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No.245 2009年11月10日
シリーズ「嘉手納統合案の真実」(全4回)
第1回「政府と沖縄県はなぜ13年間も普天間基地の辺野古移設で合意できないのか」
今月13日からアメリカのオバマ大統領が来日されます。オバマ大統領のアジア歴訪の最初の訪問地が日本であることからしても、アメリカが日米同盟の重要性を強くアピールしていることは間違いないでしょう。そのオバマ大統領と鳩山総理の日米首脳会談で、両首脳の心の中の最大の関心事が、米軍普天間飛行場の返還・移設問題ではないでしょうか。
下地ミキオのホームページでは、注目すべきオバマ大統領の来日を控え、今日から4回にわたって、「嘉手納統合案の真実」をお届けいたします。1回目の今回は、普天間飛行場の返還が決まってから今日までの13年という時間をたどってみたいと思います。
「政府と沖縄県はなぜ13年間も普天間基地の辺野古移設で合意できないのか」
アメリカ国務省のカート・キャンベル次官補はかつて、沖縄の姿を「Too many eggs in a basket(多くの卵が一つのかごに詰め込まれている)」と表現し、沖縄における米軍再編計画の難しさを物語りました。同じカゴの中で卵を入れ替えようとしても、卵はバランスを失って崩れてしまう、つまり、沖縄県内で移設をすることは困難だということであります。
この難しい米軍再編計画がスタートしたのは1996年4月12日午後8時、当時の橋本総理が、総理官邸で「普天間基地の全面返還」を発表してからであります。あれから13年が経過し、その間、総理大臣は8人、防衛大臣は16人、沖縄県知事と名護市長はそれぞれ3人というように、多くの政治家が沖縄県の米軍基地負担軽減のために努力されてきましたが、普天間基地の辺野古移設は実現しておりません。
その間の政治状況はといいますと、“政府は自民党”、“知事も自民系”、“県議会も自民系が過半数”、“名護市長も自民系”、“名護市議会も自民系が過半数”という、ある意味パーフェクトな状況で取り組んできたわけであります。しかし、何度も申し上げますが、日米両政府は合意しましたが、いまだ政府と沖縄県は合意していない。それが普天埋設問題の現実なのであります。
なぜ、このような政治状況の中においても合意できなかったのかということは、沖縄県と政府との間で“不一致”が起こっているからであります。一つめの“不一致”は、1996年4月12日、橋本総理と大田知事との間で起こりました。当初の普天間基地の全面返還が決まった際に、橋本総理は「普天間基地の返還と同時に、代替施設が必要だ」と大田知事に伝えたと言われておりますが、大田知事は「聞いていない」として意見の相違が生まれ、1998年2月6日、大田知事は、政府が提案した「撤去可能な海上ヘリポート案」を拒否いたしました。
二つめに、稲嶺知事が当選後3年という時間をかけて提案された「軍民共用2000メートル滑走路・使用期限15年案」であります。稲嶺知事の思いは、「米軍基地負担を永久に沖縄が背負うべきではない」という考えから、時限付きにするべきだということで、使用期限を条件にされました。しかし、日米両政府は、膨大な予算を投下し建設した2000メートル滑走路に15年の使用期限を設けることはできないと拒否いたしました。その結果、政府が提案した「L字案」に対して、稲嶺知事は合意しなかったのです。その後の2006年4月、突然、「L字案」が「V字案」に修正されたわけですが、その時も、島袋名護市長と政府は合意しましたが、稲嶺知事は「L字案」と同様に「V字案」に対しても、使用期限がないことを理由に合意に至らないまま、稲嶺知事は任期満了をもって知事職を退くことになりました。
三つめは、仲井真知事が、日米両政府が合意した「V字案」に対して「V字案の沖合い移動修正案」を提案したことであります。しかし、これについても日米両政府は受け入れられないとして、今でも合意に至っておりません。なぜ、日米両政府が仲井真知事の「沖合移動案」を認めないかという理由として、「修正を認めるとパンドラの箱が開くことになる。それは、海兵隊が、現在の1500メートル滑走路の辺野古案について不満を持っており、この修正の機会に新たな要求を海兵隊が突きつけてくるのではないか。そうなれば、せっかく合意した日米両政府の案そのものも壊れてしまう」ということであります。そして、仲井真県政は今月で3年目を迎え、今もって合意できていないというのが現状であります。
