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【神州の泉―高橋博彦】
2009年11月 4日 (水)
「日米対等」にこだわることが、生活回復路線に重要!!
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( 10月30日(金) 日経ネットニュースより一部引用 )
首相「日米対等」にこだわり 同盟再検証の意向、米は反発必至
鳩山由紀夫首相は29日、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)を含め、日米同盟を包括的に再検証する考えを打ち出した。沖縄県の米軍普天間基地の移設問題や日米地位協定の改定など民主党が掲げてきた主張が念頭にあり、政権交代を機とした「対等な日米関係」との理念へのこだわりだ。だがこれまでの日米合意を根底から覆しかねない発言だけに米国の反発は必至。政府内にも当惑が広がっている。
http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT3S29022%2029102009&g=MH&d=20091030
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政権交代直前、鳩山由紀夫氏の『友愛』をテーマにした論文が、どういう経緯で掲載されたのか不明のまま、アメリカのニューズウィーク誌(電子版)に、米国発グローバル資本主義の行き過ぎを批判した一部分が載せられ、反米的だと問題視された。その該当箇所である。
「冷戦後の日本は、アメリカ発のグローバリズムという名の市場原理主義に翻弄されつづけた。至上の価値であるはずの『自由』、その『自由の経済的形式』である資本主義が原理的に追求されていくとき、人間は目的ではなく手段におとしめられ、その尊厳を失う」
「諸国はそれぞれの国民経済の伝統や規制を改め、経済社会の構造をグローバルスタンダード(実はアメリカンスタンダード)に合わせて改革していくべきだという思潮だった。日本の国内でも、(中略)全てを市場に委ねる行き方を良しとする人たちと、セーフティネットの充実や国民経済的な伝統を守ろうという人たちに分かれた。小泉政権以来の自民党は前者であり、民主党はどちらかというと後者の立場だった。日本社会の変貌を顧みると、グローバルエコノミーが国民経済を破壊し、市場至上主義が社会を破壊してきた過程と言っても過言ではないだろう」
鳩山論文の骨子は、戦後日本の政治・経済史の俯瞰おいて、祖父・鳩山一郎氏が、フランス革命の有名な三つのスローガンである「自由」「平等」「博愛」の、「博愛」に感銘し、自らそれを「友愛」と名づけ、政治や社会にはこの友愛精神が肝要であることを政治理念とした。鳩山由紀夫前代表は、その世界観、思想を受け継ぎ、これからの日本を展望した小論である。その文脈の中で、上記の問題とされた、米国発グローバル資本主義への批判が出てきた。
少し横道にそれるが、平野貞夫氏著「わが友・小沢一郎」によれば、「友愛」がフランス革命の「自由、平等、博愛」の博愛から来たというのは政治論であって、思想史から眺めるとユニテリアン信仰が原点になっていると書いている。一般的なキリスト教イメージ、つまり正統派キリスト教は「父、子、聖霊」という三位一体(Trinity)を教義の核としているが、このユニテリアニズム(Unitarianism)は、それを否定し、神の唯一性を強調する一派である。(P187〜193参照)
私の思い違いかもしれないが、この考え方は、世界中の異なった宗教を統合しようとする、いわゆる「エキュメニカル・ムーブメント」に多大な影響を与えているような気がする。通常のカトリック、プロテスタントなどから見れば明らかに異端である。明治時代に国語を廃止して、英語を国語にしようと提唱した森有礼(ありのり)という人がいる。この人もユニテリアニズムに傾倒していたらしい。鳩山首相の提唱する「友愛」が、外来キリスト教の異端思想に源を持つのであれば、私は日本人の一人として、何となく違和感を覚えるが、古来から続いている日本の和の思想とある部分で親和性はあると思う。
