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民主党政権が推し進める郵政民営化見直しと中小企業救済策が、波紋を広げている。臨時国会で政府与党が提出した12法案のうち、「中小企業者等金融円滑化臨時措置法案」(モラトリアム法案)が、先週衆院本会議で可決された。与党は郵政関連法案の可決も急いでおり、さらなる議論を呼びそうだ。だが冷静に考えれば、彼らの政策は「弱者を守る」という目的が大前提にある。にもかかわらず、何故批判されるのか? その理由を確かめるべく、亀井静香・金融・郵政改革担当大臣に、政策の趣旨や今後の見通しを改めて聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也、撮影/宇佐見利明)
かめい・しずか/1936年生まれ。広島県出身。衆議院議員、国民新党代表。62年東京大学卒業、警察庁入庁。79年自民党から衆院総選挙に出馬し、初当選。以後、運輸大臣、建設大臣、自民党政調会長などを歴任。2005年自民党を離党し、国民新党結党に参加。09年8月の衆院総選挙後に党代表に就任、民主党と連立を組み、鳩山内閣に入閣。現在、内閣府特命担当大臣(金融担当)・郵政改革担当を務める。
――与党は、来年の通常国会で「郵政改革法案」(仮称)の成立を目指している。その前提となる郵政グループの「株式売却凍結法案」を今国会で実現させようと、奮闘中だ。これまで進められてきた郵政民営化を、なぜ今見直さなければならないのか?
小泉政権で決まった郵政民営化は、「本来一体であるべき郵政事業」をズタズタに切り裂いてしまった。その結果、全国で業務に支障をきたす郵便局が増え、地域住民に対するサービスの劣化が取り沙汰されている。
そもそも民営化がスムーズに進んでおり、国民の利便性が向上しているなら、何も見直す必要などないだろう。だが、現状は当初の理想から大きくかけ離れている。
すでに国会や様々なメディアで繰り返し説明している通り、それを早急に立て直すのが、「見直し」の目的に他ならない。
たとえば地方には、郵便、銀行、保険などの各業務がセクションごとに分断されてしまい、わずか数人しかいない職員が業務上の相談や協力もできないような郵便局がたくさんある。
監視カメラが設置されている窓口で、近所の顔見知りに対しても煩雑な本人確認の手続きをしなければならないなど、どうでもよい雑務の負担も増えている。
その結果、職員のモラル低下が指摘されるようになった。「集配トラブルが多くなった」「窓口から気軽に相談できる雰囲気が消えた」といった苦情が増え始め、地域住民の足は次第に郵便局から遠のき始めた。
郵便貯金の資産残高も年々減り続けており、民営化決定後に閉鎖された不採算局はかなりの数に上る。地域住民にとっての利便性は、ますます低下する一方だ。
このままでは、明治以来、北海道から沖縄まで、山村から漁村まで張り巡らされた「国民的財産」ともいうべき郵政事業のネットワークが、機能しなくなってしまう。こんな状況で、「現状路線を続けるべきだ」とまだ言えるのだろうか。
――亀井大臣の理想は、郵政事業を全て民営化前の状態に戻すことなのか?
私は、「元の姿に戻したい」と言ったことは一度もない。地域や国にとってもっと役にたつ仕事ができる体制にリニューアルしたいだけだ。
これまでの民営化の過程を振り返って、何かよいことがあっただろうか。「かんぽの宿」の売却問題をはじめ、金儲けをしようと郵政に群がった人々が、国民の財産を食い物にしてきただけではないか。
そもそも今進められている民営化は、過去の小泉・ブッシュ会談において、「外資系金融機関に対して日本の金融市場の門戸を開く」という合意がなされたことに端を発している側面が大きい。
つまり、郵政の効率化や国民の利便性向上が目的の全てだったとは、考えにくいのだ。それを健全な状態に戻すことは、当然だろう。
パスポート発行、介護事務、公的年金事務、市町村事務など、地域社会の拠点として郵便局ができることは、多岐に渡っている。勤勉な職員のパワーを社会のために役立てて欲しいというのが、見直しの趣旨だ。
――予定されていた郵政グループの株式売却を凍結することは、「見直し」を進める上でどのような意味があるのか? また、今後の見通しは?
現在の体制を再構築するためには、いったん株式や資産を凍結して政府主導で見直しを進める必要がある。株式を市場に放出した後だと、株主の意見を調整する必要が出てくるため、基本的な制度設計がスムーズに進まない恐れがあるからだ。
ただし、「手術」が終わった後に民間会社にする必要があるとは、必ずしも考えていない。本来国がやるべき公共サービスをきちんとやるには、民間にしないほうがよい場合もあるはずだ。
そのへんは、将来を睨みながら柔軟に考えていけばよいと思う。新しい事業展開がはっきりしてから、具体的にお伝えしたい。
――「見直し」のリーダーとして、旧大蔵省の大物だった斎藤次郎氏を日本郵政の新社長に選任した。「脱官僚依存」を唱える民主党政権において、今回あえて斎藤氏を起用したのは何故か?
