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MRICメルマガから転載
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▽ 日本の社会保障はどうすべきか? ▽
ナビタスクリニック立川 院長
東京大学医科学研究所
先端医療社会コミュニケーションシステム 社会連携研究部門 客員研究員
久住 英二
2009年11月24日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行
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低負担・低福祉の小さな政府を目指した自民党政権が終わり、民 主党政権が誕生しました。今後は、医療費を含む社会保障費が増額 され、社会保障が充実すると期待されます。かつては、なんでも効 率化、民間でできることは民間に、という風潮がありました。私 は、医療などの社会保障に関しては、民間に任せるべきではないと 考えています。なぜなら、民間に任せると、加入者の利益より企業 利益が優先されるからです。
医療に関しては、医療費の多寡と平均寿命との相関関係が示され ており、自民党と財界が目指していた効率化(=費用削減)では医 療の質を低下させていたました。経済協力開発機構が2007年 に、医療費と平均寿命との相関関係を集計し、データ発表していま す。先端医療のレベルが高いはずの米国は相関カーブのはるか下に 位置し、日本は飛び抜けて上にあります。これは、高い医療費をか けている割に、米国では長生きできず、日本では費用の割に長寿で あることを示しています。もちろん、伝統的生活様式の違いなど、 医療以外が寿命に寄与する部分も少なくないと思いますが、医療の 貢献は相当大きいです。日本は高齢化しているため、本来、医療費 は上位にあるべきなのですが、30カ国中21位です。異 常な医療費抑制政策のもと、現場の医療者の自己犠牲が医療を支え てきたからです。米国では国民皆保険制度がなく、4700万人 あまりの無保険者がいます。所得の少ない年金生活者や障害者向け には公的保険がありますが、薬代は実費負担です。労働者は民間の 医療保険会社と契約しますが、受けられる医療の範囲は、保険契約 の内容により異なります。また、保険の支払いが受けられる医療機 関も制限されます。日本とは大違いですね。
現在でも、国が何でもやると民間の活力が削がれ、国際競争力が 低下するとの主張が流布しています。では、国による社会保障が充 実しているスウェーデンやデンマーク、フィンランドなどの北欧諸 国の国際競争力は低いのでしょうか?世界経済フォーラム(福田元 首相が行ったダボス会議です)による競争力ランキングでは、これ ら北欧諸国が4-6位を占めています。ちなみに、トップはスイ スで、米国は2位、日本は8位です。社会保障が充実し ているからこそ、老後や病気になったときに備えて貯金する必要が なく、お金が市場に流通することで若い世代も所得が得やすくなっ ているのでしょう。日本では、個人金融資産が1500兆円もあ りながら、50歳以上が1200兆円を有し、若い世代は ワーキングプアとなり、次世代の日本を担うべき子供すら産めない 状態となっています。
日本が持続的に成長し、国際競争力を維持するためには、今こそ 社会保障を充実させ、病気や老後の心配をせず、思い切り働ける社 会を実現させるべきではないでしょうか。
くすみ・えいじ 1973年新潟県長岡市生まれ。新潟大学医学部医学科卒業とともに上京、国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修後、同院血液科医員に。
2006年から東京大学医科学研究所客員研究員。2008年に「ナビタスクリニック立川」開設。
※この記事は、新潟日報に掲載されたものをMRIC向けに修正加筆したものです。
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今回の記事は転送歓迎します。その際にはMRICの記事である旨ご紹介いた
だけましたら幸いです。
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