分け」について語る中で、枝野議員が「事業仕分け結果の誤解・悪用」の実例としてまず挙げたのが、【漢方薬】が「保険適用から除外される」とマスコミで一斉に報道された問題だった。
◆ 仕分けのほとんどは【中抜き・ピンハネ・重複・縦割り】のムダ指摘
11月27日に終了した事業仕分け作業は、様々な批判的な報道をされながらも、結果的に国民一般からは7割を超える高い評価を受けた。前政権時代には「アリエナイ」画期的な「情報公開」の一種であることが理解されたのだろう。
しかし、仕分け現場での実際のやりとりの内容を確認せずに、恣意的とも見えるマスコミ報道がいくつもなされた、と枝野議員は言う。
ノーベル賞受賞者の野依良治博士が理事長をしている文科省所管の独立行政法人「理化学研究所」に関しては、その組織内に高給取りの役員として文部科学省のOBが何人も天下りしている。
野依理事長は仕分けの現場には来なかったが、科学研究現場の為の予算が削られるかのような前提で、「仕分け」に対する批判の会見をした。そのときにマスコミの記者たちは研究所内の「天下り役員」の存在について質問していない。
宇宙飛行士として有名な毛利衛さんが館長である「日本科学未来館」についても、仕分け人が問題にしたのは、予算「中抜き」のムダな組織が寄生していることだ。ここにも文科省の天下りがいる。
仕分け人から、「なぜ同科学館の予算が国から直接出されずに、間に科学技術広報財団を経由させているのか」という問いかけがあり、毛利さんは「そうなんです。アメリカに、館の運営についてアドバイスを求めたところ、二重構造に問題があるとの指摘を受けました。これについて、3年前に文科省に改善を求めました。しかし、いまだ現状のままです」と答えている。
つまり、毛利氏は仕分け人の言い分に納得したのだが、報道は「対立」「激論」というニュアンスだった。
「スポーツ」関連の予算の「見直し」の意図も、「現場」の為の予算を削ったのではなく、枝野議員の言い方によれば【中抜き・ピンハネ・重複・縦割り】によるムダを指摘したのにもかかわらず、それが正しく報道されず、誤解に基づいて、関係有名人が「仕分け」が不当であるとして抗議の会見をしたことが大きく報道された。
枝野議員にすれば、「抗議する相手が違う。予算を効率的に使うためには、独法や財団などにOBを天下りさせている文部科学省に文句を言うべきだ」ということになる。
ここまでに挙げたのは、「ムダな予算削減に抵抗する側」に加担するような報道の例である。ところが、逆の「誤報」もある。
◆ 財務省にコントロールされたメディア
【漢方薬】についてのマスコミ【誤報】は、「予算削減したい」財務省側に加担した格好だ。
薬品の健康保険適用範囲についての仕分け作業に先立って、予算を「削りたい」ほうの財務省と、「守りたい」ほうの厚生労働省の双方から、おなじくらいの分量の資料(ペーパー)が仕分けチームに提出されている。
仕分け人たちは、それを事前に読み込んだ上で、公開の場での約1時間の、仕分け人と担当官僚などとの質疑応答に臨む。それはすべて記録されているし、ネット上で中継された。
ここでは仕分け人の誰一人として「漢方薬」について言及していない。
うがいクスリ、湿布薬、ビタミン剤については、具体的に薬品名を挙げて「同等の市販品が安く入手できるもの」については、保険適用から外すことも検討すべき、としたが、財務省の事前ペーパーにあった「漢方薬」には仕分け人は触れておらず、除外する薬品の判断は厚労省と財務省でよく協議検討すべし、という結論になった。
そのことは、現場で取材していた記者たちは正しく理解したはずだし、枝野議員は、日本テレビの全国放送番組などで「漢方薬を保険から外すとは決まっていない」と何度も述べたのに、系列の新聞さえもが、逆の誤報を前提として「仕分けチーム批判」の社説まで書いたのだという。
なぜか、他紙もテレビニュースも、いっせいに同様の報道をしたので「署名運動」などの大騒ぎになったのは周知のことである。11月11日の事業仕分けの翌日に、漢方薬大手の「ツムラ」の社長が自ら、誤解に火をつけるような発言をした。経営者としてはおかしな行動だと筆者は感じる。自社の株価などにただちに跳ね返る情報を、この社長は、自ら確認しなかったのだろうか?
また、短期間に27万人もの署名を集めた「東洋医学会」も、仕分けの音声や映像の記録を確認しなかったのだろうか? 筆者は、どうも腑に落ちない。
◆ 予算を巡る各方面の思惑が渦巻く
仕分けの対象になる事業については、「頼んでいないのに財務省が勝手に持って来た」リストを、参考にはしたが、仕分けチームに直接「垂れ込み」もたくさんあったという。
予算のムダを探し出す本来の役目は「会計検査院」の仕事だが、そこで詰め切れていない事業も参考にして、7割ほどは重なったが、対象事業全体の3割ほどは、財務省のリストにはなかったものが加えられたそうだ。
財務省の主計官が「仕分け作業」に同席した。それをもって「財務省主導だった」と批判する向きもある。しかし枝野議員によれば、実際の予算査定に関る主計官が、すべてのやりとりを知っているのだから、それを適切に予算編成に反映させてくれ、という意味合いだそうだ。
ところが、どうも「裏切り」があるらしい。【中抜き・ピンハネ】の部分で予算2割削減としたはずのものが、そこは温存されて、現場の予算が2割削減、などという、仕分けの意図に反した予算編成がされる例があるという。
してみると、マスコミの【仕分け批判誤報】は、官僚組織とグルか、と勘繰りたくもなる。
事業仕分けの現場には、【記者クラブ】のための机も電源もなかった。一般報道陣や見学者と同じ扱いだったわけだ。
自民党時代の長いあいだ、役所の中に占有専用の場所をタダで提供され、政官業など各界のVIPの会見では特権的に質問し、国際会議にはアゴアシつきで招待され・・・、という「優遇」に慣れてきた大手メディアにとっては、天木直人さんの言い方を真似れば、「腰を抜かす」ほどの大変化なのだろう。
役所でもメディアでも、仕分けの現場に来ていない『上』のほうが、事業の意義に抵抗しているのかもしれない。
考えてみれば、還暦を過ぎた「民主国家ニッポン」にとって初体験の「事業仕分け」という大掛かりな「情報公開」で明らかになったのは、税金の使われ方のデタラメさ・政官業の癒着と同時に、「大手メディアと権力との癒着」の実相なのではないだろうか?
(『ニュースの深層』は週末の深夜に月曜から金曜の5回分が続けて再放送されます)
◇ ◇ ◇
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