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2009-11-30 06:46:54
http://ameblo.jp/warm-heart/entry-10400060819.html から転載。
テーマ:日本の現状
<記念講演>蓮池透氏:拉致問題の解決に向けて/左右の垣根を超えた闘いへ
昨日(11月29日)、高砂市阿弥陀町生石(石の宝殿で知られている)で人権集会が開かれ、蓮池透さんが記念講演をおこなった。
小泉首相(当時)の訪朝によって北朝鮮当局が初めて日本人拉致を認めてから7年が経過した。だが5人の拉致被害者とその家族の帰国がかろうじて実現してからというものは、事態は膠着したままほとんど動いてはいない。それはなぜなのか、またどう打開していけばよいのか、蓮池さんは冷静な語り口で諄々と説いていった。時には報じられてきたこととはかなり違う裏話なども交えながら。
かなり長くなるが、労を惜しまず集会冊子から講演内容を転載しておこう。
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1.はじめに
2002年9月17日小泉首相(当時)が訪朝し、北朝鮮による日本人拉致が白日のもとに晒されてから7年が経過した。その間、拉致被害者5人とその家族が帰国・来日した以外、拉致問題は膠着状態であり、何の進展もない。被害者の帰国を一日千秋の思いで待っている私たちは、ただ年齢を重ねただけであり、その苦しみや悲しみは年々増大し、もはや限界に達しようとしている。非常に残念極まりないことである。
2.政権交代
その時間の流れの中、政治の世界には大きな変化が到来した。すなわち自民党から民主党への政権交代である。様々な分野で自民党政権との対立軸を明確にしている民主党政権であるが、果たして長期間に亘って停滞を続けている対北朝鮮外交ではどのような政策を執るのか注目していた。しかし、残念ながら現時点(2009年10月)では旧態依然としたもののようである。
3.鳩山首相の国連演説
一方、鳩山首相は2009年9月24日国連総会の一般演説で北朝鮮問題について演説した。その概要は以下のとおりである。
@ 核実験、ミサイル発射は脅威であり断固として認めない。国連安保理決議を完全に実施する。六者協議を通じて朝鮮半島の非核化に努力する。
A 日朝平壌宣言に則り、拉致、核、ミサイルという諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を誠意をもって清算し国交正常化を図る。
B拉致問題については、昨年合意したとおり速やかに全面的な調査を開始する等の、北朝鮮による前向きな行動が日朝関係進展の糸口になり、北朝鮮による前向きかつ誠意ある行動があれば、日本としても前向きに対応する用意がある。
この内容についてはほぼ共感できるものであるが一部不満もある。首相は、Aで「諸懸案を包括的に解決」と言っている。これは聞こえは良いが、ご都合主義の逃げ口上としか私には思えない。核・ミサイルと拉致は全く性格の異なる問題であり、拉致問題単独できちんとした戦略を立てるべきである。また、Bであたかもボールは、北朝鮮側にあるような発言をしているが、これには異論がある。昨年の合意は、同時行動が原則だったはずであり、現状では日本側が先に行動の意思表示をし、北朝鮮の同時行動を促すべきである。すなわちボールは日本側にあると思うのである。
翻って、では鳩山首相はなぜこの演説の内容を日本国民に向けて発信しないのであろうか。被害者家族らに面会した際、伝えたとも聞いていない。
4.民主党は7年間を検証・総括すべき
少なくとも、民主党政権はこの7年間に自民党政権が執ってきた対北朝鮮政策を検証・総括する必要がある。なぜ膠着状態が続いているのか。正すべきところは正すべきである。北朝鮮は、「自民党政権は倒れて当然」という趣旨の発言をしていた(とはいえ民主党政権支持とは言っていないが)。これは、対北朝鮮政策について、従来とは異なる方向へ大きく舵を切るチャンスであると考える。
5.7年間の分析 (1)経済制裁の有効性
北朝鮮がなぜ日本を相手にしないのか、何を怒っているのか、北朝鮮の視点に立ってよく考えてみる必要もある。その背景をこの7年間を振り返る形で自分なりに分析してみたいと思う。