その意味で、鳩山首相の言う友愛精神が、小泉市場原理主義一辺倒で傷ついた日本を修復するというのは理にかなっている。小泉政権を社会思想的にカテゴライズすれば、明らかに弱肉強食の社会ダーウィニズムである。これを人間の社会感覚に当て嵌めれば、徹底したミーイズムであり、公的感覚、規範感覚が退化せざるを得ない状況が強いられる。一方、たとえ異端的キリスト教思想に源流を持つにせよ、友愛を政治原理に適用することは、共生の思想に合致しており、規範感覚が復活する方向性を持つ。聖徳太子の「和ヲ以ッテ貴シト為ス」はもともと日本の共生思想だと思っている。
京都学派の生物学者であった今西錦司博士は、ダーウィンの進化仮説と対蹠的な「棲み分け理論」を提唱したが、世間的にはあまり知られていない。ダーウィンの進化論が欧米の近代合理主義と結びついた社会ダーウィニズムの源流とすれば、今西理論は、それとは反対の共生理念の源流となる仮説である。これが小沢一郎氏の父親である小沢佐重喜(さえき)氏が抱いていた共生思想と重なるのである。佐重喜氏は昭和21年、戦後最初の衆院選に出馬した時、「物質文明に禍(わざわい)せられ、富の偏在、貧富の格差が甚だしく、良心と理性に基づく真の自由が生かされる社会は実現していない。自由主義の欠陥を補い、高度な社会政策を断行する」と言ったらしい。(平野貞夫「わが友・小沢一郎」P74参照)
平野貞夫氏によれば、小沢一郎幹事長は、父親の政治感性を受け継いでいるという。共生社会論による野蛮な資本主義の修正である。「自由主義の欠陥」とは、我々が小泉・竹中構造改革で嫌になるほど見ている格差社会であり、一部の富裕階層に富が集中する経済形態である。それは社会から人間らしいモラルや品性、希望を奪うだけじゃなく、生存の危機さえ至る所で発生させている。セーフティネットの充足は金銭や物質的なものに限らず、生きる希望という精神的なものも持続的に生み出す必要がある。
そのためには、何が原因で弱肉強食や、無慈悲で荒んだ社会がもたらされたか、充分に検証する必要がある。アメリカ型のネオリベ政策が国民を不幸にすることは、もはや疑いの余地はない。共生理念に反する、この社会思想が最も恐ろしいのは、権力を有する政権政党が国民の面倒を見なくなるからだ。なぜならレッセフェール(自由放任主義)と弱肉強食を基盤とするこの政策は、文字通り強い者が際限なく有利になる社会だ。強い者とは誰であろうか。それは政治権力を持ち、元々大きな資本を持っている連中だ。
つまりは、政治屋、大企業、官僚の三角形である。植草さん流の捉え方をすれば、これに米国企業とマスコミが加わり「悪徳ペンタゴン」という巨大な利権複合体が形成されている。鳩山政権にはこれをぶち壊す責務があると思う。それを貫く思想として「共生社会」の実現がある。
新政権が、旧自公政権が敷いた、アメリカ隷従型ネオリベ路線から離脱してパラダイムシフトを起こすには、小泉政権の検証と、アメリカの内政干渉をはねつけなければならない。そのための日米対等路線である。普天間基地問題は、アメリカの横暴な支配構造にどれだけ抵抗できるかの試金石となる。岡田外相だけに任せていては危ない。アメリカの軍事占領に徹底的に抵抗するべきだ。
このままでは、国富がアメリカに収奪されるのを阻止できないばかりか、アメリカの戦争経済に借り出されて自衛隊員の血が流されることになる。米国の普天間問題の本質は、日本からどれだけ金を引き出せるか「米軍への財政支援」の多寡だけだ。日本はアメリカのキャッシュデスペンサーなのである。国防とは国益を損ない、国民に重大な脅威を与えるものから防衛することだ。日本から可能な限り優良資産を強奪するアメリカも例外ではない。小泉政権以降、特に国民への再配分が減ったのは、富が国外に流れ出たこともかなり大きい。
鳩山政権が「対等な日米関係」と言うとき、アメリカにどれだけ抵抗できるかという意思がある。その意味で郵政民営化見直し作戦は実に効果的な防衛策である。
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