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http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20091201/198328/
来年度予算案の基礎となる「予算の組み替え」が難航している。新しい政策を実現するためには膨大な財源を捻出しなければならないが、その手当が思うようにつかないからだ。 そうしたなかで、民主党のマニフェストに記されていない増税策が次々に浮上している。正式決定は税制改正大綱が発表される12月下旬になるが、はたしてどういう結果になるのだろうか。 たとえば、増税案の一つとして議論されているのが扶養控除の見直しである。 所得税(国税)に対する扶養控除分については、子ども手当の導入に伴って廃止するということが、すでにマニフェストでも触れられているので分かる。 ところが、ここにきて住民税(地方税)に対する扶養控除も廃止を検討するという話が出てきた。これは、たいした影響はないと思われているようだが、そうでもないのだ。 住民税の扶養控除は33万円であり、税率は所得と無関係に一律10%だ。つまり、これだけで年間3万3000円の増税になる。子ども手当が年額31万2000円なので、その1割以上が吹き飛ぶ計算となる。 もちろん、子どもが2人の世帯では6万6000円の増税になる。これだけ大きな増税をマニフェストに盛り込まずに実行に移すというのは、国民への裏切りではないだろうか。
それだけではない。マニフェストでは「廃止しない」としてきた特定扶養控除を廃止もしくは縮小する可能性が出てきた。 特定扶養控除というのは、16歳以上23歳未満の子どもを持つ場合に適用される控除であり、所得税については63万円、住民税については45万円が控除される。 この年代は高校生から大学生に当たり、子育てにはお金が余分にかかるということで、控除分も大きくなっているわけだ。 仮にこれが廃止されると、年収500万円程度のごく普通のサラリーマンでみると、16歳以上23歳未満の子ども1人当たり年間7万6500円もの増税が降りかかってくる。 もし、この年代の子を2人抱えていたとすると、年間15万3000円もの増税になってしまうのである。 問題なのは、この年代の子には子ども手当が支給されないという点だ。手当は出ないわ、増税されるわで踏んだり蹴ったりである。しかも、とんでもない金額ではないか。 民主党は「子育てを支援する」といっていたのに、子育て世帯を増税するのか。それとも、高校生や大学生は子育てとはいわないのか。政策の不整合もいいところである。
そして、またぞろ話題にのぼってきたのが、たばこ増税問題である。長妻厚生労働大臣は、「欧州並みの価格」という言い方をして、現行の1箱300円から、1箱500円ないし600円への値上げを示唆した。 たばこ増税については、当コラムの「たばこ1箱1000円にすれば財政問題は解決するのか」で触れたように、自民党政権下での昨年春にも大きな議論の的となっている。日本財団の笹川陽平会長が、「1箱約300円という日本のたばこの値段は安すぎる」として、1箱1000円にすれば9兆5000億円の税収増が見込めると主張したことが、議論の直接のきっかけであった。 結局、それが立ち消えになった最大の原因は、たばこの税率を上げても増収にならないのが明らかになったからだ。 最近では、2003年7月、2006年7月とたばこの増税が実施されてきたが、前者の場合は翌2004年度に税収は増えたものの、2005年度になると減少してしまった。2006年にいたっては直後の2007年度に税収が減少している。 どちらも、1箱当たり20円ずつしか上がっていない。ところが、今回の提案では一気に200円から300円もの大幅値上げをしようというのだ。 それが実施されると、喫煙者のサラリーマンの生活は大変だ。仮に1箱600円として、1日1箱を吸うとすると、30日で1万8000円になる。 ごく普通のサラリーマンのお父さんの小遣いは1カ月で4万円前後といわれるので、そのなかから1万8000円でたばこ代を支払ったら、残りの2万 2000円で昼飯を食べて、スポーツ新聞を買って、コーヒーを飲まなくてはならない。そんなことができるかといったら、とうてい不可能だろう。 結局、禁煙者や減煙者が続出して劇的な税収の落ち込みになるはずだ。
