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http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20091109/194222/?P=1
2009年 11月10日 日本郵政の社長・副社長人事が明らかになってからというもの、民主党に対してメディアが非難の合唱を続けている。 新社長には「ミスター大蔵省」とまでいわれた元大蔵事務次官の斎藤次郎氏が指名され、4人いる副社長のうち2人が、旧大蔵省と旧郵政事業庁出身者という官僚OBとなった。これを指して民主党の主張してきた「脱官僚」に反するのではないかというわけだ。 自民党もまた、これを政府批判の第一歩に位置づけて対立姿勢を強めている。 確かに、自民党の主張にも一理ある。というのも、昨年の日銀総裁人事において、自民党が推薦した武藤敏郎副総裁の昇格案に対して、元官僚であることを理由に民主党が拒否したといういきさつがあるからだ。 だが、今回の人事についていえば、官僚か官僚でないかというのは問題の本質ではない。問題は、なぜ斎藤次郎という人物が社長に指名されたのかという点である。その意味を、きちんと整理して考えるべきではないか。
なぜ斎藤氏が日本郵政の社長に指名されたのか。それは、隠れた小沢人事であるとわたしは見ている。 もっとも、その点については郵政問題担当の亀井大臣はもちろん、斎藤社長自身も否定している。亀井大臣がみずから決定したのであり、小沢幹事長の影響はなかったというわけでだ。 だが、これまでの斎藤氏と小沢氏の関係を少しでも知っていれば、考えれば考えるほど小沢人事以外の何者でもないと思わざるをえない。 たとえば、細川内閣時代に小沢氏は新生党代表として連立内閣に参加していたのだが、そのときに小沢氏と大蔵事務次官だった斎藤氏がタッグを組んで練り上げたのが国民福祉税構想である。 その顛末はご存じの通りである。1994年2月の深夜、細川総理が突然記者会見を開き、当時3%だった消費税を廃止するとともに、あらたに税率7%の国民福祉税を導入すると発表した。結局は、そのことが細川内閣崩壊のきっかけの一つとなってしまった。 二人はそのときからのつきあいであり、斎藤氏は小沢ブレーンともいわれてきた。いくらなんでも、この人事を亀井大臣が独断で行ったとは考えにくい。少なくとも、小沢氏が前もって知らなかったということはありえない。 そもそも亀井大臣は、小泉・竹中による郵政民営化路線を全否定したいと考えているのは誰もが知っている。だから、全否定する人をトップに据えたいと考えていたに違いない。それならば、もっと適任の人がいくらでもいただろう。それが、斎藤氏になったというのは、小沢人事と考えないことにはどうにも腑に落ちないのだ。
メディアの報道を見ていると、どの省庁出身だろうが、元官僚に違いはないとばかりの扱いだが、決してそんなことはない。もっとよく吟味する必要がある。 斎藤社長の出身である旧大蔵省は、日本郵政の母体であった旧郵政省とは、超がつくほどの犬猿の仲だったのだ。 一例を挙げれば、大蔵省が金融緩和のために銀行金利を引き下げたのに、郵政省が裏切って郵便貯金の金利引き下げを先送りしたという「事件」があった。おかげで、銀行預金がごっそりと郵便貯金へとシフトしてしまい、霞ヶ関の中で大喧嘩となったことがある。 大蔵省にとって郵政省は目の上のタンコブだった。そこで、なんとかして郵便貯金と簡易保険を自分の配下に収めて、金融行政・保険行政をすべて一元支配したいというのが、かねてからの悲願だったのだ。 そこに登場したのが小泉総理の郵政民営化論だった。まさに千載一遇のチャンスである。それに乗っかれば、郵便貯金と簡易保険を支配できると確信して、大蔵省を継いだ財務省は郵政民営化を手伝ったわけだ。
