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発足から2カ月がたち、案の定というべきか、鳩山政権はふらつき始めた。当初は、地球環境問題に対する積極的な取り組みや、生活保護の母子加算の復活など、政権交代の意義を感じさせる政策転換が打ち出され、期待感は高まった。しかし、山積する内外の政策課題を現実的に処理する段階に入ると、政権戦略の準備不足が現れているようである。 最大の難問は、沖縄の米軍基地縮小問題である。もちろん外交交渉だから結果として鳩山政権の主張が通らないことはありうるし、国民もそのことをある程度許容するであろう。しかし、政権自体の主張がまとまらないことには、対米交渉を始めることさえできない。民主党政権として沖縄をどうしたいのか、基本的なメッセージが伝わってこないことこそ、混乱の原因である。外相や防衛相に思いつきのようなことをてんでに言わせるのではなく、首相が中心となって、閣議、閣僚懇談会できちんと議論して、政権の方針を明確にしなければならない。 民主党は、長年の持論に沿って、事務次官会議を廃止した。これは、官僚のトップの談合ではなく、首相と閣僚が国政の基本政策について責任を持って決定するという理念に基づいた改革であった。しかし、肝心の閣議が今何を議論し、決めているのか、外部からはさっぱりわからない。沖縄問題について言えば、閣議で日本の対米交渉方針を決め、関係閣僚が連携しながら、地元対話や外交ルート、メディア対策など様々な機会を通して、日本の主張を総合的に展開していかなければならない。 繰り返しになるが、政治主導とは事務次官会議を廃止するとか、官僚の記者会見を禁止するといった形をいじることではない。政治家自身の言葉で国民や外国に訴えて、政策の基本方針を決定することが政治主導である。今の鳩山政権は、むしろ政治主導という看板の重さに押しつぶされそうな気配である。 民主党は、初めて政権に就くことを弱みではなく、バーゲニングパワー(交渉力の源泉)にしなければならない。普天間基地の辺野古への移転や海兵隊のグアム移転の経費負担など、前政権が決定した方針については、その根拠に疑わしい点があるので、改めて精査したいと言えば、誰も反対しないであろう。 また、国民によって選ばれたという正統性を最大限政治的に利用すべきである。沖縄の基地縮小は国民に対する公約なので、これを具体化することは民主的に選ばれた政権としての責務だと言えば、交渉の余地は開けるはずである。何と言っても、相手は民主主義の総本山を自称するアメリカである。民主主義、人間の尊厳を守ること、貴重な自然環境を後世に残すこと。これらの普遍的な価値を日本から唱えてこそ、日米間で対等な交渉ができるようになるはずである。 政治主導の基本は、政治家が明確な意志を持つことである。意志のあるところには、情報も知恵も集まってくる。意志のない政治家は右顧左眄するものである。アメリカを怒らせると困るという御殿女中のような官僚や評論家の言うことなど、無視すればよい。今こそ、鳩山首相をはじめとする民主党のリーダーの胆力が問われている。(週刊金曜日11月20日号) |