ここまでガタガタになってしまったものを元に戻して再構築することなど、普通の経営者にできることではない。
その点、斎藤社長の剛腕は折り紙付きだ。官民を問わず、この難局を乗り切るための適任者は彼しかいないと判断した。斎藤社長も非常にハッスルして、やる気を見せている。今後に期待している。
――中小企業向け融資や住宅ローンの返済猶予を金融機関に促す「金融円滑化法案」については、当初「返済を3年程度猶予する」という方針を打ち出していたこともあり、先行きを不安視する金融関係者が多かった。実際には、今後中小企業対策をどのように進めていくのか?
異論も多いようだが、全ての金融機関に対して、一方的に厳しい規則を課すなどと、私は一言も言ったことはない。
これまで、金融機関が「企業を守る」という社会的責任をちゃんと果たしてこなかったケースが多くあった。世界的な不況が続いている現在においても、同様だ。
そういう状況を改め、金融機関と企業の信頼関係を強めて経済を活性化させるのが、本来の目的だ。
今後の金融政策の骨子は、従来の金融マニュアルを一新し、資金繰りに困っている中小企業に対して金融機関が返済猶予を認めたり、場合によっては新しい貸し付けを行なえるようにすることだ。
金融機関には、取り組みを金融庁に報告させ、その状況を検査官がきちんと検査する体制にする。そして、ちゃんとやっていない金融機関には、金融庁が業務改善命令を出すようにする。
一方で、金融機関に対しても、かつてのように返済猶予分を不良債権として計上させたり、引当金を積み立てさせたりはしない。万一貸し出しが焦げ付いたときは、信用保証協会が助け船を出したり、場合によっては国が資本注入までやるつもりだ。
決して金融機関のみにリスクを負わせるつもりはい。金融機関がまともな融資活動をやってくれさえすれば、何の不安もないことだ。
金融機関のために金融機関があるわけではない。借り手があってこその金融機関ならば、借り手が困っているときに助けるのは当たり前ではないか。今回の法案は、経済対策としてかなり実効性があると思っている。
――郵政関連の法案と金融円滑化法案に対しては、当初は閣僚からも少なからず異論が出たと報道されている。関係者間での調整は順調に終わったのか?
いずれの政策案においても、身内から異論は一切出ていない。私の意見は初めから全くブレていないし、鳩山首相をはじめ、閣内でも意見は一致している。いったい誰がそんなことを言っているのか、報道の根拠は全くわからない。
もし批判が出ているとすれば、それはこれらの政策によって「自分たちの既得権益を奪われるのではないか」という、「強者の論理」でモノを考える人々からではないだろうか。
郵政民営化の見直しもモラトリアムも、そもそも困っている国民や中小企業を助けるための政策。普通に考えれば、決して悪いことではないことがわかるはずだ。それは巡り巡って、結局は「強者」のためにもなる。
私は以前から「格差の是正」を唱えているが、それは金持ちを貧乏にすることではない。重要なのは、「恵まれない人を豊かにする」ことだ。それこそが、格差の是正につながると信じている。そのために、郵政や金融機関に対して「ちゃんと社会的責任を果たせ」と言っているだけだ。
――亀井大臣の政策ポリシーは、今後も変わることはないだろうか?
ケースバイケースで柔軟に対応していくことは必要だが、基本路線を変えるつもりはない。たとえば金融庁の職員には、「過去の金融政策とは完全に決別した。私の方針が不服なら辞表を出してくれても構わない」と伝えている。
仕方がなかった側面もあるのはわかるが、過去に「やってはいけない政策をやってしまった」という反省に立ち、今後は私の指示に従って力を発揮して欲しいとお願いしているところだ。
――亀井大臣が代表を務める国民新党は、新党日本、平沼グループとの連携が報じられている。場合によっては、新党結成の可能性もあると聞く。今後各党は、政策面で歩調を合わせていくのか?
彼らに対しては、確かに「一緒にやろう」という話はしている。現在、具体的な協議をしているところだ。歩み寄りは、どちらからと言うわけではなく、阿吽の呼吸で始まったものだ。
「市場原理資本主義をよしとしない」「日本の文化や伝統を守る」など、もともと新党日本や平沼グループは、国民新党とポリシーが似ている。今後、前向きな話し合いができればと思っている。