5人の被害者とその家族が帰国・来日して以降、日本政府が執った政策は経済制裁であった。私は、それも一つの手段と考えていた。ただし、経済制裁は平和的解決と武力行使の間にある手段であり、戦争をしないわが国にとっては最後の手段である。しかるに、実行するに当たっては、被害者の救出につながるような戦略的なものであるべき、と主張してきたつもりである。つまり、どのような動機付けで、シナリオであるいはメカニズムで被害者が救出されるのか、知恵を絞った上での制裁である。ところが、実際に制裁は行わ
れたが、それは2006年の核実験が発端であり、拉致問題に関しては後付けであったと言える。そこに、私の言う戦略があったかといえば全くない。やみくもな経済制裁は、北朝鮮の感情を悪化させ彼らの結束を固めるだけで被害者の救出にはつながらない。当時の日本政府がそれでも経済制裁にこだわった理由は、拉致問題に対する基本姿勢が「逃げ」であったからだと思う。被害者家族らの言うとおりに経済制裁を実行したということを言い訳にして、タフで面倒な交渉を回避し、机上で指示できる経済制裁に逃げていたのである。また、日本国内向けのパフォーマンスともいえ、まさに思考停止状態である。
(2)4回の政治決着
2002年9月17日に遡るが、この日以降、日朝間で4回の拉致問題の政治決着が企てられ、すべて日本側が裏切る形で失敗に終わり、日朝関係はもつれてしまったと私は考えている。
第一は、2002年9月17日その日に行われたことである。金正日総書記が拉致を認めて謝罪すれば、国交を正常化できる。そのような水面下での日朝密約があったものと想像できる。国交正常化を急ぐあまり、拉致問題を早く排除したかった。そのため日本政府は「5人生存、8人死亡」という情報を既成事実化しようとした。「お上」が家族に「死亡宣告」するという、稚拙な方法で。そこには拉致被害者の、人権、人格、尊厳に対する配慮が全くない非情なものであった。日朝平壌宣言は締結されたが、「8人死亡」のシナリオが成
立するはずはなく失敗に終わった。
第二は、5人の被害者の「一時帰国」である。被害者の生存をアピールし、大きく盛り上がった北批判の日本世論を少しでも鎮静化させ、国交正常化につなげようとする政治決着。ここにも5人の人権に対する配慮などない。完全に帰国させるのではなく、性懲りもなく被害者を利用する不合理な約束があった。このような決着など実現する訳はない。
第三は、「小泉再訪朝」である。5人の家族の帰国・来日により拉致問題の進展を世間に訴え、国交正常化を図ろうとした。しかし、これも失敗に終わる。
最後は、横田めぐみさんの偽遺骨問題である(*)。めぐみさんの遺骨により死亡を証明し、日本の世論を鎮めようとした。しかし、それも偽物であることが判明し、国交正常化どころか日本の世論はますます北批判に傾いた。
こうして、4回の政治決着、すなわち拙速な国交正常化策はことごとく失敗に終わり、いずれも日本政府が北朝鮮との約束を反故にする形となった。それ以来、北朝鮮は日本政府を相手にせず、拉致問題は終わったとして、両者の間に長い膠着状態が続くこととなったのである。昨年ようやく日朝協議が行われ、調査委員会設置と制裁緩和の同時行動が合意されたが、それも実硯しなかった。
(*註 イギリスの科学雑誌「ネイチャー」は日本側のDNA鑑定に疑問を投げかけている)
6.鳩山政権のあるべき姿
今後、鳩山政権にとって4回の政治決着の失敗という現実から学ぶべきものがあると思う。なぜ、北朝鮮は怒っているのか、何を望んでいるのか良く考えて欲しいのである。そして、日本は何をするべきなのか、理性的にそして戦略的に知恵を絞ってもらいたい。
原則論を貫き、制裁路線にこだわっていたならば身動きが取れなくなる。甘いと言われても、対話路線の模索は必要である。いかなる民族が相手であろうと対話と交渉なくして和解はない。鳩山首相の国連演説にある北朝鮮の調査委員会の設置を、日本の制裁緩和と同時に行動し、それを糸口とすべきである。
そして、日朝平壌宣言の履行につなげていく。「過去の清算」を巡る左右の不毛な議論に関わりたくはないが、日朝平壌宣言にはっきりと謳われている。これも鳩山首相の国連での演説にあるように、日本政府としての公式な見解なのである。そうであるならば、「過去の清算」を具体化して準備し、堂々と行動する姿勢を提示することにより、北朝鮮の同時行動を求めていくべきではないだろうか。 (了)
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<参照>