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【全文】 小沢一郎氏への権力一元化 (山崎 元)
http://www.asyura2.com/09/senkyo74/msg/561.html
投稿者 ダイナモ 日時 2009 年 11 月 07 日 20:58:31: mY9T/8MdR98ug
 

http://diamond.jp/series/yamazaki/10104/

日本郵政人事のメッセージ

 権力は、それがどう行使されるかによって、世間の評判が変わる。世間が満足する間は、権力の存在はさして注目を集めないが、その影響に誰もが満足する訳ではなくなると、俄然、その権力がどんな構造に支えられているのかが問題になる。われわれの経験からすると、多くの国民が権力に不満を感じるようになっても、権力のありようによっては、なかなかこれを取り除くことが出来ない。かつて、自民党政権の背後にあった権力の構造も、いざ取り除こうとすると、なかなかに手間の掛かる代物だった。

 民主党政権が発足して1月半が経過したが、同党幹事長である小沢一郎氏の周辺の権力構造もまた、これを取り除いたり修正したりすることが困難なものになるのではないか。こう思うに至った、象徴的な出来事は、日本郵政の首脳人事だった。

 西川善文社長の退任に大きな違和感はないが、元大蔵次官の斎藤次郎氏の社長就任には大きなインパクトがあった。

 この人事の当事者である亀井郵政改革担当相によると、適材適所の人事を行う上で元官僚だからといって排除の条件にはならないとのことだが、この人事は、「天下り根絶」を訴え、日銀総裁人事などで「元官僚」を主な理由に複数の候補者に反対してきた民主党の主張とは明らかに矛盾する。報道によると、鳩山首相は亀井大臣からこの人事案を聞いて驚いたらしいが、これを承認した。また、かつての野党時代なら批判が噴出したのではないかと思われるが、民主党内から批判の声は殆ど出ていない。連立相手である国民新党と亀井大臣への配慮もあろうが、これは異様だ。

 推測するに、かつて細川政権時に共に国民福祉税構想を推進しようとした仲である斎藤次郎氏に対する小沢一郎氏の信認が厚いことを、どの関係者も意識したからではないか。だとすれば、その先には小沢氏の絶大な権力が見える。

 この人事が承認される運びになった場合、その人事のメッセージ効果は極めて大きい。端的に言って、民主党、最終的には小沢氏に協力する官僚は、将来、何らかのポストに登用される可能性があるということだ。この可能性を見せられて、民主党になびく官僚は少なくないだろう。

 加えて、民主党は、これまでのところ日本郵政を完全に官営に戻すと言っているわけではない。また、その株式を一切売却しないと言い切っているわけでもない。

 日本郵政は建前上民間会社であるから経営幹部には高給を払うことも出来る。同時に政府が大半の株式を保有するので、経営者は株主に気を遣う必要もないし、買収される心配もしなくていい。経営者のポストだけではないが、こうした特殊会社のポストを配分できる権力は、特に官界に対しては強力な影響力になり得る。もちろん、これが先例として承認されるなら、他の組織に対する天下り(的)人事にも影響力を行使できるから、官僚を相当程度コントロールできるようになるだろう。

 この強引な先例作りは、亀井大臣による、民主党、ひいては小沢氏の権力に対する大きな貢献となる可能性がある。


行政刷新会議のお粗末から見えたもの

 来年度予算に関連して「事業仕分け」を行おうとした仙石担当大臣の行政刷新会議は、仕分けの担当者の人選に関して、小沢幹事長に手順の不手際を詫びて、当初案を撤回・修正する運びとなった。

 ビジネスの世界で考えるとしても、この根回し不足はお粗末だが、この件に関して、仙石担当大臣と平野官房長官が小沢氏に謝ったことが報じられており、一応は一人前の大人であり、選挙を経た議員でもある当事者の議員達も「事業仕分け」の担当をおとなしく降りた。

 このイベントは、単に行政刷新会議のお粗末というだけでなく、今次の政権の政府に対する党の優位、個々の議員に対する党の管理の優位を形にして世間に見せたところに大きな意味がある。そして、党の管理の中心に居るのが小沢一郎氏だ。

 今や、閣僚も議員も、小沢氏の胸中を推測して、少なくとも彼が反対しないような行動を取らなければならない。小沢氏の監視と力を意識して、小沢氏が指示しなくても小沢氏の指示を受けたかのように動くのだから、これは権力として一つの完成形をなしつつある。

 「反小沢」といわぬまでも、小沢氏と距離を置く民主党内の有力者は、現在、活躍の場を与えられているが、何れも難題に苦しんでいる。岡田外務大臣は普天間基地問題でまだ満足の行く「解」に達していないようだし、前原国交相はJALの問題を彼自身の発言や行動でかえって大きくしながら抱え込んでいる。また、長妻厚労相も担当範囲の広さに些か精彩を欠いているのが現状だし、仙石氏が小沢氏にひれ伏したのは前述の通りだ。何れも、個々の政治家の自業自得的状況であるし、小沢氏が彼らの邪魔をすることはないとしても、スタッフ面で党の十分なサポートを受けられなければ仕事に苦しむことは明白だし、今後官僚が小沢氏の顔色を窺うようになると、小沢氏に見放された閣僚は官僚の協力を十分に得られなくなるだろう。