ただ、今回のたばこの増税は実施される可能性が高いとわたしは見ている。というのも、鳩山総理が値上げに理解を示しており、「環境や人間の体の面から見て、増税という方向がありうべしかなと思う」と語っているからだ。 要するに、たばこ増税問題は財政再建ではなく、環境や健康という切り口で論じられるようになったわけだ。これなら、増収にならなくてもいい。 だが、これによって国民の負担が増えてくることを、国民は理解しておくべきだろう。 第一の負担は、すでに述べたように禁煙者や減煙者が増えることで、全体の税収が減ることである。となると、別のところでその埋め合わせとなる増税が必要となる。 第二の負担は、たばこをやめることで寿命が3年から5年ほど延びるといわれている点に関係がある。「国民が健康になるのは結構じゃないか」といわれるかもしれないが、喜んでばかりもいられないのだ。 以下、やや刺激的な表現があるかもしれないが、わたし自身が喫煙者であることをご理解のうえで読んでいただければ幸いである。 詳しい解説は「たばこ1箱1000円にすれば財政問題は解決するのか」 - http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/o/138/を読んでいただくとして、寿命が延びればその分だけ年金給付や医療費もかかることはおわかりだろう。 3年寿命が延びるとして、大雑把に計算して年1兆円の負担増になる。 医療費についてもそうだ。嫌煙団体によれば、喫煙者と非喫煙者の医療費をくらべると、喫煙者のほうが1兆円多いという。おそらく、肺ガンのような大病を患って、病院に厄介になる費用がかかると言いたいに違いない。 確かに、喫煙者のほうが短い時間に高めの医療費がかかるかもしれないが、寿命は早くやってくる。 しかし、たばこをやめたとしたら、その人たちはさまざまな持病を抱えて長生きすることになる。後期高齢者の医療費は年間で1人当たり80万円ほどかかっているが、これで3年寿命が延びれば、全体で5000億円の医療費の増加となる。 つまり、たばこ増税をすることで、医療費も年金給付も伸びるわけだ。
厚生労働省の国民健康栄養調査によると、昨年のわが国の成人喫煙率は21.8%。すでに、4人に1人を割り込んで、かなりの少数派となってしまった。わたしの暴論など、弱者のたわごとくらいにしか聞こえないかもしれない。 鳩山総理は所信表明演説のなかで、「政治には弱い立場の人びと、少数の人々の視点が尊重されなければならない」と述べたが、いまや少数派となった喫煙者だけは、その例外らしい。 どうしてもたばこを増税する必要があるというのならば、それでもいい。だが、その前に国民の前できちんと状況を説明して、選択肢を示してほしいのだ。 1つの選択肢は、「たばこを増税しないで、現在の税収を確保する」というもの。 もう1つの選択肢は、「現在たばこを吸っている人を健康にして、嫌煙団体の人を喜ばせる代わりに、医療費や年金給付に必要な毎年1兆数千億円という国民負担をずっと抱えることを受け入れる」というものだ。 そうした選択肢を国民に示して議論をするならともかく、あたかも税収が増えるようなふりをしてたばこを追放するというやり方は反則ではないか。
たばこ増税問題から、民主党の増税問題全般に話を戻そう。 昔から、税制は国家が発揮する最大の権力だと言われている。なぜなら、税制のあり方一つで、所得分配をどうにでも変えられるからだ。そう考えると、民主党政権の正体がわかるのは、今年末の税制改正大綱がでてきたときだろう。 これまでの自民党政権下では、金持ち優遇、庶民いじめの税制が、とくにここ20数年間にわたって進行してきた。一例を挙げると以下の通りである。 所得税の最高税率は、1986年の70%から段階的に40%にまで引き下げられている。相続税の最高税率も、小泉内閣時代の2003年に、70%から50%へと大幅に引き下げられた。法人税率も、1984年の43.3%から現在の30.0%へと段階的に引き下げられてきた。 財政が深刻で増税が避けられないというのなら、民主党政権はこうした税金についてなぜ議論をしないのか。それとも、金持ちや大企業にかかわる税制については、触れるつもりがないのか。この3つを元に戻すだけで、財政再建はかなりの程度実現するはずだ。 それもしないで、扶養控除の縮小だの、特定扶養控除廃止だの、たばこ税といった、庶民いじめの増税ばかりを議論するのはなぜなのか。それでは、構造改革を唱えて弱肉強食を進めてきた小泉内閣時代と変わりがない。 金持ちの優遇策を温存して庶民に対して増税するというのならば、何のための政権交代だったのかと言いたくなってくる。 どうせ税制を変えるならば、鳩山総理と麻生前総理のような大金持ちから、しっかりと取る税制にしてほしいとわたしは声を大にして言いたい。 |