これが「日米が合意しても、沖縄県と政府の間で合意がなければ進まない」という13年間の検証の結論なのであります。
*2回目の次回は、「米軍普天間飛行場辺野古移設決定に潜む5つの政治的リスク」をお届けします。
衆議院議員 下地幹郎
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No.246 2009年11月11日
シリーズ「嘉手納統合案の真実」(全4回)
第2回「米軍普天間飛行場辺野古移設決定に潜む5つの政治的リスク」
昨日から4回にわたってお届けいたします「嘉手納統合案の真実」。2回目の今回は、米軍普天間飛行場を辺野古に移設を決定する場合の「政治的リスク」についてご説明いたします。
「米軍普天間飛行場辺野古移設決定に潜む5つの政治的リスク」
8月30日に行われた衆議院選挙によって政権交代が実現し、前回お話いたしました「パーフェクトであった政治状況」も大きく変化しました。“中央政権は交代”し、“沖縄県議会も与野党が逆転”し、来年行われる“名護市長選挙は保守分裂選挙”と見られております。
直近の選挙である衆議院議員選挙では沖縄県の4つの選挙区すべてにおいて、辺野古移設に反対する候補が勝ちました。
このような不安定な政治状況の中において、今後も辺野古移設案が順調に進むとは、到底考えられないのであります。
万が一、鳩山総理が普天間基地の辺野古移設案を決断した場合、5つの大きなリスクが伴うことを理解しなければなりません。
@ 公約違反というリスク
先の衆議院選挙で、民主党は「日米地位協定の改定を提起し、米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」として「米軍再編の見直し」を公約として掲げ、沖縄選挙区の民主党候補は「県外移設、国外移設」を訴えて当選したのであります。その中で、普天間飛行場の辺野古移設を決断すれば、公約違反と言われても仕方のない状況となるでしょう。
A 埋立承認というリスク
通常、国の直轄事業で埋立を行う場合、公有水面埋立法により当該知事の承認が必要だと定められています。万が一、鳩山総理が辺野古の埋立を決断され、仲井真知事が承認を行ったとしても、来年11月に行われる沖縄県知事選挙で辺野古移設反対の知事が誕生すれば、「埋立承認を取り消す行政決断」をすることになるでしょう。そうなると、また振り出しに戻ることになります。そして、このことは司法へと持ち込まれ、泥沼化していくことは間違いありません。
B 3党連立崩壊のリスク
鳩山政権を支える民主党・社民党・国民新党の連立与党3党は連立を組む際、沖縄の米軍基地問題について「在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」として合意いたしました。連立合意を図る中で、沖縄県選出の議員と社民党が特に声を大きく主張していたのが、この「米軍再編の見直し」でありました。普天間飛行場の辺野古移設を決断するということは、3党連立政権から社民党が離脱するというリスクが伴うかもしれないのです。
C 環境面からのリスク
辺野古の海は、ジュゴンやサンゴなど世界でも有数の希少生物が生息する海として知られています。この沖縄の財産を埋立てることがあってはならないのです。これまでも、現地において激しい反対行動により、工事を進めることは困難でありました。世界中のNGOと闘うことになるというリスクがあることを忘れてはなりません。
D 財源捻出のリスク
普天間飛行場の辺野古移設にかかる建設費総額は約7000億円と言われております。しかも、この7000億円のほかに、11月10日に決まったアフガン支援金5000億円、合わせて1兆円超の財源を捻出しなければならないというリスクがあります。
鳩山総理は、この大きな5つのリスクをしっかりと認識した上で、総理のおっしゃった「これまで苦しんで来た沖縄の皆さんのお気持ちを何よりも大切に考え」という言葉の重みを今一度確認しながら、「最後は私が決める」という決断をすることが大事なことであります。
