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法と常識の狭間で考えよう by ビートニクス
http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2009/12/post-447a.html
2009.12.03
「取調べの可視化」がなぜできないのか
民主党は、先の衆院選マニフェスト(政権公約)において、「警察、検察等での被疑者取り調べの全過程についてビデオ録画等による可視化を図り、公正で透明性の高い刑事司法への改革を行います。」と述べ、「取り調べでの自白の強要による冤罪を防止するため、裁判で自白の任意性について争いになった際に検証できるよう、取り調べの全過程を録音・録画することを捜査当局に義務付ける」ことなどを述べていた。
しかしながら、政権交代後、取調べの可視化は期待した程には進展していない。
これは、中井洽国家公安委員長が、就任会見以来、「一方的な可視化だけでは済まない」と述べて、おとり捜査や司法取引などの導入を併せて検討していく必要があるとの認識を示し、「捜査当局には(共犯者や余罪の)摘発率を上げる武器を持たさないといけない」などと述べていることと関係がある。まさに、閣内不統一である。
法務省は、取調可視化について、千葉景子法相と副大臣、政務官の政務三役と刑事局担当者で構成する勉強会を設置した。これに対抗する形で、中井洽・国家公安委員長も、委員会内で議論を始めたほか、警察庁内に勉強会を作ることを表明している。
そのため、来年の通常国会に、取調べの全過程についての可視化を導入するための刑事訴訟法改正案が提出できる見通しは立っていない。
監獄法の全面改正により、代用監獄制度は廃止されるどころか、「留置施設」として、その存在は法律上も容認されている。
そのような中で、相変わらず、被疑者の取調べは密室で行われ、厳しい自白の強要が行われて、任意性のない自白調書が次々と作文され、それを証拠として、次々と有罪判決が言い渡されているのである。
21世紀になり、これだけテクノロジーが発達した日本においても、いまだに、取調べは、密室において、弁護人の立会が認められることなく、行われ続けている。被疑者は、多くの取調官を前に、圧倒的に強大な権力を前に、孤独な闘いを余儀なくされている。
23日間という気が遠くなる程の長期間にわたって取調べは続けられる。代用監獄制度の下で24時間監視されたまま、自白が強要され続けられる環境に身を置かれてしまうのである。容疑を認めた者は起訴後に保釈の恩恵を受けられるが、容疑を認めない者に対しては容易に保釈は認めないという「人質司法」も、多少緩和されつつも、相変わらず維持されている。
まさに、現代における暗黒の闇がそこにある。そして、人知れず、今日も、次から次へと、冤罪の被害者が生まれ続けているのである。
このような前近代的で野蛮な現状を変えるには、代用監獄制度の廃止と、取調べの全過程の録画・録音(可視化)は不可欠である。国連からも、まさにその点を改革が求められているところである。
警察や検察が、捜査のためにテクノロジーを使った「科学的捜査」を展開しようとするのであれば、警察や検察が行う取調べについても、テクノロジーを使って、密室での取調べを「可視化」することが絶対に必要であると言わなければならない。
イギリスを皮切りに、オーストラリアやアメリカの一部の州において、次々と、取調べの録画・録音は広がっている。アジアの中でも、香港や台湾では、取調べの可視化が実現しており、隣国の韓国でも、昨年に刑事訴訟法改正が施行され、取調べの録画が実施されている。
もはや、日本だけが、いつまでも、密室における自白の強要を許容するような前近代的で野蛮な取調べを温存し続けることは、もはや一刻も許されないのだ。