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EU労働法政策雑記帳 から一部紹介します。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-4601.html
全政治家必読!宮本太郎『生活保障』
この本は、まさに時宜を得た本です。今こそ、全政治家、とりわけ与党政治家のみなさんが熟読玩味すべき本といえましょう。
わたくし的には、ベーシックインカム論が妙にはやりだしている昨今、「アクティベーション」をあるべき方向性として明確に打ち出している点が大変共感するところです。
「おわりに」から、(略)
>原因が定かではない不安が広がると、「公務員の既得権」「特権的正規社員」怠惰な福祉受給者」等々、諸悪の根源となるスケープゴート(生け贄)を立てる言説がはびこり、人々の間の亀裂が深まる。多様な利益を包括する新しいビジョンを提示する意欲と能力を欠いた政治家ほど、こうした言説を恃む。そして「引き下げデモクラシー」が横行する。
これに対して、本書は、生活保障という視点から、雇用と社会保障の関係の見直しこそが新しいビジョンの出発点になるべきであると主張してきた。雇用と社会保障をどのようにつなぎ直すかについては、アクティベーションという考え方を重視した。・・・
>着実な改革は、私たちが生きる社会の歴史と現状から出発するものであり、またすべからく漸進的なものである・そして、戦後の日本社会が何から何までだめな社会であったというのは間違いである。団塊世代の論者に多い気もするが、この国の過去と現在を徹底的に否定的に描き出し、憤りをエネルギーに転化しようとする議論もある。・・・徹底的な否定の上に現実的な改革の展望を切り開くことも難しいであろう。
戦後日本が実現してきた雇用を軸とした生活保障は、ある意味で「福祉から就労へ」という「第三の道」型の社会像を先取りしていた。日本型生活保障の、こうした形は継承されていってよい。その一方で日本型生活保障は、すべての人々をカヴァーしたわけではなく、経済成長の中での貧困や孤立など、たくさんの問題点を伴ってきた。・・・
>本書は、雇用を軸とした生活保障を、より多くの人を包摂するものとして再構築し、併せて囲い込み構造を解消して人々のライフチャンスを広げていく道筋を考えた。・・・・
岩波新書 新刊紹介
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/sin/sin_kkn/kkn0911/sin_k501.html
生活不安を解消する、新しい社会ビジョンとは
「貧困や格差の拡がりを目の当たりにし、犯罪や自殺の増大にかかわる報道に接するたびに、足下が底割れしていくような感覚が拡がっていく」と著者は言います。多くの人々が生活に不安を感じ、あるいは、社会からの疎外感にとらわれるような現在の社会は変えていかなければなりませんが、いったい、何をどう変えればいいのでしょうか。問題は複雑に絡み合い、非常に困難な作業が待ち受けています。
本書は、多くの人々が就労でき、あるいは社会に参加できる「排除しない社会」をどう実現するのかについて論じています。そこでの切り口となるのが「雇用」と「社会保障」を結びつけて考える「生活保障」というキーワードです。日本の過去と現状を振り返り、これからの「生活保障」のあり方を考えます。スウェーデンなど欧米の経験も参考にされますが、安易な国外モデルの導入ではなく、日本型の生活保障をどう再構築するかが議論の中心となります。
社会保障や雇用の政策について扱っていますが、私たちが「生きる場」をどう確保するのか、互いに認め合える社会とはどういう社会か、といったテーマも重要な要素として取り上げられています。その中では、秋葉原殺傷事件の犯人についての考察なども行われています。
これからの社会保障政策のかじ取りをする政治家や官僚はもちろん、すべての働く人、あるいはそれぞれの事情で労働環境から離れている人たちが、これからの社会について考える際にぜひ読んでいただきたい一冊です。
(新書編集部 安田 衛)
■著者紹介
宮本太郎(みやもと・たろう)氏は、1958年東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学後、ストックホルム大学客員研究員、立命館大学教授などを経て、現在は北海道大学大学院法学研究科教授。
著書に『脱「格差社会」への戦略』(共編、岩波書店)、『脱「貧困」への政治』(共著、岩波ブックレット)、『福祉国家という戦略』(法律文化社)、『福祉政治』(有斐閣)、『福祉国家再編の政治』(編著、ミネルヴァ書房)、『比較福祉政治』(編著、早稲田大学出版部)などがある。
■目次
はじめに―生活保障とは何か
第一章
断層の拡がり、連帯の困難
1 分断社会の出現
2 連帯の困難
3 ポスト新自由主義のビジョン
第二章
日本型生活保障とその解体
1 日本型生活保障とは何だったか
2 日本型生活保障の解体
3 「生きる場」の喪失
第三章
スウェーデン型生活保障のゆくえ
1 生活保障をめぐる様々な経験
2 スウェーデンの生活保障
3 転機のスウェーデン型生活保障
第四章
新しい生活保障とアクティベーション
1 雇用と社会保障
2 ベーシックインカムの可能性
3 アクティベーションへ
第五章
排除しない社会のかたち
1 「交差点型」社会
2 排除しない社会のガバナンス
3 社会契約としての生活保障
おわりに―排除しない社会へ
あとがき
参考文献