第1回で13年の検証の結果を申し上げましたが、沖縄県民の意思と関係なく基地問題を進めることは、ある意味、日米安保の崩壊にもつながりかねない問題なのです。
*次回は、「アフガン支援に見る日米外交」をお届けします。
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No.247 2009年11月12日
シリーズ「嘉手納統合案の真実」(全4回)
第3回「アフガニスタン支援から見える在沖米軍基地」
シリーズ「嘉手納統合案の真実」。3回目は、日本のアフガニスタン支援から見えてくる沖縄の米軍基地問題についてお届けします。
「アフガニスタン支援から見える在沖米軍基地問題」
11月10日、鳩山政権はアフガニスタン復興支援策として、現地の警察力の強化などの民生支援を目的とした総額5000億円の支援を5年間にわたって行うことを決定しました。これは今後の日米関係、そして沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題に大きな影響を与えるものとなります。
防衛省が10月初旬に策定した概算要求では、普天間飛行場の返還を進めるための予算として、890億円を要求していました。しかし、仮にアメリカが主張しているように自公政権時代からの辺野古移設案を実現したならば、建設総額は7000億円と試算されております。
今回のアフガニスタン支援の5000億円と、辺野古移設の建設費7000億円を合わせると1兆円を超えます。ここで確かに言えることは、今回、岡田外務大臣が約5000億円にも上る巨大なアフガニスタン支援策を決定されたことは、今の日本において1兆円を超える支出が財政的に非常に厳しい中、普天間飛行場の辺野古移設に関しても大きな意味を持つものであると思います。
私自身、かねてからアフガニスタンに対しての大きな支援の必要性を主張してまいりましたが、11月11日に行われた岡田外務大臣とクリントン国務長官の会談で、クリントン国務長官が「今回の支援策を高く評価する」と発言しているように、アフガニスタン対策こそがオバマ政権にとっての最も重要な外交政策であり、この支援が日本にとっても外交の未来を左右するものになると思います。
アフガニスタンへの支援、パキスタンへの支援、普天間飛行場の移設、ODA、そして思いやり予算、・・・。日米外交は決して独立した各論の集まりではありません。これらは一つのパッケージなのです。
「イラクからAFPAK(アフガニスタンとパキスタン)へ」とシフトしてきたオバマ政権は、情勢が悪化の一途を辿るアフガニスタンにおける「秩序の回復」と自国の「財政危機」という2つの大きな課題と戦わざるを得ない状況にあります。このような中で日本が“ソフトパワー”に基づく財政支援を行うことは、“ハードパワー”のアメリカを補うことになり、それが日米同盟の“スマートパワー”となって発揮されるのであります。
湾岸戦争の時には「金さえ出せばいいのか」と批判を受け、アーミテージ元国務長官から「boots on the ground(意:兵を出せ)」と暗に指摘を受けた日本外交ですが、あの時から時計の針は大きく動いています。
日米同盟のパッケージの中で決定された、今回の他に類を見ないアフガニスタン支援は、鳩山政権が如何に日米同盟を大事にしているかの表れでしょう。しかし、1兆円を超える支出となると、アフガニスタン支援と普天間飛行場の辺野古移転の両方を行うことは、非常に難しくなったのではないかと思います。
*次回は最終回、「新たな新嘉手納統合案」をお届けします。
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No.248 2009年11月13日
シリーズ「嘉手納統合案の真実」(全4回)
第4回「1+1=0.5 新たな新嘉手納統合案」
シリーズ「嘉手納統合案の真実」。最終回は、新たな新嘉手納統合案についてお届けします。
第4回
「1+1=0.5 新たな新嘉手納統合案」
岡田外務大臣は10月23日、外務省での記者会見において、米軍普天間飛行場の県外移設を断念し、辺野古移設の代案として、嘉手納基地への統合が望ましいとする考えを表明しました。
