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【神州の泉―高橋博彦】
2009年11月 6日 (金)
副島隆彦氏の新刊「ドル亡き後の世界」を読んで!
副島隆彦氏の新刊「ドル亡き後の世界」を読んだ。サブプライム・ローンショック及びリーマン・ブラザーズショックという、アメリカ発の金融ショックで景気悪化の津波が引き起こされたが、今年は日本もアメリカも株価が上がり、景気の底打ち観が出てきた。だが、副島氏によれば、これは大本営発表であって、来年バンクーバーオリンピック後辺りからアメリカの景気は崩れていくと言う。今景気は底打ちどころか、来年から下がりだし、2012年に大底に落ちてしまうと予測している。
金融・経済に疎い私は何とも言えないが、二年前のサブプライムローン崩れは人類史の重要な転換点だと言う副島氏の認識はその通りだと思う。もちろん、その翌年のリーマンショックがそのターニングポイントに決定的な拍車をかけてしまった。副島氏は、金融予測においては、日本における第一人者だと思うが、メディアや斯界では彼の予測はつんぼ桟敷(異端視)扱いされている。
アメリカ金融業界(ウォール・ストリート)に通暁する彼ならではの“読み”はかなり鋭いと思う。今から約10年前に日本の金融侵略、すなわち日本金融の占領を企て、その最高司令長官を務めたラリー・サマーズはホワイトハウスのオバマのそばにいて、ブレーンをやっている。彼は日本金融を叩きのめした功労で、米国内でかつてはマッカーサーの再来と賞賛されたらしい。飛ぶ鳥を落とす勢いだったサマーズも、今回の歴史的金融ショックですっかり落魄の様相を呈しているらしい。
さて、この本では他に重要な予測がたくさん書かれており、副島氏の渾身の迫力を感じる。ここ3年間の世界的株価の暴落で、なぜゴールドマン・サックスだけが一人勝ちしているか、副島氏はその理由を明確に述べている。また、この世は“金融鬼”が跋扈していて、人を騙して取って喰らうとか、副島氏ならではの独特の表現が随所にあって、興奮しながら読み進めることができる。サマーズ、バーナンキ、クルーグマンなど、日本でも見慣れた経済学者たちの真実が書かれてあり、大変参考になる。
世界はEC諸国も含め、アメリカの金融詐欺商品であるデリバティブを抱えており、それが堪えきれなくなって、これから爆発する。アメリカはこれから通貨の引き下げ(デノミ)を行って、1ドル10円にするだろうと言っている。世界に対し、日本に対し時価会計主義を無理やり押し付けたアメリカが、この間の金融破たんで、なりふり構わずいきなり原価取得方式で評価する態度に切り替えたが、国際会計基準理事会は未だに「時価会計を世界中に導入する」と言って憚らないらしい。こういう不透明かつ、平気でダブルスタンダードを使うことが、金融を牛耳る者達の怪しい所以である。
日本はアメリカから紙くず同然になることがわかっている各種の債権(外債)を多く買ってしまっている。副島氏は、日本国民の年金や共済掛け金や保険が、外債で2割も運用されているそうである。恐ろしい話だ。こういうことは表のメディアではほとんど伝えられていない。属国意識にがんじがらめにされているからだ。副島氏は日本が保有する莫大な外債(米国債)を中国に先駆けて売れと言う。
橋本元総理の発言の件があるから、日本ではアメリカの債権を売ることはタブー視されているようだが、副島氏の言うように勇気を出して売った方がいいと思う。アメリカが陰険に反応したら、その時はその時である。開き直って、中国の売りは黙っていて、日本が駄目なのはなぜかを執拗に追及すればよい。多くの人間が売れと言えば、CIAも暗殺の手段は取れないだろう。
この本は副島氏の重要な情報が多く詰め込まれていて、日本人は必読の書である。最後に書評として、私が特筆したいのは、中川昭一氏について言及している箇所である。副島氏は、『日米「振り込め詐欺」大恐慌』や、植草一秀さんとの共著「売国者たちの末路」でも書いている。この本では、中川昭一氏が現世界銀行総裁のロバート・ゼーリックに嵌められたと言っている。怒り狂ったゼーリックが、日本の財務省国際局長や読売新聞の女性記者を動かして、かの酩酊事件を引き起こしたと。
中川昭一氏はアメリカの金融失態の穴埋めに、日本の外貨準備資金が使われないように手を打った。米国債をこれ以上買うなと発言し、G7の席でもアメリカ批判を行った。アメリカは自分が獲得しようとしていた日本の外貨準備資金を、中川氏がIMFに9兆円支出することにしたので怒り狂って、彼を失脚させたという話だ。これはまったくその通りだと思う。2004年、竹中平蔵氏が郵政民営化準備室を発足した当時、中川昭一氏はエクソン・フロリオ条項に特許・知財の件で言及している。
ゼーリックと言えば、郵政民営化の件で竹中平蔵氏に送った『ゼーリック書簡』が知られている。それは、かつて民主党の櫻井充議員によって国会質問に出たが、2004年当時にゼーリックが、すでに中川氏を警戒していたことは間違いない。なぜなら、エクソンフロリオ条項が政界話題の禁忌になっていたと思われるからである。その日本版が考慮された場合、郵政民営化という日本資産収奪計画の重大な阻害要因となったからである。つまり、この条項を口にした政治家は愛国者だということになる。
これは愛国者の国防概念がなければ出ない発言だった。彼が郵政民営化に対してもエクソンフロリオ条項の考え方を有していたことは間違いない。彼は植草さんと同様に、早くから米国政府に危険視されていたことは間違いない。副島氏の『ドル亡き後の世界』はなるべく多くの人が読んで欲しい一冊である。
今の日本で、アメリカ国債を早く売れと断言する有識者は何人いるのだろうか?私は寡聞にして、副島氏しかそう言っている有識者を知らない。すごい勇気である。
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