 尚、アメリカ合衆国の副大統領的な閑職にいて国家戦略室を局に格上げする法案を今国会に提出して貰えない菅副総理格・国家戦略担当相も苦境にあると見るべきだが、彼は、奇妙なくらい落ち着いて見える。献金問題を抱えて今後が乗り切れるか不安定な鳩山首相に対して、本当に副大統領的なスペアの役割を小沢氏に約束されているのかも知れないと疑ってしまう。


陳情も党と小沢氏が管理する

 現在小沢氏が中心になって進めつつある陳情改革も小沢氏の権力を強化しそうだ。

 陳情改革自体は、これまで党と政府の曖昧な二極構造が存在する中で、陳情が役人や大臣など政府にも多く向かって、政府がこれを聞き入れて処理することで、官僚や大臣あるいは族議員の権力の源泉になっていた。これを解体して、族議員のようなものが力を持てないようにしようという小沢氏の意図はよく分かる。

 但し、これまで陳情処理で発揮されていた資金の配分や法令の改正などに伴う利益誘導的権力自体は、陳情改革によって消滅するわけではなさそうだ。小沢氏は陳情を受け付けること自体を否定してはいないし、政治が大きな資源配分の力を持っている事実は変わらない。

 陳情改革はまだ全貌がクリアに見えているわけではないが、小沢氏のインタビューの発言を見ると(asahi.com参照)、民主党は、陳情を主に党の県連、あるいは個々の議員が受け付けて、担当ごとに各副幹事長が国対の副委員長(各委員会の筆頭理事)と相談し、最終的には党の政務会議で判断して処理する流れになるようだ。

 確かにこうした形を採ると、大臣や族議員が、資源配分への継続的影響力を通じて権力を蓄積することはないだろう。これまでは、陳情は政府に向かい、政府主導の資源配分や政策を与党の国会議員が承認する流れだったが、今後は、あくまでも与党の政治家が陳情を受け付けて、与党で意思決定されて、政府はそれを実行するに過ぎない。

 これが小沢氏の考える「政治主導」のプロセスなのだろうが、このプロセスでは党が決定を行い、与党の国会議員を党が管理する形になることから、党を預かる最高実力者である小沢氏に資源配分に関わる権力が集中する仕掛けだ。


権力の源泉は「小沢選挙」

 小沢氏が権力の束を丸ごと一手に握るような前述の構造は何によって支えられているのか。選挙に強いとされている彼の「選挙統率力」と、現実に彼に選挙で面倒を見て貰った議員の「数」であろう。これに加えて、小沢式「政治主導」の存在によって小沢氏に近づこうとする党内有力者達の行動と再び「数」が小沢氏の立場を更に強化する。

 小沢氏の選挙の方法は、たとえば最近刊行された『小沢選挙に学ぶ 人を動かす力』(野地秩嘉、小塚かおる著、かんき出版)に詳しいが、故田中角栄氏に学んだ、徹底的なドブ板選挙が基本だが、選挙情勢を見つつ、資金の投入先を変えたり、選挙のプロ集団である「小沢秘書軍団」のサポートを付けたりといった、カネとヒトの配分によって、候補者の当落を大きく左右することができる。

 また、選挙は現代では珍しいくらい人間を(特に候補者を)興奮させるイベントであり、そこでの成功体験に小沢氏が関わることで、当選者が小沢信者になることは想像に難くない。「辻立ち50回」や、有権者と触れあって「政策よりも自分を売る」といった「教え」を実践して当選に至るプロセスには、宗教的な感動に近い感情があるのではないか。

 ここで、かつて小沢氏が主導して作った政党助成金の存在が、この行方を左右できる幹事長のポストと共に小沢氏の権力を益々強化している巡り合わせは見事というしかない。


権力の二重構造は存在しない

 人事と資源配分の力が今後実質的にどのようにコントロールされるのかを眺めると、巷間指摘されるような、鳩山首相と小沢幹事長の「権力の二重構造」のようなものは存在していないことが分かる。小沢氏が唯一の権力者であり、鳩山氏に権力はない。ドラマで言うと、プロデューサー(キャスティングと予算配分を決める)・脚本家(政策を決める)・監督(俳優を監視・指導する)が何れも小沢氏で、鳩山首相は取り替え可能な主演の俳優だろう。

 小沢氏を中心とした権力の編成に関して、現時点で筆者は、それが不当であるという批判を持っているわけではない。彼は、最終的には選挙に基づく正統な手続きと、自分自身の政治的な力量(特に権力の掌握に関する構想力)によって、現在の地位を得た。来年の参議院選挙で民主党が単独過半数を取った場合に、その権力は益々強化されるだろう。この権力の構造とその頂点に居る小沢氏には大いに注目する必要がある。

 小沢一郎氏は、この権力を使って何がしたいのだろうか。次の最大の注目点はそこだ。

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小沢は自分に集中した権力を行使して、日本の国を彼の考える「普通の国」にしたいのだ。

 

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コメント
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政治における権力構造について、今の民主党議員の殆ど全てが、小沢氏の足元にも及ばないと云うことですね。松下政経塾や市民運動家出身では、自民党の権力の中枢に居り、権力の何たるかを知った小沢氏に及ばないのは肯けます。だからこそ、検察を筆頭に霞ヶ関の官僚が小沢潰しに走ったのでしょう。

政治とは税金の配分の仕方であると同時に、権力闘争でもあります。民主党議員の中で誰が、小沢氏の構想力に匹敵するだけの力をつけるかでしょう。
2009/11/08 10:34

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