普天間基地の危険性の早期除去には旧政権で日米合意した辺野古移設案がよいのではないかとする北沢防衛大臣、嘉手納統合がよいのではないかとする岡田外務大臣、閣内でも様々な論議が行われております。
このことについて、「閣内がまとまっていないのではないか」という論調を見かけますが、それは当たり前のことであります。これまで自民党政権が取り組んで来たものの現状がこうなのに、発足後まだ間もない鳩山政権に簡単に出来るはずがありません。
今は、閣僚はもっと悩み苦しみ、多くの声に耳を傾け、議論を尽くすことが大事なのであります。多くの選択肢をもって結論を導き出す、しかも早期に。それが、今、鳩山政権のとるべき行動だと思います。
岡田外務大臣の考える嘉手納統合案について、11月2日の予算委員会で質問させていただきました。岡田外務大臣の答弁からは、「現在の嘉手納の負荷、つまり騒音その他が今以下になるという前提でないと、これは案にならない」という嘉手納統合の定義が示されました。つまり、嘉手納基地周辺の騒音が軽減されることが、この嘉手納統合の最大のポイントだということであります。
普天間飛行場を嘉手納基地に統合して「騒音その他が今以下になる」という考え方は、私がかつて申し上げていた新嘉手納統合案の考え方そのものであります。
現在の嘉手納基地の離発着回数は約7万6千回、普天間基地の離発着回数は約3万回であります。これが、新嘉手納統合案によって、嘉手納基地の離発着回数が10万回に増えたら意味がありません。また、現状と同じ7万回であっても意味がありません。現状の半分、3万回から3万5千回に激減するものでなければならないのです。
そのためには、嘉手納基地所属のF15の2つの戦闘部隊のうち、第44戦闘中隊(24機)を岩国基地や三沢基地、グアムなどへ移動させ、7万回の離発着回数のうち3万回以上ある外来機の訓練を嘉手納以外の地域、例えば伊江補助飛行場や、稼働率が悪い関西国際空港のB滑走路、静岡空港、佐賀空港といったような本土の空港に移すなどすれば、離発着回数の半減、つまり騒音の半減は十分可能であります。
「1+1=2」ではなく、「1+1=1」でもなく、「1+1=0.5」というのが、私の提案する新嘉手納統合案なのです。そして、沖縄がこれから先もずっとこの米軍基地負担を背負うことのないよう、15年という期限を設け、日本政府と沖縄県で覚書を交わす。そのことで、普天間飛行場の危険の除去は、沖縄の美しい自然環境を壊すことなく実現できるのです。
大事なことは、普天間飛行場を嘉手納基地に統合する前に、嘉手納基地周辺の騒音を確実に軽減することであります。現状で「騒音を0.5(半減)にします」といくら言ったところで、周辺住民はじめ、誰しもがすぐには信用しないでしょう。普天間飛行場の嘉手納基地への統合に先行して、F15の移転や外来機の移転が行われ、実質的に騒音が軽減されることを実証する。騒音の半減が信用できるか出来ないか、それを実績で示し、周辺住民が納得するのであれば、嘉手納統合案に賛成すればいいのであります。
また、「信用できない」という言葉の対象は、これまでの自民党政権だったのではないでしょうか。鳩山総理の新しい政権は、一度も沖縄市長、嘉手納町長、北谷町長を裏切ったことはないはずです。一度も裏切ったことのない人を「裏切るのではないか」と疑うことに、私は疑問を感じます。まず、新しい政権を信じてみたらいいのではないでしょうか。今のままでは、嘉手納基地周辺の騒音軽減の姿が見えてこないことを考えれば、周辺住民のためにも、首長は決断をすべきだと思います。
日米安保は日米同盟の根幹を成す重要なものであります。沖縄だけにその負担を背負わせつづけていいのでしょうか。日米安保は大事だが、基地は受け入れないという矛盾ばかりではダメなのです。国民全員が協力して米軍基地の負担を分け合わなければ、この沖縄の米軍基地問題は解決することは出来ません。
【米軍普天間飛行場海外移設のシナリオ】
今回、初めて「新・新嘉手納統合案」のフローチャートを公表します。この案は、間違いなく「国外移転のシナリオ」なのです。国外移転、暫定15年という2つの大きなポイントがあります。私たちは、国外移設や県外移設を諦めて、嘉手納統合と言っているのではありません。沖縄県民の思い、安全保障のバランス、政治家の公約、これら3つが全部盛り込まれた案、それが「新・新嘉手納統合案」なのです。