そして、ついに念願がかなった。ゆうちょ銀行とかんぽ生命は、現在ほかの銀行と同じく、財務省−金融庁の支配下にある。 ところが、政権交代が起きて風向きが変わってきた。このまま郵政民営化見直しが進展して、事業を再統合しかねない勢いにさえなってきた。もし、完全な見直しが実現して、現在の日本郵政が新しい経営形態になったら、いったい何が起こるか。 それは、財務省の支配から再び逃げていくことを意味する。いくらなんでも、財務官僚にとってそれだけは死んでも避けたい事態であることは明らかだ。 そんな状況のなかで、日本郵政の社長に就任したのが、元大蔵官僚の斎藤氏である。しかも、副社長のうちの一人にも元大蔵官僚が入っている。これほど明快な話はないではないか。 役人にとくに顕著なことだが、出身母体で培った思想というのは、そこを離れてもなかなか変わるものではない。彼らは、意識しているといないとかかわらず、旧大蔵省の発想で行動していくことだろう。 となると、結論は明らかである。ミスター大蔵省をトップに据えたことで、郵政改革見直しが大幅に後退していくことが容易に想像できるのである。
亀井大臣も小沢氏も、お互いにおくびにも出さないが、おそらく裏では日本郵政の社長人事について、もめにもめていたのだろう。 亀井大臣としては小泉・竹中路線の全否定をするために、就任当初から西川社長の交代を強く主張していた。いち早く反構造改革派の社長を据えるつもりだったのだろう。ところが、実際には政権発足から1カ月も西川社長の更迭は先送りされた。 けっして、西川社長が強引に居座ったわけではなく、亀井大臣が西川社長に引導を渡さなかったからだ。これほどまでに時間がかかったのは、政権内で次期社長を誰にするかで、もめていたからだろう。 小沢氏からしてみると、組閣当初から亀井大臣の暴走は目にあまるものに感じられていたに違いない。 金融モラトリアムや10兆円の景気対策を表明するなど、暴走を繰り返す亀井大臣に郵政民営化見直しを任せていたら、大変なことになると感じたはずだ。しかも、亀井大臣はそれなりに力のある人物である。 「こいつをこのまま放置しておいたら、郵政公社再建まで突っ走りかねない」 そう危惧した小沢氏は、亀井暴走にブレーキをかけるために、斎藤社長を刺客として送り込んだ。そう考えるのが自然ではないか。
大蔵省出身の斎藤社長が、わざわざ財務省配下から、ゆうちょ銀行・かんぽ生命を逃すようなことをするはずがない。 わたしはこの社長人事によって、亀井大臣の郵政民営化見直しは大幅に後退したと思っている。斎藤社長は、おそらくありとあらゆる面で、亀井大臣の妨害をしてくるだろう。 亀井大臣が国民に一番アピールする最良の方法は、郵政民営化の闇を暴き白日のもとにさらすことであったはずだ。 たとえば、かんぽの宿の問題では裏でどのようなことが起きていたのか、あるいは郵政民営化準備室が米国政府や米国の業界団体と、少なくとも17回の意見交換をしていたのはなぜか。そして、郵政民営化の本当の目的が何であったのかを明らかにすれば、国民世論は「郵政民営化は戻したほうがいい」という方向に動くはずだった。 その際には、いきさつを自分の目で見てきた日本郵政の社員の証言が欠かせない。そして、社員に真実を証言させるには、トップが誰であって、どんな方針をもっているかが何よりも重要である。 なぜならば、サラリーマンはクビや左遷を恐れるために、トップの意向に逆らえないのだ。今回、トップに斎藤氏が就いたことで、これまで真実を証言しようと思っていた日本郵政の社員も躊躇(ちゅうちょ)することだろう。 それだけではない。郵政民営化見直しが大幅に後退するだけでなく、ゆうちょ銀行とかんぽ生命の株売却という一番恐ろしいシナリオが実行される可能性が高くなったのだ。
社長・副社長人事以上に、わたしがあっと驚いたのは、社外取締役で人事委員会の委員長である奥田碩氏(トヨタ自動車相談役)を留任させたことだ。 亀井大臣が、社長とともに日本郵政の役員人事についても一新するといっていたのにもかかわらずである。 奥田氏といえば、知らない人はいない人だろうが、日本経団連会長として小泉構造改革の片棒を担いだ人物だ。奥田氏を留任させたら、郵政改革の見直しが進むはずがない。 実に不可思議な人事ではないか。 明確な証拠があるわけではないが、状況証拠から見る限り、亀井大臣は小沢氏に叩きつぶされたのではないかとわたしは思う。 現在の民主党内では、ありとあらゆる面で小沢氏の発言力が強大になり、役人の国会答弁禁止法案から、行政刷新会議のメンバー選定まで、すべて小沢氏が言うとそのまま通ってしまうという状態になっている。 わたしは、最近になって民主党が民主的でなくなってきていることを危惧している。野党時代はみなのびのびと発言していたのだが、政権をとったとたんに様子が変わってきた。民主党のアキレス腱は、「小沢党」になってしまったことにあるのではないか。 郵政民営化見直しも、結局は小沢氏の意向に左右されてしまうのだろうか。 |