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NIMBYという言葉がある。Not in my back yard「俺の裏庭に (それは) 作るな」という意味だ。それがたとえ公共的な施設であっても、自分の近く (だけ) には来てほしくないという住民感情を表し、「地域エゴ」非難のニュアンスを含む。 同時に、民主主義の原点でもある。直接的な被害を受ける当事者のNIMBYがあってこそ、受益者や行政との衝突があり、利害の相互調整や補償が生まれる。この過程なしに公共性は生まれない。 産廃施設、下水処理場や原発などが受け入れたくない施設に数えられるが、その筆頭は軍事基地であろう。沖縄普天間基地の辺野古沿岸への移転を認めないのは、住民のNIMBYである。同時に、海兵隊基地を受け入れない本土各地もまたNIMBYである。 米国のロバート・ゲーツ国防長官が10月20日、日本を訪れ、岡田外相、北沢防衛相、鳩山首相と次々と会談、辺野古沿岸部に移転する「日米合意が唯一の道」と述べた。移設が行なわれないなら、海兵隊のグアム移転や南部基地の返還も白紙に戻ると恫喝した。 「日米合意」というが、政府間では「合意」したかもしれないが、当事者である沖縄県民は、一度たりともこの案に「合意」したことはない。1996年9月に行われた沖縄県民投票、97年12月に行なわれた名護市民投票は、基地の整理縮小、新基地受け入れ反対の意思を明確にした。08年の県議選では自公与党が敗北、県議会は辺野古移設反対を決議した。この夏の衆議院選では、4選挙区のすべてで移設反対の候補が当選している。 また名護市や保守県政も、軍民共用や15年使用期限、沖合い移動などを条件に「やむなく」受け入れを表明しているに過ぎない。10月22日、沖縄県議会で上原良幸・知事公室長は、仲井真知事が「県外移設がベストだが」と述べているのにメディアではその部分が消され、あたかも沖合い移動だけを求めているように報道されているのは「極めて遺憾だ」と述べた。 かくも明確にNIMBYが表明されているのに、その意思を無視せよとNIMBY発祥の地・米国の国防長官は言うのであろうか。もし新政権が辺野古移設を認めたら、地元をはじめ沖縄県民は挙げて捨て身の抵抗に出るだろう。それを蹴散らせとでも、民主主義の祖国・米国の国防長官は言うのか。日本を独裁国家とでも思っているのか。 沖縄は「裏庭」どころか、前庭、中庭、座敷の中まで米軍基地に占拠されている。これ以上はごめんだと言わないほうがおかしい。戦後60年以上経ってなお他国の基地が存在すること自体が異常なことである。新基地だけでなく、いまある基地の整理・縮小・完全な撤収を前提に沖縄の未来を構想する時である。 新基地の必要性も極めて怪しい。在沖海兵隊は、米本土以外に司令部をもつ唯一の海兵隊部隊だが、サイズが小さい上、常に兵員がローテーションで交代している。また米軍の新戦略は、海外に大量の米兵を駐留させず、必要があるとき速やかに大量の米兵を本土から派遣するというものだ。新基地は、その「跳躍台」のひとつでしかないのではないか。 96年、日米政府に普天間移設を決意させたのは、前年の海兵隊員による小学生レイプ事件であった。それが、美しく豊かな海を破壊して、海兵隊に新しい基地を献上するということで終わっていいはずがない。倫理的にも許されることではない。 (岡本 厚) |