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http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20091114-01-0901.html
10年遅れのプルサーマルに見る原発の末期症状
2009年11月14日 ビデオニュース・ドットコム
日本初のプルサーマル発電が5日、佐賀県の九州電力玄海原発3号機で始まった。
プルサーマルは使用済みの核燃料から取り出したプルトニウムとウランを混ぜたMOX燃料を、一般の軽水炉で燃やす発電方法で、プルトニウムのプルと軽水炉を意味するサーマルリアクターのサーマルを繋げた和製英語。
原子力発電所で使われた「使用済核燃料」の最終処分場を持たない日本は、今この瞬間の使用済みの核燃料がたまり続けており、その核燃料の再利用を可能にする「核燃料サイクル」は長年国策として推進されてきた。しかし、相次ぐ不祥事や事故などが災いし、その実現は当初の予定から10年以上遅れていた。
しかも、核燃料サイクルの中核をなす高速増殖炉が、安全性に対する不安から実用化のめどがまったく立っていないにもかかわらず、使用済み燃料のわずか1%しか再利用できないため、あくまでつなぎ役に過ぎないプルサーマルを今立ち上げることのぜひについては、異論も多い。
採算性と安全性の観点から世界各国が次々と使用済み核燃料の再処理事業から撤退する今、あえてプルサーマルを始める日本のエネルギー政策のあり方を、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長の解説を交え、議論した。
神保(ジャーナリスト): 今週、プルサーマルが始まりましたが、新聞各紙ともプルサーマルの問題点、課題に加え、プルトニウムの汚染問題その他について書いてあることは書いてあるのですが、もう少しスケールの大きな話だと僕は思っています。プルサーマルや核燃料サイクル自体に問題があるということもさることながら、今回のプルサーマル開始には、日本の原発政策の根幹に関わる何かがあると思っているので、私が原子力発電については厚い信頼を寄せている環境エネルギー政策所所長の飯田哲也さんにお話を伺いました。飯田さん、まず、プルサーマルにはどのような問題がありますか。
飯田: プルサーマルという技術はまったくもって無駄なものです。六ヶ所村での再処理工場も、このプルサーマルも、それらが生み出したプルトニウムを使って発電する高速増殖炉が実用化しないことには核燃料処理サイクルが完成せず、どちらも意味がない技術なのですが、高速増殖炉は今のところ全く実用化の見通しがない。世界のどこを見渡しても、少なくとももう先進国ではどこもやっていません。また、再処理工場の本格運転を目指している六ヶ所村では、今トラブルで再処理工場稼動が延期に延期を重ねており、結局お金ばかりかかっている状態です。何よりもプルトニウムというのは、ウランと違って、極めて少量で核爆発を起こしやすい。いわゆる核拡散のリスクが凄く高くなる点も問題です。
プルサーマルは実際に使う用途が無いにもかかわらずプルトニウムをますます生み出しながら、言わば敗戦処理のような技術としてプルトニウムを普通の軽水炉で使おうとしていると言えます。もう生み出さなくてもいいプルトニウムを生み出し、余分なお金と、余分なリスクを背負って発電所で燃やすということを無理やりにやっている。要は六ヶ所再処理工場を運転することに意味を持たせるために、「プルトニウムは軽水炉でも使ってますよ」ということを示すアリバイ作りのためにやってるという、まったく意味のない事業なのです。
神保: では、今回九州電力がプルサーマルを開始したことをどのように評価しますか。
飯田: なぜ九州電力かというと、本当は東京電力と関西電力という電力会社の二大雄が、まずプルサーマルを開始しようとしたところ、東京電力は、前福島県知事の佐藤栄佐久氏の提唱したいわゆる「3つの約束」というものを破り、それに続くトラブル隠しもあり、福島県がまず態度を硬化させた。新潟県の方でやる計画もあったのですが、住民投票で否決をされ、まず東京電力はプルサーマル開始のメドが立たなくなってしまった。続いて関西電力がその代わりをうちでやりましょうということになったのですが、MOX燃料の製造元のイギリスの工場がデータ捏造をしていたことが判明し、ダメになってしまった。で、中部電力はどうかというと浜岡原発の耐震設計が十分でないとの問題があり、こちらもできなくなってしまった。ということで、東電と関電というトップランナーが後ろに下がってしまったので、いわば蛮勇というか命知らずの地方電力が、プルサーマル事業において前に出るということをやっている。そして、佐賀県の古川康知事が、プルサーマルを開始することがどのような意味を持っているのかということもわからずに国策ということで背中を押されてゴーサインをかけたと
いうことです。これが今回九州電力がプルサーマルを開始したことの背景です。
確かに国策といえば聞こえはいいですが、国全体で見ればとんでもない方針で、まさに“現代の戦艦大和”というべき事態です。もう敗戦が確実になっているのに、最後に呉の軍港から、護衛機一機もなしに沖縄に向けて発進した戦艦大和の姿とそっくりですね。指導者が全くやろうとしていることの中身を分かっていない。けれども、責任を取るためにとにかくやるんだという日本の指導者の無能ぶりの象徴のような事業ですね。
宮台: 全体像が議論されていないで、いまあるものをなんとかして存続させたりつじつまを合わせたりしなければいけないので、これをやりあれをやりで、いわゆるびほう策ですよね。
神保: 政権も変わったことですし、原子力政策の全体を根本から見直す作業も必要なのではないでしょうか。
プロフィール
飯田 哲也(いいだ・てつなり)環境エネルギー政策研究所所長。1959年山口県生まれ。83年京都大学工学部原子核工学科卒業。同年神戸製鋼入社。電力中央研究所勤務を経て、96年東京大学大学院先端科学技術センター博士課程単位取得満期退学。00年NPO法人環境エネルギー政策研究所を設立し、現職。92〜06年日本総合研究所主任研究員を兼務。90〜92年スウェーデンルンド大学環境エネルギーシステム研究所客員研究員。著書に『北欧のエネルギーデモクラシー』、編著に『自然エネルギー市場』、共著に『日本版グリーン革命で雇用・経済を立て直す』など。
神保 哲生(じんぼう・てつお)
ビデオジャーナリスト/ビデオニュース・ドットコム代表。1961年東京生まれ。15歳で渡米、コロンビア大学ジャーナリズム大学院修士課程修了。AP通信記者を経て93年に独立。テレビ朝日『ニュースステーション』などに所属した後、99年11月、日本初のニュース専門インターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』を設立。著書に『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』、『ビデオジャーナリズム―カメラを持って世界に飛び出そう』、『ツバル−温暖化に沈む国』、『地雷リポート』など。専門は地球環境、開発経済、メディア倫理。
宮台 真司(みやだい・しんじ)
首都大学東京教授/社会学者。1959年仙台生まれ。東京大学大学院博士課程修了。東京都立大学助教授、首都大学東京准教授を経て現職。専門は社会システム論。博士論文は『権力の予期理論』。著書に『制服少女たちの選択』、『14歳からの社会学』、『日本の難点』など。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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