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子供手当をめぐる議論は、まったく間違っている。
議論されるべきは、少子化対策の施策として何が最適か、民主党の主張する子供手当てなのか、であって、財源やマニフェストうんぬんの問題ではないはず。
少子化の原因は、@未婚・晩婚化、A夫婦間出生数の減少、の二つに大別されるが、Aの夫婦の完結出生児数は若干減少傾向にはあるものの、過去35年間ほとんど変化していない(2.23-2.13人)ことから、現在進行中の少子化の原因は、結婚後ではなく@の結婚前に起因しているのは明らか。
(http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2007pdf/20070615074.pdf)
ところが、平成6年の「エンゼルプラン」以降、保育所や育児休業制度等、既婚者向けの施策が中心で、@の施策は全く行っていない。そして、「子供手当て」も既婚者向けの施策である。
つまり、真の原因を見極めようという的確な努力をせずに、原因とは無関係に当てずっぽうの施策を効果の的確な予測もすることなく行おうとしているのである。国民的議論も専門家による検討も何もなしに。
欧州諸国と比較して、婚外子が極めて少ない我が国では、結婚は子を得るほとんど唯一の手段であり、未婚・晩婚化こそが少子化の原因であるから、採るべき少子化対策は結婚を促すことしかないのである。そして、18-34歳の未婚男女の約9割は結婚の意志がある(www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2007pdf/20071026003.pdf)
のにもかかわらず結婚できていない理由は、第一に経済的原因である。
男性の結婚については、経済力と密接な関連があることは明らかで、労働政策研究・研修機構の調査では、30-34 歳代の男性で同世代の半数以上が結婚しているのは年収300 万円以上の層であり、常勤的雇用にない者は結婚市場への参入は相当程度難しい状況であることを示している。加えて収入の多い常勤的雇用にある者についても、職場の長時間の拘束時間や疲労のため出会いや交際の機会・意欲の減少が問題視されており、このような収入と自由時間に関する制約条件を解決することで、結婚数は増加するといわれている。
(http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2006pdf/20061227057.pdf)
この点、子供手当ては、未婚者から既婚者への所得移転によって所得格差を一層拡大させ、未婚者は所得減少によって遂にはワーキングプアに仕立て上げられ、結婚は一層困難になっていくので、状況を更に悪化させることになる。昨年の秋葉原事件のように、広がる格差の中で将来に希望を失い、幸福感ではなく疎外感に日々さいなまれて、やがて不幸な事件につながっていく不安定な社会に日本が落ちていくことになってしまう。
以前は、結婚の4割近くは社内結婚であったが、1986年の円高不況のころから女子の採用を絞り、派遣に切り替えてきた会社が殆どであろう。それはバブル崩壊後には一般的になってしまった。派遣は1年以内、という法規制のために、一社に長くいられないので、人間関係が継続しないため、男性従業員と親しくなる機会がないうちに別の会社に派遣される。そのため、今や社内結婚は極めて少なくなってしまった。
したがって、真に行われるべきは、子供手当ではなく、ワーキングプアの解消、賃金水準の向上、雇用の安定、という社会の基本的安定構造の回復である。困難ではあるが本筋の解決策を地道に行なうべきである。
また、「二人口は過せるが一人口は過せぬ」という諺のとおり、結婚すれば少ない収入でも助け合って生活できる。制度的にそれを支えてきたのが配偶者控除である。結婚を経済的に税制面で優遇することでインセンティブにしてきたのである。夫婦と子供を核とする家族が社会の重要な構成要素であり、社会安定の大本である。人類の歴史上も日本の歴史上も基本的な構造は同様である。ところが、民主党は、あろうことかその最重要インセンティブである配偶者控除を目先の帳尻あわせのために廃止することを言い出した。制度の根本理念を知らない不勉強な青二才が、権力を振りかざして勝手気まま、思いつき次第で強行しようとしているが、こんな馬鹿げたことはない。
配偶者控除・扶養控除の大幅拡大(と負の所得税)、ワーキングプアの解消、賃金水準の向上、雇用の安定、という社会の基本的安定構造の回復こそが真の少子化問題の解決策である。
子供手当ては百害あって一利なし、の政策である。
(以上について転載自由)