★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK75 > 196.html ★阿修羅♪ |
|
Tweet |
http://mainichi.jp/select/opinion/kaneko/news/20091119dde012070002000c.html
早い話が:オバマ演説重箱読み=金子秀敏
米国のオバマ大統領が東京のサントリーホールで演説した。子どものころ鎌倉で抹茶アイスを食べた思い出に触れた「東京演説」である。シンガポールの国際会議の日程を一部キャンセルしてまでやった重要な演説だ。
大統領の外交演説を松竹梅の三段重ねの重箱に例えると重要さが見えてくるだろう。一番上の松の箱には「プラハ演説」(4月)が詰まっている。「核なき世界」をうたった演説だ。東欧チェコの首都で、ロシアに向かって戦略核兵器削減交渉を呼びかけ、ロシアの嫌がっていたミサイル防衛(MD)網の東欧配備を断念した。ロシアへの大きな譲歩だった。ロシアを恐れる東欧諸国は反発した。
竹の箱は「カイロ演説」(6月)だ。イスラム世界との和解をうたった。パレスチナとイスラエルをにらむエジプトで行われた。パレスチナ寄りの内容だとイスラエルが怒った。
さて、11月の梅の箱。盛られた「東京演説」の主菜は、日本の抹茶アイスではない。中国問題である。「米国は中国を封じ込めることを望まない」という部分が、中国にはとても甘かったことだろう。米国は共産中国の建国以来、封じ込め政策をとってきた。沖縄をはじめ東アジアに点在する米軍基地は、旧ソ連、中国をにらんで置かれていた。
冷戦が終わり、クリントン政権のころに、中国との対話を探る「関与政策」が始まった。いったん国際化を受け入れた中国は、驚異的な経済成長をとげ、あっという間に国内総生産(GDP)で世界第3位にのし上がった。
次のブッシュ政権は、最初は「不安定の弧」政策の名の下に中国封じ込めの構えを見せた。だが、「台頭する中国」の勢いを抑えることができず、結局は中国を「責任ある利益共有者」と呼ぶパートナーと認めた。とはいえ中国を軍事的にけん制する「ヘッジ(保険をかける)政策」を捨てなかった。
伝統的に辛口の対中政策と比べて、オバマ演説の「封じ込め望まず」は、ロシア外交、イスラム外交と並ぶ重大な甘口へのチェンジだ。インドが早速、警戒心をあらわにしている。
では、オバマ大統領は中国にどんな見返りを期待してるのか。ひょっとしたらアフガニスタンの治安維持に中国軍を出してもらいたいのではないか。米軍を増派しても泥沼になったら米国の威信はいよいよ地に落ちる。それくらいの対価を求めてもおかしくない。(専門編集委員)
毎日新聞 2009年11月19日 東京夕刊